広告代理店や広告制作プロダクションではなやかに働いている印象があるコピーライターですが、その詳しい仕事内容については知らない方もおおいかもしれません。誰もが聞いたことがあるコピーは、一体どのようにして生まれてくるのか、コピーライターは実際にどんな仕事をしているのか。この記事ではコピーライターの年収や仕事内容、その職業を知るために参考になる本を4冊紹介していきます。
コピーライターの仕事は、人を引きつけるような広告や文字を考えることです。
そのため、業種としては広告業のひとつといえます。テレビ・雑誌・新聞・ラジオ・雑誌・看板・インターネットなどのような広告媒体に出される魅力的な広告を作ること、それがコピーライターの最も重要な仕事です。
ただし、コピーライターはCMの映像クリエイターではありませんし、写真家でもありません。商品の広告や企業の考え方などを、「文字や文章の中で」表現するプロフェッショナルです。そのため、広告などの文章全体について考えることが主な仕事となります。
実際の仕事内容についてもう少し説明してみましょう。
まずキャッチコピーなどの広告を作るために、クライアントからの依頼をしっかりと理解する必要があります。クライアントから広告したい商品と、その商品の魅力、広告の目的、予算などをふまえて、広告のコンセプトを明確にしていかなければなりません。
商品に関する膨大な資料を読み込み、ときにはクライアントに取材をしたり、店頭に出かけたり、自分で実際に使ってみたり、商品を的確に分析して、ターゲットを想定して訴求ポイントをしぼり込んだりしながら、その商品の魅力な何かを考えていきます。
広告として伝えるべきことが決まったら、次は覚えやすく、説得力のある表現を考えます。新鮮でオリジナリティに富み、その表現を聞いたら誰もがその商品を思い出すようなキャッチフレーズを考えていくのです。
1本のキャッチフレーズを生み出すまでに、数十本から多い時には数百本ものキャッチコピーを考えなければなりません。大多数のキャッチコピーはクライアントとの打ち合わせで採用されず、何度もキャッチコピーを考え直しながら、訴求力のあるキャッチコピーを選びます。
さらにコピーライターの仕事は、魅力のあるキャッチフレーズを考えるだけではありません。
商品のネーミングやパッケージングの文字を考えたり、テレビCMのナレーション、企業スローガンなどさまざまな言葉を考える必要があります。そのため、コピーライターの仕事は決してライティングだけではなく、それにともなう事務作業や打ち合わせなども発生することを念頭に置いておくといいかもしれません。
コピーライターとして働く人の多くは、広告代理店や広告制作プロダクションに所属しています。雇用形態は様々で、正社員・契約社員・派遣社員などのコピーライターがおり、所属する企業から勤務先で定められた給料が支払われます。
大手広告代理店では30代で年収が1000万円を超えることもありますが、中小企業の広告代理店では平均年収が400万円から500万円程度だそう。雇用形態によって年収は大きく異なり、正社員の方が給与は高い傾向にありますが、契約社員や派遣社員の場合には、200万円から300万円程度の給与となることもあります。
一方、フリーランスのコピーライターも。その場合、仕事の発注元は主に広告代理店や広告制作プロダクションで、案件ごとに交渉して報酬が決まります。そのため、独立したコピーライターの給与は安定していません。文字量やその人の能力、代理店やプロダクションとの関係性、納期などによっても報酬は上下します。
独立したコピーライターの報酬は大きな成功を納めない限り難しいですが、やはり有名なコピーライターとなれば、年収も非常に高いものとなります。たとえば、コスモ石油の「こころも満タンに」、大鵬薬品工業の「愛情一本チオビタドリンク」などのキャッチコピーを考えた、中畑貴志氏ともなれば、年収は1000万円を超えるでしょう。ただし、有名なコピーライターになるためには、運と才能、そして努力が必要なことも忘れてはなりませんね。
コピーライターになりたいなら、まずは広告会社や制作会社に入社することが一番の近道でしょう。実際、多くの方がそのようにしてコピーライターになっています。広告会社や製作会社に入社すれば、実際にコピーライターとして働く人の姿を見ることができ、コネクションもできるので、ワークフローやスタッフィングの計画、クライアントとのパートナーシップの構築など、さまざまなことを学べます。
しかし広告会社や製作会社に入社したからといっても、必ずしもコピーライターとして働けるわけではありません。まずは広告会社や製作会社に入社して、コピーライターとして働けるチャンスをうかがうのがよいかもしれませんね。
