「柔道整復師」という職業をご存知でしょうか。平成26年時点、日本には6万人以上の柔道整復師が就業し、施術施設も年々増加傾向にあります。厚生労働省が認可する国家資格であるため、これから手に職をつけたい人にとっては、魅力的な職業のはず。この記事ではそんな柔道整復師について詳しく紹介させていただきます。
国家資格となる以前、「柔道整復師」は「ほねつぎ」や「接骨師」として知られていました。国の認めた資格になったあとも、主な仕事内容は変わらず、骨や関節、靭帯などの身体損傷に対して、修復・改善・維持ができるよう、外科手術はせずに、人の手技のみで治療を行う職業です。
柔道整復師はの就職先は、主に「接骨院」や「整骨院」。技術力が身につき経験を積み重ねると個人で開業することも可能です。 他にも、スポーツトレーナーや介護施設で訓練指導員として働くなど、幅広く活躍できる仕事といえるでしょう。
柔道整復師の施術では、健康保険や生活保護法による保険が適用されます。しかし、肩こりのような内科に属する症状は保険適用外となります。
接骨院などの医療施設に就職した場合、平均年収は新人で350〜400万円ほど。10年、20年と経験を積み重ねて評価されれば、600~700万円と、しっかりとした生計を立てられる職業です。また、ほんの一握りですが、有名なスポーツトレーナーとして活躍すれることができれば、年収1000万円以上も期待できます。
「柔道整復師」と仕事内容が似ている職業として「理学療法士」があります。これら2つの職業の違いは大きく3点あります。
まず1点目は治療方法の違いです。柔道整復師は骨折などのケガに対して自分の手を用いて治療を行いますが、理学療法士は電気、熱、寒冷、水といった物理的な治療を行います。
2点目は直接医療ができるかどうか。柔道整復師は、患者さんに対して自ら診察・治療を行えますが、理学療法士は医師の指示によって治療をおこなう必要があります。
最後に3点目は開業できるかどうか。柔道整復師は接骨院など開業ができますが、理学療法士は開業が認められていません。そのため自分の手腕を試したい方は柔道整復師を目指されるとよいでしょう。
柔道整復師になるには、厚生労働省が認可した4年生大学、3年以上の 短期大学または専門学校で、指定の科目を履修し、国家試験に合格する必要があります。 必要な科目には、解剖学、生理学、運動学、衛生学といった基礎科目に加え、柔道整復理論及び関係法規、整形外科学、リハビリテーション学といった臨床系専門科目を履修する必要があります。認可された学校ならこれらすべてが履修可能です。国家試験は筆記試験のみで毎年3月(年1回)に開催されます。
また、気になるのが学費ですが、その大学や専門学校の費用は一般のものと比ベて高額です。入学金を含め初年度に100~200万円を支払い、4年制大学では4年間で500万円以上。専門学校などの3年制で約400万円以上が必要です。また学費以外にも柔道整復師専用の道具などにも数万円かかるため、進学費用は高めと考えた方がよいでしょう。
柔道整復師になるためには、国家試験に合格して免許を取得する必要があります。試験の合格率は例年70%程度となっており、しっかりと対策をすれば十分に合格できるでしょう。
受験者数は平成20年頃から6500〜7000人程度。しかし柔道整復師の増加に伴い、試験の難易度が上がり合格率も下がってきています。平成28年度には合格率が65%以下となりました。 試験科目は解剖学、生理学、運動学、病理学概論といった専門科目が約10科目もあるため、バランスよくコツコツと学習することが求められます。
柔道整復師の就職先は、病院などの接骨院、スポーツトレーナー、介護施設での機能訓練指導員、ケアマネージャーと主に4つに分かれます。とはいえ4つともすぐになれるわけではありません。 たとえばケアマネージャーの場合、柔道整復師の資格に加えて、介護保険制度で定められた資格を取得した上で、柔道整復師として5年以上経験がないとなることができません。ですが、機能訓練指導員よりも、より高い技術と人間力を要するため年収も大幅にアップします。
ところで、スポーツをされていた方にとっては接骨院等で勤務するよりもスポーツトレーナーとして働くことの方が魅力的ではないでしょうか。スポーツトレーナーは、スポーツ選手のサポートをするため、介護職よりも筋肉や内臓機能などの分野に詳しい必要があります。
それでは柔道整復師になりたい方へ向けて、読んでおくべき本を3つ紹介します。
- 著者
- 上田 孝之
- 出版日
- 2018-05-31
著者は元厚生労働省に勤務、柔整・鍼灸・マッサージの業界で役員として全国を駆け巡り、施術者の生活を守るための活動を続ける上田孝之。
2017年、東洋医学において療養費の不正請求が問題となりました。高齢者が施術を受けるも、施術者が療養費を不正に請求していたのです。上田孝之はこの不正請求問題が柔道整復師の未来を壊すと考え、柔道整復師が不正請求を行わないよう、また患者さんに不当な治療を行われないように、本書を発行しました。
もしこれから柔道整復師になるという方は、現在の療養費についてどのように保険が適用されるのか、またどのような施術が保険適用とならないのか理解し、知らず知らずのうちに不正を行わないよう、またモラルある柔道整復師となっていただくため是非ご一読ください。
- 著者
- 合谷 純夫
- 出版日
2冊目にオススメしたいのが、福岡で生まれ医療法人同心会で病院監事および顧問を務める合谷純夫の著書。合谷純夫は50歳になってから柔道整復師を目指し、京都でトップクラスとして走り続けました。
まだ柔道整復師の養成施設が少なく、社団法人が業界を牛耳っていた頃、合谷純夫は組織のしがらみに反発。波乱の人生を歩まれた記録がこの本で語られます。 読んだ人が、その数奇な人生に共感せざるを得なくなる柔道整復師の物語。 奥行きのある面白きがあるこの本を手にとってみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 細谷隆広
- 出版日
- 2017-03-30
最後に紹介するのは、「開業したい」方に是非読んでいただきたい一冊です。 従来の医療では、主に骨折や打撲、捻挫、神経痛など、ケガや事故の症状には保険が適用できますが、肩こりや腰痛といった「怪我や事故でない」場合は保険が適用できません。そして保険を適用できる施術内容が年々厳しくなっており、施術側へ経済的な影響が出ています。
本書では、保険診療の範囲が厳しくなりつつある今、柔道整復師が自分の仕事を守るため、また患者さんへしっかりとした治療を行うための手段として「自費診療」への移行を勧めています。
まだ開業したことがない方にとっては、自費診療のメリットは少ないと思うかもしれませんが、この本を読めば、自費診療への理解が深まるとともに、開業における良い選択肢を手にすることになるでしょう。 柔道整復師として開業したい、という志の高い方には是非オススメのバイブルです。