悩みを抱えている人に寄り添い、支えるカウンセラーの仕事。相談者の話を親身になって聞くことで、適した治療方法を導き出していく重要な職種でもあります。 ここでは、仕事に就くまでの過程や年収、具体的な仕事内容に焦点を置き、分析していきます。
カウンセラーの仕事は、ひきこもりや摂食障害、PTSDといった心の病を発症してしまった方たちと向き合い、対話を通して治療方法を導き出すことが主な業務となります。基本的には、問題の改善を行動でおこなう「行動療法」、原因となった理由を追求していく「精神分析療法」などを駆使して、患者自身で心の問題を解決できるようにサポートを行っていきます。
カウンセラーの活躍する現場は幅広く、「医療」「教育」「司法」「福祉・公衆衛生」「産業」「研究」の6つの領域が挙げられます。働く分野によって名称も異なり、産業で「働く人」を対象にした産業カウンセラー、「教育現場」を対象にした学校心理士、6つすべての分野に精通した、臨床心理士など多岐にわたります。
気になる給与ですが、職場によって多少変動はあるものの、平均年収は350~460万円となっています。ちなみに、裁判所や行政機関などで勤務する「公務員心理職」は、勤続年数が長ければ、年収700~800万まで上がることもあるそうです。
カウンセラーとして働くのに必須な資格はありません。しかし働く現場や仕事内容によって、必要な資格が出てくる場合もあります。
カウンセラーに関する資格は、実に多く存在します。そのなかでも最も権威ある資格と言われているのが、臨床心理士です。この資格は国家資格ではなく、指定された大学院もしくは専門職大学院を卒業後、筆記と口頭試問の試験を受けることで、得ることができます。2017年に、心理の唯一の国家資格の「公認心理士」ができましたが、現状この2つの資格における明確な違いはありません。
ちなみに、カウンセラーに関する名称でよく耳にする「臨床心理士」と「認定心理士」の違いですが、働く環境が大きく異なる点が挙げられます。
冒頭で軽く触れましたが、大学を卒業すれば獲得できる認定心理士の場合、臨床心理士や公認心理士のように、心理の専門職で働くことは難しいです。認定心理士の資格を取得する方の傾向としては、そのまま一般企業の就職活動に活かしたり、勤務可能な児童養護施設や福祉施設などでカウンセラーとしての経験を積みながら臨床心理士を目指したりするなど、将来への布石としている方が多いようです。
日々、カウンセラーの需要が高まっていく一方で、立ち位置が安定しているといえるほどの環境は整っていません。教師や看護師、ケアマネージャーなど別の職業の方があらためて獲得する事例もあり、常に心理のプロフェッショナルとして、専門性を高め続けていくことが重要といえます。
この仕事を目指す人に必要とされていると思われる重要な能力を、4つご紹介していきます。1つ目は、「人の心の変化に興味がある人」、2つ目は、距離感を保てる人」、3つ目は「コミュニケーション能力」、そして4つ目の「忍耐力」です。
まず1つ目の「人の心の変化に興味がある人」。カウンセラーは、何かしらのトラブルを抱え、心に深い傷を負った方たちと向き合うことになります。人が傷つく時、喜ぶ時、悲しむ時といった心の変化がいつ、どんな時に起こるか、興味を持ち、分析する好奇心が必要となります。
2つ目、カウンセラーに向いていると言われているのが、「距離感を保てる人」です。特に、相談を受ける際、感情移入せず、共感できる人が向いていると言われています。患者さんの話を聞き、感情移入しすぎて、距離感を見誤ってしまうと、患者さんがカウンセラーに依存するようになってしまうので、自分の立場を見失うことなく接することができる人材が求められています。
3つ目は、「コミュニケーション能力がある」こと。患者さんは、自身の周りにあるトラブルに悩みすぎて、周りが見えなくなってる状態に陥っていることがあります。その場合、先入観を持って接したり、自分の意見を押し付けるようなことをしてはいけません。自分の意見を否定されたり、価値観を否定されると、患者さんは自信を無くし、さらに心を閉ざしていますからです。患者さんの価値観や意見を1番に尊重し、リラックスして話しやすい環境づくりを作れるかどうかが、重要とポイントとなってきます。
そして最後は、「忍耐力」。患者さんの悩みを聞き問題を解決するまでは、長い道のりを要します。精神的に不安定な患者さんを相手にするため、一歩前進したと思えば、後進することもあります。しかし、そんな精神的に追い詰められているなかでも耐えられる、強い忍耐力が必要とされているのです。
他にも「人の役に立ちたい」「辛い思いをして、立ち直った経験がある」など、現役で活躍しているカウンセラーが持つ共通点があるので、事前に調べておくと、自分の適性度を把握することにも繋がるはずです。ぜひチェックしてみてください。
40万部以上の実売を誇る、東山紘久著『プロカウンセラーの聞く技術』が漫画化された1冊です。作者はプロの心理カウンセラー。仕事で大切な、「人の話を、深く聞く方法」を一般の人にもわかりやすく説明してくれています。
- 著者
- 東山 紘久
- 出版日
- 2017-09-20
聞き上手になるために大切なことと、その危険性。そしてなぜ、この仕事が必要なのかを細かく説明してくれています。
常に話し手のことを中心に考え、会話を進めるための手法を学べるので、「聞き上手になりたい」「コミュニケーションが苦手」という方は、自分がこれまでやってきたコミュニケーションの問題を見直し、解決する糸口になると思います。
「夢だったカウンセラーになったのに、患者さんと向き合うとうまくコミュニケーションが取れない」という悩みを抱えている新人カウンセラーのアドバイスになる1冊。今は、プロとして活躍する著者・今泉智樹氏が新人時代、悩みや失敗、苦労をどのように乗り越えてきたか記してくれています。
- 著者
- 今泉 智樹
- 出版日
- 2017-05-17
「働いたら、想像していたのと違った」と感じることが多い新人時代。今泉氏も、「人それぞれに合ったカウンセリングがある」と聞いていた仕事に実際に取り組んだことで、その意味を勘違いしていたことに気づきます。
実際に働いて気づいたことや、この仕事を通して学んだ「患者さんとどのように向き合い、悩みを解決していけばいいのか」といったことなど、新人時代に知りたい、重要なポイントを教えてくれます。
「コミュニケーションは話すよりも聞く」 「聞くことから信頼関係は生まれる」 「コミュニケーションはキャッチボール」といったポイントを押さた1冊。カウンセラーだけではなく、一般の職場や家庭でも役立つコミュニケーション手法を教えてくれています。
- 著者
- 出版日
- 2015-11-27
相手の気持ちを汲み取るための手法として使用している「質問」が、実は「相手を苦しめている」。あなたが話し手にしているアドバイスは「単なる押し付け」。この本では、そういったコミュニケーションをおこなう上で見落としがちな問題を明示してくれています。
カウンセリングをおこなう上で、患者さんとの間合いを大切にしたコミュニケーションを学びたい方は、一読する価値ありです。
「人の話を聞く」姿勢を崩さず、患者さんの心を癒すカウンセラー。一歩、患者さんとのコミュニケーションを誤れば、相手を追い詰めるということがわかりました。ぜひ、将来はコミュニケーションの間合いを大切に、患者さんに寄り添えるカウンセラーになってくださいね。