時はまさに世紀末!なアクション作品である本作において、もっとも聖人君子に近い存在。実はラオウも恐れるほどの、技の使い手なのです。有名なキャラではありますが、彼が一体どのような人物かあらためて掘り下げて、その実像に迫ってみたいと思います。 ちなみに、この名作をスマホアプリから無料で読むこともできるので、そちらもぜひチェックしてみてください!
北斗二千年の歴史のなかで、もっとも華麗な技を持つ男。
このキャッチフレーズでおなじみのトキは、ハードボイルドアクション漫画である『北斗の拳』に登場する人物です。シリーズとおして登場するレギュラーではないものの、主人公らを精神的に導く重要キャラクターで、年齢は24〜26歳だとされています。意外と若いですね。
- 著者
- ["原 哲夫", "武論尊"]
- 出版日
核戦争によって荒廃しきった近未来。文明は崩壊し、暴力と恐怖が支配する時代となっていました。物語は主人公・ケンシロウの強敵との戦いを中心に、乱世で懸命に生きる人々の姿が描かれていきます。そのなかでトキは、特に優しさを感じさせるキャラで聖人とも称される人物なのです。
彼は、ケンシロウと同じ秘伝の暗殺拳「北斗神拳」の使い手です。単なる兄弟弟子というだけでなく、一子相伝の思想から彼らは義兄弟の契りを結んでおり、2人を含む北斗4兄弟は、浅はかならぬ因縁で結ばれています。
- 著者
- 出版日
- 2007-12-08
当初は黒髪でしたが、とある事情から白髪になっており、優しい性格や、人助けの治療などしていること、さらに枯れた容姿とあわせて仙人や聖人のように描かれることが多いです。
その高潔な精神性からファンの人気も高く、本編前日譚となるスピンオフ作品『銀の聖者 北斗の拳トキ外伝』の主人公にもなっています。
もっとも高い知名度を誇るテレビアニメ版では、声を土師孝也が演じました。その他、主要人物を掘り下げる2000年代の映画版『真救世主伝説 北斗の拳』シリーズでは配役が変わって、堀内賢雄が担当しています。
ラオウ、トキ、ジャギ、ケンシロウは義兄弟です。しかし、そのなかでも、ラオウとトキは実の兄弟でもありました。暴君で「剛の拳」の使い手である兄・ラオウ。それに対して平和を愛し、「柔の拳」の使い手だった弟・トキ 。同じ兄弟であっても、すべてが正反対であったといっても過言ではありません。
- 著者
- ["原哲夫", "武論尊"]
- 出版日
切磋琢磨して競い合っていた兄弟。普段は野心とは無縁に思えるトキですが、この時ばかりは野心を持って、強い兄の背中を追いかけていました。2人の絆は固く、道を踏み外した時には自分を倒してくれ、とラオウがトキに頼むほどだったのです。
しかし運命が2人を分かち、やがて大きく異なる道へと歩き出します。そして、ついには争うことに……。後にも出てきますが、彼らの涙の戦いは、まさに必見です。
ラオウについては<『北斗の拳』ラオウの知られざる11の事実!暴君の身長体重、最後、名言まで>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
北斗神拳は一子相伝の暗殺拳です。師父と呼ばれる先生が、これはという候補者から1人だけ見出し、奥義を伝授するのが代々の習わし。
劇中の代での候補者は4人いました。ラオウ、トキ、ジャギ、ケンシロウです。義兄弟の彼らは俗に北斗4兄弟とも呼ばれます。そのうちで最も強かったのが年長者である、長兄ラオウでした。ラオウの実弟である彼は、そんな彼を目指して修行に励みました。
ラオウは誰よりも強かったのですが、候補者から外されました。それは彼が、相対した者に否応なく死をイメージさせる、破壊的な「剛の拳」の使い手だったためです。いくら強くても暗殺拳には向かないわけです。
そして彼は、北斗神拳史上最も華麗な使い手でした。恐怖を与える剛の拳に対して、快楽によって死を受け入れさせる技巧の極地「柔の拳」です。相手の攻撃を受け流すというのが特徴です。その強さもさることながら、剛の拳には決して理解出来ない有り様に、ラオウは恐怖すら覚えました。
