名門校で挫折を経験した少年が、新たな仲間とともにバスケットボールに打ち込むことで、過去を乗り越えていく青春小説、『走れ!T校バスケット部』。多くの中高生に支持される本作は、映画化も決定しています。 今回は、そんな本作の見所や、個性的なキャラクターたちなどについて解説。ぜひご覧ください。
『走れ!T校バスケット部』は、バスケットボールを題材にした、スポーツ青春小説。2007年に書籍版、2010年に文庫版が刊行され、シリーズ累計120万部を超えるベストセラー作品となりました。読書好きな人はもちろんのこと、あまり小説は読まないという中高生も虜にする、求心力のある作品です。
バスケ部キャプテンとして関東大会2位の成績を残した田所陽一は、バスケの強豪校である私立H高校へ、特待生として入学しました。しかし部内で激しいいじめに遭い、部活をやめることに……。
失意のまま学校も去った彼は、都立多田野高校、通称T校に編入することになるのです。
走れ!T校バスケット部 (幻冬舎文庫)
2010年02月01日
編入後、バスケはしないと心に決めていた陽一でしたが、バスケ部の4人に誘われたことがきっかけで、ボールを手に再びコートに立つことになりました。しかし、個性的ながらバスケを純粋に楽しんでいる部員たちとの関わりのなかで、徐々にバスケへの情熱を取り戻していくのです。
挫折を経験した彼が、新たな仲間とともに、成長しながら自分自身を取り戻していくストーリー。元入学先であるH高校との対戦や、いじめに対する凛とした厳しい姿勢など、スポーツだけではなく少年たちの成長群像劇としても楽しむことができます。
映画は、志尊淳、佐野勇斗、戸塚純貴、佐野寛太、鈴木勝大ら若手俳優に加え、早見あかり演じるマネージャー・佐藤浩子の兄で、大学バスケ界のスター選手、佐藤準役に竹内涼真、学校一のイケメン教師役に千葉雄大と、人気俳優の出演が発表されました。
公開は、2018年11月3日。バスケ元日本代表半田圭史指導の、3カ月に及ぶ猛特訓が、実際のプレーに集約されています。
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本作はバスケットボールをきっかけに、高校生がさまざまな葛藤を乗り越えて成長していく、青春物語です。展開が熱いというのはもちろんのこと、キャラクターが個性的であるというのも魅力のひとつ。誰が主人公なのかわからなくなるくらい個性が際立ち、読者に強い印象を残します。
主人公の田所陽一は、キャプテンを任されていたこともあり、真面目な性格。失意のうちに学校を去りますが、いじめに立ち向かうなど、芯の強い面も持っています。
T校バスケ部は、公式試合で1度も勝ったことがないという弱小チームですが、そんななかでも成長著しいのが矢島俊介です。
彼は、T校バスケ部のキャプテン。かなりの努力家で、陽一をライバルとして認識しており、2人は互いに認め合って成長していきます。実は子どもの頃に交通事故に遭っていたなど、重い過去も。マネージャー・浩子も絡めた、淡い3角関係も見どころです。
「チビ」こと河崎祐太は身長153㎝と、あだ名のとおり、とっても小柄。文句が多く、「文句マン」というあだ名も持っています。映画版では寿司屋の息子でチームのムードメーカー的な立場となるため、小説版と少々違った面も見られそうです。
他にも、陸上部との兼部で文字通り部を足で引っ張る、俊足の川久保透、のぞき魔の「ゾノ」こと、身体能力は抜群の牧園浩司が登場。
底抜けに明るい、高校生らしい彼らのやりとりをお楽しみください。
1948年10月29日生まれ。福岡県出身の小説化です。本作でデビューし、たちまちベストセラー作家になりました。シリーズは10巻まで発売されており、累計発行部数は120万部を突破しています。
スポーツを題材にした作品に定評があり、挫折を経験しつつも、苦悩しながら成長していくという安定したストーリーが、幅広い読者に受け入れられています。
スマッシュ×スマッシュ! (徳間文庫)
