大工は経験がものを言う世界です。その姿をみることはありますが、彼らが一体どんな働き方をしているのかはまだまだ知られていないのが現状です。 この記事では、「建設業界で働きたい!」「大工になりたい」という方にオススメの本を3冊紹介します。仕事の内容・年収をはじめとして、なるために必要となる資格や将来性などについても説明していくので、ぜひ参考にしてみてください。
大工は、住宅や店舗の骨組みや外壁・屋根・床・天井などについて、設計図の通りに施工するのが仕事の職業です。どんな住宅や店舗を建築するにせよ、必ず設計図が必要となります。
仕事は、まずは設計図を確認することから始まります。それに合わせて木材を仕入れ、建材として加工するのも仕事に含まれます。
さらに、住宅や店舗を作るための資材の準備等も行います。このように、その仕事内容には、住宅や店舗を建てるだけではなく、住宅や店舗を建築するための全てのプロセスが含まれます。
そんな仕事は受注の流れもいくつかあります。
まず手間受けと呼ばれる仕事で、ハウスメーカーの住宅を作るのが仕事となります。ハウスメーカーの住宅にはすでに設計図などがあるので、その設計図に合わせて住宅を建設するのが仕事です。もちろん、納期があるのでそれまでに住宅を完成させなければなりません。
さらに街の電気屋さんや水道屋さんからの紹介で、店舗の施工を手がける仕事もあるそう。ハウスメーカーの仕事は設計図の通りに組み立てていくことが中心となるので淡々とした仕事になりますが、店舗の施工を手がける場合には、きちんとクライアントと話し合って要望を聞き取りながら施工を行っていきます。
そんなこの職業の平均年収はおよそ450万円程度です。ただし、会社の大きさなどによっても給料は変化します。年齢を重ねるとともにできることも増えるようになるので、経験とともに給料も上がっていきますが、およそ600万円程度が上限と言えます。
大工といっても様々な種類があります。寺社仏閣を作る宮大工、在来工法で木造家屋を作る町大工などに分類することができます。特に、寺社仏閣を作る技術や知識がある宮大工は貴重な存在なので、給与が高い傾向にありますが、求人も少ないのでなかなかなることはできません。
しかし、なるために特別な資格はなく、学歴や年齢も問われないことが多い世界です。その代わりにまずは雑務や道具の手入れなどの仕事はもちろん、先輩に言われたことをきちんと守る修行時代を通して学びます。
仕事に役立つような資格の一部を取得するためには、高校・高等専門学校・大学などで土木・建築学科を卒業しなければならず、受験資格を得ることもできない場合があるのに注意が必要です。
一人前になるためには、一定の努力が必要です。昨今では、ハウスメーカーの建売住宅の需要がきわめて多いため、職人の需要は年々減少しています。
まずは工務店に就職したり、親方に弟子入りするのが一般的な大工の世界。そこで、様々な知識と技術を身に付ける必要があります。技術を証明する資格としては、建築大工技能士などがあります。
大工の仕事には長い修業期間が必要であるため、どれだけ若いうちに努力できるかが成長の鍵となります。先輩の言うことは基本的には絶対の関係であり、職人気質な人物も多くいるため、ストレスを感じることも多いという実情があります。
その技術は棟梁や先輩が弟子に対して伝えることによって受け継がれてきたものです。そのため、教えてもらうだけではなく、自分から積極的に仕事を覚える姿勢が必要になります。
大工という仕事は、江戸時代には非常に人気の高い職業でした。また、職人という仕事柄、周りの人に尊敬される存在でもありました。
修行時代の精神的・肉体的にも大変なことも多く、一人前になるためには、長い修業が必要だったからです。特に、江戸時代には大工のなかでも鳶と呼ばれる存在はアイドルのような存在で非常に人気の高い職業でした。
しかし、現在では人気が高いとはいえないのが現状です。それは特に次世代を担う若者が激減してしまっているからです。そのため受注される仕事そのものは減っていませんが、そもそものこなせる人が少なくなっています。
将来人手不足が予想されているので、将来的に需要は高まると予想されており、そうなると将来的に給与が上がることも予想できるでしょう。
宮大工として活躍した著者が書いた本です。
宮大工には、古くから特殊な技能が伝承されてきました。日本の最も古い木造建築である法隆寺には古くから伝承された技術が詰まっています。この本には、そんな古くから伝えられている知恵と技術が多く紹介されています。
著者は、法隆寺の金堂の大修理や法輪寺三重塔などを復元に携わった人物。そのため、その技術や職人気質について知りたい方には特におすすめの本となっています。
- 著者
- 西岡 常一
- 出版日
宮大工として、自然を取り込み、木とともに生きるための心意気が熱く語られている本書。現代人が忘れかけている伝統的な日本の文化や技術の奥深さを知ることができるでしょう。
また、飛鳥時代に建築された法隆寺を実際に修理するにあたり、なぜこのような構造になっているのか、どんな工夫がなされているのかをきちんと解説してくれているので、読むだけで非常に勉強になります。
25年の大工経験を持つノルウェイ人が著者が書いた本です。そのため、北欧の伝統的な技術について知ることができます。
作業日記のように書かれた本なので、非常に読みやすくどんな仕事をしているのかが詳しくわかります。実際に自分が仕事をしているような臨場感を味わうことができるのが本書の特徴です。
- 著者
- オーレ・トシュテンセン
- 出版日
- 2017-09-29
この本の中で紹介されているのは、ノルウェイで100年以上の年月が経過したアパートの屋根裏部屋を回収して、増築する工事についてです。
建築に関する専門用語についても非常に詳しく説明されているので、これから大工になりたいと考えている人にはピッタリの本です。
著者は、ノルウェイで個人経営の工務店を営んでいて、入札で得た仕事の下請けをしているそうです。華やかにみえる仕事の過酷さまでリアルに描かれています。
一般に、大工の仕事を全部自社でおこなうのはコストがかかるため行われません。しかし、建築の全行程を外注することなく、完全に内製でおこなっているのが平成建設です。
そんな企業の社長である秋元久雄が書いた本書では、新しいスタイルが提唱されています。平成建設には、一流大学や大学院生がこの職業に就きたいと言って入社してきます。そんな会社がどんな風に職人を養成しているのかについて非常に詳しくわかる本です。
人材育成という視点でも参考になることがたくさん書かれています。
- 著者
- 秋元 久雄
- 出版日
- 2009-08-21
業界の異端児と呼ばれる建設会社の平成建設では、一人ひとりの社員が自律的に生き生きと働けるような会社づくりをしているそうです。そうして、徹底的に仕事を合理化したことによって全ての大工仕事を内製化することに成功しています。
そして現在の大工のあり方にも警鐘をならしており、もっと合理的にしたいと著者は主張しています。先輩だから偉いとか、棟梁だから指示するだけではこの世界は成り立ちません。
精神論で技術を伝承していくのではなく、徹底的な合理性を通じて知識を伝承していくことが大切だと主著する本書は説得力があります。
大工になりたい方は、長年の修行が必要になることを覚悟しなければなりません。外での仕事になることも多いので大変な仕事です。そして、匠の技を身に付けるためには長い期間の修業が必要なのはもちろんですが、精神的にも鍛えていかなければなりません。まずは上で紹介した本を読んで、活躍するための知識や心構えを身につけてみてはいかがでしょうか。