通訳という職業を聞いて、どんな姿を思い浮かべるでしょうか?国際政治のニュースで同時通訳をしている姿や、テレビ番組で海外のゲストの傍にいる姿、観光地にいる通訳ガイドを思い浮かべた方もいるでしょう。この記事では、みなさんが普段よく目にする通訳が、他にどんな場所で活躍しているのか?そして、仕事内容や通訳になるためには?といった疑問を、おすすめの本とともに紹介していきます。
通訳とは具体的にどのような仕事をしているのでしょうか?
よくイメージする姿は、テレビなどに海外のゲストが出演している時や、世界各国の要人が話し合いをする時など、彼らの傍について多言語の飛び交うコミュニケーションを補助している時でしょう。両者の言語をしっかりと理解した上で、分かりやすく伝えるということが重要な仕事です。
対象者が話す分野について理解できるだけの知識が必要なのはもちろんのこと、話している内容が、本人にとって嬉しいのか悲しいのか、話しての感情まで読み取りながら通訳していかないといけません。
通訳にも様々な分野があり、ビジネスや政治、スポーツなど、分野ごとに専門知識が必要なものも。また、各分野の知識に加えて、通訳する相手の文化的背景を理解すること、その人がどんな感情をもって発言をしているかなどの細かい配慮も求められます。
通訳には、会社員として勤める場合と、フリーランスで活躍する場合があります。数はさほど多くはないようですが、正社員として通訳を雇う会社も増えており、平均年収は400~800万ほどだそう。経験によって差が出てくる仕事なので、重要な場面での通訳を任せられるようになってくると年収1000万も越えてくるでしょう。
フリーランスで通訳をやっている人の平均年収は300~600万と言われています。フリーの人は専門分野での強みを持っていることが重要です。会話の内容が複雑で専門的な医療関係や法律関係の通訳になってくると、医薬品や国際法などに詳しくなければ仕事になりません。また、小さい仕事でもどんどん実績を積んで、大きな仕事を任せてもらえるように、日々の営業努力も必要になってくるでしょう。
では、翻訳という職業との違いはなんでしょうか?
翻訳とは基本的に書き言葉を扱う職業。たとえば書籍や論文など、ある事柄について書かれた文章を違う言語で表現するのが翻訳です。じっくりと文章に向き合い、わからないことがあれば調べ、検討し、正確に言語を置き換えていきます。こちらも通訳と同じように、小説や漫画、雑誌などの翻訳から、海外製品の説明書、観光パンフレットと、翻訳対象は多岐にわたり、専門性が求められる場合も多いです。
それに対し通訳は、飛んでくる言語を聞き取り、ニュアンスや感情、また専門用語も含め意味をわかりやすく且つ即座に伝えることが重要になってきます。他人同士のコミュニケーションを補助するのが重要な仕事ですので、自らにも表現力が必要です。
このように、通訳の仕事はコミュニケーション能力や瞬発力が必要となってきます。また、もちろん通訳としての幅を広げるために、自分自身の専門性や他国の文化を理解するための日々の学びも必要です。言語表現や聞き取りといったスキル的なことも重要ですが、通訳する相手同士の文化・社会的背景などもコツコツと勉強していくことが重要になってきますね。
グローバルの時代にあって、通訳の仕事は徐々に増えてきています。しかし一方で、翻訳機器の技術も急速に成長しています。
まだまだ専門的な用語を正確に翻訳したり、会話の細かいニュアンスまで汲み取ったりできるような翻訳機器は登場していませんが、日常会話や簡単なビジネス会話なら、翻訳機器が通訳者に取って代わるようになるのもそう遠くないかもしれません。
ただ、人間同士のコミュニケーションは生ものですから、通訳という職業が、すべて翻訳機器に取って代わられるかというと、疑問ではあります。通訳という仕事がなくなるということはないのではないでしょうか。やはり先ほども書いたとおり、自分の専門性を深めたり、表現力を磨いたりするなどして「自分だけの価値」を作り出していく必要があります。
通訳として最も使う機会のある言語といえば、英語を連想する方が多いのではないでしょうか。それ以外の他の言語を学ぶとしたらどの言語がいいのでしょうか?
2017年の世界で使用されている母語のトップは中国語。これは単純に人口の多さが関係しています。そして2位がスペイン語、3位が英語と続きます。
3位になってしまった英語ですが、ビジネスなどのシーンでこれからも話者が増えていくのはやはり圧倒的に英語でしょう。多くの国で第2公用語とされ、世界の共通言語となりつつあります。ビジネス的な観点から言えば、中国語の需要も多くなっているでしょう。
他の言語ももちろん需要はありますが、肝心なのは自分がその言語・文化に興味を持って取り組めるかどうかです。英語以外の言語を習得するならば、その言語のニーズがこれから増えていくかどうかを見極めつつ、その国や文化が好きかどうかを重要視するといいかもしれません。
次は、通訳という仕事に興味がある、なりたい!というみなさんへおすすめの書籍を紹介します。
- 著者
- 松下 佳世
- 出版日
- 2016-04-21
通訳と一口に言っても、活躍する場は多くあります。それぞれの世界で活躍する通訳たちはどんな風に働いているか気になりますよね。
この本では、10人の通訳士たちのこの仕事に就いたいきさつや現在の仕事についてストーリー仕立てで書かれています。様々なキャリアを経て通訳という仕事にたどり着いた体験談は、将来通訳になりたいという中高生にはもちろん、大人になってから通訳を目指す方にも勇気付けられる内容です。
- 著者
- 新崎 隆子
- 出版日
最愛の息子を亡くした過去を持ちながら、留学など海外経験もないなかで30代から英語教師を辞めて通訳に転身したという、波乱万丈な著者の体験談が描かれています。
同じ英語を使う職業とはいえ、異業種から不断の努力を経て得た通訳という仕事への姿勢は見習うことがたくさんありそうです。通訳という職業がどれだけ「甘くない」か、もっとがんばろうと思わせてくれる1冊。著者が教える生活の中の英語上達法や通訳学校の体験談も載っており、学習のヒントとしても参考になりそうですね。
- 著者
- 袖川 裕美
- 出版日
- 2016-08-16
機械のように言葉を転換していく、スピード感あふれる同時通訳の世界を、オバマ大統領の広島演説を通訳した著者がユーモラスに描いていきます。いかに事前準備が重要であるか、また勉強が足らなかったときにどうすればいいか?同時通訳者を「職人+アスリート」と例え、そのハードさを伝えてくれます。
同時通訳という仕事を紹介するだけでなく、それを通して理解できる国際情勢や要人のエピソードなど、読み物としても楽しめます。
- 著者
- 長井 鞠子
- 出版日
- 2014-02-14
通訳はただ発言を訳していくだけの仕事と思われがちですが、実際は双方のコミュニケーションの一助となる重要な仕事。技術や知識の習得も重要ですが、伝えるということはどういうことか、伝えるには何を重要視すればいいのかが語られているのが、この1冊です。
通訳になるための勉強で苦しくなったり、言葉にとらわれすぎたりしている時などに読んでみると、あらためて通訳という仕事の魅力、やりがいが理解できるかもしれません。通訳という仕事のみならず、誰かに何かを伝えるという場面でも役に立ちそうです。
いかがだったでしょうか?
一口に通訳と言っても何を専門にするか、どの言語を扱うかによって様々な道がありますね。華やかな職業に見えますが、裏ではしっかりと努力が必要になってきます。
自分がどのような通訳者になりたいのか、どれくらい稼いでいきたいのかキャリアをしっかり考えながら学んでいくことが重要になりそうですね。