本作の事実上のラスボスといえる強敵。まさに、悪の帝王。それが修羅の国の羅将、カイオウです。今回は、そんな彼についてご紹介したいと思います。 ちなみにこの名作がスマホアプリで無料で読めるので、そちらもおすすめです!
本作は原作漫画だけでなく、テレビアニメでも知られ、その影響から一大ムーブメントが巻き起こった80年代を代表する作品です。
主人公・ケンシロウが一子相伝の暗殺拳、北斗神拳で強敵と戦う痛快アクションと、主要キャラ1人1人にあてがわれた悲痛なエピソードで人気を博しました。
ケンシロウについては<『北斗の拳』ケンシロウはクズ?負けた相手や意外な秘密まで12の事実を紹介>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
- 著者
- ["原 哲夫", "武論尊"]
- 出版日
そのなかでカイオウは、本作の第2部・修羅の国編でのラスボスを務めた男です。比類なき巨体、常に身に纏う黒衣の鎧からは途轍もない威圧感があります。しかし近年では、そのメンタル面の弱さから、強さに疑問詞の声が上がることもしばしば。
また、ある理由から、前半の宿敵ラオウと似た容姿なのですが、彼と違って眉間から頬にかけて、逆V字型の傷があるのが特徴。そして、もっとも有名なテレビアニメ版の声優が、内海賢二。こちらも、なんとラオウと同じなのですが……。
上記でラオウとの関連を示唆してきましたが、実のところ2人は血の繋がった兄弟。
カイオウがラオウの実兄ということは、必然的にトキの兄でもあるわけです。
ラオウについては<『北斗の拳』ラオウの知られざる11の事実!暴君の身長体重、最後、名言まで>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
- 著者
- ["原哲夫", "武論尊"]
- 出版日
また彼には、まったく似ていないサヤカという美しい妹がいます。彼とラオウは瓜二つですが、トキはラオウと似てるとはいえないので、トキとサヤカは母親似なのでしょう。
あるいはカイオウとラオウ、トキとサヤカとで腹違いの異母兄妹である可能性もあります。
本作では彼らが修羅の国出身にも関わらず、トキが自身の親の墓と呼ぶものが日本にあるなど、後付け設定による弊害がいくつかありました。しかし腹違いと考えれば、多少矛盾が緩和されるでしょう。
彼の威圧感は、普段身に付けている黒い鎧姿によるとこが大きいです。ですが、それを外したとしても、気迫は一切衰えません。むしろ増大します。
それは彼の身に付けた、禍々しい魔闘気という独特なオーラによるもの。
ケンシロウなどが使う通常の闘気とは完全に異なるオーラで、魔界と呼ばれる極地に達した者だけが可能な忌まわしい技。魔界とは、たとえば地獄のような別世界ではなく、憎しみの心境の最北を意味する言葉です。
北斗神拳が、哀しみの果てに無想転生を体得するのと似た関係といえるかもしれません。彼ほどの魔闘気の使い手ともなれば、それ自体が他を圧する絶後の攻撃ともなります。劇中ではただ立っているだけでも噴出してしまうそれを抑えるために、鎧を身につけているといわれているのです。
彼が使うのは北斗神拳(正確には北斗宗家の拳)から派生した魔道の武術、北斗琉拳です。もう少し詳しくいえば、本作の過去を描いた『蒼天の拳』にも登場する、北斗三家拳の1つ・北斗劉家拳が発展、継承されたのが北斗琉拳ということ。
北斗琉拳は修羅の国では支配的な武術で、何人かの使い手が登場しますが、カイオウの力量は桁違い。彼が正道、本家筋である北斗神拳を憎んでいることも相まって、ケンシロウと相対した時には凄まじい威力を見せました。
彼の魔闘気を用いた技は、威力において北斗神拳を上回り、暗琉霏破(あんりゅうひは)は同質の技である北斗剛掌波より数段上です。
特にケンシロウ、引いては北斗神拳破りをなした奥義の暗琉天破は、当時の読者に拭えない絶望感を植え付けたことでしょう。
彼は北斗神拳、さらに北斗神拳に関わる者すべてに、強い憎悪の念を抱いています。その憎しみ方は尋常ではありません。これは彼の過去の出来事に原因があるのです。
彼は幼いころから、傍系の血筋として本家の北斗宗家を立てるよう教育されてきました。どれだけ実力があろうとも、決して認められない。不遇な少年時代が野心と反骨心を育てていきます。
そして、決定的な出来事が起こりました。ある時、なんらかの戦争の余波で北斗宗家の宮殿、凱武殿が炎上する事件があったのです。彼の母は本殿に北斗宗家の子達が残されたことを知って、我が身を省みず飛び込み、彼らを救出しました。
