ケーキを初めとした洋菓子は、誕生日やクリスマス、誰かの家への手土産などとても身近で親しまれた存在ですよね。おいしく、美しいお菓子を提供するパティシエになるためには、どのような道があるのでしょうか? 華やかで厳しい、でもやりがいのある、パティシエという仕事の道のりを見ていきましょう。
まず、パティシエとはどういう職業のことを指すのでしょうか?
パティシエはフランス語で「菓子製造人」という意味です。ふつう洋菓子の製造をする人のことを指します。
日々のお菓子の製造や、新商品の考案、クリスマスや結婚式といったイベントへの商品の提供など、その仕事は多岐におよびます。
そのなかでも重要なのは、「毎日同じ味のお菓子を作る」こと。気温や材料の状態をよく考慮して、質の高い、同じ味のお菓子を日々作ることによって、「あのお店の味」「あのレストランの味」が出来ていくのです。
そんな彼らの職場は、街の洋菓子店やホテル、レストランなどです。
少人数の専門店では、一人で生地作りからデコレーションまですべてを作ることもありますが、大きなお店では「生菓子担当」「焼き菓子担当」と、仕事が分担されているケースも。レストランのデザート担当として働いている場合は、コース料理の最後、「アシェットデセール」と呼ばれる、お皿に盛ったデザートを作るのが主な仕事です。
給料は、一般的に年収200~300万ほどです。初任給の相場はおよそ15~18万円。企業に勤務する場合はチーフ、リーダーなど役職がつく場合もありますが、それでも年収は500万円届くかどうかというところでしょう。
アルバイトを掛け持ちし、それぞれのお店の経営方針や技術を学ぶ、という働き方をするパティシエもいます。この場合は時給換算となりますので、年収にはおよそ200~400万円と幅があります。
いずれにせよ、素材の調達から仕込み、後片付けまで、早朝から深夜まで勤務される方が多いようです。華やかなお菓子の裏には、多くの苦労があるのですね。
それでは、どうすればパティシエになれるのでしょうか?
実は、パティシエになるために必要な資格は特にありません。そのため未経験者でも、お店で実践を通じて技術を磨けば、なることが可能です。しかし一般的な志望者は、高校卒業後に製菓や調理の専門学校へ通い、卒業後洋菓子店やホテルに就職します。
専門学校は、実習を重視していたり、就職や留学に力を入れていたり、社会人向けの夜間コースが設置されていたり、と、それぞれ特色があります。校風やカリキュラムも違いますので、自分に合った学校を選びたいですね。
関連する資格としては、「製菓衛生師」と「菓子製造技能士」があります。製菓衛生師は、菓子を作る際の公衆衛生や安全管理の知識、菓子製造技能士はお菓子づくりの高い技術を持っているという証明になります。
製菓衛生師の受験には養成施設での1年以上の学習経験、または2年以上の実務経験が必要です。菓子製造技能士は1級と2級があり、所定の学校を卒業もしくは職業訓練を受ければ2級が受験できます(実務経験のみなら2年以上)。
パティシエが働く菓子製造業営業施設は年々増加しており、平成28年度末には全国で162,418施設。10年前に比べ約4万件増加しています。今後も活躍の場は増えていきそうですね。
どのような人がパティシエに向いているのでしょうか?
それは「お菓子とお菓子作りが好き」で「毎日コツコツとレシピや素材作りに向き合う忍耐強さがある」人です。体力があることも重要です。
早朝から商品を作り、新しいお菓子を考案し、深夜まで次の日の商品を仕込み、と毎日忙しいパティシエ。1日中立ち仕事で、火傷はも日常茶飯事です。クリスマスやバレンタインなどの繁忙期は寝る間もありません。
そのようなハードな日々のなかでも、もっと美味しく、もっとみんなに喜んでもらえるスイーツを作るにはどうすればよいのか、と、常に前向きに取り組める人が向いているでしょう。
- 著者
- オーボンヴュータン 河田 勝彦
- 出版日
- 2018-01-15
著者は世界的に有名な、「オーボンヴュータン」のオーナー、河田勝彦。
40年間手を抜かず作り続けてきたフランスの伝統菓子や生菓子などの紹介とともに、自身の生きざまや仕事への哲学が語られています。
「おいしいものは、複雑ではない。」「お金をもらうなら、ちゃんと仕事をしろ。ここは戦いの場である」といった、一流パティシエの仕事に対する心構えには、誰もが背筋を伸ばすことでしょう。
苦難の道のりとともに紹介される河田の思い出のレシピには、美味しそう、という率直な感想を誰もが持つはず。パティシエを目指す人のみならず、夢を追うすべての人におすすめしたい一冊です。
- 著者
- 輔老 心
- 出版日
- 2015-03-23
メディアにも引っ張りだこの超有名パティシエ、辻口博啓。
世界大会で何度も優勝した経験を持つ彼が、そもそもこの仕事を目指したきっかけは?いかに修行してきたのか?小学生にも大人気のパティシエという職業の一線で活躍する彼の原点を、本書は徹底的に暴いています。
和菓子屋の跡取り息子として生まれた辻口が、幼い日に友人の誕生日会で初めて口にしたショートケーキ。その美味しさのとりこになった彼は、それから来る日も来る日もノートにケーキのアイデアを書き続けます。
好きなものに出会い、世界一のパティシエまで上り詰めた辻口の、夢いっぱいのストーリー。小学校低学年から、大人まで幅広く楽しめる一冊です。
- 著者
- 小山進
- 出版日
- 2012-11-01
決してアクセスがいいとはいえない兵庫県三田市で、「小山ロール」「小山プリン」を販売し、大人気となったエスコヤマ。その生みの親である小山進の仕事哲学がたっぷり詰まった本です。
ロールケーキの売り上げ1日1600本という化け物のような実績は、いかに打ち立てられたのか。その理由を考えた時、仕事人として、日々ルーティンワークを真剣にこなす一人のパティシエの姿が見えてきました。「自身が自身の商品の一番のファンでいる」「一つ一つの商品にじっくり丁寧に取り組む」といった、真摯な仕事への取り組みに、誰もが感銘を受けることでしょう。
簡単なようで難しい、日々の「丁寧」の積み重ね。どのような職種の方にも、自分の仕事における基本とは何か、何をすべきか、あらためて見直させる一冊です。
いかがでしたでしょうか?華やかで、厳しくもあるパティシエの世界ですが、お菓子で人を幸せすることのできる、素敵なお仕事ですね。興味のある方はぜひ本を読んで、一流の考え方も学んでみては?