「ジョジョ」シリーズの知られざる秘密14選!読むのがもっと面白くなる!

更新:2021.11.25

『ジョジョの奇妙な冒険』は時代と主人公、そして世界を変え、30年以上も続いている名作漫画です。長い積み重ねで形作られたそこには、読者ですら見落としがちな秘密がいくつも隠されています。その秘密を知れば一層楽しめること間違いなし!? 本作は、下のボタンのアプリから読むことができます!

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名前の由来はほぼ洋楽!音楽を知ってるとさらに面白い!

著者
荒木 飛呂彦
出版日

「ジョジョ」こと『ジョジョの奇妙な冒険』から始まる漫画シリーズは、ファンの方はご承知の通り、洋楽とは切っても切れない作品です。多くの登場人物やスタンド名が洋楽に由来する、というのは有名な話です。

たとえば第3部のエンヤ婆や、第4部のレッド・ホット・チリ・ペッパーなどは、洋楽を知らなくてもわかるくらいのビッグネームでしょう。しかし、一見して洋楽とは関係なさそうな名前の中にも、しっかりと洋楽ネタが入っていたりするのです。

ディオはアメリカのロックバンドDioから来ていますし、エリナ・ペンドルトンはThe Beatles「Eleanor Rigby」、犬のダニーですらスコットランドのバンドDanny Wilsonに由来しています。

当然いずれも名曲揃い。「ジョジョ」を入り口として洋楽に親しんでいけば、「ジョジョ」をさらに楽しめるようになるという寸法です。

なお、そのジョジョという愛称は初代ジョナサン・ジョースターから始まっています。打ち合わせのファミレスが元という俗説がありますが、実は愛称の方が先に決まっていました。The Beatles「Get Back」で繰り返し出てくる「Jo Jo」という歌詞が元ネタ。「Jo Jo」とはジョン・レノンのことだそうです。

キャラ造形はヨーロッパの芸術作品がもと?ジョジョ立ちは欧米のいいとこどり?

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1999-03-01

キャラやポージング、ファッション、「ジョジョ」のアートワークは他の漫画とは一線を画しているように思えます。それもそのはずで、そもそも「ジョジョ」はヨーロッパの美術作品に触発されて描かれているのです。

作品連載に先立って、原作者の荒木飛呂彦はヨーロッパ旅行へ行ったそうです。そこで見た数々の芸術に大層影響されたとか。もちろん、一般教養としての知識はあったそうですが、現地で見た生の感動は二次的情報と段違い。特にイタリアで触れた宗教画やフレスコ画に啓蒙され、ポージングもイタリア美術から取り入れるようになりました。

また画風以外にも表紙イラストや扉絵などには、古いハリウッド映画のポスターの影響を受けています。特に『スタートレック』を手がけたボブ・ピーク、「英雄コナン」シリーズなどの挿絵を描いたフランク・フラゼッタのような、SFファンタジー系イラストを意識してるようです。

それらはおのおのの分野の古典と一括りにされて、今ではあまり見られませんが、荒木はそのよい部分を取り入れて、独自の美的センスによる荒木ワールドを描いているのです。

荒木飛呂彦の一番好きな「ジョジョ」シリーズのキャラは?

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1994-05-01

「ジョジョ」は第8部『ジョジョリオン』の時点で、シリーズ通算100巻を越える長大な漫画です。その中には数多くの魅力的な人物が多数登場し、ファンそれぞれに思い入れのあるキャラクターがいることとも思います。では、原作者である荒木にとってのお気に入りのキャラとは誰なのでしょうか?

実を言うと1人ではありません。「おとなはウソつきではないのです」というわけでもありませんが、結構時期やインタビューによって答える内容が違っていたりするのです。

主人公で言えば東方仗助、敵キャラならば吉良吉影、というのはあまり変わらないようですが、グッチとコラボをした時には、「重ちー」こと矢安宮重清が1番お気に入りとも答えていました。

彼らはいずれも第4部の登場人物。舞台となった杜王町について詳しくは後述しますが、ロードムービー的な第3部との対比で奇妙な隣人がテーマとなっているだけあって、荒木にとって親しみのある物語なのでしょう。

岸辺露伴は、荒木飛呂彦の憧れであり、最も完成されたキャラクター?

