さまざまな困難に直面している人々の相談にのり、援助するケースワーカー。その仕事内容は実に多様で幅広いものです。今回はその仕事の内容や年収、なる方法や類似業との違いなど、くわしく調べてみました。関連する本も最後にご紹介しているので、ご参考ください。
ケースワーカーという職業・名称はとても曖昧で、「ケースワーク」に携わる人をこの名称で呼びます。ケースワークとは、病気や心身に障害をもつ人、あるいはその家族などといった、生活を送るにあたって課題を抱えている人々の相談にのり、サポートをするという意味です。
日常で私たちが「ケースワーカー」という言葉を使う場合、それは公的機関の福祉事務所で働く人のことを指します。地方公務員として、生活保護に関する対応をおこなうのが彼らの主な業務です。またその他にも、児童相談所や老人福祉施設などを対象に、地域住民の悩みを聞き相談役となっています。
少子高齢化社会や長引く不景気といった時代の変化とともに、生活保護に関する相談や、実際にそれを必要とする人の援助など、公的機関におけるケースワーカーの需要はますます高まっています。
また、公務員としてではなく民間施設で働く場合もあります。病院などに籍をおき、医療と社会福祉をつなぐ役割を担ったり、ときには福祉施設の現場業務に携わることもあるのが特徴です。彼らの場合、必ずしも「ケースワーカー」という呼称が使われるとは限らず、「ソーシャルワーカー」「児童相談員」「生活指導員」など、具体的な業務内容に沿った呼称が使われることが多いです。
あまり知られていませんが、精神科病院も主要な就労先といえます。かつて精神疾患を抱える人々は、長期入院が当たり前で、長く社会から隔離された生活を送ってきました。しかし時代の変化とともに現在では、精神に障害をもつ人も治療を続けながら、地域の一員として生活したり就労したりすることが大切であると考えられており、彼らをサポートするという重要な役割の一端を担っています。
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ケースワーカーで、特に公務員として従事する場合は年収おおよそ300万円~400万円程度です。生活保護に関する業務に携わる場合には特別手当が支給されることもあり、そういった業務を主とする生活支援課ではアルバイト(非常勤職員)の募集も積極的に行っています。
その場合の給与としては、社会福祉主事任用資格の手当を含めて時給1000円~1200円程度、実働7時間と仮定して日給7000円~8500円程度というのが一般的。
民間施設で働く場合の給与形態はさらに多様ですが、おおむね公務員として働く場合と同水準に設定されていることが多いです。
ソーシャルワーカーとは、社会福祉の仕事に携わる人の総称であり、近年は国家資格である「社会福祉士」を保持している人を指すことが一般的です。その業務内容や働く場所により「メディカルソーシャルワーカー」「精神科ソーシャルワーカー」などさまざまな通称で呼ばれていますが、公的機関で働くケースワーカーも、いわばソーシャルワーカーの一部といえます。
社会福祉にかかわる仕事として大きく「ソーシャルワーカー」という呼称があり、その中に国家資格をもつ「社会福祉士」や、社会福祉主事資格をもち主に公的機関で働く「ケースワーカー」が存在するという認識が一般的です。そしてまた、仕事の内容はその名称よりも就労先、たとえば役所、病院、児童養護施設や老人福祉施設などによって異なるというのが実際のところです。
呼称に関しては明確な線引きはなく、社会福祉士の資格をもっていても、就労先によっては「ケースワーカー」と呼ばれることもめずらしくないよう。いずれも、病気や怪我、障害などにより日常生活を送る上で困難に直面している人やその家族の相談にのり、サポートするという共通の役割を担っています。
一方で、「ケアマネージャー」と「ケースワーカー」とでは明確な違いがあります。「ケアマネージャー」は「ケアプラン」というものを作成するのが1番大きな業務です。
「ケアプラン」とは介護分野の専門的な知識を活かして、要介護者の抱える問題点を明らかにするとともに、その問題解決に向かったプランを立てることです。こうしてできあがった「ケアプラン」にあわせて、要介護者やその家族と介護事業所を繋げます。専門知識が求められるため、「介護支援専門員」という資格が必要です。