2010年06月04日
プロテニスプレイヤーとして再起を目指すスクールコーチ・笠松勇太と生徒の成長物語『スマッシュ×スマッシュ』、アマチュアゴルフ界のチャンピオン師弟の反省を、壮大なスケールで描く『逆風(アゲンスト)』上下巻で注目を集めました。
本作10巻を執筆中の2014年に、間質性肺炎のため死去。作家としての活動年数は約7年という短いなかで、読者の心に深く響く物語を遺しました。
本作は完全なフィクションというわけではなく、モデルが存在します。それは、作者・松崎洋自身の息子である、松崎準。
遺作となった本作の10巻は、巻末が未完成のまま松崎洋が他界したため、構想や展開を聞いていた準が原稿を完成させ、読者のもとに届けられたのです。父の跡を継ぎ、その作品のモデルとなった息子が完結させるという展開は、まさにドラマチックに感じられることでしょう。
具体的に、どのエピソードが実話であるという話は発表されていません。スポーツ関係の不祥事が昨今注目されていますが、特待生で入学した後いじめに遭うというのは、近年だけのことではありません。
10巻のあとがきには、いじめにあった人たちを励ますため、と執筆理由が語られており、松崎親子にもいじめと向き合う日々があったのだと推測されます。
物語はこの10巻で完結となりましたが、筆を継ぐ形になった準が、T校メンバーのスピンオフ作品を執筆しているとのこと。モデルとなった人物だからこそ書ける、新たなT校メンバーに出会えそうです。
本作は2010年に近藤こうじが作画を手掛け、コミカライズされました。
小悦では当然ビジュアルは存在せず、T校のメンバーもどんな姿をしているのか、作中の情報から想像するしかありません。しかし漫画版では、特徴的なビジュアルを再現。特に、低身長のチビと、他の部員との身長差に目を奪われることでしょう。
- 著者
- 松崎 洋
- 出版日
- 2010-11-24
近藤こうじは陸上やテニスなど、主にスポーツ漫画を発表している漫画家です。それだけに、バスケシーンは、まさに迫力満点。作画も丁寧で、描写は本格的です。
本編は長いですが、そのなかでも1巻の内容が丁寧に描かれているので、T校ファンだけではなく、バスケ漫画好きの方にもおすすめとなっています。
本作は10巻で、一応の完結を迎えました。高校から始まった物語は3巻で大学生となっており、T校から舞台を移しましたが、バスケ部で培った絆は健在。大学を卒業し、大人になっても友情は続いていきます。
いじめに苦しみ、別の高校で生涯の友を得た陽一は、やがて教師になりました。神津島に臨時教師として赴任した彼は、そこの生徒たちとともに、新たに成長していくのです。
10巻で彼は、かつてマネージャーとして支えてくれた浩子と結婚。その後も続く未来があると思わせる最後となりました。
長く続いた本作も、ついに完結。大人になった彼らの物語は、一体どのように幕を閉じるのでしょうか。ぜひお手に取ってお確かめください。
- 著者
- ["松崎 洋", "松崎 準"]
- 出版日
- 2015-02-12
本作は先ほども少し触れたように、いじめを受けている人を励ますために書かれた作品であると、あとがきに書かれています。青春ものでは、高校ならその時間だけで終わる物語が大半で、続編があっても数年後を描いたものがほとんど。間の時間が語られることは稀です。
しかし、人間は1日1日を生き、その積み重ねが1年、2年と続いていくもの。作者は、いじめをうけている現在だけではなく、成長していく過程で、過去と向き合うことや立ち向かっていくこと、そして未来があることを伝えたかったのではないでしょうか。
青春は一時、その先には大人になるという未来があるという事を、陽一たちは教えてくれるのです。
いじめという重い問題から、バスケをとおした友情、そして人間の成長を描いた物語でもある本作。その時に囚われるのではなく、さまざまな場所や人がいて、未来があることを教えてくれました。小説版だけではなく、映画で描かれるT校メンバーの絆にも注目です。