傍流の命は、北斗宗家のためにある。その事実が彼を狂わせたのです。また、その時に彼の母が救い出した北斗宗家の子の2人のうち1人は、幼いケンシロウでした。
彼が北斗神拳に固執するのは、こういった事情があるからだったのです。
彼ら2人どっちが強いか。本作の絶対悪である、2人に関するこの議論は、今まで多くの意見が飛び交ってきました。
実績だけで見てみると、カイオウが強いといえるかもしれません。彼は、究極の奥義といわれる無想転生の使い手・ケンシロウを負かした相手だからです。まさに完敗ともいえる戦いでした。しかし彼に負けたケンシロウいわく、カイオウはラオウに勝てないのだそう。それは一体なぜでしょうか。
流派で考えてみると、カイオウの流拳はあまり発展しなかった拳法です。それに対しケンシロウやラオウの北斗神拳は、研究などを重ねて進化していった拳法。単純に流派だけで考えるなら、ラオウの方が上でしょう。
さらにラオウは、哀しみを得ることで強くなろうと努力をしてきました。けっしてよい方法とは言えませんが、無想転生の力を手に入れるために、愛する女・ユリアにすら手にかけようとしたほどです。
一方カイオウは哀しみから逃れるため、それを憎しみに変えて生きてきました。その他にも作中に出てきた戦いの数なども含めて考えると、僅差ではありますが、ラオウの方が強いといえるでしょう。
まさに、恨み骨髄。2人の直接対決では、積み重なった負の感情が魔闘気となって炸裂しました。
カイオウに至るまでケンシロウも苦戦しましたが、読者にとってはケンシロウこそがヒーローです。しかも、第1部を通じて強大な敵として描かれたラオウを破った主人公。その無敵の無想転生が、まさか魔道の前に屈するなど考えるわけもありません。
- 著者
- ["原 哲夫", "武論尊"]
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ですが、そこで巻き起こる、まさかの北斗神拳破り。サンスクリット語の梵字がかけ声となって放たれた暗琉天破が、無想転生を無力化してしまいました。カイオウと北斗琉拳が、ケンシロウの北斗神拳を完膚なきまでに破った瞬間でした。
その後ケンシロウは再起して、カイオウの打開策を探すのですが……。
魔道に堕した彼は、その所行も悪魔的。目的のために手段を選びません。
先述したように、彼にはサヤカという妹がいます。彼女にはヒョウという恋人がおり、そのヒョウは、カイオウの部下でした。
彼は、ヒョウをケンシロウ打倒に焚き付けるため、自ら妹を殺すのです。これは、ただぶつけるのではなく、憎しみ合わせるためでもありました。実はヒョウこそ、彼の母に救われたもう1人の北斗宗家の子で、ケンシロウの実兄だったのです。
とはいえ、恨みのために肉親を手にかけるところは、外道と言う他ないでしょう。
彼の最後も、また鮮烈なものでした。
北斗宗家の聖地で行われた最終決戦。そこで彼の秘拳が披露されるのですが、ケンシロウの口から思わぬ秘密が暴露されます。
凄まじい応酬がくり広げられますが、ケンシロウには秘策があったのです。それは聖地の女人像に隠されていた秘密、北斗宗家の拳の受け技でした。これによって彼は封殺され、勝負は決まりました。
最期に彼は呪われた宿命から解放され、過ちを後悔しながら、真の盟友であったヒョウと運命をともにしたのです。
最終的には、ケンシロウによって倒されてしまった彼。1回は勝ったものの、何が勝敗を分けてしまったのでしょうか。その理由を、勝手に考察してみたいと思います。
主人公のケンシロウは、自らのためだけでなく、周りにいる愛する者たちのために闘っていました。周りの人々の存在を原動力に変え、自らの力にしていったのです。
一方でカイオウは、北斗神拳の継承者に選ばれなかったというショックから、北斗神拳を滅ぼすために力を使ってきました。いわば、自分自身のためです。まず、ここに大きな違いがあるといえるでしょう。
また、彼には世界征服以外の具体的な目的はありませんでした。修羅の国で待ち構えて、やってきた相手を倒す。ただそれだけだったのです。ケンシロウのように過酷な旅を乗り越えたり、さまざまな難題に立ち向かったりする経験が極端に少ないままでした。
このような経験値の違い、何より守るべき存在があるかないかが、最後の勝敗を分けたのでしょう。
- 著者
- ["原 哲夫", "武論尊"]
- 出版日
第3位:
「情に縛られ、愛に死す。それが何になる
すべてはおのれを制し、律するもの!!