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1993-11-01

岸辺露伴(きしべろはん)は第4部の主要登場人物の1人です。週刊漫画を短時間で仕上げる敏腕漫画家であり、旺盛な好奇心や知識欲、創作へのこだわりのあるキャラクター。「ジョジョ」屈指の濃いキャラでもあり、スピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』シリーズの狂言回しでもあります。

ファンの間では優秀な漫画家ということで、岸部露伴とは荒木飛呂彦本人を投影したキャラ、と半ば冗談交じりに言われることも。

もちろん、実際にはそんなことはありません。露伴は荒木を投影したキャラではなく、荒木の理想とする漫画家像なのです。制作速度にしろ、創作への情熱にしろ、かくありたいとの思いが込められた漫画家の完成形なのです。

ただ、実体験を作品に反映するという点では、露伴と荒木は共通していますね。


岸辺露伴については<岸辺露伴の人気に迫る、11のこと!自己中漫画家の名言や強さがかっこいい!>で紹介しています。

主人公の学ランに込められた想いとは?

著者
荒木 飛呂彦
出版日

 

スタンド登場以後の作品の顔である第3部主人公の空条承太郎、そして第4部主人公の東方仗助、第5部主人公のジョルノ。彼らに共通しているのは、学ランを着用した学生だということです。ジョルノに関しては物語序盤でギャングスターとなっているので忘れられがちですが。

こうして主人公が学ランを着ているのは荒木なりのこだわりです。それは初代学ランの承太郎のイメージが横山光輝『バビル2世』のバビル2世こと山野浩一から来ているため。バビル2世を正義の体現者と捉えて、作中で印象的な砂漠に佇む学ラン姿というビジュアルを、偉大な先達の胸を借りる形で「ジョジョ」の物語に反映させたわけです。

荒木にとって学ランとは、正義を象徴するアイテムともいえるのかもしれません。

 

ジョジョでウォーリーを探せ!?

著者
荒木 飛呂彦
出版日

 

「ジョジョ」にまつわるトリビアに、オインゴ・ボインゴ兄弟のトト神が実際に予言を的中させたというものがあります。若干不謹慎なため詳しくは書きませんが、それなりに辻褄の合う内容ではありました。ですが、当然これは荒木の意図しなかった、きわめてまれな偶然の産物です。

それとは逆に、荒木が意図的に仕込んだ小ネタがあります。それは世界的に有名な絵本『ウォーリーをさがせ!』の主人公ウォーリーを、劇中にこっそり描き入れたというものです。

ジョジョ第27巻(ジャンプ・コミックス版)に出てくる、DIOがウィルソン・フィリップス上院議員に車を運転させるシーン。たった1コマですが、確かにウォーリーらしき人物が歩道の通行人に紛れて描かれています。コミックスが手元にある方は実際に探してみてください。

 

ストーリーのエッセンスは、『エデンの東』、『シャーロックホームズ』?荒木飛呂彦が見つけた5つのポイントとは?

著者
荒木 飛呂彦
出版日

 

「ジョジョ」はジョースター家の血と宿命のお話です。ここまで大長編の宿命の物語は、漫画大国日本と言えどそう多くはありません。荒木はデビュー作『武装ポーカー』のころから、ストーリーテリングの秀逸さで知られる漫画家でした。

このような発想の原点はどこから来たのでしょうか?

