ビジネス/キャリア

学芸員になるには?5分で分かる、資格認定や給料、仕事内容、就職先など

更新:2020.11.29 作成:2018.5.16

「学芸員」という仕事を聞いたことがあるという人は多いでしょう。彼らは私たちが普段利用する動物園や水族館、美術館を支える、わが国の文化を守っていくためになくてはならない存在です。 学芸員といえば研究者のイメージがありますが、当記事では実際にはどのような仕事をしてるのか、学芸員資格の取得方法や「狭き門」と言われている就職事情、年収などについて説明します。 また、学芸員についての知識をもっと深めたい人のための本を紹介していきますので、理解への一助としてください。

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学芸員の仕事内容、職種は?給料は安い!?

学芸員の仕事内容、職種

学芸員は専門職ですが、なかでも美術品や動植物など文化的資料に関する専門家です。その業務は研究のみではなく、非常に多岐にわたります。文部科学省による学芸員の主な職務は以下のとおりです。 

  • 博物館資料の収集・整理 
  • 博物館資料の保管・保存 
  • 博物館資料の展示・活用 
  • 博物館資料の調査研究 
  • 教育普及活動など、博物館資料と関連する事業 

(参考:文部科学省:学芸員になるには

展示の企画・開催は、なかでも学芸員の中心となる仕事です。何か月も前から研究し、展示物を決める過程において広報や交渉事もしなければなりません。

資料の整理や保存は文化を後世に残すための業務ですし、学校での授業を通じて普及活動も行います。イベントでは質疑応答や、時には切符切りをすることも求められ、専門知識のみならず多くの能力が求められる仕事です。

この点、欧米では「キュレーター」と呼ばれ、より専門性の強い職業として仕事内容が企画や研究の分野に特化しています。日本の学芸員のことをキュレーターと呼ぶこともありますが、あらゆる業務をこなさなくてはならない日本の学芸員は、欧米のものより広義だと言っていいでしょう。 

学芸員が働く場所としては次のようなものが挙げられます 。

  • 博物館 
  • 美術館 
  • 科学館 
  • 動物園 
  • 水族館 
  • 史料館 

学芸員の給料

学芸員の給料は250万から400万と言われていますが、実際には所属する先の運営母体によって給料は大きく異なります。

公立の博物館に勤めているのであれば公務員と同じ扱いとなるので、自治体の給与体系に応じた給料です。年齢や勤続年数に応じて昇給もありますが、就職口としては多くありません。 

私設の博物館勤務の場合は年齢、経験、能力によります。実際、求人に目を通すと月給10万円台で賞与なしという募集も少なくありません。 

有名博物館の館長クラスとなら1000万円を超える年収になることもあるようですが、一般的には学芸員の給料は専門性や業務の煩雑さに比べると給料は低いといえるかもしれません。 

学芸員の資格認定試験の内容、難易度は?合格率もご紹介!

学芸員の資格を取得する方法は3つあります。

  1. 大学で文部科学省が定めた科目を修得し卒業する
  2. 大学に2年以上在学し、文部科学省が定めた科目を含めて62単位以上習得、その上で3年以上学芸員補の職に就く
  3. 学芸員資格認定に合格する 

資格取得者は大学で資格を得る人がほとんどを占め、学芸員認定試験で取得する人は少数派で例年100人余りです。認定試験は「試験認定」と「審査認定」の2種類があります。  

試験認定は筆記試験です。2012年以降の合格率を見てみると試験のハードルは低くないことが伺えます。 

  • 2016年 53.6%
  • 2015年 60% 
  • 2014年 62.4%
  • 2013年 61.5%
  • 2012年 13%

審査認定は過去の学識や業績を審査するものです。同じように2012年以降の合格率を見てみましょう。

  • 2016 49.1%
  • 2015 53.8%
  • 2014 80.0%
  • 2013 90.7%
  • 2012 84.7%

受験者数が少ないので、年によって数字にばらつきが出ますが、試験認定より合格率が高いです。ただ、審査認定に合格するには現役学芸員と同等の知識が必要です。合格率が高いのはそれ以外の人が筆記試験の方へ回るためだと考えられます。