その腕前から限りなく伝承者に近い男でしたが……残念なことに核戦争が起こって被爆し、病を患い候補者から脱落しました。
彼は伝承者候補脱落後、北斗神拳の秘孔の極意を医療に転用し、各地を巡り始めました。その能力で平和に貢献しようとしたのです。
彼の人生は、どこまでも暗殺拳とは正反対の、人を生かすあり方でした。
彼は北斗神拳伝承者候補として学び、多くの技を修めました。そのキレや独特な技は、主人公ケンシロウや強敵ラオウすら上回っています。
特に彼の代名詞として語られるのが「北斗有情破顔拳」と呼ばれる奥義です。対象に触れることなく闘気で秘孔を突き、苦痛ではなく快楽で死に至らしめる絶技。劇中では座った状態で、まるで拝みの動作のごとく雑魚敵を葬りました。
彼は他にも「北斗有情断迅拳」という技も見せます。
北斗神拳には頭部を破壊する「北斗破顔拳」という似た名称の技があるので、おそらく既存の技をアレンジする形で昇華したのが一連の「北斗有情拳」なのでしょう。
彼は重要人物として描かれますが、劇中に描かれるまで展開が二転三転しました。最初にトキとして物語に現れたのは、実は彼本人ではなかったのです。
偽物は彼になりすまし、聖人の名を汚す非道な行いをしていました。偽物の名前はアミバ。ラオウの部下にして、元南斗聖拳の門下生でした。
最終的にアミバは自身を天才と称する道化に成り下がりましたが、正式に学んだわけでもない北斗神拳をトキ並みの威力で繰り出すなど、意外に自信に違わない実力者でもありました。
では彼本人はどのように登場したかというと、なんと難攻不落の監獄カサンドラの囚人としてでした。一時は北斗神拳伝承者とも目され、ラオウにも一目置かれる存在。悪行などするはずもない彼がなぜカサンドラに?
実はこれはラオウの思惑だったのです。ケンシロウとトキの出会いを避けるため、密かに手を回して収監していたのです。
それでももう1つ腑に落ちない点があります。彼ほどの実力があれば、容易に脱獄出来るのでは?
そこには彼の思惑が隠されていました。彼はケンシロウを探していたのですが、広範囲を当てもなく彷徨うより、カサンドラで待った方が確実に会えると考えたのです。そして彼の病状も理由の1つです。
核爆発の放射能で被爆した彼は、そのせいで不治の病となりました。どうしてそんなことになったのでしょう。その様子が語られるエピソードがあります。
まだ世の中が平和だった時代、主人公ケンシロウと彼の恋人ユリアはひっそりと付き合っていました。義兄である彼はそれを温かく見守っていたのですが、そこで核戦争が勃発。危機を察知した彼らは核シェルターへと非難するのですが、そこで悲劇が起こるのです。それは、エレベーターの無慈悲な定員オーバー。
彼はケンシロウに希望を託し、自ら外に残って扉を閉めます。そして、死の灰を浴びてしまったのでした。
ファンの間で語り草になっているのですが、この話に出てくるシェルターの描写では、どう見てもまだ余裕があるように見えました。散々言われてることを制作側も承知なようで、後年の映画版ではそのシーンはシェルターそのものではなく、シェルターに通じるエレベーターに変更されました。
先述したように、彼は不治の病で北斗神拳伝承者候補から脱落し、放浪の旅に出発。
人々を救って回っていた彼は、とある村に行き着きます。そこは負傷して歩けなくなった者、病気でただ死を待つばかりの病人が溢れる村でした。まるで姥捨て山のように、見捨てられた者達が置き去りにされていたのです。
もちろん優しい彼が見捨てるはずもなく、彼らは秘孔の治療で快復し、絶望が覆っていた村は奇跡の村として蘇りました。
この後、ラオウの介入でアミバが成り代わり、凄惨な事態を迎えることになりますが……。
「聖帝」を自称する、冷酷非情な男・サウザー。戦いにおいて強いだけでなく、頭も切れる強敵です。そんな彼には、ある秘密がありました。それは、北斗神拳が効かないことです。このことと、南斗最強ともいわれる強さゆえに、あのラオウですら戦いを避けたほどでした。
- 著者
- ["原 哲夫", "武論尊"]
- 出版日
実は北斗神拳が効かないのには、彼の体の作りに理由がありました。それは、心臓と秘孔の位置が左右逆についていること。これによって正確な秘孔の位置に当たらず、技が効かなかったのです。
