弁理士という職業を知っていますか?日常生活ではあまり耳にする機会がないかもしれませんが、弁理士は特許や、商標登録など知的財産に関する現代において重要なポジションを担う専門家です。今回はそんな弁理士の世界を紹介しながら、それにまつわるオススメ本をピックアップしてみました。
<弁理士の仕事内容>
弁理士の主な仕事内容は、特許などの知的財産の権利に関しての手続きをお手伝いすることです。
知的財産の権利を守るためには特許庁に出願しなければなりませんが、この手続きはとても煩雑です。出願前には知的財産を精査し、出願時には膨大な書類を作成する必要があります。
不備があると受理されませんので、その間に第三者によって知的財産権が侵害されるかもしれません。したがって、弁理士には高度な専門性が求められます。
出願後も出して終わりというわけではなく、特許庁に拒否されるケースがあります。申請書の補正をおこなうのも、権利取得後のアフターフォローも弁理士の仕事です。
多くの弁理士は特許事務所に身を置いてこれらの業務を行いますが、企業に勤める弁理士の仕事内容は少し異なり、自社製品の権益を守るために働くことになります。
会社の規模や所属部署によって仕事の内容が異なりますが、知的財産権に関する業務であることは同じです。
<弁理士の年収>
士業は報酬の多い職業だというのが世間並みの見方ですが、弁理士の年収はどうでしょうか。
弁理士の年収は企業に勤めた場合、その会社の大きさから600万円台〜800万円台で、平均700万円と言われています。日本の会社員の平均年収が400万円ほどなので、高い報酬を得られる職業と言ってよいでしょう。
ただし、どんな仕事でもそうですが、貰える給料は年齢と経験、能力や勤め先によって大きくバラつきがあります。そして弁理士は特にこの傾向が強いようです。
特許事務所の所長ともなれば、1000万円~数千万円稼ぐ人もいるそう。事務所勤めの場合でも300万~900万台と事務所の規模の大きさや本人のスキルによって報酬は大きく異なります。
専門性の高い職業なので、スキルのある人はどんどん稼げる反面、実力主義といえる世界なので同じ弁理士のなかでも格差が表れるのは仕方がないのかもしれません。
<弁護士との違い>
弁護士と弁理士は名前が一文字違いで似ていますが、カバーする範囲が大きく異なります。
弁理士はここまで述べてきたように知的財産に関する専門家ですが、弁護士は法律全般に関するスペシャリストであるため、業務内容も多岐にわたります。
技術を扱う案件が多いという特性上、理系出身者がほとんどを占める弁理士とは逆に、弁護士は法学を学んだ文系出身者が多い職業。
また、弁護士は民事裁判や刑事裁判における法廷での活動以外に、法律相談を受けたり、トラブルが起こった際、本人の代理人として交渉をおこなうこともあります。
弁護士資格が無い人が利益目的でその業務をおこなうことは「非弁行為」といって、法律で禁じられているのですが、知的財産権に係る一部の民事訴訟においては弁理士も弁護士との共同で訴訟することが認められています。このような訴訟においては弁護士が訴訟の進行を主導し、知的財産の詳細に関する部分は弁理士が補佐する形で両者が補い合うのが一般的です。
弁理士資格は国家資格ですが、毎年合格率が10%を割る狭き門。弁理士として働くには、その年に1回ある国家試験を通過しなければなりません。
試験は3段階に分かれていて、短答式筆記試験・論文式筆記試験・口述試験の順に、前の試験を通過しないと次のステップに進めないことになっています。すべての試験に受かった場合、経済産業省の定める機関が実施する実務修習を学び、日本弁理士会に入会することで業務をおこなうことができます。
まず、弁理士試験の受験資格ですが、まったく条件がありません。年、学歴、国籍による限りが一切ないので、誰にも門戸が開かれています。
しかし弁理士試験ははっきりいって超難関です。平成29年度を参照すると合格率はたったの6.5%で、平成26年度から4年連続で10%を切っています。合格者の受験回数が4回を超えることも少なくありません。受験資格は誰にでもあるものの、合格はきわめて狭き門だといえるでしょう。
しかしそんな弁理士試験には免除制度があります。
短答式筆記試験に合格すればその後、2年間同試験は免除されます。同じように論文式筆記試験の必須科目も合格後2年間免除です。論文式筆記試験の選択科目は合格すれば永続的に免除されます。また、論文式筆記試験の選択科目は、次の有資格者は試験が免除になります。
この要件とは別に専門職、修士または博士の学位を有している人も免除の対象になるのですが、所定の審査を通過する必要があります。
免除制度をうまく活用して受験の負担を軽減することが難関突破への近道になるでしょう。