だが、悪には一切の制限はない!!
悪こそこの世を制覇するのだ!!」
(『北斗の拳』22巻より引用)
彼が己の身を明かして、リンに信条を説く場面でのことです。愛に苦しみ、最後には哀を知って散ったラオウとの対比が、如実に表れた台詞でした。
第2位:
「たとえ天地逆となってもおのれの道は変えぬ!!」
(『北斗の拳』24巻より引用)
向かう道、目指す場所は違っても、彼もまた、ラオウに似た信念の持ち主であることを感じさせる一言。決して譲らない、曲げない心のあり方だけは尊敬出来ます。
第1位:
「ヒョウよ!
また昔のあの幼き頃に戻ってともに遊ぼうぞ!!」
(『北斗の拳』24巻より引用)
正気を取り戻し、憑き物が落ちたかのようなカイオウ。息絶えたヒョウとの心の絆が感じられます。人外の魔人のような彼にも、人の心があったことがわかる感動的なシーンです。彼もまた歪んだ時代で狂ってしまった人間だったのです。
人間的にはともかく、彼は憎きラスボス、北斗神拳最大の宿敵として存分に存在感を発揮しました。そんな彼が劇中で放った数々の発言のなかから、特に印象的なものをご紹介して終わりたいと思います。
暗琉霏破!!
(『北斗の拳』21巻より引用)
こちらは名言というか技名ですが、特に暗琉天破で無敵のはずの無想転生を破り、暗琉霏破で追い打ちをかけたシーンのインパクトは強烈でした。彼は梵字のようなかけ声もしますが、そちらも印象的です。
この世に生きるものすべて、このカイオウのためにあるのだ!!
(『北斗の拳』22巻より引用)
北斗神拳を陥れるため、彼は肉親サヤカすら文字通り切り捨てます。唾棄すべきゲスな行為ですが、この一連のシーンだけで、彼の独善性がはっきりと伝わって来ます。
情に縛られ、愛に死す。それが何になる
すべてはおのれを制し、律するもの!!
だが、悪には一切の制限はない!!
悪こそこの世を制覇するのだ!!
(『北斗の拳』22巻より引用)
彼が己の身を明かして、リンに信条を説く場面でのことです。愛に苦しみ、最後には哀を知って散ったラオウとの対比が、如実に表れた台詞でした。
たとえ天地逆となってもおのれの道は変えぬ!!
(『北斗の拳』24巻より引用)
向かう道、目指す場所は違っても、彼もまた、ラオウに似た信念の持ち主であることを感じさせる一言。決して譲らない、曲げない心のあり方だけは尊敬出来ます。
ヒョウよ!
また昔のあの幼き頃に戻ってともに遊ぼうぞ!!
(『北斗の拳』24巻より引用)
正気を取り戻し、憑き物が落ちたかのようなカイオウ。息絶えたヒョウとの心の絆が感じられます。人外の魔人のような彼にも、人の心があったことがわかる感動的なシーンです。彼もまた歪んだ時代で狂ってしまった人間だったのです。
いかがでしたか?カイオウは憎しみと哀しみの入り交じった恐るべき敵でした。彼の所行は決して許されるものではありませんが、やはり最後にはケンシロウの強敵だったといえるでしょう。