検察官になるためには、司法試験に合格するだけではなく、司法修習なども受ける必要があります。それはこの職業が検察権という強い権限を持っており、それを適切に行使することが求められるからです。 この記事では、検察官の仕事内容をはじめ、警察官の違いなどについて説明した上で、この職業に就くためにはどうしたらよいかを説明していきます。
検察官は法律に違反した犯罪や事件を調べて、その犯人を裁判にかけるのが仕事です。法務省に属する行政官でもありますが、行政からは少し独立した身分保障を与えられています。また階級は、「検事総長」を頂点としていて、「次長検事」、「検事長」、「検事」および「副検事」という5つの職階に分けられています。
仕事は警察から送致を受けた事件に関して、自ら指揮して捜査を行い証拠を集めること。そしてその上で裁判所に訴え、法廷で罪となるような事実を証明することです。
検察官は、検察権と呼ばれる権限を行使できる唯一の職業です。これは検察庁法第6条第1項に「検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる」と定められています。すなわち検察権というのは、刑事事件について操作をする権限や、刑事訴訟を遂行する権限、公訴を提起する権限などのこと。またこの権利は検察庁ではなく、検察官個人が持っている権利です。このことから、検察庁は独任制の官庁とも呼ばれています。
さらに検察庁法第4条において、検察権を行使することがどのようなことであるかについて、以下のように定義されています。
「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、また、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、または意見を述べ、また、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務をおこなう」(検察庁法第4条)
つまり、検察官は、捜査から執行という刑事事件の全般にわたって主要な役割を担う職業です。そのため、責任は重く給与も高いことがほとんどです。検事の平均年収は600万円程度で、年齢とともに給与は上がっていく傾向にあります。
検察官と警察官はまったく違う職業です。その職業に就くためのプロセスも、まったく異なります。
検察官がおこなう公訴の提起や裁判所での証明活動を、警察官がおこなうことはありません。警察官は、検察官が事件を公訴提起するかどうか判断するための証拠を収集することを職務としています。
また、検察官は法務省の特別期間である検察庁の所属で国家公務員に該当するのに対し、警察官は警察庁の職員を除けば都道府県警察の所属で地方公務員に該当します。
このような違いがあるため、警察官になるためのルートと検察官になるためのルートも、雇用体系もまったく異なるものです。以下では、検察官になるには何が必要なのかについて紹介していきます。
検察官になるためには、法科大学院を修了し司法試験に合格した後、司法修習を修了時にある検事への任官試験を受け採用されなければなりません。
そのため、この職業に就くためには、各大学院が実施している入学試験に合格する必要があります。大学によって入学科目などは異なり、試験体系も異なっているため、自分の適性に合った大学院を受験する必要があります。
大学生の頃から法律を学んだ場合と、法学部出身でない場合では試験体系が異なるので注意が必要です。法科大学院を修了した後、司法試験を受けて合格し任官試験で採用されれば、司法修習をおこなうことになります。1年間の司法修習を経て、最終的に検察官に任官されることになります。
司法試験は非常に難易度の高い試験として有名です。平成29年の司法試験の出願者数は6,716人で、そのうち合格者は1,543人。さらに、資格を取得した後も継続して勉強を続ける必要があるので、根気強く法律を学ぶことができる方でないとやっていけない職業です。
検察官になるためのはじめの一冊として最適な一冊。「〰になるにはシリーズ」として様々な職業を紹介している本書は非常にわかりやすいので、この職業を目指す方にぴったりです。
検察官になるためには、非常に長い期間の勉強が必要となります。法学部に入学せずとも大学院に入学することは可能ですが、検察官になる人の多くは、大学生の頃から法律を勉強していることが多いです。まずはきちんとこの本を読んで、司法試験受験までの道のりを体系的に学んでおきましょう。
- 著者
- 三木 賢治
- 出版日
本書はこの職業に就くための道のりを、最高検察庁の協力のもとで執筆されていることが特徴です。また、実際に、この本の著者は毎日新聞社に入社後、警視庁、警察庁、検察庁、裁判所などの取材を担当していた経験があるため、非常に信頼性ある情報が提供されています。
本書の中では、検察事務官に対するインタビューもなされているので、実際に検察官として働く人の生の声をきくことができます。この職業を目指す方なら、ぜひ早いうちに読んでおきたい必読の本です。
本書は、元検事が書いた回顧録です。そのため検事として働いた著者の実際の生活ぶりが克明に描かれています。検事になりたいと考えている人は、仕事内容を詳しく知ることができるのでおすすめです。
検察官になると、全国各地を転々とすることになり、様々な事件に遭遇することになります。そのたびに、その地域独特の慣習などをきちんと理解しておく必要があるのが大変だということが詳しく説明されています。
実際に有名な事件を担当した経験もある有名な検事が書いた本書を読めば、この仕事内容について非常に詳しく知ることができるでしょう。
- 著者
- 五島 幸雄
- 出版日
- 2009-12-01
検事として実際に働いた方が書いている本なので、刑事司法関係者や法学部の学生はもちろん、検事という仕事に興味がある人まで面白く読めるのが特徴です。研究書として執筆されてたものではないため、語り口も平易となっています。
刑事事件を扱った文章もありますが、各種法律に詳しくない場合でも法律に関する注がきちんとつけられているので、法律の知識が少なくても読み進められるように工夫されています。
アメリカ人の研究者である筆者が、日本とアメリカの検察制度について比較した研究書です。研究書として発表されているものですが、検察官として働きたいと考えている方ならば、ぜひとも読んでおきたい一冊です。
日本の司法制度の欠陥を指摘するだけではなく、日本の司法制度のよいところについてもきちんと説明されています。それに加えて、アメリカの司法制度も理解できるので、両方の司法制度について知ることができます。
- 著者
- デイビッド・T. ジョンソン
- 出版日
あくまでも研究書として書かれた本であり、訳書であるということもあって、少々専門的な記述も。しかし、現在、法律関係の仕事をしているなら、司法制度の問題点を理解するために、ぜひとも読んでおきたい一冊です。法律や司法制度について勉強している学生さんも、日本の司法制度の問題点を理解するためにも読んでおきましょう。
筆者は、実際に日本で司法実習生として日本の司法について学び、日本の文献についても目を通して本書を執筆しています。そのため、理論だけではなく、実際に行われている司法実践についても非常に詳しく知ることができるのが特徴です。
法科大学院・司法試験などは、どれも長期的な受験計画を立てて挑まなければ突破することは難しい試験です。そのため、検察官になるためにはきちんと計画をたてて勉強する必要があります。上で紹介した3冊の本を読めば、検察官の仕事内容について概要を知れるだけではなく、試験を突破するために何が必要なのかがわかります。まずはこれらの3冊の本を読んで、検察官の仕事について知ってみてくださいね。