グルメレポ漫画『恨ミシュラン』や、子育てをテーマにした『毎日かあさん』『ぼくんち』などで知られる漫画家の西原理恵子。壮絶な人生を赤裸々に綴った作品が多いものの、悲壮感はなくむしろ清々しい気持ちになれる魅力があります。今回は、そんな彼女の作品のなかから、漫画以外の著作を紹介していきます。
1964年生まれ、高知県出身の西原理恵子。武蔵野美術大学在学中の1988年に、「ヤングサンデー」に掲載された『ちくろ幼稚園』でデビューしました。
その後いくつかの雑誌で連載を担当するものの、パチンコや麻雀などのギャンブルに熱中し、10年間でなんと5000万円近くの損失を出してしまったそう。
西原理恵子の名を世に知らしめたのは、1992年から雑誌「週刊朝日」にて神足裕司とともに連載したグルメレポ漫画『恨ミシュラン』でしょう。人気の料理店や有名な高級レストランを本音で評価することを目的としたリポートで、辛口評価が人気を博しました。
そのほか『ぼくんち』で「文藝春秋漫画賞」、『毎日かあさん』で「文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞」「手塚治虫文化賞短編賞」「日本漫画家協会賞」など、数々の賞を受賞しています。
西原理恵子の代表作『毎日かあさん』について紹介した<『毎日かあさん』の名言を14巻までネタバレ紹介!母と子と人生に絡む真実!>の記事もおすすめです。気になる方はあわせてご覧ください。
高校は中退、実父はアルコール依存症、継父はギャンブル依存症で自殺、大学時代は水商売のアルバイトをしていたという西原理恵子。ギャンブルにはまり、結婚をした後も夫のアルコール依存症やDVで苦しむなど壮絶な人生を送ってきました。それでも一男一女を必死に育てあげたのです。
本書はそんな彼女が、これから自立していこうとしている女の子や、子育てを終えて娘を送り出す立場になった母親に対するエールを贈る、メッセージ集です。
躓いてしまった時の立ち上がり方や、自立することの大切さを語っています。
女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと
2017年06月02日
「結婚したからって、そこがゴールじゃない。相手が病気になることもあれば、リストラされちゃうことだってある。どんなに立派な人だって、壊れてしまうことがある。つぶれない会社、病気にならない夫はこの世に存在しません。そうなってから『やだ。私、なんにも悪くないのに』じゃ、通らない。
だから、娘に言っています。『王子様を待たないで。社長の奥さんになるより、社長になろう』
女磨きって、エステやネイルサロンに通うことじゃないからね。お寿司も指輪も自分で買おう。その方が絶対楽しいよ。」(『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』から引用)
男女平等が叫ばれる世の中にはなっていますが、それでも女性が仕事をしながら子育てをするにはまだ厳しい現状もあります。ただ、いつ頼る人がいなくなるかもわからず、自立することや自分の身は自分で守ることの大切さを説いている内容です。
波乱万丈を乗り越えながらキャリアを積み、子育てをしてきた西原理恵子だからこそ、説得力は十分でしょう。
子どもを送り出す立場になった母親にもおすすめです。きちんと子離れをし、ひとりの大人として向き合う姿勢に愛情を感じる一冊です。
西原理恵子が出会ってきたある意味とんでもない人たちが放った、身も蓋もない乱暴な言葉が綴られている作品です。しかしそれらの言葉は西原の胸に突き刺さり、彼女の人生を形作りました。
いわゆる「名言」ではなく、人生の糧になるかもしれない「泥名言」の数々です。
- 著者
- 西原 理恵子
- 出版日
- 2016-08-29
「人のことを憎み始めたら、ヒマな証拠」
「会社はニキビより簡単につぶれる」
「公務員が本気で逃げたら誰もかないません」
「前科とお金とどっちが大事?」
「洗って返せば大丈夫」(『洗えば使える泥名言』から引用)
まず名言が書いてあり、その後に付随するエピソードがエッセイ風に記されている構成です。