しかし、トキはこの秘密を見破っていました。それは一体どうしてでしょうか。
北斗神拳が効かないと最初から知っていたのは、彼とラオウの2人だけ。このことから、サウザーも含めた3人が接点を持っていた修行時代に、彼らがこの秘密を知った可能性が高くなります。
ラオウは結局、彼の秘密を見破ることはできませんでした。しかし医療に精通していたトキは、彼が「内臓逆位」なのではないかと考えたのです。
以前サウザーが医療機関にかかっていたことを思い出し、トキは彼のカルテを探し出します。その結果、自分の考えが正しかったことがわかり、サウザーの秘密を突き止めたのでした。
- 著者
- ["原哲夫", "武論尊"]
- 出版日
トキは病に冒され、在りし日より弱体化していました。しかし、ラオウの暴虐に耐えかねた彼は、無理を押して決死の勝負を挑みます。
ラオウと対等に戦うために彼は秘孔、刹活孔を突きます。自信の命と引き替えに、ラオウと同等の剛の拳の威力を得る秘術です。
ところが病の進行のため、彼の体は限界を超えてしまいます。一命と必殺で挑んだ刹活孔でも勝つことは出来ませんでした。その悲壮な姿は、非情なラオウが昔日の力量を偲んで、敵であるにも関わらず涙するほどでした。
死の病に冒され、さらに刹活孔まで使った彼の命は長くありませんでした。戦士として死んだも同然の彼は、ラオウの温情で短い余生を過ごすことになります。
しかし、その最期も壮絶なものとなりました。
奇跡の村の時と同様、死の間際にも人々を癒やして回っていた彼は突然、泰山天狼拳のリュウガに襲われます。それは肉親ともいえる彼を葬り去ることで、ケンシロウの覚醒を促すためでした。
真意に気付いた彼はリュウガに討たれ、全てをケンシロウに託して息絶えるのでした。
ジャンプコミックスで13巻、完全版で7巻の出来事でした。
- 著者
- ["原 哲夫", "武論尊"]
- 出版日
『北斗の拳』において一際異彩を放つ聖人と呼ばれる彼の、どこか達観した名言をご紹介したいと思います。含蓄のある言葉はどれも名言と呼ぶに相応しい台詞ばかりです。
第5位:
「この定められた男の命が、次の時代の礎となるならば本望」
(『北斗の拳』13巻より引用)
限りある命を無為に費やすのではなく、平和のために有効に使う。彼はそう考えて、己の身と引き替えにケンシロウの覚醒を促しました。真に人と時代を憂う覚悟が見て取れる言葉でした。
第4位:
「激流を制するのは静水」
(『北斗の拳』8巻より引用)
ラオウと対となる「柔の拳」の彼だからこそいえる台詞です。せせらぎのごとき穏やかな心境、それこそが有情拳の本質なのでしょう。
第3位:
「愛するがゆえに見守る愛もある……」
(『北斗の拳』7巻より引用)
彼もユリアを愛していました。仮に情熱の言葉でアプローチするのが「押す」愛とするなら、見守る愛は身を「引く」愛。自分本位ではなく、他者を尊重する愛です。どちらがいい悪いという話ではなく、これもまた純粋な愛の形なのです。
第2位:
「せめて痛みを知らずに安らかに死ぬがよい……」
(『北斗の拳』5巻より引用)
戦いの最中にあっても、敵対者に労りの心を見せる彼。北斗有情拳(北斗有情破顔拳)とともに使われたこの言葉は、やはり印象的なものでした。
第1位:
「ケンシロウ……命は投げ捨てるものではない」
(『北斗の拳』8巻より引用)
彼がラオウ打倒のため血気に逸るケンシロウを窘めたシーンです。例え正しい行動だとしても、勝算もなく突っ込むのは勇気ではなく無謀。近視眼的に突き進めば大局を見失って本来の目的も失い、希望も潰える。彼の優しさと厳しさ、どちらも感じられる名言といえるでしょう。
トキについては<漫画『北斗の拳』の人格者・トキとは?その聖人のような性格を徹底解説!>の記事でも紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
いかがでしたか?聖人トキは、やはり聖人でした。産まれる時代が違えば、もしくは病さえなければ、彼が救世主になっていてもおかしくなかったでしょう。