年間で学芸員資格を取得する人が1万人前後と言われていているので、学芸員資格認定試験による合格者は試験認定と審査認定を合わせて例年100人前後なので約1%です。

以上のことを考えると、学芸員資格を取るのであれば大学で取得するのが無難といえるでしょう。 

試験に合格したあと学芸員になるには?募集や求人、倍率はどれくらい?

学芸員の資格取得後、学芸員として実際に働くには博物館などの求人に応募するなど、一般企業と同じように就職活動をしなければなりません。それに合格して初めて学芸員として働けますので、資格取得はあくまでもスタート地点に立ったということで、そこからが大変です。

学芸員の就職倍率は50~100倍、人気のあるところではそれ以上のこともあります。それもそのはずで、文部科学省の「社会教育調査」によれば2015年の博物館数5690に対して、学芸員の全数は7821人と数字の上では1館あたり2人にもなりません。 

受け皿の絶対数が少ない上に、専門職ゆえに離職率が低くポストが空きにくいことも、激戦の理由に拍車をかけています。また、公立の館では財政の悪化にともなう支出カットのあおりを受け、採用されるのは全国で100人程度とも言われています。 

結果、非正規雇用で働く学芸員も多いのが現状です。この狭い門をくぐりぬけるにはどうすればいいのでしょうか?恩師紹介や知人ツテで就職先を紹介してもらったり、非正規から正規雇用を目指す方法が挙げられます。

いずれにしても場当たり的な就職活動では雇用に繋がる可能性は低く、学芸員として働くには長期的な視座で取り組むことが必要でしょう。 

学芸員になるのも仕事もたいへんという厳しい現実を述べてきましたが、学芸員は日本にとって大切な文化の担い手です。以下で紹介する本ではやりがいや、重要性についても説明されているので、ぜひ参照してみてください。 

ユーモアたっぷりに描かれたリアル学芸員のお仕事

最初に紹介するのは学芸員のお仕事を紹介するコミックエッセイです。世間にきちんと認知されていない学芸員の日常をユーモアを交えて描いています。

これを読めば学芸員がノンビリと研究に没頭しているわけではないということがわかるでしょう。読後にそのイメージが一新されることは必至です。

学芸員に関する情報がふんだんに盛り込めまれていて、ライトな入門書を求める人にはピッタリです。 


著者
オノユウリ
出版日
2015-07-17

著者のオノユウリさんは漫画家・イラストレーターですが、現職の学芸員への取材を通じて、架空の主人公を設定し、学芸員のリアルな日々をとてもわかりやすく描いています。

学芸員に対するファーストインプレッションといえば、どう考えても文系のお仕事ではありませんか?本書を読めば、そのイメージが誤りであると気付くとともに、むしろ体力仕事だということに驚くでしょう。

 展示会や企画展に注がれる学芸員の情熱と労力を知れば、美術館に行ったことがある人にもない人にも新たな好奇心が芽生えるに違いありません。 やることが多すぎて実は「ザ・体力仕事」の学芸員を描いていますが、本書のよい所は明るく前向きにそれを表現しているところです。 

学芸員に対するイメージは変わるかもしれませんが、本書は表面上の情報よりも実体験である1次情報に基づいています。すなわちノンフィクションに近いフィクションなのです。学芸員を目指す人なら1度目を通してみることをおすすめします。

現役館長だからこそのウラ話が満載

どんな仕事でも「やってみて初めて知る」ということはたくさんあるでしょう。本書では勉強では身に付かない、学芸員になってこそ知る裏事情が語られています。

著者は30年の学芸員経験をもつ、現役の美術館館長であるので、その目で見てきた美術界の裏側は読者の好奇心をくすぐります。

美術館のルーツに始まり、学芸員のリアルな仕事内容、そして私たちが何となく訪れている日本の美術展の特異性など、「美術界の裏側」を覗き出したら止まらなくなるかもしれません。

著者
高橋 明也
出版日
2015-12-08

日本の大規模な展覧会の特長といえば新聞社がスポンサーになっていることです。なぜ新聞社ばかりなのか気になったことはありませんか?

