作業療法士という仕事をご存知でしょうか?知っているけれど、具体的にどんな仕事をやっているかわからない方もいらっしゃるのでは。そもそも「作業」とはどのようなことなのでしょう。また、理学療法士とは何が違うのか、作業療法士として働くにはどうしたらいいか?など疑問を解決するとともに、おすすめの本も紹介していきます。
作業療法士は、病気や事故で日常の生活が困難になった人たちの「作業」を快適にし、一人一人にあった生活を送ってもらうように手助けする仕事です。
具体的に作業とは、着替えやトイレなど日常的な生活行為から、家事や仕事、余暇活動や地域活動を指します。それらを不自由なく行えるよう社会復帰を手助けするのが作業療法士の仕事です。
そのために作業を通して個人が望む日常を送れるように、リハビリのメニューを考えます。運動の手助けをしたり、レクリエーションや手工芸、楽器の演奏なども症状によって取り入れるなど、様々な工夫をしています。
一方、理学療法士は「座る」「立つ」「歩く」などの基本動作の回復や維持を目的に運動メニューや治療内容を考えるという仕事です。
障害を持った方や寝たきりの方、怪我や病気で基本動作が困難になった方に対してメニューの作成や治療を行います。どちらかというと、作業療法士の方が社会への参加を目的としたリハビリの内容となりますね。
さて、その作業療法士の給与はどれくらいなのでしょうか?
もちろん、職場によって大きく変わってくると思いますが、医療機関と福祉施設であれば、前者の方が比較的待遇はいいようです。医療に従事する職種ですので、初任給は高めのようですがその後あまり昇給が見込めないことが多いようです。したがって、初任給が低いとなかなか給料が上がらず苦労することもあるよう。
平均では、おおよそ月給23~27万、年収ですと350~450万ほど。また、あまり募集が多いわけではありませんが、パート・アルバイト、派遣などの場合、時給は2,000円ほどが相場のようです。
作業療法士は国家資格が必要な職業です。
作業療法士養成課程のある大学、または短大や専門学校(4年制、もしくは3年制)で学び、国家試験に合格しないといけません。
試験は例年2月の下旬に行われ、合格発表は3月の下旬となります。ほとんどの方が就職先が決定してからの合格発表になりますので、しっかりと勉強しましょう。会社によっては、不合格の場合に入社を取り消すこともあるようです。
国家試験の合格率はおおよそ80%程度と高いですが、学校によっては実力不足の生徒に受験資格を与えないこともあり、合格の可能性が高い人のみが受験しています。その中で80%程度、ということなので、難関な資格であるということは間違いないでしょう。
養成課程のある学校は、専門学校含め全国に約190校(2017年時点)ありますが、2017年度の国家試験合格者数ランキングでは栃木県の国際医療福祉大学がトップで87名、合格率82.9%、続いて大阪府の大阪医療福祉専門学校が62名、合格率88.6%、千葉県の帝京平成大学が61名で合格率77.2%と続きます。
あくまで合格者数のランキングなので、合格率の高さやそもそもの志願者数、地元からの通いやすさなど、さまざまな側面を考えて学校を決めるのがよいでしょう。
もちろん、場所やカリキュラム、金額なども大学によっては異なってきますので、自分はどういった経験を積み、どのような作業療法士になりたいか、就職先にどのような選択肢があるかなどを十分に調べ、学生生活の内容も考えて進路を決めていきたいですね。
では資格試験はどういったものでしょうか?
筆記試験のみとなりますが、問題が一般問題(160問)と実地問題(40問)に分かれています。午前中に100問、午後に100問の計200問を解くことになります。
一般問題は各1点、実地問題は3点で総得点は280点。合格点は168点以上ですが、その中の43点以上は実地問題で取らなければいけません。
一般問題は解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要および作業療法。実地問題は運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要および作業療法となっています。
どの学校でも国家試験対策として、過去問の傾向と対策を教えているようです。
しかしどの試験でも言えることですが、基礎知識をしっかり頭に入れて理解し、どんな問題にも対応できるようにしておくことが不可欠です。 最初は慣れないかもしれませんが、専門の学校に入ってコツコツと勉強していきましょう。
では、作業療法士についてもっと興味が出てきた方に、オススメの書籍を紹介します。
- 著者
- 出版日
- 2013-09-10
作業療法士になりたい!どんな仕事だろう?そんな興味を持ち始めたらこの本を手に取ってみてください。
作業療法士が全国にどれだけいて、どうやったら資格を取れるのか、合格者の男女比などの基本データから、現在も作業療法士として活躍する先輩のインタビューなど幅広く掲載されています。
どういった場所で活躍できるのか、また目指す上で将来どのような働き方をしていきたいのか、実例とともに紹介されており、全体像をつかむのに最適な本といえます。
中身も読みやすく、興味を持った中高生はもちろん、これから作業療法士を目指してみたいという社会人の方にも役立つ1冊です。
- 著者
- 葉山 靖明
- 出版日
- 2012-06-01
自らが脳卒中の時にリハビリで作業療法士にお世話になった感動から、なんと自分でデイサービスを経営し始めた著者の実体験が描かれた内容です。
作業療法士本人からの目線でなく、リハビリを受けた人、そして彼らを受け入れる施設を運営する立場からの目線で語られる作業療法についての本は、なかなか無いのではないでしょうか。
運営している施設での門松づくりやパソコンでの作業、漬物リハビリなど、多様な「作業」がわかりやすくストーリーで語られており、著者の作業療法への愛が伝わる1冊です。
実際の施設では作業療法がどのように活かされているのか覗いてみたい、そんな人は手にとってみてください。
- 著者
- 勝屋 なつみ
- 出版日
- 2012-03-01
日本の「作業療法の母」と呼ばれる鎌倉矩子の物語。
彼女の半生を振り返りつつ、鎌倉矩子を知る人々へのインタビューとともに作業療法の面白さが語られていきます。作業療法士という職業が聞き慣れなかった頃からの活動、先人たちの言葉、経験がたっぷり詰まった内容です。
作業療法士という仕事で得られること、また作業療法の研究者として得られること、どちらも精力的に活動されている彼女の姿にとても心揺さぶられます。
臨床はもちろん、研究についても多く語られており、作業療法をもっと深く調べていきたいという人はこの本で知識を深めていくきっかけにするといいかもしれません。
作業を通じて、患者さんの社会復帰を手助けする作業療法士は、とてもやりがいある仕事です。国家資格でもありますし、学校でしっかりと学ばなければなりませんが、患者さんの笑顔を見るためにこの仕事を目指してみては?紹介した本を参考にしてみてください!