たとえば「前科とお金、どっちが大事?」は、わいせつ図画で何度も警察に連行されている出版社の編集長の言葉。前科がいくらつこうが、稼げればそれでいいという開き直りから出ています。
「洗って返せば大丈夫」はハンカチに関するものかと思いきや、なんと不倫について語ったもの。高知県の漁師町で聞いた言葉だそうで、港々に女がいるといわれるある意味漁師らしい考え方かもしれません。
笑いながら読み進めていくと、ふいに心にダイレクトに刺さってくる言葉もあり、ホロリとさせられる一冊。元気をもらえるでしょう。
2012年、西原理恵子は、長年親友として付き合っていた高須クリニック院長の高須克弥との交際を発表しました。
本書は、熟年同士での恋愛の楽しみ方や注意点など、悲喜こもごもを公開したエッセイです。
- 著者
- 西原 理恵子
- 出版日
- 2016-04-28
お互いにパートナーを亡くした後、交際に発展した2人。特に西原は、それまで壮絶な日々を過ごしてきただけに、ようやく穏やかで幸せな恋愛をしている様子に心あたたかくなります。
20近い歳の差があり、西原は中年、高須は老年といってよいでしょう。それでも加齢を受け止めつつ、楽しみながら日々を過ごしている様子が伝わってきます。
これまでも自身の人生のさまざまなことを「ネタ」にしてきた西原。本書でも、男性遍歴にはじまり人生の岐路にどのような選択をしたのか、熟年交際をするための心得などが赤裸々に語られています。
なれそめを描いた漫画もついているので、そちらもぜひお楽しみください。
「お金」を軸に半生を語ったエッセイです。2010年にはテレビドラマ化もされました。
子ども時代は貧困に苦しみ、仕事を始めてお金があればできることが増えることを実感し、ギャンブルで失い、復活して……。お金や働くことの意味について、西原理恵子なりの意見がまとまっています。苦しい経験をしてきた彼女だからこそ語れる真実があるのです。
この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫)
2011年06月23日
「貧しさは、人からいろいろなものを奪う。人並みの暮らしとか、子どもにちゃんと教育を受けさせる権利とか、お金が十分にないと諦めなければいけないことが次から次に、山ほど、出てくる。それで大人たちの心の中には、やり場のない怒りみたいなものがどんどん、どんどん溜まっていって、自分でもどうしようもなくなったその怒りの矛先は、どうしても弱い方に弱い方にと向かってしまう。」
「お金がないことに追い詰められると、人は人でなくなっていく。その人本来の自分ではいられなくなって、誰でもなく、自分で自分を崖っぷちまで追い詰めて、最後には命さえ落としてしまうことがある。」(『この世でいちばん大事な「カネ」の話』から引用)
綺麗ごとなどは一切書いておらず、どこまでも現実的。お金がすべてではないかもしれないけれど、お金があるからできること、お金がないからできないことは絶対にあるのです。
お金の本質とは何なのか考えさせられるとともに、この問いはひいては「生きる」ことに繋がっていくと気づかされるでしょう。
元夫のアルコール依存症に苦しんだ西原理恵子と、自分自身がアルコール依存症で苦しんだ月乃光司が、それぞれの立場からお酒について語った作品です。
依存症は、お酒をたしなむ人であれば、誰でも陥ってしまう可能性があるんだとか。
西原理恵子月乃光司のおサケについてのまじめな話 アルコール依存症という病気
2010年07月01日
当事者の2人が語るので、とてもりリアル。説教づいているわけではなく、ただただアルコール依存症の実態と過酷さを教えてくれています。
たとえば実際の治療ではこんなことに躓く、依存症になっている家族とどのように距離をとるのかなど、実体験にそった具体例が豊富なのが特徴でしょう。もちろん、アルコール依存症についての基礎知識も、専門家の意見を交えつつきちんと説明しています。
依存症は心が弱い人がなる性格の問題ではなく、脳の問題だそう。誰にとっても、他人ごとではないのです。生々しさもありますが、リアルな体験談に考えさせられる一冊です。