【第15回】つぶやきシローのつぶやき読書/つまり、気が気でないのだ。

【第15回】つぶやきシローのつぶやき読書/つまり、気が気でないのだ。

更新:2021.11.28

小説家としてもデビューをしているつぶやきシロー。しかしどうやら、読書に対してはかなりの抵抗があるらしい。彼に「おもしろい本と出会って読書の楽しさを知ってほしい」と考えたホンシェルジュ編集部は、半強制的に何冊かの本を渡しました。さて、つぶやきシローは何を思うのか。包み隠さず感想をつぶやいてもらう連載です。 第15回は、超有名なベストセラー本を読んでもらいました。

ブックカルテ リンク

どう生きるか考えてる間に一生って終わっちゃうんだろうね

何年か前に「家飲み」なんて言葉がしれ~っと流行って、しれ~っと使われなくなりましたけど、僕の中ではまだまだブームの真っ最中です。

お店で飲むと、店員さんの空いているお皿があったらさげます攻撃ね。その行為自体ではなく、常に監視している目が気になる。話も聞かれてるに違いないので、誰かの悪口も言えない。店員さんが、バレないと思ってこっそりツイッターとかに書き込んでたりする。隣に座っているお客さんがつぶやいちゃうこともある、こっちの方が多いか。つまり気が気でないのだ。

その点、家飲みは人の目を気にしなくていい。裸でお酒を飲んでもいいのだ。自分のタイミングでお酒を変えつまみを変えできる。なにより他人とのトラブルを回避できる。

とは言え友達と飲んだりするわけだけどね。ある時僕ん家で、友達と二人で飲んでいたの。そこに出したおつまみが、肉団子。甘酢ダレがかかった大きい肉団子6個。

読んでいる皆さんは、ここから頭の中に肉団子6個の絵を想像しながら読んでください。行きますよ。

普通に考えると2人なので肉団子3個ずつと誰でも思うし、大人なんだからいちいち「3個ずつな」なんてこと言わない、暗黙の了解だ。因みにおつまみはこれだけではなく、他にも枝豆や魚のホッケ、ポテサラ、ニラレバなどがテーブルを賑わせてましたが、その中では大きい肉団子がスターでした。

僕は、肉団子を箸で二つに割り、割った断面にも甘酢ダレを付け、決してケチってもったいなくて半分ずつ食べてるんじゃないよと言わんばかりに「大きいから半分ずつでもいけるな」と友達にも勧めました。

友達も半分に割って食べました。お互い二回口に運びました。今の時点で肉団子は残り4個です。その内の1つを僕はまた半分に割って片方を食べました。友達は今度は割らずにまるまる1個ダイレクトに食べました。ただいまの肉団子の数2.5個。

ちょっと時間たったかな、急に友達が「肉団子食っちゃうぞこのやろー」って言いながら、僕の半分の肉団子を食べました。残っている肉団子は2個。

今まで、自分で半分にしたやつを食べてて、相手の切った肉団子には手を付けなかったのに、何でここで僕の半分を食べたのだろう。だって友達はすでに2個食べていて、暗黙の了解3個の最後の1個を、自分で半分にして食べればいいのに。

そんなのんきな考えはなく、すぐにピンときました。友達は僕をうまくだませると思ったのかな。残り2個っていう状況を作り、最後お互い1個ずつねって。このトリックが成功すれば、僕が2.5個、友達が3.5個と肉団子1個の差が生まれる。

しかし僕が気付かないわけがない。友達の「肉団子食っちゃうぞこのやろー」の演技が急で違和感があり、下手だったのもあって、バレバレ。

「はいはい、せこいんだよお前は、だませると思ったの?」って言って、残った2個のうち、僕が1個取って、残りの1個を半分にして、僕が半分取る。残った0.5個の肉団子を友達が取れば、結果3個ずつになるから、そうしたかったけど、優しい僕は、何も言わず、ただダマされてやった。楽しい飲みの場で、大の大人が肉団子で喧嘩したくないもんね。でもどうなんだろう? 肉団子が食べたかったわけではなく、友達のせこい根性が嫌で今でも覚えている。言った方がよかったのかな~、友達なんだからこんなこといちいち気にしない方がいいのかな~。

