臨床心理士になるには?5分で分かる、仕事内容や年収、資格・試験について

更新:2021.11.13

昨今、職場でも家庭でも心理的に問題を抱える人々は増え続けています。学校や職場にもカウンセラーさんがいた、という人も多いのではないでしょうか?心の問題のスペシャリストである臨床心理士になるにはどのような道があるのでしょうか。オススメの本と共にご紹介していきます。

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臨床心理士の仕事内容、平均年収は?

臨床心理士とは、心に問題を抱えている人に寄りそう心理の専門職です。

心理に関する資格は数種類ありますが、臨床心理士はその分野の民間資格の中でも信頼の厚い資格といえるでしょう。実際、文部科学省が実施する公立の小中学校にスクールカウンセラーとして多数の人数が派遣されています。

心の問題を抱えた人たちに対して、臨床心理的技法を用いてその解決を手助けしていく、というのが臨床心理士の仕事です。具体的には、相手の話をきちんと理解、共感して耳を傾け、それによって相手が考えを整理できるよう促します。決して、あれをしなさい、こうしなさいということはしません。

現場によって求められることが異なり、業務範囲が広いこの仕事ですが、クライアントの状況を踏まえた上で行う心理検査で問題点を洗い出し、援助の方法を検討する「臨床心理査定」、その結果を元にカウンセリングや心理療法を行う「心理カウンセリング」、家庭や職場、学校など周囲に働きかける「臨床心理学的地域援助」、そしてこういった心理援助の手法を確立・発展させるための「調査・研究活動」が主な業務となってきます。

年収は200万~1000万と大きく幅が開いています。これは、フルタイムで働いている人や非常勤で働いている人などがいるためです。

一般的な臨床心理士の平均年収は300~500万ほどといわれています。活躍の場所は病院、学校、児童相談所、企業など多岐に渡るため、働く場所によってもそれぞれ給与体系が変わってきます。

 

臨床心理士資格の試験内容と期間、難易度などについて

では、臨床心理士資格を取るための試験はどのようなものでしょうか?

試験は一次試験と二次試験に分かれます。一次試験は10月に、二次試験は11月に東京で行われます。一次も二次も地方会場などはないので、東京で受験することになるでしょう。合格発表は12月下旬です。

一次試験の午前中は選択方式、午後は論文形式の内容となります。午前の試験では、精神疾患、臨床心理学、心理査定法、心理面接法、心理療法、地域援助法、研究法など多くの専門知識が問われます。

午後の論文試験は、出題されるテーマに対し1001字以上1200字以内で論述する内容。ただし、この午後の試験は一次試験の合否には関係なく、一次を突破し、二次を終えた最終的な合否の判断の材料として使うことになります。あまりない試験方式ですね。

 

二次試験は2名の面接委員による口述試験で、一人一人時間指定をされての試験となります。

単に専門知識や技術だけでなく、臨床心理士にふさわしい姿勢や人間関係能力の実際を判断されるようです。心理という人を相手にする職業なだけに、面接官との人と人とのやりとりを重視されます。

合格率は例年60%台前半で、2017年度は65.5%でした。なかなか高いと思うかもしれませんが、専門的な勉強を経た人たちが大半を占めることを考えると、そう簡単な資格ではないことがわかりますね。

 

 

 

 

学べる大学・大学院は?社会人からでも大丈夫?

臨床心理士の受験資格は、以下のどれかを満たしてないといけません。

 

  • 指定大学院(1種・2種)を修了する(2種の場合は1年以上の実務経験要)
     
  • 臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了する
     
  • 諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴および必要な心理臨床経験2年以上を有する
     
  • 医師免許取得者で、必要な心理臨床敬家2年以上を有する
     

 

大学院へ行くためには大学を卒業しなければならないのでほぼ必須となるでしょう。大学の学部学科は特に問われませんが、心理学の単位を取得しているなどがなければ受験できないところもあるようです。

大学院の入試試験では心理学の基礎知識が問われるようですので、臨床心理士を目指すのであれば心理学系の大学を志望するほうがいいですね。大学とは別で予備校に通って受験対策をする人もいます。1種の指定大学院は約160校、2種は約10校、専門職大学院は約5校ありますので(2017年時点)、よく吟味して決めていきましょう。

さて、社会人になってから臨床心理士を目指したい!という方もいらっしゃいますよね。

しかし、受験資格の要件にあるように、大学を経て指定の大学院を修了しなければなりません。したがって、高卒の方は大学4年間+大学院2年間で資格取得に最低でも6年はかかってくるでしょう。

大卒の方は大学院に行き最速でも2年間で受験資格を得られますが、大変な努力が必要になってきます。これらの大学院には、通信課程もありますので働きながら目指したい!という方は通信大学を検討してみるのもいいかもしれません。

