アニメ化や新国立美術館の展覧会などで話題の『ジョジョの奇妙な冒険』。その作者こそが、荒木飛呂彦です。彼はまったく老けない外見や、「ジョジョ立ち」の発明など、常に話題に事欠きません。 今回の記事では、そんな荒木飛呂彦のプロフィールや、逸話をご紹介。最後にはおすすめ作品の紹介もあるので、これを機に荒木ワールドにどっぷりと浸かってみてはいかがでしょうか。
1960年生まれの58歳で、誕生日は6月7日。本名は荒木利之で、宮城県の仙台市の出身です。血液型はB型。
結婚しており、2人の娘がいます。年齢を重ねても老けないことで有名で、ネット上でもしばしばネタになっています。それは、「ジョジョ」に登場する石仮面(装着すると吸血鬼になり、外見が老けない)をつけたのでは?と言われるほどです。
1980年に『武装ポーカー』でデビューし、1987年から『ジョジョの奇妙な冒険』の連載を開始。同シリーズは2015年時点で発行部数1億部を超え、アニメやゲームなど他メディアでも展開されるなど国民的な人気を博しています。
彼は幼い頃から絵を書くことや本を読むことを好み、1人の世界に浸る子供でした。そして『巨人の星』や『カムイ伝』を愛読していたのだそう。
彼には4つ下に双子の妹がおり、彼女たちが仲がよくて結託していたため、家庭内では疎外感を抱いていました。それが原因で、ますます1人の世界に没頭していったと語っています。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
代表作『ジョジョの奇妙な冒険』では、「人間讃歌」をテーマにしており、悪役も含めてすべての登場人物が生きることに前向きです。同作品は数々の名言を生み出しており、なんと名言集も発売されています。
同作では独特な絵柄と、超能力を具現化した「スタンド」という設定が特徴的で、コアなファンを獲得。「ジョジョ」以外にも『バオー来訪者』や『変人偏屈列伝』などの作品も人気です。漫画以外の活動も盛んで、漫画の書き方などの漫画術を紹介した『荒木飛呂彦の漫画術』などの本も出版しています。
朝10時頃に起きる、さらに締切を絶対に守るなど、律儀な性格が伺えるエピソードが多いのも特徴的です。
彼はファッションに造詣が深いことでも有名です。デビュー当時は、集英社の編集部でも有名になっており、「ハンサムでファッションセンスのいい人」と呼ばれていました。また西洋美術にも関心があり、ミケランジェロなどにも影響を受けています。
そういった素養は、漫画作品にも表れています。キャラクターをデザインするときは衣装にこだわり、配色やアクセサリーにも気を遣う、こだわりぶり。特に扉絵や単行本の表紙を描く際は、映画のポスターのように構図や色使いにこだわり、印象に残る作品になることを意識しているのです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 2011-05-27
そのセンスは漫画以外の仕事でも活かされ、石川さゆりのCDジャケットを手がけたり、2018年には国立新美術館で「荒木飛呂彦原画展」が開かれたりするなどしています。そこでは、荒木作品のモデルとなった西洋美術作品も紹介されました。
さらに、ルーブル美術館とのコラボレーションで『岸辺露伴 ルーブルへ行く』という作品も公開されました。なんと、これはルーヴル美術館側からのオファーだったのだとか。
彼は作品の表紙などだけでなく、漫画本編でも人物の登場シーンや重要な場面では、西洋美術作品の構図やパースを参考にしています。彼の作品を読む際は、そういった部分にも注意すると、よりいっそう楽しめるかもしれません。
荒木の代表作である『ジョジョの奇妙な冒険』は、特徴的な擬音やスタンドの発明など、画期的な作品として知られています。しかし、その内容は、実は王道の少年漫画なのです。
「ジョジョ」では主人公が仲間と協力して強敵を倒し、物語が進むほどに強くなっていきます。仲間の死やピンチを乗り越えて成長していく姿は、まさしく「友情・努力・勝利」というジャンプ漫画の鉄則を守っています。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1988-01-08
荒木は、同作品について「主人公たちがメカや神に頼らずにピンチを乗り越えていく姿を描きたい」と語っており、それがそのまま同作の「人間讃歌」というテーマに繋がっているのです。
また、登場人物の能力を具現化したスタンドという設定は、いわゆる「能力ものバトル」の元祖として、他の作品に大きな影響を与えました。
あの手塚治虫からも「必ず伸びてくる」と評価されるほどの、荒木ならではの優れた資質の賜物でしょう。
「ジョジョ」の秘密を集めた<「ジョジョ」シリーズの知られざる秘密14選!読むのがもっと面白くなる!>の記事もおすすめです。
『ジョジョの奇妙な冒険』を代表する悪役といえば、ディオ・ブランドーです。初代主人公のジョナサンの宿敵であり、3部でも登場しました。
荒木は、このディオにあこがれているのだといいます。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1992-08-01
荒木は登場人物をデザインする際、「本当に存在するように描きたい」ということを信条にしています。その究極の形が、ディオなのです。
世の中から綺麗事をなくしたら、ディオが言っていることが本当なのではないかと思っている、と荒木はコメントしています。悪役こそが実は本当のことを言っているのでは、と荒木は考えてしまうそう。そういった綺麗事なしのキャラクターであるディオに、荒木はあこがれているのです。
同作ではディオだけでなく、悪役が非常に魅力ある人物として描かれています。ネット上でも悪役のセリフが人気を集めるなど、この作品の重要な要素であることは間違いありません。
「ジョジョ」を読む際は、ぜひ彼らの活躍にも注目してみましょう。