荒木が言うには、旧約聖書をモチーフとしたアメリカの大河ドラマ『エデンの東』が原点。世代を重ねるという着想の大本はここにあります。

それに加えて、荒木は自身が好きな作品をいくつも分析し、エンターテインメントに必要な5つの要素を発見しました。

1つ、謎があること。2つ、主人公に感情移入出来ること。3つ、設定描写が優れていること。4つ、ファンタジー性があること。5つ、感動的であること。以上を満たした作品が優れた物語であることに気付き、荒木は積極的にこれらを盛り込んだストーリー構築をしているのだそうです。

 

「ジョジョ」第3部は、バブル経済の影響を受けている?

著者
荒木 飛呂彦
出版日

 

第1部、第2部ともに、話と設定にはチベット発祥の秘術「波紋」と吸血鬼(柱の男)が中心にありました。波紋は序盤の「ジョジョ」を支えていた屋台骨と言えます。ですが、第3部を境に波紋は姿を消して、変わって超能力をビジュアル化した「スタンド」が登場、物語はエジプト行きのロード・ムービーへと様変わりしました。

これには2つ理由があります。第3部連載当時は、まだ日本が右肩上がりだったバブル経済を引きずっていた時代でした。「ジョジョ」が連載されていた「週刊少年ジャンプ」の誌面もその影響で、格闘漫画は軒並み、1つの場所で次々現れる強い敵を倒していく(右肩上がり)トーナメント方式が主流だったのです。

ところが荒木はその流れを嫌って、敵の強さはまちまち、戦う場所で変化するすごろくのような形を取ったのです。その結果としてロード・ムービー調となったわけです。

スタンドも同様に、編集から波紋のマンネリを指摘され、古さから脱却するために思い付いた能力だと荒木はインタビューで語っています。

 

荒木飛呂彦も本当はイギーを殺したくなかった?

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1992-04-01

 

第3部で新たに登場した能力、スタンド。様々な形、異なる特殊能力、そして多様な使い手で読者を楽しませてくれました。そんななかでも、読者の度肝を抜いたのが初の動物のスタンド使いであるイギーです。

この奇妙なボストン・テリアは、人を見下す最悪の性格をしています。登場した当初はへちゃむくれで意地汚いところが目立ちましたが、ジョースター一行と旅をともにするうちに文字通り変化。後半には見た目は愛らしく、イケメンならぬイケワンとなった人気キャラなのです。

ところが劇中にて、見るも無惨な最期を遂げてしまいました。後年、テレビに出演した荒木が語ったところによると、本当は殺す予定ではなかったそうです。創作者にはままある、いわゆる「筆が滑った」状態、ストーリーが自ら動き出したことによって死なせてしまったとか。

ファンとしてはそれで殺されてはたまったものではありませんが、天才とは得てしてそういうものかも知れません。

 

「ジョジョ」4部は「人の心の弱さ」がテーマ?

著者
荒木 飛呂彦
出版日

 

第4部は主人公達の定住する架空の街が舞台となったせいか、これまでのシリーズに比べてややスケールダウンした感がありました。その分、登場人物の設定が等身大のリアルさを持ち、非常に親しみやすくもなっています。

そういった事情からか、敵キャラも一定の人間性(反面教師的な意味でも)を備えるようになり、悪く言えば小物に感じられる、もっと言うなら弱くなったように感じられたことでしょう。

しかし、荒木はそれをわざとやったといいます。第4部のテーマは「人の心の弱さ」。強い力を得て暴走する、遠大な野望を持つなど、人が恐怖を覚えるのはそれだけに限りません。心が弱いからこそ、普通は考えもしないおぞましい行為に手を染めるのです。第4部は、そんな心の弱い悪を描いた話だったのです。

 

杜王町のモデルは、宮城県?

著者
荒木 飛呂彦
出版日

 

「ジョジョ」シリーズで唯一、日本の地名として登場する街、杜王町。第4部、第8部の舞台のこの街はM県S市にあるとされています。杜王町は架空の街ですが、劇中には実在の地名、店舗がいくつか出てきてもいます。

杜王町は原作者荒木飛呂彦の出身地である、宮城県仙台市がモデル。地理的なイメージは同じく宮城県の東松島、あるいは仙台市泉区、宮城野区を念頭に置いていたそうです。

杜王町は荒木と縁のある実際の土地を下敷きにして、とてもリアリティ溢れる土地として描かれます。その物語に出てくる奇妙な隣人が、妙にリアルに感じられるのはこのためでもあるのかもしれません。

 

「UJ」への移籍で、さらに作品の幅が広がった?

