社会福祉主事という仕事をご存知でしょうか。高齢化社会にニーズが高まりつつある「介護福祉分野の相談支援の専門家」です。大学で必要科目を履修していれば申請できるため、「履歴書にこの資格を書ける」ことに気づく方もいるかもしれません。 名称が似ている「社会福祉士」との違いや地域の活躍の場、参考になる本を紹介していきます。
社会福祉主事とは、都道府県や市町村の福祉事務所、公立の福祉施設等で、ソーシャルワーカー(ケースワーカー)として、介護福祉分野の相談支援業務をおこなう公務員のことです。主に生活保護に関する面談、家庭訪問、生活指導などを行います。
社会福祉主事は、一般大学で必要科目を履修すれば申請することができる資格です(科目詳細については次のセクション参照)。届出をして取得した段階では「任用資格」と呼ばれ、「その職種に就く資格がある」という状態。資格取得後に公務員試験に合格し、その職種に就いて初めて「社会福祉主事」と名乗ることができます。
都道府県や市町村に設置されている社会福祉事務所では、本資格保持者の必置義務があります(福祉事務所のない町村には任意設置)。加えて、社会福祉協議会やデイサービス、特別養護老人ホームや有料老人ホームの生活相談員、病院の医療相談員など、活躍できる勤務先は多岐に渡り、地域の生活に根ざしたニーズが高い職種と言えるでしょう。
この資格を有していると、福祉について学んできた証になり就職にも有利。資格手当がつく場合も多くキャリアアップにもつながります。
社会福祉主事とよく似た名称の「社会福祉士」という資格があります。どのような違いがあるのかを説明していきましょう。
どちらも「介護福祉分野の相談支援業務」という仕事内容に大きな違いはありませんが、社会福祉士は国家資格、社会福祉主事は任用資格という違いがあります。
このように社会福祉士は、受験資格を得るためだけで4年以上もかかります。しかし、その分より専門性が高く、試験に合格すると、社会福祉主事任用資格も有するとみなされます。社会福祉主事の人が、さらなるキャリアアップのために取得を目指すケースも多いようです。
社会福祉主事の任用資格は、一般大学で指定の単位を修得していれば条件を満たします。特に文系学部の学生や卒業生は、履修科目をぜひ確認してみてください。
具体的には大学、短大、旧制大学、旧制高等学校、旧制専門学校のどれかを卒業していて、厚生労働大臣の指定する社会学や心理学、教育学、経済学など、約30科目のうち3つ以上の単位を取っていれば申請することができます。
指定されている科目と受けた授業の名前が多少違っていても指定科目として認められる「読替え」という規定もあり、規定と違う名前でも学校が厚生労働省に申請していて認可されていれば、これも指定科目を取ったと認められます。より細かい規定などは厚生労働省のページをご覧ください。
通常、大学は資格証を発行しませんので、すでに卒業している場合は卒業証明書と成績証明書を取り寄せて確認しましょう。条件を満たしている場合、在校生は「取得見込み」と、既卒生は「任用資格取得」と履歴書に記載することができます。
- 著者
- 円城寺 雄介
- 出版日
- 2016-02-01
著者は、佐賀県庁職員の円城寺雄介。「緊急医療の分野で様々な改革ができる」と使命を感じた彼は、その情熱で周囲の人も巻き込み、次々と型破りな緊急医療改革を実行!まるで半沢直樹の県庁版のような、痛快なエピソード満載のノンフィクションです。
救急搬送の際に、受け入れ先の病院を探すのに時間がかかる現状を目の当たりにした著者。県内の全救急車両にiPadを設置し、病院検索システムを構築しました。さらにより多くの命を救うため、ドクターヘリの導入にも奔走。その努力が実り、全国で初めて緊急搬送時間の短縮に成功し、全国から講演依頼が舞い込むようになります。
肩書きはないが情熱はある、地元・佐賀をこよなく愛する著者。「はみだし公務員」と揶揄されながらも、地域の人々のために奔走する姿は実に爽快です。本著を読めば、仕事への前向きな意欲が湧きあがってくることでしょう。
- 著者
- 白崎 朝子
- 出版日
- 2009-04-01
著者は、99年に公務員をやめ、訪問介護事業所のヘルパーを経て2007年からグッドウィルの派遣ヘルパーを勤めた白崎朝子。本書は、介護労働に20年以上携わる経験をもとに記された、「介護現場のリアル」を伝えるルポタージュです。
介護サービス提供事業者、コムスンの不正請求問題から起きた「コムスンショック」。この出来事をきっかけに、介護サービス業者や介護保険制度への批判、労働現場の様々な課題が、連日のように報道されたことを覚えている方もいるでしょう。その裏側で、当事者達はどのような思いで仕事に向き合ってきたのでしょうか。
第1章では、コムスンショックや派遣ヘルパーになるまでの経緯、第2章では、現場の仲間の労働実態、 第3章では介護労働者の労働のあり方、生老病死に向き合うメンタリティ、介護の現場ではなぜ労働運動ができないか等、具体的なエピソードとともに描いていきます。 終章では、介護労働に希望はあるかという題目で、長年介護の現場を見てきた著者の、未来への思いが記されます。
高齢化社会にますますニーズが高まる介護の仕事。著者が読者に投げかける「現場の生の声」から、介護の現場がありありと見えてくる1冊です。
- 著者
- 柏木 ハルコ
- 出版日
- 2014-08-29
新卒で福祉事務所に配属された新人ケースワーカーの仕事を通して、生活保護のリアルを伝える本作。連載以来メディアで取り上げられるなど、今注目されているコミックシリーズです。
タイトルの「健康で文化的な最低限度の生活」とは、日本国憲法第25条第1項の条文「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」から引用したもの。主人公の義経えみるは、社会福祉制度の知識がまったくない状態で、必死に仕事を覚えながら生活保護の相談対応を行っていきます。
そんな中、虐待を伺わせるような子どもに出会ったり、時には、精神的に追い詰められた女性が取り乱し暴言を吐かれたり、相談者との様々な出来事に見舞われ……。
現代の生活保護のリアルを包み隠さずエピソードとして描いた作品です。
こうした経験を通して、ケースワーカーとしての自覚に目覚めた主人公。生活保護制度に関して本格的に勉強を始め、現実に真っ直ぐに立ち向かい寄り添っていきます。生活保護申請者の現状を知り、主人公の成長とともに自分自身も学びを得られる作品です。