ひとりって怖いですよね。誰しも人や何かに依存して、ひとりである寂しさを埋めるために生きてるんじゃないかなって思う時があります。 今回は、そんな寂しさを力に変えて頑張ってきた、大好きな作家さんの1冊をご紹介します。(敬称略)
みなさん、寂しさを感じたことありますか?
1回もそんなこと感じたことないという人は恐らくいないように、「喜怒哀楽『寂』」になってもいいくらいに、誰しも感じたことのある気持ちだと思います。「哀」に含まれるのかもしれないけど、何かちょっと違う気もするし。
私が「寂しい」というと真っ先に思い浮かぶのは、冷めたカレーの味です。
高校生の頃、父の転勤先と自宅を母親が行き来しており、週の半分以上は自宅にひとりでいました。
部活が終わって疲れた体をひきずって、誰もいない一軒家の鍵を開けます。ひとまず電気をつけた玄関から見ると、リビングは真っ暗。
自分しかいない一軒家は、言葉にできない気持ちで私を満たしていました。
しかし母親は毎回ご飯は作って置いていってくれていて、その定番メニューがカレーでした。
ある日、部活でヘトヘトになって帰るとカレーが置いてありました。お腹が空いていた私は、お行儀が悪いですが、鍋から直接スプーンでルーをすくって、そのまま口に。
お腹が空いているから美味しい。美味しいけど、何か違う。
冷えたカレーは溶けたじゃがいもとルーの粉でジャリジャリしていて、飲み込むと冷えた油が口の裏側にのっぺりと残りました。
そんな寂しさを抱えてると、やっぱり人に依存しがち。でも高校生の頃の私はちゃんとした解決方法を知らなくて、あまり好きでもない相手と付き合っては、すぐにダメになってしまうのでした。
そんなことしてると、自分でも自分が嫌になってきます。自分が嫌だから、自分を好きという人も嫌だけど、寂しいから付き合う。本当に何も生み出さないですねぇ。
そのまま寂しさは口の中の飴玉みたいに徐々に溶けていって、大人になった今ではかなり小さくなってます。
でもやっぱり、なくなってはいなくて、心の中には冷たいカレーに泣いた高校生の私がたまに出てきます。早くいなくなってくれればいいなぁ、とずっと思ってるけど、いなくならない。
でもそんな、自分でも疎ましい存在に手を差し伸べてくれた本がありました。
- 著者
- 西原 理恵子
- 出版日
西原理恵子の作品は、ギャグの無頼派と、泣かせてくる抒情派という作品に分けられるそうですが、これは抒情派。
彼女は、仕事がなくて、お金がなくて、地方から上京して寂しくて、何となく付き合った男をこう説明します。
「しばらくして 私にも彼氏ができた。
なんとなく そのステキだった人に似ていて
私に似合ったカンジの人だった。
何よりも毎日、テレビを一人で見なくていいのが うれしかった」
(『上京ものがたり』より引用)
私はこれを見て、とても安心しました。誰でも人に依存するんだ、と思えたのです。
本の虫だった私は、そのことをいくつもの物語で読んで知っていたはずでしたが、すんなりとそう思えたのは、西原理恵子が情けなかった時代の物語だったのです。
ひとりになるのは、みんな怖いから。
情けなかった時代の西原理恵子ちゃんが、高校生の寂しかった私に手を差し伸べてくれて、私はやっと自分の一部をちょっとだけ許せたのでした。
寂しさを笑いに変えて、今をたくましく生きている彼女が生きている時代なら、私もこのまま生きていてもいいのかもしれない、と思えます。
困シェルジュ
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