刑務所や拘置所といった刑事施設で働く刑務官。ドラマやニュースなど、メディアではその名をよく耳にするものの、実態は謎に包まれています。今回は、知らないことだらけの刑務官のお仕事について詳しく調べてみました!この職業に関するおすすめの本もご紹介するので、そちらもぜひご覧ください!
刑務官とは、「刑事施設(刑務所、少年刑務所、または拘置所)に勤務する法務事務官のうち、法務大臣が指定した者」を指す言葉であり、法務省に所属する国家公務員です。
言葉どおり、刑務所などの法務省管轄の刑事施設に勤務し、施設の運営や警備、規律や秩序の維持、被収容者の日常生活の監督・指導を日々の業務としています。
他にも、職業訓練である「刑務作業」において、労働意欲や役割意識を高めるべく監督・指導をすることや、必要や適性に応じて資格や免許取得のサポートをすること、そして再び罪を犯すことのないよう、生活指導やカウンセリング、矯正教育を行うことも、刑務官の重要な仕事に含まれます。
刑務官には階級があり、大きくは管理職と一般職に分かれます。 まずは一般職から詳しく説明しましょう。
以上が一般職であり、それ以上の階級は「管理職」に分類され、その名のとおり部長、所長といった「長」を任されることになります。
看守長は、高等科研修を修了してある期間、勤務し続けた刑務官、または国家公務員試験Ⅰ種に合格した法務省職員で、刑務官として勤務する者、あるいは長年にわたり主任や現場責任者として働き続けた者で、管理者研修を修了した者、のいずれかが任命される階級です。
以降、矯正副長、矯正長、矯正監とランクアップしていき、基本的には矯正長あるいは矯正監になると「所長」を任されます。 看守長は月給60万円程度と予測され、以降は約10万円ずつ昇給していきます。
刑務官になるための進路はどんなものがあるのでしょうか?一般的に想像できるものから、ちょっと意外なものまであります。
・刑務官採用試験
18歳から29歳ころまでの男女が対象となり、難易度としては高校卒業程度とされています。 第一試験は教養試験と作文試験、第二次試験は面接・身体測定・体力測定で構成。試験に合格すれば候補者となり、その中から内定者が選出されます。
公安的な職務であることから、思想や過去の犯罪歴も調査されます。
そして刑務官として実際に仕事を開始するまでにあるのが、8か月にわたる「初等科研修」。刑務官に必要な知識と実技を、官舎に泊まりこみで学びます。 この研修を修了すれば、晴れて刑務官として働くことができるのです。
・国家公務員採用試験
あまり多くはありませんが、国家公務員試験総合職などに合格し、法務省職員から刑務官を拝命する方法があります。
副看守長や看守部長など上層階級から始まり、昇進のための研修もパスされることが多く、 刑務所の現場で働くことはほとんどありません。
・武道拝命
柔道や剣道に熱心に従事し、大会出場などの実力者が対象で、武道訓練の指導者や警備隊の要因として期待されます。
刑務官の仕事の最大のやりがいとして、「社会貢献ができる」という点があげられます。
ひとつは、受刑者を監督する立場であるため、社会の治安の維持に役立つという側面。 もうひとつは、受刑者の更生や社会復帰にむかって、刑務作業や職業訓練、生活指導やカウンセリングなどさまざまな方法でその手助けを行い、力になれるという側面。
その両側面からみて、刑務官という仕事は社会、そしてひとりひとりの人生にたしかに貢献できる職業といえるでしょう。
業務そのものは、時間が不規則なことも多いですし、さまざまな人間とかかわるので、体力や精神力が必要です。 また、はっきりと階級が分かれているため、上下関係に厳しいという特性もあります。
しかし、勤続年数を積み重ね、研修や昇任試験を受けていけば確実に階級も上がっていき、それに見合った昇給もあるため、この点もやりがいであるといえます。
- 著者
- 西田 博
- 出版日
- 2014-11-30
著者は、親子二代で刑務官という西田博。
刑務官から順にキャリアアップし矯正局長(執筆当時)に任命されるまで、まさに第一線で現場を見つめてきた著者が語る、刑務官の仕事、そしてやりがいとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
受刑者、そして死刑囚とかかわる立場ならではの苦悩や懲罰への思い、これからの刑務所改革について、「ノンキャリア組」矯正局長という稀有な存在の彼ならではの視点でつづられています。
現場で働き、現場を知っている著者による、刑務官のリアルが詰まった一冊。刑務官という仕事について、犯罪、更生、そして法について、今一度考えさせられる内容です。
- 著者
- 沢登 文治
- 出版日
- 2015-03-17
著者は沢登文治。彼は、刑事収容施設法制定の契機となる死傷事件が起きた名古屋刑務所で、初代視察委員を務めた人材です。
長きにわたり、文字通り「塀の中」であった日本の刑務所において、平成13年に起こった受刑者の死傷事件をきっかけに設けられた、刑事施設視察委員会制度。
その視察委員に任命され、当時の日本の刑務所に愕然とした著者の経験から、まずは刑務所という場所を知り、そのうえで「よりよく」を考えていく内容となっており、刑務官や刑務所、受刑者の実情についてわかりやすく書かれています。
米国やカナダにある先進的な刑務所や、実は日本にも古くから存在していた「塀のない刑務所」など、さまざまな刑務所の現場を訪ねた記録も踏まえながら、タイトル通り「刑務所改革」について考えさせられる一冊です。
- 著者
- 小笠原 和彦
- 出版日
- 2014-11-01
著者は小笠原和彦。ノンフィクション作家ならではの緻密な取材により、読者が主人公である統括矯正処遇官(教育担当)・佐伯の日常を追体験するかのような、圧倒的なリアリティのある作品です。
佐伯が勤務する拘置所に移送されてきた、石堂俊也。彼は、幼稚園児十三人と教諭一人を惨殺し、罪を悔やみもせず早期処刑を望んでいました。石堂の事件については、過去に大阪で実際に起こった誰もが知る凄惨な事件をもとにしているとのこと。
その石堂と佐伯とのかかわりが、この物語の柱となっています。
ときに死刑囚の「お守り役」ともいわれるほど、死刑囚からの信頼が厚く、近い距離にいる教育担当。
その佐伯が見つめる、死の恐怖におびえる死刑囚の姿と、彼らと密接にかかわる自身の精神的苦痛、そして死刑を執行する心の傷が、痛いほどにありありと描かれています。