その理由は戦後間もない頃にまで遡ります。当時、新聞社の海外特派員は外国の事情に通じる貴重な存在でした。新聞記者は海外の美術品情報を得ることができる、いわば「特権階級者」でもあり、そのため美術館が新聞社の強力なしに展示会を開くことはかなわず、その名残が現在にまで続いているというわけです。

その他にも、海外の美術品の輸送にかかるコストや、日本の美術品は展示期間が短かったり、開催中に入れ代わる理由など、思わず読者が「へぇ」となるような話題が満載です。 しかし単なる裏話に終わらず日本の美術界の現状を憂い、将来に向けての提言もしていて著者の美術への愛情がヒシヒシと伝わってきます。 

豊富なトピックスが掲載されているので、本書をきっかけに美術の世界に一層の興味を掻き立てられるのではないでしょうか。

学芸員の新カリキュラムに完全対応!

テクノロジーの発達によって音楽や本のデジタル化が進み、産業の構造そのものが大きく変化しました。博物館も例外ではなく、新しい時代に対応した運営をしていかなければなりません。学芸員の学ぶべき課程も2012年から、現代社会のニーズに応えられるよう取得単位数が増加するなど、新カリキュラムに変更されました。

本書は新課程に対応した内容で大学の授業でも使用される良質の入門書です。 

著者
出版日
2012-02-01

本書では博物館についての基本的な事項を、概論、経営、資料、保存、展示、情報・メディア、教育の7章に分けてそれぞれ詳しく解説しています。

読み物として楽しむというより、ベーシックな知識を身に付けるための参考書といえるでしょう。情報が整理されているので、知りたいことがすぐに解り、これから学芸員について学ぼうと思っている人の入門書としておすすめできます。 

また、入門だけではなく内容の学習を終えた時には学芸員としてのスタートラインに立てるようにすることが本書の狙いでもあるので、役立つ情報が多い内容となっています。 

日本人キュレーターが語るアメリカ博物館事情

学芸員とアメリカのキュレーターとの位置づけが異なるのは当記事で述べたとおりです。この本ではアメリカの博物館で実際にキュレーターとして働いていた著者が、職場で得た経験を通じてアメリカのミュージアム事情や教育事情について紹介しています。

エッセイなので堅苦しさがなく、それでいて日本人には馴染みのないアメリカの博物館をわかりやすく書いているので、気軽に手に取れる本です。 

著者の三木美裕さんは、北米、ヨーロッパ、アジアと世界を股にかけるキュレーターで、本書で語られているのは大学卒業後に海を越えて渡ったアメリカの博物館で勤務していた頃の体験談です。

著者
三木 美裕
出版日

貴重なものがズラっと並んでいて、なんとなく敷居の高い感じのする日本の博物館ですが、アメリカでは事情が違うようです。アメリカのミュージアムは来場者を「お客様」として扱っていることなど、日本との相違点が他にもたくさん見えてきます。

三木さんは「ミュージアム・エデュケーター」、つまり、博物館で教育普及を担当する人です。なので、特にその分野にページが割かれており、そこが本書の見どころでもあります。 

博物館教育の業務に腐心する姿だけではなく、アメリカにおける教育事情についても言及されていて、「学芸員の先進国」であるアメリカの姿を垣間見ることができます。 

博物館の在り方について示唆に富んだ一冊で、外国のキュレーターに興味がある人や、現役の学芸員にもおすすめしたい本です。