この記事をご覧いただいている方は、将来この職業に就きたいという方はもちろん、手に職をつけておきたい、転職を考えている、という方も多いでしょう。
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難易度が高いだけあって高収入も望めるのですが、資格取得後も厳しい実力主義の争いにさらされることもある弁理士。その現実や将来については悲観的な意見が多くみられます。その原因のひとつは特許出願数の減少にあります。
2000年以降、日本経済の停滞とともに特許出願数は大きく減少した一方で、2011年に4,776人だった弁理士は10年も経たない間に倍以上の10,000人を超えました。
減っていくマーケットを増えていく弁理士が奪い合う状態は楽観できることではありません。また、出願数は減ったものの、登録件数は伸びていること、今後予想される人工知能の普及がそれに拍車をかける可能性があることも踏まえると、弁理士は今後、より高い能力が求められるでしょう。
一方で明るい展望もあります。企業のグローバル化によって特許の取得は国内に留まらず、海外への特許出願が増えています。世界全体の特許出願数も年々増加傾向にあり、パクリ大国といわれた中国も今では国際特許出願数で世界第2位です。(1位:アメリカ、3位:日本)
それほど知的財産権は重視されているということなので、国際的に見れば弁理士の活躍する場面はまだまだありそうです。
知的財産の重要性が増すに伴い、企業が専門家のアドバイスを求める機会が増加することも期待されます。大企業はもちろんのことですが、中小企業にとっては自社製品の権利が守られるか否かは死活問題です。
ビジネスの場面において、コンサルとして専門家の見地をアドバイスできる弁理士の果たす役割は大きいでしょう。また、AIはビッグデータを活用できる点や、事務処理には長けていますが、人間にしかできない領域は必ず残ります。単なる出願の代理という仕事は減少するでしょうが、イコール弁理士が不必要ということにはなりません。
「能力がモノをいう世界」である面は否めませんが、今後も国際的な活躍やビジネスの場面でも重宝される存在であり、高収入も見込める魅力的な仕事であることは疑いないのではないでしょうか。
それでは、このあとに弁理士にまつわる4冊の本を紹介します。
- 著者
- ["伊藤 貴子", "佐々木 通孝", "須藤 晃伸"]
- 出版日
- 2012-02-01
見出しでもお伝えしたとおり、現役弁理士3人の合格体験記。これから弁理士になろうと思っている人や、今試験勉強中の人にピッタリの本です。
弁理士という職業の説明や試験の概略がわかりやすくまとまっていて、勉強方法や計画の立て方など、合格に至ったプロセスから合格後のことまで詳細に述べています。
弁理士では少数派の女性も執筆者のひとりというのも特徴で、多くの弁理士志願者の道標となるでしょう。
- 著者
- 黒川 正弘
- 出版日
- 2016-09-09
弁護士が活躍する小説やドラマは数あれど、弁理士が主人公の物語は稀有なのではないでしょうか。
主人公「留目茂」は大手特許事務所を退職して、個人事務所を立ち上げた弁理士。そこへひょんなことから勤めることになった元調査員の香織が加わります。
地元のマスク工場から初仕事を依頼されることになりますが、工場乗っ取りを企む中国人が登場したりと、軽快なストーリーで中小企業の苦闘を読ませる企業物小説。
フィクションですがノンフィクションさながらの内容で、弁理士の仕事を楽しみながら理解できます。
- 著者
- 平野 泰弘
- 出版日
- 2012-07-27
著者は弁理士事務所の所長で、本書では商標登録について具体例を交えながら、その重要性にアプローチしています。
商標登録の有無によって、いかに収益を上げることができるか、またその逆にどれほど損失を被るかなど、単なる商標登録の解説本に止まらず、マーケティングやブランディングについても示唆に富んだ一冊です。中小企業の経営者の方は必見。
- 著者
- 新井 信昭
- 出版日
- 2017-10-11
商標登録は基本「早いもの勝ち」です。ヒットした商品やブランド名が、すでにまったく関係ないところで商標登録されていたというトピックは、しばしばニュースになるので、一度は耳にしたことがあるでしょう。
本書では豊富な事例を使って「何が問題なのか、なぜ問題なのか」ということを解説。「飲み会で使える話」というスタンス通り、難解な権利問題がわかりやすく書かれています。
著者は堀江貴文、通称ホリエモンの商標登録の代理人として世間の耳目を集めた新井信昭弁理士。高卒後、フリーターやバックパッカー、免税店員などを経て弁理士になったという一風変わった経歴の持ち主です。
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