アラサー女子が高校生と浮気するという衝撃的なワードが目を引く『恋のツキ』の見所を、全巻ネタバレ付きでご紹介いたします。女性の心は移ろいやすく、秋の空模様のように変わりやすいもの。本作は、そんな複雑な女心を描いた作品です。 ドラマ化もされた注目作ですが、スマホアプリで無料で読むこともできるので気になった方はそちらもどうぞ!
本作は『あそびあい』で注目を集めた新田章が描く、アラサー女子を主人公とした物語です。恋愛を扱っていますが純愛ではなく、結婚を視野に入れながら浮気もするという、ちょっと生々しい部分を描いているのが特徴。
妥協かトキメキか。微妙なお年頃だけに、思い悩む姿には共感する部分も多いでしょう。不倫ものではありますが、どこにでもいる普通のカップルを描いた作品でもあります。ワコを中心とした関係に、女性でも男性でもモヤっとする部分があり、心がざわめきます。
2018年にはテレビ東京でドラマ化され反響を呼びました。Netflixで配信中なので気になる方はぜひご覧ください。
平ワコは、31歳のフリーター。付き合って4年、同棲して3年になる彼氏、ふうくんがいます。彼は彼女との結婚を考えてくれているようですが、貯金をしていなかったり、仕事に疲れてかまってくれなかったりと、少しずつ彼女の不満が溜まっていました。
自分の人生はハズレばかり、少しでも運が回ってきたと実感したい。そんなことを考えていたある日、彼女はアルバイト先の映画館で、好みのタイプのイケメンである15歳の高校生・伊古ユメアキと出会います。
伊古の落とし物を拾ったことで接点を持った2人は、夏祭りに行ったり、映画を見に行ったりと、徐々に距離を縮めていくのです。
- 著者
- 新田 章
- 出版日
- 2016-07-22
どこからが浮気なのだろうか。そう思い悩みつつも、ワコは彼と会うことを止められません。不満はあるけれども安定感のあるふうくん、トキメキを与えてくれる伊古の間で揺れ動きます。やがて一線を越えることを決意し、2人はホテルへと向かうのでした。
ワコはどこかふわふわとした、天然気味な女性です。結婚や出産の年齢という現実を見ながらも、心のどこかで運命の恋や、非日常に憧れているという部があります。そんところに、つい共感してしまう女性も多いのではないでしょうか。
ふうくんと付き合っている理由にも彼女の性格が出ており、特別美人ではないというところにもリアリティがあります。
恋は落ちるものだとはよく言いますが、伊古に恋をした事で日常に戻るか迷いながらも、坂を転がっていく彼女の行き着く先を怖いと思いながらも、見届けたくなるはずです。
2018年のテレビドラマで伊古を演じたのは若手俳優の神尾楓珠。次世代を担う彼の出演作をまとめた以下の記事もおすすめです。
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ホテルに行き、厳密には微妙なところですが、肉体的な関係を持ったことで一線を越えてしまった2人。泊まったその日に、伊古は付き合ってほしいと告白をします。ワコにとって彼は好みの顔をしており、映画や服の趣味もぴったり。なにより、ときめきを感じます。
対するふうくんとはマンネリ気味で、日常への不満はあります。しかし年齢や将来の事を考えると、別れる勇気はありません。ふらふらと着地点の定まらなかった彼女でしたが、速攻で浮気がバレるという、驚愕の展開が待ち受けていました。
- 著者
- 新田 章
- 出版日
- 2016-11-22
別れると口にしながら、どちらとも決別できない彼女。ふうくんは、彼女の気持ちが離れないように努力をはじめます。そんな態度や4年という年月と決別することができず、彼とどうしても別れられないと伊古に告げるために会っていたところを、ふうくんに目撃されてしまいます。
浮気をテーマにした作品はどうやって浮気を隠すのかで、バレそうでバレないスリルを読者も体感できるところが、1つの楽しみでもあります。
ふわふわした彼女と、15歳の伊古という危うい不倫カップルが、これからどうなっていくのか心配していたら速攻でバレるという展開に、驚かされることでしょう。
彼女は2巻で、トキメキと安心感の双方を、より強く感じることになります。丸く収まってハッピーエンド、とはならない衝撃発言も飛び出しますので、バレた後でも気は抜けません。
ワコはアルバイト先の映画館が閉館したことで、無職となります。そして改善したはずのふうくんの態度が逆戻りしたことで、打ちのめされていました。二股でもいいので、という伊古の衝撃発言もあり、恋は燃え上がるばかり。
浮気をしている様子と、日常生活を送る様子が適度に配分されているのですが、彼女の心が動いていく様子が手に取るようにわかるでしょう。ちょっとデリカシーのない気安い関係と、お互いが求めあう激しい関係では、満たされる度合いが違います。
- 著者
- 新田 章
- 出版日
- 2017-05-23
3巻では、ふうくんとの関係に終止符を打つ発言が飛び出しました。それを読むと、付き合ってきた時間や、安心感といった言葉では埋められないものが確かにあるのだと痛感させられます。彼なりに彼女を大切にしている気持ちがあることが感じられるだけに、読者としては胸が痛くくもなりますが。
基本的に本作はワコの視点で物語が進んでいますが、本巻ではふうくんにスポットを当てたシーンも。あまりよいところを見せられなかった彼の印象が変わるはずなので、要注目です。
別れを切り出したワコは、やりなおそうというふうくんを振り切り、1人暮らしをはじめます。別れたことを伊古に告げると、あらためて正式な交際の申し込みが。そして、晴れて恋人同士になることができたのです。しかし、何事も順調にはいかないもの。
