国家資格のひとつである歯科技工士。歯科治療には欠かせない重要な役割を担っています。義歯や矯正装置など、治療で必要となる器具の作成・修繕・加工を仕事とする彼らの、具体的な仕事内容や年収、必要な資格などをくわしく調べてみました。 最後には歯科技工士に関連する本もご紹介していますので、チェックしてみてください。
歯科技工士は、歯科医師の指示のもと、歯の治療に使用する人工物や詰め物などの作成、修繕、加工をおこなう技術職です。
たとえば義歯を作る場合、歯型を取るのは歯科医師の仕事ですが、歯型に石こう等を流し込み、実際に義歯を作成するのは歯科技工士の仕事です。 歯科技工士が作成するものとしては、入れ歯や差し歯といった義歯や歯列矯正装置のほか、ブリッジなどの歯科医療器具があげられます。
年収は、30代後半で430万円程度というデータもありますが、ある程度修行をしたのち独立・開業する人もおり、技量次第で年収アップがのぞめる仕事です。
歯科技工士と混同されやすい職業として「歯科衛生士」があげられます。こちらは歯科衛生士法に基づいた国家資格で、歯科医師の診療補助を行ったり、患者に歯科衛生の指導をおこなうのがおもな業務です。
主な勤務地は歯科医院や病院で、患者の口腔内を清潔に保ち、口臭や高齢者の肺炎予防(噛む力がなくなることで、食べかすが気管に入ってしまって肺炎の原因になることがあるので)につとめています。
歯科医療器具のスペシャリストである歯科技工士と、実際に患者の口腔内に触れ、診療補助をおこなう歯科衛生士は、業務内容こそ大きく異なりますが、いずれも歯科医療をおこなうチームの仲間であり、ときに連携し協力しあいながら、業務にあたっています。
歯科技工士は、歯科技工士法に基づいた国家資格で、試験内容には学科と実地の両方があります。
国家試験を受験するには、2018年現在で全国に約50ある養成機関にて、定められた全過程を修了し、卒業あるいは卒業見込みとなることが必要です。
養成機関の種類は、文部科学大臣が指定する歯科技工士養成所、または都道府県知事指定の歯科技工士養成所の2つに分けられます。大学・短期大学・専門学校が存在し、それぞれ就学期間は異なりますが、最短であれば2年で必要な過程を修了することができます。
養成機関は高校卒業を卒業していることが入学要件です。
高齢化社会の現代において、歯科技工士のニーズは高まっているものの、都市部においては歯科医院の数は飽和状態であり、新規開業数は増加が見込めません。そのため、 歯科医院からの発注をいかに確保できるかということが重要であり、より「求められる」歯科技工士になる必要があります。
そのためにはたしかな技術と知識の習得はもちろん、新素材の取り扱い技術があることや、迅速かつ確実に発注に対応できることなど、日々の研鑽が求められるでしょう。
また、今後は3Dプリンタなどの普及により、義歯や歯科治療器具作成の機械化がすすんでいくと予測されます。それに伴い歯科技工士の仕事も、設計時の誤差のチェックや補正、最終の微調整などにシフトしていくでしょう。
そういった新たなテクノロジーに対する理解と順応が今後必要とされる職業です。
- 著者
- 宇田川 廣美
- 出版日
- 2017-01-30
わかりやすさと充実した内容で人気の「なるにはBOOKS」シリーズ、歯科衛生士・歯科技工士編です。
歯のスペシャリストである歯科衛生士・歯科技工士になるための方法、それぞれの仕事の魅力ややりがいに迫ります。
本著は3部構成で、第1章「ドキュメント」として、実際に現場で働く人たちのインタビューや日々の仕事の詳細を、 第2章「歯科衛生士・歯科技工士の世界」では、チーム医療としてのそれぞれの役割や、収入の実際、将来性を収録しており、この職業を志す人には気になる内容がたっぷりと語られています。
第3章「なるにはコース」では、その適正や心構え、養成学校の仕組みや国家試験の難易度、就職についてまとめられた内容。この一冊を読めば、歯科技工士になるために知っておきたいすべてを知ることができるでしょう。
- 著者
- 日本歯科新聞社
- 出版日
タイトルの通り、歯科技工技術をもって世界へと羽ばたいた24人の日本人(=サムライ)歯科技工士たちの、貴重な経験や記録をもととした自叙伝がおさめられた一冊です。もともと歯科業界専門誌「日本歯科新聞」に連載されていた内容が、335ページにわたるボリュームでまとめられています。
世界に先駆けて歯科技工士教育をすすめてきた国、日本。本書では、最先端技術を持つ24人の日本人歯科技工士が、あらゆる国を訪れ、その技術の普及に努めた姿を追います。
世界各地で彼らが出会ったのは、その土地その土地で発展してきた歯科医療や歯科技工技術。現地の技術のよいところを取り入れつつ、最先端の日本の技術も伝える、というミッションに挑む彼らの苦悩や喜びが綴られます。言葉の壁を乗り越えての挑戦は、サムライ歯科技工士たちにとって、日本に還元することのできる貴重な経験となったことが感じられる内容。
歯科医療が急速に成長を遂げる現代において、パイオニア的存在の歯科技工士たちが残した貴重な記録の数々を通し、日本および世界の歯科技工士事情を知れる一冊です。
著者は、歯科衛生士として歯科医院で勤務した経験をもち、現在は心理カウンセラーとして活躍している杉元信代。 その経歴を活かし、「歯科で働くすべてのヒト」にとって、「使える」「役に立つ」かもしれないこと、気に留めてほしいことなどを、テンポのよいやわらかな文体で綴った一冊です。
歯科治療に思うこと、スタッフ教育において大切なこと、経営のこと、医師に対しての思いなど、彼女が考えるさまざまな「大切なこと」を、タイトルの通り「愛」をもって伝えています。
比較的女性スタッフが多い歯科という職場において、女性が働き続けるということについても、女性である著者ならではの優しい視点で語られます。
彼女自身の経験も踏まえながら、心理カウンセラーとしての視点や知識もしっかりと織り込まれた、心をラクにしてくれる本です。 スッと胸に溶けてゆくような言葉たちは、読んだ人をきっと成長させてくれるはず。