そんな人気の職業・コピーライターですが、特に必要な資格はありませんが、とっておくと便利な資格ものもあるので目的を定めて活用するとよいでしょう。雑誌「宣伝会議」は日本で初めてのコピーライター養成機関を設立しています。この養成講座を卒業した人の多くが第一線のコピーライターとして活躍しており、有名なコピーライターである糸井重里氏もこの養成機関の出身です。
さらに、Webライター技能士検定や実用ライティング試験なども、自分のコピーライターとしての能力を知るためのよい機会となります。少しでも実績を積んだり、資格をとったりすることで、コピーライターとして活躍できるようになる可能性が高まります。
自称するだけで、誰でもなることがでるコピーライターという仕事ですが、経験も実績もない人物に仕事を依頼する企業は、もちろんほとんどありません。そのため、広告会社や製作会社に入社せずにコピーライターとして活躍するためには、まずは自分で小さな仕事をとってきて実績を積む必要があります。
そんなときに便利なのが、クラウドそーシングサイトを使って仕事を探すことです。キャッチコピーのコンペティションなども行われており、まずは応募してみるのもいいかもしれません。ただし、それでもかなり競争率が高く、1件の案件に1000件のキャッチコピーの応募があるなんてこともざらにあります。
どの道を選ぶかは自由ですが、仕事をもらえるのは実績ありきなのだということを理解した上で選ぶ姿勢が必要そうです。
- 著者
- ジョン・ケープルズ
- 出版日
- 2008-09-20
コピーライターのバイブルともいえる本著。70年以上読み継がれてきた作品で、コピーライターとして働くなら絶対に読んでおきたいのが1冊です。
著者であるジョン・ケープルズは、アメリカの広告業界でコピーライターとして活躍していた有名な人物。そんな彼がそのノウハウをこれでもかと紹介しています。
学ぶべきところの多い内容で、それが写真と文章をうまく使って分かりやすくまとめられているので、400ページ以上にわたる分厚い1冊ですが、苦労なく読めることでしょう。
- 著者
- 佐藤 達郎
- 出版日
- 2015-06-08
これからの広告のあり方について非常に詳しくまとめられた1冊です。広告業界のあり方が変われば、もちろんコピーライターの働き方もまったく変わってきます。キャッチコピーや広告のあり方について、国内外の実際のケースから説明されています。
変化が多い時代にポイントとなるのが、人と人とを繋げることが広告の目的だと意識すること。これからの時代には、インターネットを通じていかに広告の先にいる人までのパイプをつくることができるかが腕の見せどころとなるでしょう。
本書は、そんな未来のコピーライター像を教えてくれる1冊です。
- 著者
- 出版日
- 2011-11-28
名前の通り、何度も読み返したくなる広告コピーが紹介されています。100を超える具体例が紹介されており、それらのコピーが物語型、メッセージ型などの表現技法に分けて紹介されているので、実際の現場でアイデアが煮詰まってしまったときに参考書としても活躍してくれる1冊です。
また、そのひとつひとつつのコピーに対しての解説も分かりやすく、読み物としても非常に面白く読みこなすことができるのも魅力です。
普段何気なく見ているキャッチコピーでも、そのキャッチコピーがどうやって作られてきたのかを知ればその見方もかわります。
本書はそれができるまでのプロセスを詳しく紹介してくれており、そこにどんな願いが込められているのかがよく分かります。
- 著者
- 岩崎 俊一
- 出版日
- 2015-07-30
心に響く珠玉のコピー、実際にコピーライターとして活躍する作者のエッセイがまとめられた1冊です。
本書の特徴は、コピーライターが日常をどのように見ているのか、そしてその視点をどのように仕事に活かしているのかが分かりやすいという点。
しかし堅苦しい内容ではなく、人生や生き方についても考えさせてくれる、誰もが楽しめる内容となっています。本書の途中にある短いコラムも読みごたえがあり、最初から最後まで魅力的な1冊です。
コピーライターとして活躍するためには、自分の能力を磨いていく必要があります。そのためには、会社に所属するだけではなく、たくさんの本を読んだり、勉強会に参加したりといった下積みが必要です。人を引きつける魅力的なキャッチコピーは、その場で偶然いきなり生まれるものではありません。考え抜かれて厳選されたものだけが、時代を超えて人々の心の中で生き続けます。紹介した本を読めば、コピーライターとして働くことの意味が少しだけわかるかもしれません。