ポスターや看板、書籍の表紙など、日常のさまざまに活用されているグラフィックデザイン。文字や画像、映像までも駆使し、私たちにあらゆる情報を伝えてくれるグラフィックデザイナーの仕事とは?知っているようで知らないその実際を、わかりやすくまとめてみました!最後におすすめの本もご紹介しますので、さらに詳しく知りたい方はそちらからもどうぞ!
そもそも「グラフィックデザイン」とは、文字や画像、配色など、デザインを通して情報を伝える表現手段のひとつ。 ポスターや広告デザイン、書籍の表紙デザインや、店舗の看板など、日常のさまざまなところにグラフィックデザインが活用されています。
そういったグラフィックデザインの企画、制作を行うのがグラフィックデザイナーの仕事です。 コンセプトやターゲット層など、クライアントの意図をしっかりとくみ取り、ときにはイラストレーターやコピーライターといったクリエイターと協同しながら、デザインを制作します。
その働き方や活躍の場は多岐にわたり、広告代理店やデザイン事務所、印刷会社のデザイン部門といった企業に所属して働く人もいれば、自身でデザイン事務所を立ち上げたり、あるいはフリーランスとして働く人も。
年収も雇用形態や会社規模によって様々で、大手広告代理店であれば年収1000万円を超えることもありますし、中小代理店であれば、一般職と同程度の300~430万円程度が平均値とされています。
一方フリーランスで働く場合や、独立して事務所を立ち上げた場合は、どれだけ依頼をもらえるかによって年収は大きく変化します。 クライアントと縁をつなぐためには、グラフィックデザインの技術以外にも、営業活動や人脈作りといったスキルが必要となりますし、ひとつひとつの仕事で確実に信頼を得ていかなくてはフリーでの仕事は成り立ちません。
また、独立したデザイナーのなかには、デザインワーク以外にもプランニングやディレクションについて学び、デザインのみでなく企画そのものをトータルで請け負う人も少なくありません。 そうして企画費などを得ていくことでより収入のアップも見込めますし、請け負う仕事の幅もぐんと広がります。
グラフィックデザイナーになるためには、特別な資格は必要なく、グラフィックデザインに携わる人ならだれでもこの職業を名乗ることができます。
とはいえ「デザイナー」ですから、レイアウトや色彩をはじめ、フォントなどの基本的なデザイン知識は身に着けておきたいですし、全体の構図・配置や配色をまとめあげる美的センスは必要であるといえます。
この仕事に活かせる資格としてはlllustraterやPhotoshopソフトの理解、色彩検定(R)2・3級、DTPエキスパートなど。いずれの資格も、実際にグラフィックデザイナーとして現場で働くなかで、さらなるスキルアップをはかるために取得する人も多く、デザインの経験を積みながら学ぶことがもっとも効果的な勉強方法といえるでしょう。
時代の変化に伴い、紙媒体の広告やデザインの仕事は縮小傾向にあります。
また、安価なソフトウェアの普及により、アマチュアであってもそれなりのデザインを作成できる時代であるため、デザイン事務所への依頼自体が減少しているというのが現状で、業界自体はゆるやかながらも衰退傾向にあります。
一方でニーズが高まっているのが、web上でのデザインです。今後、長くグラフィックデザイナーとして活躍したいと思うのであれば、インターネットやスマートフォンなどの電子媒体、webの知識は必須といえます。
そしてもちろん、日々研鑽し、デザイン技術を常に磨いて、リピート指名してもらえるような「個」の力量を向上させることが必要です。
「それなり」のものを作れるアマチュアと一線を画すような、知識や技術を活かしたデザインを作れるデザイナーは、どんな時代にあっても求められる存在といえます。
有名なグラフィックデザイナーと、その代表作品や魅力をご紹介します。
・小杉幸一
大手広告代理店博報堂アートディレクターである彼の代表作は、パルコ公式キャラクター「パルコアラ」。
ポップな色彩とタッチ、独特のゆるい雰囲気は、LINEスタンプやCMでも人気です。 その他、スズキ「HUSTLER」のデザインでも知られ、インパクトのあるデザインが彼の持ち味といえます。
・佐藤卓
「ロッテ キシリトールガム」の商品デザインから、金沢21世紀美術館のロゴマーク、NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」のアートディレクションまで幅広く手掛ける彼の作品のなかで、もっとも私たちを驚かせたデザインといえば「明治 おいしい牛乳」のパッケージでしょう。
そのシンプルさは、彼自身「新しさはひとつもない」と語るほど。 しかし、その「普通」に彼の狙いがあり、無駄を一切省き、商品を際立たせたデザインは、実は計算され尽くしたもの。
なんと「おいしい牛乳」は、売り場に並んだときの子どもや高齢者の目線まで計算し、フォントを0.1ミリの差まで調整されているというのだから驚きです。
・原研哉
長野オリンピックの開会・閉会式プログラムや、EXPO2005愛知公式ポスターなど、ワールドワイドなデザインを手掛ける彼の作品のなかで、もっとも私たちに身近なアイテムとして「無印良品」があげられます。
もともとすべてのものはデザインされている、という考えのもと、簡素かつ精錬された飾りたてすぎないデザインは、ある種日本的でもあり、海外でも高く評価されています。
- 著者
- 出版日
- 2016-11-25
アートディレクター・大里浩二監修が手がけた本著。「Basic」「Etude」「Practice」の3つの構成による本著は、「基礎講座」の名にふさわしい、まさに手引書のような一冊といえます。
「デザイン」の考え方やセオリーといった、おろそかにしがちな基礎(Basic)をきちんとおさえた上で演習(Etude)へと進み、豊富な実例に基づいた実践(Practice)まで網羅。Practiceにおいては、本来であればデザイン専門学校やデザイン事務所でなければ学ぶことのできないような「プロの現場のノウハウ」までも学ぶことができます。
- 著者
- フレア
- 出版日
- 2013-03-04
グラフィックデザインという仕事について、そして実際に生業とするにあたり身につけておきたいスキル、さらには仕事の楽しさについて、3章に分けてまとめられている本著。
第1章は「デザイナーの仕事」として、実際に活躍しているデザイナー5名による、これまでの道のりや自身の仕事についてのお話が中心。
第2章では「基本的なワークフロー」として、デザイナーという仕事の基本的な流れ、雑誌や書籍の製作工程など、依頼から納品までの一連の工程が解説されており、デザイナーという仕事を具体的にイメージできる章となっています。
第3章では「デザインの仕事の実際」として、デザインに必要な機材や、データの扱い方など具体的で実践的な内容についてまとめており、フリーランスになるための心得や、「そもそもデザイナーになるには」という話まで、デザイナーという職業がわかりやすく解説されています。
デザイナーを目指す人や、デザイナーになりたての人におすすめの一冊です。
- 著者
- 平本 久美子
- 出版日
- 2016-12-17
著者は、webデザイナー・グラフィックデザイナーの平本久美子。
原稿編、レイアウト編、文字・フォント編、カラー編、写真・イラスト編の5編から成る本著は、「ココを変えたらこう変わる」というビフォーアフター付きでわかりやすく解説されており、良いデザイン、悪いデザインの差が一目瞭然で分かる内容です。
本来は、「デザイナーではないのにデザインをしなくてはならない素人デザイナー」にあてて書かれた一冊ですが、知っているだけで作品の仕上がりが変わるプロの知識とノウハウは、デザインを生業とする人にも活かせる内容となっています。