ケガや病気などで体に障害が患ってしまった方のリハビリをおこなうのが「理学療法士」です。近しい職種である「作業療法士」と誤解されやすいのですが、この2つの職種の違いは一体どのような点なのでしょうか。仕事内容や給料、試験内容とともに、一緒に分析していきましょう。
理学療法士は、病気やケガ、高齢などによって運動機能が低下した方、もしくはその兆候が見られる方に対して、運動機能の改善・維持を目的としたリハビリテーションをおこなう職種のことを指します。主な仕事内容は、日常生活において基本となる「立つ・座る・起き上がる」という動作を、患者さんが不自由なく行えるようにするためのサポートです。
そして、作業療法士は理学療法士によって、日常生活における運動機能が回復した患者さんに対し、社会復帰をおこなうための精神的・身体的ケアを行っていきます。
業務内容においても、理学療法士は、歩行訓練・筋力強化などの運動療法を中心とした身体的リハビリテーションを行いますが、作業療法士は手芸や園芸、ゲームなどのレクリエーションを中心にした精神的リハビリテーションをおこなうという明確な違いがあります。
ちなみに、国家資格を有する理学療法士の平均年収は370万円程度です。年収だけで見ると、医療・福祉関係者の中では、低所得だと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし実際問題、リハビリテーション業界の職場環境は、年々変化しており、昨今叫ばれている高齢化社会の中では、需要がある職種として、注目されています。現状少なく感じたとしても、近い将来年収に変化が訪れる日が来るかもしれません。
国家資格を必要とする理学療法士になるためには、文科省または厚労省が指定した学校で3年以上学ぶ必要があります。基本的に専門学校か大学に行くことになると思いますが、どちらに行くかは、「理学療法士を志望する気持ちの度合い」次第とも言えます。
大学は国家試験を受けることが卒業の条件になっていないので、別の道に進みたいと思った場合でも、方向転換を行いやすい環境です。ただし、大学の場合、学費の相場は私大で550~800万円程度、国立で250万円程度で、専門学校よりも若干高い設定となっています。
もちろん、別の道が選びやすい環境であることから、理学療法士への志望度が低い方と勉学をともにすることになる可能性も否定できません。なので、理学療法士への志望度が高い方は、同じ志の仲間が多い専門学校が合っているという側面もあるでしょう。
学費は、3年間で350~500万円程度、4年間で500~700万円程度となります。大学と同じように国立の専門学校もあり、学費は250万円程度となっているので、金銭的にあまり余裕がないという方は、こちらも合わせて確認してみてください。
理学療法士の主な試験内容は筆記試験と口述・実技試験で、合格率は例年80~90%と高めになっています。試験内容ですが、筆記試験は、解剖学、運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学などをマークシートで答える形式で出題されます。また、口述・実技試験では、実際の臨床現場を想定した内容となっており、技術療法や患者さんとのコミュニケーションの取り方、施術手法が出題されるようです。
配点では、記述試験よりも口述・実技試験の配点が高くなっており、総得点280点中168点以上、かつ口述・実技試験が120満点中43点以上である必要があります。教科書の内容を丸暗記しただけではなく、患者に対して、いかに臨機応変に対応できるかが合格のポイントとなっています。
そしてこの国家試験対策を考えた時、自分は将来何になりたいのかを考えてあげると進路が決めやすくなるでしょう。絶対に理学療法士になりたいと決めている人は専門学校に行くことをおすすめします。専門学校では少人数制ということもあり、より深く理学療法士について学ぶ機会が多くあると思います。
また、今は理学療法士になりたいと思っているが数年後どんな仕事に就きたいかわからないという方には大学に行くのがおすすめ。大学で理学療法士を軸に幅広く学ぶことによって新しい可能性に出会えるかもしれません。将来をどうしたいのかまだ明確に決まっていない方は大学にいき自分の知識の幅を広げるのも良いでしょう。
- 著者
- 出版日
- 2017-09-25
資格があっても、仕事がないと言われる世の中ですが、理学療法士も国家資格があるとはいえ、不安定な雇用環境に置かれていることに違いありません。時代の流れに合わせて、働く環境や役割が変化していくなか、どのような志をもって仕事に携わっていくべきか、今、悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この本は、そんな将来に不安を抱えている方に対して、キャリアプランを見つめ直すきっかけを与えてくれる一冊となっています。普段は知ることのできない理学療法士の労働環境を知り、今後の目標を掲げるのに最適な手法を見出す手助けとなる一冊といえるでしょう。
- 著者
- POST編集部
- 出版日
- 2016-09-30
「PT、OT、STとは何か?」「学校選びのポイント」といった志望者なら知っておきたい基礎情報はもちろん、「出会いはあるの?」といった恋愛関係に関する相談まで、幅広く網羅した内容となっています。
理学療法士を目指しはじめたばかりで、「相手の人生に輝きを与える仕事」という事以外、あまり理職業について知らない人にとっては、疑問や不安の解決の糸口となるかもしれません。結婚や給与、仕事のやりがいなど、実際に働いている方のリアルな声が聴けるので、一読するだけで自分が働いた時の姿を想像しやすくなると思います。
また現職の方のためになる「患者が理学療法士に持つ疑問」という項目もあり、実際に一読したことで、働き方を見直すきっかけになった方もいるそうです。そんな働くことの悩みを解決してくれるような内容となっています。
- 著者
- 小林 純也
- 出版日
- 2017-09-30
プロボクサーを目指していた23歳の時、脳卒中に襲われた筆者が、身体麻痺やリハビリテーションとどう向き合ったのかについて書いたのが一冊です。
ハンディキャップを障害ではなく、「患者さんに寄り添うための武器」ととらえる姿勢からは、理学療法士にとって何が大切なのかを学んだ気がしました。身体に障害が残るということに対する恐怖や不安を乗り越え、患者さんの力になりたいと願った筆者の思いには、心を打たれると思います。
そんな自身の実体験を元にしているので、理学療法士は何を患者に求められているのかが分かると本となっています。
- 著者
- 出版日
- 2013-03-01
足の機能や靴の構造、患者さんごとにあった靴の選び方といった、靴の情報がたっぷり詰め込まれています。患者さんの靴の購入をすることもある理学療法士のことを考え、症状に合わせて、どのような靴を購入すればいいのか、そのポイントとなる情報も記載してくれています。
また、なぜ、脚と靴の関係性を深く理解していなければならないのかも説明してくれているので、新米理学療法士にとっては、教科書として活用できる一冊でしょう。
携わった相手に希望を与える理学療法士。作業療法士と協力することで、リハビリテーションの可能性を広げる活動ができるのも魅力的です。この記事をきっかけに、理学療法士という職種に対するあなたの疑問が、少しでも解決できれば幸いです。