タイトル「君たちはどう生きるか」

著者
吉野源三郎
出版日
2017-08-24

出ました!ベストセラー本。昔に発売されたのに今なお売れているって、すごいね。表紙のコペル君の顔が印象的なマンガバージョンを読みました。この本、マンガにしてまた広く知れ渡って良かったね。

主人公のコペル君が学校の友達との人間関係で悩みながら、おじさんの助言を頼りに成長しようとする物語。道徳の教科書みたいな本。マンガとおじさんの日記が交互に出てくる。おじさんの日記は、コペル君へのアドバイスやら含蓄あるお言葉が書いてあって難しいので、10ページくらいのおじさんの文章を我慢した後のマンガがすごいうれしい。っていうか、マンガのとこだけ読みました。

だって、みんな聞いたことあるでしょ、この本。いろんな人がちゃんと解説してくれているから、そっちを読んだ方がいいよ。今さら僕が言ってもね。だから僕は、マンガの所だけ読んでも、この本を読んだことになるのかってのに挑戦したわけ。

なんか、懐かしかったな。こんな悩みあったあったって思いながら読んだね。この本はテレビでもたくさん紹介されていて、どこもコペル君コペル君だったでしょ。僕はね、浦川君をフィーチャーしたいな。彼はいじめられっ子でね、教室で背中に砂を入れられたりしてるんだ。いじめっこも、校庭の砂をよく教室までもってくるよね。ポケットに入れてきたみたいだけど、そのポケットの中の砂全部取るのまあまあ大変だぞ。それよりも浦川君は、「はは…砂かぁ」って怒らない。このグッと堪える感じ、わかるよ。自分が我慢すればいいんだ、教室の平和を乱しちゃいけないって思うんだよね。

浦川君はかげで「あぶらあげ」って呼ばれている。なぜなら、お弁当のおかずがいつもあぶらあげだけだから。僕もいつも白飯とボンカレーだけだったから、「大塚食品」ってかげで言われてたかもしれないな。

学校に来なくなった浦川くんをコペル君が家まで訪ねると、ボロボロの家で弟をおんぶしながら実家の豆腐屋を手伝っている浦川君が、あぶらあげを揚げていた。僕も八百屋の息子だったから、店の手伝いはよくしたね。店先で働いているところを友達に見られるのが恥かしかったな~。浦川君もたぶんこんな姿見られたくなかったと思うよ。

そんな浦川君家に通ってノートを見せてあげるコペル君。浦川君のノートを見てビックリ。ページいっぱいに字をつめて書いている。何冊もノートを買うことができないからだ。なんか目頭が熱くなるよね。最後まで書いたら、新しいノート買わずに、全部消しゴムで消してまた使うのかな。この場合、ノート代と消しゴム代、どっちが高くつくのだろう? とか考えちゃった。スピンオフで浦川君が主人公の物語が読みたいと思ったね。

この本は、コペル君が正しい生き方を模索しながら葛藤し答えを見つけていくストーリーだが、コペル君がなぜ苦しまなければならないのか、それはノートの冒頭に書いてあることがすべてだと思う。それは「コペル君が正しい道に向かおうとしているから」だから苦しいんだね。正しくない道に向かっていて、それに気付かないのはダメだと思う。

いろいろ思うとこあって、考えさせられる本だった。子供向けに出したのに、大人が買っていくのがわかるような気がする。もう一回読んでみようかな、またマンガのとこだけ。



連載第1回を読みたい方はコチラ。

つぶやきシローの記事一覧はコチラ。

この記事が含まれる特集

  • つぶやき読書

    お笑い芸人のつぶやきシローさん。小説家としてもデビューをしています。しかし、「本を1冊読むのに数ヶ月かかることもある」など、読書に対してかなりの抵抗があるらしい。「おもしろい本と出会って読書の楽しさを知ってほしい」と考えたホンシェルジュ編集部は、半強制的に何冊かの本を渡しました。さて、つぶやきシローは何を思うのか。包み隠さず感想をつぶやいてもらう連載です。隔週金曜日更新!

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る