養護教諭になるためにはどうしたらよいのでしょうか?この記事では、この仕事についてわかりやすく説明していきます。仕事内容だけではなく、給与や資格などについても踏み込んで説明。さらに、将来この仕事に就きたい人にはぜひ読んで欲しい3冊の本を、厳選して紹介していきます。
養護教諭とは、児童生徒が健康な生活を送るために必要な力を育成することが仕事です。一般的には、保険の先生としてよく知られている職業です。
児童生徒が健康な生活を送るためには、規則正しい生活習慣を身に付けることが重要。さらに、日常的に起こる健康課題やストレスに、適切に対処できる力を養う必要もあります。
そのため養護教諭は、現在、各学校の教職員や家庭、地域と連携しながら、日常的に、児童生徒の「心身の健康に関する知識・技能」、「自己有用感・自己肯定感(自尊感情)」「自ら意思決定・行動選択する力」「他者と関わる力」を育成する取組を行なっています。
それらを踏まえ、保健室を訪れる子どもとの相談に応じることが、この仕事の最大のイメージではないでしょうか。心の悩みや家庭の悩みを聞くなど、学校にいるカウンセラー的な立ち位置です。
さらに養護教諭の仕事の1つとして、保健室での応急処置も挙げられます。医師ではないため、医療行為をおこなうことはできませんが、生徒の身体的な負傷についてもサポートを行います。
その他にもやるべき仕事は多く、学校全体の保健管理や水質検査、空気検査をおこなうことも。児童生徒の健康を守るために、専門的な立場から保険および衛生環境の実態を把握することが必要となります。
そんな養護教諭の平均給与は、およそ30万円程度になります。年収にすると、ボーナスなども含めておよそ400~500万円程度となるのが一般的です。初任給は20万円程度と、大卒卒の平均くらいの給与水準になることが多いです。ただし、公立と私立の学校に勤務するのとでは、給料に多少の差が生じます。
養護教諭になるためには、教育職員免許法で定められているように「養護教諭免許状」を有している必要があります。さらに、通常の科目を担当する教員と同じように、教員免許も必要です。
教員免許状には、専修免許状(大学院を修了)、1種免許状(大学を卒業)、2種免許状(短期大学を卒業)の3種類があって、それぞれで修得できる単位数や科目などが違います。免許状の種類によって職務上の差はありませんが、就職の際に差が出る可能性がある点には注意が必要です。
教員養成系大学の養護教諭養成課程を取得するか、看護学部などがある4年制大学で所定4科目、8単位を取得すると養護教諭1種免許が得られます。
また、看護師や保健師の資格を得て医療機関で働いている人で、養護教諭に転職する場合は、文部科学省が指定する機関を卒業することによって、1種免許を取得できるというルートも。ほかにも、看護師が「養護教諭特別別科」コースを設置している国立大学を卒業することで、免許を得る場合もあります。
2種免許は、指定の看護短期大学や、一般短期大学の養護教諭養成課程があるところで、所定された養護・教職の単位を取得することによって得られます。自分の専門性をどれくらい高めたいかに応じて、進路を選択することが大切でしょう。
少子化によって、子どもの数は今後も減ることが予想されています。しかし、いじめ問題や不登校などによって悩みを抱える児童に、どのように対応するかに関する議論は尽きません。結果として、養護教諭に、これらの問題に対応してもらおうとする動きがあるので、今後も仕事の需要は高いでしょう。
近年悩みやストレスを抱える子どもが増えるのは、女性の社会進出が進み、親が夜まで帰ってこないという家庭が少なくないことも、理由の1つと考えられています。そのため、いかに子どもたちに寄り添って心のケアをするかということが課題となります。それに対応するためには様々な専門的が知識が必要となるだけではなく、スクールカウンセラーや保健師、医師などの外部機関とも協力が必要です。
将来の役割としては現在の業務に加えて、児童の心のケアをするために外部の機関を主導する役割も、求められています。そのため将来は、心理学的な知識だけではなく、外部機関の情報をきちんとキャッチアップし、外部機関と連携をとることも仕事に含まれるようになると考えられています。
これらのこまめな情報収集や、子供たちへのサポートを忘れない人がこの職業には向いていると言えるかもしれません。
これまで、養護教諭に焦点を当てた研究は多くありませんでした。その意味で本書は、この仕事に求められる役割を歴史的、社会学的に解明した学術的に意義のある本です。
この仕事特有の悩みについて、構造的な側面から明らかにしている本書。職種を超えて、差別やジェンダーの問題まで議論されているので、養護教諭だけではなく、一般の方にも現代社会の問題について考える一助となる内容です。
- 著者
- すぎむら なおみ
- 出版日
- 2014-05-30
本書は学術書であるため、ある程度社会学的な背景を知っている方が読みやすい本と言えます。そのため、初心者がいきなり読んでもわからない部分が多くあるかもしれません。
しかし養護教諭の方にとっては、子どもの健康をケアし、さらに教諭としての自分と向き合うためのヒントを数多く提供してくれる本です。実際にこの職業に就いた方が、自分の仕事の意義や必要性を再確認するのにも役立つ内容となっています。
保健室の先生のところには、様々な家庭的背景で育った子どもたちが相談に訪れます。
本書はそんな状況の中で、保健室の先生として子どもたちの相談に乗る教員の活動に密着した、ルポルタージュです。現代の保健室でどんなことが起こっているのか、実際の現場で先生にインタビューを行って明らかにしており、現代の子どもたちが強いられている貧困などの本質に迫った1冊です。
- 著者
- 秋山千佳
- 出版日
- 2016-08-10
本書は、子どもたちが現在どんなことに悩んでいるのかについて、焦点が当てられています。保健室では今、何が起きているのか。リアルな様子が克明に描かれています。
今後養護教諭になりたいと考えている人にとっては特に、この仕事の大変さや現実が実感できる、学びの多い内容でしょう。この本を読めば、どんなことが役立つのかについて、具体的なイメージを持つことができるかもしれません。
養護教諭が少ないことが叫ばれている昨今ではありますが、男性は特に少ないのが現状です。全体で見てみると、男性は0.16%しかいないのです。
そんな状況の中で、男性だからこそ養護教諭としてどんなことができるのかについて迫ったのが、本書。悩みを抱える子どもが増える中で、全体からしてみればたった0.16%しかいない男性だからこそできることとは、一体なんだろうか?そんな問いに著者たちが仕事ぶりをとおして答えます。
- 著者
- ["川又 俊則", "市川 恭平"]
- 出版日
- 2016-07-29
実際に養護教諭として働く男性が書いた本書の、「この仕事は女性がなるもの」と決めつけてはいけないという指摘には、誰もがはっとさせられることでしょう。
現在この仕事を目指している人は、男性でも活躍できるフィールドがあるんだということを、本書を通じて知ってほしいと思います。女性には相談しにくい男児ならではの性の悩みも、男性教諭がいれば相談しやすいこともあるでしょう。
文章自体も読みやすく、内容も面白いものなので、読み物としても気兼ねなく読める内容となっています。
少子高齢化が叫ばれる昨今でも、子どものケアのあり方について議論は紛糾しています。そんな状況の中で、今度も養護教諭の重要性は高まってくることが予想されます。まずは上で紹介した3冊の本を読んで、今後どのようなことが求められるかなどについて、ぜひ勉強してみてください。