新たな一歩を踏み出した彼女は、32歳無職というかなり崖っぷちの状態で、伊古との恋を心の支えにしています。しかし16歳の年齢差というのは想像した以上に大きく、彼女の不安や、世間が2人をどう見るかということを、真の意味で理解はできていません。
- 著者
- 新田章
- 出版日
- 2017-12-22
幸せであるはずなのに、4巻の彼女はどこか憔悴したような表情を見せ続けます。やっと見つけた就職先でうまくいかなかったり、身内に現実の自分を突きつけられたりと、不安や焦燥感がばかりが募りますが、上手に発散することができずにいました。
こんな時に頼りたい恋人の伊古は学校で趣味の合う友達もでき、自主製作映画を作ろうとアルバイトを始めたことで、会う時間が減少。彼に恋する同級生の少女・サカキの存在を知ったことで、ワコのなかに一層嫉妬心と不安が入り混じります。
今までどこかふわふわとして地に足つかないところがあった彼女が、地に足をつけたと感じられる巻でしょう。変えられない現実に直面し、迷走を続ける姿に胸が痛みます。しかし突如現れた第3の男の存在で、また何かが変わってしまう可能性に、読者としてはハラハラが止まりません。
ふうくんと別れたので、彼も元カレというカテゴリに入りますが、関わってくるのはもちろん彼ではありません。第3の男が登場します。
不安や焦燥を解消できず、憔悴していたワコの前に現れたのは、元カレの土屋でした。彼は定職につかず、適当な格好をしていた遊び人で、ワコとも彼の浮気が原因で別れました。
しかし久しぶりに再会してみれば当時の面影はなく、きちんとスーツを着たサラリーマン。プラトニックな関係で1度は別れますが、この出会いとサカキの存在が、ワコと伊古の2人にすれ違いを生みます。
- 著者
- 新田章
- 出版日
伊古はサカキから好意を打ち明けられたことで、ワコとの関係を告白。友情とも恋愛ともつかない関係に亀裂が生まれます。学校に馴染むきっかけだったサカキを失い、大人の社会で生きるワコの姿を見たことで、恋にまっすぐだったはずの彼の心にも変化が現れることに。
盲目的だった2人に、現実という壁が立ちはだかったことで距離が生まれてしまったのです。そこに、土屋という存在がうまく入り込み、2人を揺さぶるという展開は、ハラハラしつつも作者の手腕を感じずにはいられません。
巻末に次なる展開への布石を打つ、というのはよくあることですが、本巻でも最大級の布石が打たれます。会話筒抜けという状態のまま、土屋と会っていたというワコの迂闊さを叱責しつつ、伊古との恋愛を貫くのか、土屋と復縁するのか、その選択を見守りましょう。
土屋からのアプローチを何とかかわしたワコ。しかし、32歳で自分と年の近い相手と一緒になった方がいいという一般的な考え方とイコとの間で揺れ動きます。
5秒分迷ったあと、どうにか断ったものの、間違って押した通話ボタンによって、その会話をイコに聞かれてしまいました。
それに不安になりますが、対話によってその危機を乗り越えた2人。このまま幸せな日々が続くように思えましたが……。
- 著者
- 新田 章
- 出版日
- 2018-12-21
6巻ではクライマックスに近づきつつあり、展開もダイナミックになってきています。序盤は2人のスローであたたかな時間が描かれますが、徐々にワコが自分が本当に歩むべき道について考え始めます。
イコが自分の映画を考えている時にキラキラしている様子を見て、何もしたいことがない「つまんない大人」の自分を冷静に見つめるようになるのです。
さらにふうくんがデキ婚をしたということも聞き、ますます変化していく周囲に、自分も変わりたいと願います。
しかしそこで彼女が選んだのがイコと一緒にいるということが、また読者を不安にさせるもの。自分の本当にしたいことを他人に委ねてしまったワコの怖さ。そして物語はその不安を的中させるかのように転がり落ちていきます……。
ワコはイコとの関係性を取り、一緒に過ごしていくことを選びました。シカシ、イコは映画制作のためワコと合う時間を減らしていました。
イコは「好きな人ができた」とワコに伝え、二人は別れることとなってしまいます。悲しみに包まれるワコは土屋に誘われて映画を観ることとなり、ついには身体を重ねるところまで…
しかし、その直前でワコは土屋とはそういう関係になれないと思いなおして、もう二度と会わないことにします。
ワコは結婚や子供ではなく、好きな人と、好きだというお互いの気持ち故に支え合って一緒にいる状態こそ幸せだと考えている自分自身に気が付きます。
- 著者
- 新田 章
- 出版日
数年後、ワコはイコと一緒に暮らしていました。
2人は、2年前にとある映画のイベントで再会し、お互いで改めて考え直し、再び付き合うこととなりました。
イコは大学の時に短編で賞を取り、広告会社の映像班で働いています。
ワコは派遣の仕事をしながら丹下さんのカレーと珈琲のお店で修業をしていて、そのうちワコにお店を任せたいと言ってもらえています。
これからもずっと一緒にいられるかどうか、それはこれからの2人の関係性によりますが、ともに歩んでいきながら人生を楽しんでいくことをワコは選びました。
本作は共感する部分はあるものの、キャラクターの誰かにイラつきを感じることもあるでしょう。読者にはキャラクターのよくない部分もしっかりと見えてしまい、特にワコの言動には賛否が分かれるところです。とはいえ彼女の選択を見守りたくなってしまうのが読者の常で、読み進めるうちに、きっと不毛な恋に身を焦がす友人を持ったような気持ちを味わえるでしょう。