ケースワーカーは幅広く「社会福祉」に関する相談員としての役割を担う一方、ケアマネージャーはより深く専門的に「介護領域」にかかわる仕事であるといえます。
地方公務員などの公的機関における「ケースワーカー」の場合、「社会福祉主事任用資格」を取得する必要があります。
そのためには、大学あるいは短大の社会福祉学系の学部で必要な科目を履修するか、厚生労働大臣指定の養成機関において講習を修了しなければなりません。 なお、「社会福祉士」、もしくは「精神保健福祉士」の資格をすでに取得していれば、社会福祉主事任用資格があるとみなされます。
そして社会福祉主事任用資格を取得後、各自治体による地方公務員試験に合格し、社会福祉主事として配属されると、晴れてケースワーカーとして働くことができるのです。
アルコール依存症や少年犯罪といった現代を象徴する家庭問題、少子高齢化、生活保護世帯の増加といった社会問題が取りざたされている昨今、この職業の需要はますます高まっています。
対象者やその家族が抱える困難や課題も多様化されており、その解決のためにはあらゆる法律や制度といった社会制度の活用が必須となります。今後ますます幅広い知識と専門性が必要とされる職業となるでしょう。
- 著者
- 碇井 伸吾
- 出版日
- 2014-06-10
著者は「熱血ケースワーカー」と呼ばれた碇井伸吾。高齢者、生活保護受給を担当し、対象者と体当たりで接してきた彼の体験談が記されています。
本著では、31のケースが紹介されています。アルコール依存症患者や、覚せい剤常習者、ゴミ屋敷の住人や、生活保護費の不正受給者などなど……。
ときには彼らと対峙し、ときには親身になって支え、どれほど時間がかかろうとも向き合い、サポートする「熱血ケースワーカー」の姿は、この職業を志す人だけでなく、複雑化した現代社会を生きるすべての人の胸に響くことでしょう。そして、誰もが知っておくべき現実であるともいえます。
ケースワーカーの実態を知ることができる一冊です。
- 著者
- 久田 恵
- 出版日
貧困に苦しむ人々と、生活保護制度に焦点を当て、7年もの取材期間を経て刊行されたルポルタージュ。実際に現場で働くケースワーカーの体験談をもとに書かれています。
生活保護制度とは、生活保護費を支給することがすべてではなく、社会で孤立してしまった人々の生活に寄り添い、再起と自立を促す事業です。この再起と自立を促すことがいかに難しいか、そう思わずにはいられなくなる内容です。
精神疾患やアルコール依存症、ホームレスなど、「社会に出てうまく生きることができない、順応できない」という、貧困を生みだす根本についても考察し、そういった困りごとの相談に乗り、社会復帰や就労をサポートするケースワーカーという仕事の実際と、その過酷さ、そしてやりがいも伝わる一冊。
生活保護制度の課題や、現場で働く彼らが抱える疑問についても赤裸々に語られています。
- 著者
- 柏木 ハルコ
- 出版日
- 2014-08-29
福祉事務所に配属された新卒公務員であり新米ケースワーカー・義経えみるが、生活保護費受給者や、支給を希望する生活困窮者とかかわり、その暮らしを目の当たりにしながら、制度について学び、考え、奮闘していくフィクション漫画。
新聞各紙やメディアにも注目作として取り上げられ、ケースワーカーはもちろん医療・福祉関係者にも注目されている作品です。
痴呆がすすむ独居老人や、一刻も早く生活保護制度を受ける生活から脱出したいと頑張りすぎる人、一方で「もらって当然」といった態度をみせる人など、生活保護制度をとりまくさまざまな人間模様が描かれています。
「迷惑をかける自分」に苦しみ、なんでもないタイミングでふっと命を絶とうとする人や、そのギリギリで踏ん張っている人といった、深刻な問題についても触れられ、ケースワーカーという仕事の難しさと責任の重さ、苦しみながらも割り切らなければならないつらさなど、そのリアリティに感情移入してしまいます。
絵柄もきれいで読みやすく、巻末には生活保護制度についての解説も掲載されています。