人々の健康的な生活を実現するお仕事「栄養士」。そもそもこの職業は日々どんな仕事をしているのか、仕事を通してどんなやりがいや苦労があるのかなどを解説します。 また実際にこの職業に就くために必要となる資格や資格取得までの道のりも合わせて紹介。食と栄養のプロフェッショナルである「栄養士」について探っていきます。あわせて関連する書籍もご紹介しますので、ぜひご覧ください。
食事を管理し、人々の健康を守る人、それが栄養士です。健康維持や能力向上を目的として、年齢や職業などによりその人その人に必要な栄養や食事内容を計画・提供・指示するお仕事です。栄養学に基づきバランスの取れた献立を考えたり、栄養面からの健康的な食生活をアドバイスしたりします。
フィットネスクラブなどで栄養指導の面から、健康や体力強化・ダイエットなどの目的に合わせてアドバイスをおこなう栄養士やアスリート専属などのスポーツ栄養士、学校給食の献立作成や調理・食材発注など子どもを対象に、保育園や幼稚園・学校で働く栄養士、また食品メーカーでメニューの開発や新商品の食品開発・企画立案をおこなう栄養士など、医療やスポーツの分野から行政・地域・福祉や教育機関まで専門や勤務先は多種多様です。
企業などに所属して働いた後に、培った人脈や経験を生かして開業し、フリーランスで働くという道もあります。
そんな栄養士の平均年収は一般的に250万円から350万円、管理栄養士で400万円程度と言われています。勤務先により資格手当などの待遇がプラスされる場合もあり、専門栄養士など関連する他の資格を取得することでキャリアアップも望めるでしょう。
実際に働くためには国家資格である栄養士免許の取得が必須です。資格取得のためにまず高校卒業後、4年制の大学、または2〜4年制の短大、または専門学校などの厚生労働大臣指定の栄養士養成施設(昼間部のみ)にて所定科目を修了します。卒業すると免許申請にて無試験で免許取得となります。
免許取得後、1年から3年以上一定期間の実務経験を積むことで、より高度な技術や知識を持つとされる「管理栄養士」の国家試験も受験可能になり、先のキャリアアップや昇進も望めるでしょう。
しかし、管理栄養士の国家試験を受けるためには2年制の専門学校・短大を出た場合3年以上の実務、3年制の専門学校・短大を出た場合2年以上の実務、4年制の専門学校・大学を出た場合1年以上の実務経験と、学んだ年数により必要な実務経験年数が変わってきます。さらに、仕事をしながら国家試験のために勉強するのはとてもハードです。
なので、最初から将来的には管理栄養士の資格も取ろうと考えている方は4年制の大学か専門学校でその養成課程を受けることをおすすめします。こちらを修了すれば実務経験が免除され、栄養士養成課程を受けた場合、管理栄養士の資格を取るまで最短で5年かかるものを、最短4年で取ることができます。また、こちらの方が勉強に集中できるため、合格率も働きながら目指している人より高いです。
食べる人のことを考えて調理した食事を「おいしい」と喜んでもらえたとき、自分の仕事に対して人から感謝をいただいた時に大きなやりがいを実感することができるのではないでしょうか。食事という生涯作業を通して人が健康に生きていくための手助けをする、責任ある職業です。
誰かの役に立つことは全ての仕事に共通したやりがいですが、栄養士は仕事を通して「自分や、自分の大切な家族のため」日々の生活に繋がる知識も一生増やしていけるという魅力があります。仕事が日々の生活の向上にそのまま繋がっているのです。仕事上ではもちろんですが、家族が嫌いな食べ物を自分の献立や調理によって克服できた時など、家庭でもやりがいは日々の生活に溢れています。
苦労としては、専門的な知識を持っているもののその仕事内容ははまだあまり認知されておらず、病院などでは患者さんが医師や看護師の指示には従うけど栄養士の指示にはやや懐疑的、ということもあります。
栄養だけでなく見た目や味・食感など、ざまな角度から一生懸命考えて作った食事が残されているのを目の当たりにすると、いろんな事情があるとわかっていても落ち込むこともあるでしょう。ですが、そこから食べる人の苦手なものを研究し献立や調理法、次々に更新される情報を精査してしっかりとした知識を学び続け、自信を持って提案・指示できるように日々努めなくてはなりません。苦労したことはやりがいに繋がっていくでしょう。
よって食べ物や料理に強い関心があることは大前提として、さらに健康や生物学など理系の分野にも広く興味を持ち、仕事に対して向上心と責任感を持ってコツコツ取り組める人に向いています。働く環境によっては大量の調理の仕事のための体力を要したりクライアントや患者さんとのコミュニケーション能力が必要な場合もあるでしょう。大勢の人が働く学校などの環境では、リーダーシップが問われることもあります。
栄養士を目指す人のための書籍は数多く出版されていますが、そのなかでもこれから目指す方の参考となるような本をいくつかピックアップしてご紹介します。
- 著者
- 小野 章史
- 出版日
- 2014-01-01
栄養士に興味があるけど実際になれるのか?何をすればいいかわからない!専門用語や学校でどんなことを学習するんだろう?という不安も解消が解消されるであろうこの一冊。栄養学の歴史、体の仕組み、食べ物やそれに含まれる栄養素、さらには資格のことまで、栄養士になるための基礎知識がわかりやすい図解・イラスト入りで楽しく学べます。
また、知識だけでなく学校で必要になる実験や実習のことや、レポートの書き方も解説しています。初心者にもわかりやすい内容で栄養士になるための学校進学前に読んでおくと、これから進む道をしっかり照らしてくれるはずです。なりたての方にも心強い味方になってくれる本です。
- 著者
- 出版日
- 2013-07-05
実際に臨床の現場で働く管理栄養士や医師や看護師の方々の監修のもと製作された本書は、新米栄養士と物知りなトマトの会話によって進んでいくストーリー仕立てとなっているので、この仕事をまったく知らなくてもすんなり話が入ってきます。
病院とはどういう場所なのかから始まり、栄養管理とは何か、疾患のケースや内容、術後のケアなどといった項目を扱いながら話は展開していきます。イラストが豊富で文字もかわいく、楽しく読み進めていくうちに管理栄養士の国家試験問題を解く重要ポイントが効率的におさえられ、知識が自然と身につくようになるでしょう。
これから栄養士を目指す方の入門書として、専門の学校に入門仕立ての方の予習復習ブックとしてもピッタリですし、現場に出てからも復習用に最適の本です。また、現在第6巻まで出ており、病院以外にも社員食堂や保健所など様々な場所やニーズも網羅しているので、そちらも合わせて読んでみてください。
- 著者
- 出版日
管理栄養士として実際に活躍されている16人の方がそれぞれの立場から、なぜ管理栄養士になったか、きっかけや道のり、苦労や喜び、これからのことなどをご自分の言葉で語っています。
青年協力隊としての海外で活動している方、スポーツ栄養士として働く方、料理教室で働く方、企業で働く管理栄養士の方など、一言に管理栄養士と言ってもその職種も活動内容もステージも皆バラバラです。それぞれの体験を読むことで、自分の考え方や仕事に対する意識次第でその可能性は無限に広がっているんだとわかる一冊です。
最後にはフリーの管理栄養士をしての経験をもつ著者の対談も収録されています。管理栄養士として仕事に迷っている方、資格はあるのにそれを活かせずにいる方に勇気を与えてくれるでしょう。