ディオについて紹介した<ディオ・ブランドーに関する8の事実!第三部の承太郎との決戦がかっこいい!>の記事もおすすめです。気になる方はあわせてご覧ください。
『ジョジョの奇妙な冒険』の特徴といえば、「ジョジョ立ち」です。これは、登場人物が特徴的なポーズをするもので、芸能人からも真似されるなど同作の代名詞として知られています。
実はこのジョジョ立ちには、モデルがあったのです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 1988-06-01
その多くはファッション関係の雑誌で、「ヴェルサーチ」「ディオール」などの表紙を参考にしています。アメリカのファッションデザイナーであるトニー・ヴィラモンテスからも影響を受けており、もっとも有名なジョナサンのジョジョ立ちは、このトニーによるポーズからきているのです。
他には洋楽のジャケットからも影響を受けています。洋楽のバンド名などは同作のスタンド名にもなっていたりするので、「ジョジョ」をきっかけに洋楽に興味を持つ読者も多くいます。読む際は、ぜひジョジョ立ちの由来を調べてみても面白いはず。
荒木はホラー映画ファンを公言しており、『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』という本まで刊行しています。
彼はホラー作品における恐怖を「文明の発展に必要な要素」と位置づけ、自身の作品にも反映しているのです。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 2011-06-17
『ジョジョの奇妙な冒険』では、「悪役の正体が少しずつ明かされる」「気づいたら腕が切断されている」などの演出があり、そういった点にホラー映画の影響が垣間見えます。ホラー映画以外にも、先述したように西洋美術や映画からも影響を受けており、演出やコマ割りにその影響が感じられます。
彼の作品を読む前に、まずはホラー映画に親しんでみるのもよいかもしれません。
荒木のかつてのアシスタントは、なんと三部けいなのです。
三部といえば、『僕だけがいない街』で有名な漫画家。彼はかつて荒木のアシスタントをしており、師弟関係だったのでした。
- 著者
- 三部 けい
- 出版日
- 2013-01-25
三部は荒木のもとでチーフのような仕事をしており、他のアシスタントの仕事をチェックする立場にいました。荒木のアシスタントをするうちに、彼はさまざまな角度から対象を描くことができるようになったのだとか。
荒木は無理な構図で漫画を描くクセがあり、それに整合性をつけて描いていくうちに三部の画力も磨かれていったのです。
荒木は『僕だけがいない街』の2巻で「三部さん、JOJOの3部を手伝ってくれてありがとう。なつかしいね。」と推薦文を寄せるなど、三部との関係が今でも続いていることが伺えます。
三部けいのおすすめ作品を紹介した<三部けいオススメ漫画ランキングベスト5!『僕だけがいない街』の他にも……>の記事もぜひご覧ください。。
ここからは、あえて『ジョジョの奇妙な冒険』以外で、荒木のおすすめ作品をご紹介したいと思います。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 2000-06-01
『魔少年ビーティー』は、『ジョジョの奇妙な冒険』の連載前に発表された作品です。転校生のビーティーの活躍を描いた物語で、後のジョジョに繋がる頭脳戦が描かれています。
この作品の特徴は、ビーティーが悪役のような性格をしていること。彼は罪悪感を一切抱かず、いたずらをくり返すことを目的としています。しかし、ただの悪役ではなく、彼なりの正義感や高潔な精神を持っている点が、ビーティーの魅力です。
作中では、彼が心理学や科学のトリックを利用して窮地を脱していく姿が描かれ、終盤では頭脳戦もあります。ジョジョでは肉体のバトルの他、敵との激しい頭脳戦もくり広げられますが、その原点が「ビーティー」なのです。
本作の魅力は、この、主人公が正義の味方ではない、という点ではないでしょうか。正義や熱血が主流だった少年誌において、魔少年を主人公にしていること自体が、まず斬新でした。戦い方もパワーに頼ったものではなく頭脳戦である点が、当時の漫画では珍しかったのです。
荒木は連載をするつもりで発表しましたが、主人公が悪役のような特徴を持っていることが編集部からは受け入れられず、短期で終了。ジョジョが人気を獲得したことにより、本作も文庫化されるなど注目されることになりました。
ちなみに「ビーティー」に登場する語り手は公一(こういち)という平凡な少年なのですが、「ジョジョ」の4部に登場するの語り手も、康一(こういち)という平凡な少年です。ここにも、意外な共通点があるのですね。
続いてご紹介するのは、『バオー来訪者』です。
- 著者
- 荒木 飛呂彦
- 出版日
- 2000-06-01
本作は橋沢育朗という少年と、スミレという少女の活躍を描く作品です。
育郎は、体内に「バオー」という寄生虫がいます。これは、宿主が生命の危機に瀕するとアドレナリンを分泌して、体を強化する働きを持つのです。そして、育郎はその力で、敵と戦います。
彼とスミレは、「ドレス」という組織に狙われています。バオーは、その力を使いこなせれば核爆弾にも匹敵する力を手に入れられるといわれているほど、強力なもの。そんなおそろしい力を、育朗は持っているのです。
一方のスミレは予知能力を持ち、その素質をドレスに認められています。
2人はドレスの研究所で出会い、ともに逃亡。本作は彼らの戦いと、恋愛を描いた作品です。果たして彼らは、ドレスから逃げ切ることができるのでしょうか。
本作はOVA化されるなど、根強い人気を誇っています。単行本2巻完結と短い作品ですが、完成度が高いため、多くのファンからの評価を得ているのです。
荒木飛呂彦に意外な事実、いかがだったでしょうか。今回の記事をきっかけに、ぜひ荒木ワールドに浸ってみてください。