11人の先輩の働き方を知る『先輩に聞いてみよう! 臨床心理士の仕事図鑑』

著者
出版日
2017-05-27

臨床心理士と一口に言っても、働く先は様々です。自分が将来どんな場所で、どのように働いていきたいのか、臨床心理士の学習をすると共に考えていかなければならないことのひとつですよね。

この本はスクールカウンセラーや企業内のカウンセラーとして働く人、また自身でアロマテラピーやハーブを使用しながらカウンセリングルームを運営する人、後輩を育てたり研究者として大学や研究機関で働く人など、様々な進路に進んだ先輩たちの声を掲載しています。

それぞれの場所でどのような仕事をしているか、オンとオフはどのように分けているのかなど、また、どのようなクライアントが多いのか、増えているのか。先輩たちのインタビューを通して、臨床心理に関わる現代社会の問題点も見えてきます。

挿絵も多く、またインタビューだけでなく業界マップも掲載されているので、臨床心理士という仕事に興味を持つ方はもちろん、就職先を考えている方、またカウンセリングを受けてみたい方など、多くの人に手にとってもらいたい1冊です。

基礎用語から、活動とその手法まで『面白いほどよくわかる!臨床心理学』

著者
出版日
2012-08-01

臨床心理学という学問を知りたい!と思えばこの1冊をまず読んでみると良いでしょう。

日本の臨床心理学の教授及び研究者の中で最も精力的に研究、臨床、教育を行っているといわれる著者によって、「臨床心理学とは?」がわかりやすくまとめられた本です。

臨床心理学という学問の成り立ちから歴史、その手法やカウンセリングなどの業務についても一連の知識が手に入ります。専門の難しい本を読み込む前に、この本の内容を基礎知識として理解しておけば、今後の土台となるはずです。

イラストや図なども多く使用され、また発達心理や精神障害・異常心理学にも言及されており、臨床心理を学ぶにあたり基本的な周辺知識も得られます。ぜひ手元に置いてみてください。

カウンセリングの初学者から指導者まで役に立つ「河合隼雄のカウンセリング入門」

著者
河合 隼雄
出版日
1998-09-01

臨床心理士の仕事のうち、カウンセリングはクライアントの問題解決の第1歩です。

この本は、そのカウンセリングに焦点を当て、技術そのものや心理士本人の心持ちにも言及している1冊。著者は文化庁長官も勤め、日本文化に根ざした心理療法を志した河合隼雄です。

実際にクライアントの悩みを聞き、信頼関係を結び、問題解決をしていくカウンセリング技術。臨床心理士の資格を取ったからといってすぐできるものではありません。あるいは、苦手という方も出てくるかもしれません。

論理としてはわかっていても、その人に合ったカウンセリングはどうしたらできるのか?聞く技術はどうやって磨いていくのか?こういった疑問を、実際にその場にいる人たちとロールプレイをしている会話形式で解説していきます。

答えを出すのではなく、ただひたすら話を聞き、クライアントが自分の力で立ち上がってくるのを待つ。そういったカウンセリングにおける臨床心理士の姿勢が見えてきます。

まだカウンセリングをしたことのない方も、苦手かなと思う人も読み進めてもらいたい1冊です。

 

自分の特性に合った援助方法とは?『心理援助の専門職になるために』

著者
["マリアン コーリィ", "ジェラルド コーリィ"]
出版日
2004-04-19

臨床心理士やカウンセラーになるにはもちろん技術や理論、具体的な方法が必要ですよね。そういったことは多くの本で様々な方法を学べるでしょう。
 

しかし、この本では技術などを解説するのではなく、心理士自身の問題に踏み込んでいきます。

まずはなぜこの職業に就きたいと思ったのか、自分の特性はなんなのか、ということを改めて考え直していくことになります。自己満足のためだったり、誰かを救いたい!というようなエゴが入っていないか、本当に自分が心理援助の仕事に向いているか?と自問自答していくのです。

自分の価値観や特性を見極め、それでも心理士として働きたいときに自分に合った、かつクライアントに対して効果的な援助方法を探していける本です。

また、心理士が抱える守秘義務やクライアントの自律性の尊重など倫理的な問題についてもどう考えていけばいいのか、この本を通して学べるでしょう。学生はもちろん、臨床心理士として活動し始めた方にも自分の特性を知り、業務に役立たせるためにもいい1冊です。

心理士としての自分の価値観や考え方がぶれていかないよう、節目節目で読み直しをするといいかもしれません。

臨床心理士になるには、大学院、試験とハードルは高そうですね。しかし、ニーズは年々高まっていますし、人の役に立てる仕事ですので、是非紹介した本を参考に目指してみてください!

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