21世紀はこころの時代とも言われています。多様な価値観が錯綜する時代の中で、こころ(精神)のあり方は、私達の生活において非常に重要な意味を持つ問題の一つです。そんな「こころ」の問題を解決するのを仕事にしているのが、精神保健福祉士です。この記事では、この職業になるために何をすればよいのかに加えて、仕事内容や年収、試験などについて紹介していきます。
精神保健福祉士とは、精神的な障害のある人に対して日常生活がスムーズに営めるように支援したり、社会参加に向けた支援活動をおこなう人のことを言います。まだ広く社会に認知されている資格とは言えませんが、心の問題に焦点があたる現代社会を鑑みると、今後注目される仕事になるでしょう。
精神保健福祉士は、精神的な障害がある人を支援することを目的として、1997年に「精神保健福祉士法」が施行されたことに伴って誕生した国家資格です。2005年からは「障害者自立支援法」が制定されたこともあって、医療・保健・福祉の分野を中心として、精神保健福祉士の活躍の場はますます広がりを見せています。
「精神保健福祉士法」において、精神保健福祉士は精神保健福祉士法で定義がされているように、社会福祉学を学問的な基盤として、精神に障害を抱える人の、生活上の問題や社会的な問題を解決するために援助・社会参加を促すといった支援活動を通じ、その人らしい生活が送れるようにすることを目標とする専門職であると言えます。
医師や臨床心理士などと連携して業務をおこなうこともあれば、患者さんに代わって行政機関で各種手続きを行ったり、患者さんのために給付金制度の案内などを行ったりする、というのが具体的な仕事内容です。
精神保健福祉士に似た国家資格として社会福祉士があります。精神保健福祉士と社会福祉士は同じソーシャルワーカーに分類される仕事です。しかし、社会福祉士は福祉全分野に関する仕事で、高齢者や障害者、子ども、あるいは低所得者など、幅広い対象者を支援する仕事です。
一方で、精神保健福祉士は、社会福祉士とは異なり、精神障害者に特化して支援をおこなう仕事という違いがあります。
また、精神保健福祉士は看護師とも異なる資格です。看護師は医療行為を行ったり補助したりすることができますが、精神保健福祉士は医療行為を行ったり補助したりすることはできないという違いがあります。
精神保健福祉士になるためには、「精神保健福祉士国家試験」に合格しなければなりません。その試験を受けるためには、下記の受験資格を満たしている必要があります。
精神保健福祉士国家試験は年に1回行われる国家試験です。試験の形式は筆記試験で、17科目の試験が課されます。具体的な17科目は以下の通りで、次の1から11までの科目は社会福祉士との共通科目となっています。
平成30年2月3日、および4日に行われた第20回精神保健福祉士国家試験の合格率は62.9%でした。例年の合格率もおよそ60%前後で安定しています。
精神保健福祉士制度が施行されてから「入院医療中心から地域生活中心へ」という施策の転換や障害者自立支援法が施行されたことによって、今後も精神保健福祉士に対する期待は高まってくるでしょう。それに伴って、精神保健福祉士を取り巻く環境は大きく変化しています。
現在、精神保険福祉士は以下の様々な領域において活躍しています。
今後働く場所が広くなるにつれ、精神保健福祉士には精神障害者の人権を最大限尊重するとともに、利用者の立場に立って、さらに知識および技術を身に付けることが求められていくでしょう。上述した機関および施設において、精神保健福祉士には具体的に次のような役割が期待されています。なるために常に本質を忘れないようにすることも大切でしょう。
精神保健福祉士は国家資格ではあるものの、まだまだその認知度は低いのが現状です。しかし、今後、日本が高齢化社会を迎えるにあたって、精神保健福祉士に対する需要は高まってくると考えられます。
- 著者
- 出版日
本書は、まだまだま知られていない精神保健福祉士の仕事を詳しく、わかりやすく説明されている本です。精神保健福祉士の資格のとり方についても詳しく説明されているので、今後精神保健福祉士を目指したいという方には非常におすすめです。
精神保健福祉士の試験問題を作成し精神保健福祉士に資格を与える機関である、日本精神保険福祉協会によって監修されていることが本書の特徴。そのため、精神保健福祉士に関しては最も信頼できる情報を提供している本です。精神保健福祉士になるための資格のとり方から始まり、精神保健福祉士の資格取得後は、どのようなところに就職して、どのような仕事をするのかについて詳しく説明されています。
精神保健福祉士を目指すならぜひ一度は読んでおきたい本です。
精神保健福祉士は、精神医学に関する専門家としてその知識を活かして仕事をすることになります。そのため、精神医学に関する知識は必須です。
本書は精神保健福祉士になりたい方に特にオススメの本です。1冊目に紹介した本とは違って学術的な本なので、精神医学を体系的に学ぶことができます。精神保健福祉士になるために必要となる専門的知識について説明している内容ですが、精神的に参っている方やその精神疾患を抱えているご家族をお持ちの方などでも十分理解できるように配慮されています。
- 著者
- 細川 大雅
- 出版日
- 2017-04-01
さらに本書は、大学・看護学校・医療専門学校などでも教科書として採用されている本です。
精神医学に関する専門的な内容であっても、重要な用語は太線で分かりやすく示してあるなど、読者の読みやすさにも配慮されています。また、精神医学からみた精神疾患に関する具体的な症状や薬に関することも具体的な説明とともに詳しく説明されているので、実際に、精神保健福祉士として働き出した後、どのように対処したらよいか思い出したいときにも直ぐに確認できるようになっています。
精神保健福祉士の概要について触れられていることはもちろん、実際に現役で働く精神保健福祉士の声も豊富に集録されていることが特徴の本です。
実際に精神保健福祉士として働いている方の現場の生の声が、今後精神保健福祉士として活躍するために役立つたくさんのヒントを提供してくれます。
- 著者
- 出版日
- 2014-06-02
本書の最も重要な特徴は、今後の精神保健福祉士が目指すべき方向性を示していることです。本書の後半は、前半部分で説明された精神保健福祉士の現状を踏まえた上で、今後精神保健福祉士として働いていく方に問いかけるような語調で書かれています。
そのため、これから精神保健福祉士を目指す人がどんなことを勉強したらよいのか、そして、自分の長所をどうやって活かして行けばよいかについて非常に詳しく説明されています。
精神保健福祉士はまだまだ認知度が低い国家資格です。しかし、今後確実に精神保健福祉士に対する需要は高まってくるでしょう。そのため、精神保健福祉士が活躍できる機関や組織は今後も広がってくると考えられます。その分、精神保健福祉士に求められる仕事は重要です。上で紹介した3冊の本を一読されれば、精神保健福祉士に関する正しい知識を得られるとおもいます。将来精神保険福祉士になりたいと思っている方はぜひご一読ください。