著者
荒木 飛呂彦
出版日
2004-05-20

 

「ジョジョ」シリーズはその長い歴史の中で、ずっと「週刊少年ジャンプ」で連載が行われてきました。「ジョジョ=ジャンプ」というイメージの方も多いでしょう。

しかし、第7部「スティール・ボール・ラン(以下、SBR)」から青年誌「ウルトラジャンプ」へと移籍しました。正確には「SBR」5巻収録分からですが、これには理由があるのです。

第6部までと違って「SBR」は、クオリティのためにまとまった分量を掲載した後、一定の充電期間を置くという短期集中連載のような体裁で当初連載されていました。これは荒木にとって試行錯誤のチャレンジだったようですが、クオリティアップに加えて表現の幅を広げるために、ジャンプからウルトラジャンプへと活動の場を移したのです。

元々「ジョジョ」はホラーテイストでグロ要素も多かったのですが、少年誌特有の規制のために限界がありました。そこでより柔軟に、突っ込んだ内容を描ける青年誌に軸足を移したわけです。実際、移籍後のSBRでは同性愛にDV、レイプなどの倫理的に問題のある題材が盛り込まれました。

 

「ジョジョ」の漫画界でのポジションは『サザエさん』の対極で、『あしたのジョー』と近似?

 

この見出しだけですと、意味が分からないかもしれませんね。

これは2006年に荒木飛呂彦が講演会で語った内容なのですが、荒木は作品性がブレないように、「マンガ地図」とも言うべき相関図を独自に考案して自作と有名作品を当てはめてみているそうです。

縦軸を「内面、キャラクター重視←→世界観、ストーリー重視」、横軸を「具体的、リアル←→抽象的、ファンタジー」とした図です。たとえばキャラ重視のファンタジーに当たる右上象限には、『ナルト』や『ワンピース』が相当します。

 

参照サイト:文芸ジャンキー・パラダイス「荒木先生講演会ルポ」http://kajipon.sakura.ne.jp/art/jojo-araki.html(2018.5.4)

 

こうして各作品を当てはめると、『サザエさん』はややキャラ要素のあるファンタジー軸の極地に位置するのですが、ちょうど縦横軸を挟んで正比例の位置にあるのが『あしたのジョー』であり「ジョジョ」だと言うのです。

荒木の分類では「ジョジョ」が『あしたのジョー』と近いというのは面白いですね。

 

大きなテーマは「人間賛歌」?悪役にも共感できる作品!

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1988-04-01

 

「人間賛歌は「勇気」の賛歌ッ!!
人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!!」
(『ジョジョの奇妙な冒険』3巻より引用)

「ジョジョ」シリーズとは、突き詰めるとこのウィル・A・ツェペリの台詞に集約されると言っていいでしょう。物語には常に、大なり小なり、この思想が込められているのです。

主人公は当然、正義の側からそれを説きます。そして悪役も同じく、敵の側から、ドス黒い悪の理屈を反面教師として人間賛歌を説いているのです。

そのどちらも正しく人間の一側面であり、だからこそ憎むべき悪役にすら、読者は一定の共感を覚えてしまう作品となっているのです。「ジョジョ」が長きに渉って、普遍的に愛される理由がここにあります。


本作の作者・荒木飛呂彦について紹介した<荒木飛呂彦の天才ぶりがわかる6の事実!ジョジョ立ちにはモデルがあった!?>の記事もおすすめです。

いかがでしたか? 結構ディープなファンにも初耳の話がいくつかあったのではないでしょうか。「ジョジョ」の秘密を噛み締めつつ、あらためて物語を楽しんでみてください。

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