荷物をまとめて家をでる。あるいは旅プレイ【山本裕子】

荷物をまとめて家をでる。あるいは旅プレイ【山本裕子】

更新:2019.4.30 作成:2019.4.30

旅行のとき荷物の少ない人を、無条件に尊敬します。同じ日数、同じ場所へ行くのに、なんでアンタそんな身軽なのさ。見てると旅の間もそれで必要にして十分、さらに小綺麗とかもう、なんなのいったい。じっとわれの91L 大スーツケースを見る。合掌。

山本裕子プロフィール画像
俳優
山本裕子
劇団・青年団所属。1974年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。ドラマ『踊る大捜査線』にはまり、警察官僚を目指すか、このまま司法試験に向け勉強を続けるか、散々迷った末、勢い余って俳優になる。現在長野県在住。四歳の男児持ち。「トマト農家の嫁」と「俳優」二足の草鞋を履く。 【出演情報】 映画「シスターフッド」 監督:西原孝至 アップリンク吉祥寺にて特集上映 2020年1月4日(土)19:50の回 https://joji.uplink.co.jp/movie/2019/4221
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思えば、旅の荷造りでは、数々の失敗を重ねてきました。

舞台公演のため、初めて2カ月間・国内4カ所の旅に出たときは、あれもいるこれも必要と、気づけばなにアタシ夜逃げすんの? ヨーロッパ周遊すんの? くらいの物量。

ふうふう言いながら駅までガラガラ押して、2階のホームまで引っ張り上げたとき、荷物のあまりの大きさと重量と、それに翻弄される己、その何もかも急激にイヤんなり、一旦電車に乗ったものの次の駅ですぐ降りて、それは具体的に言うと小田急線の下北沢駅と東北沢駅でのことですが、そこからタクシー乗って家帰って、小1時間ふて寝しました。

世の身軽な旅人たちに憧れ、大学のゼミ旅行ソウル2泊3日にB5サイズのショルダー1つで出かけたときは、帰国時、関空の税関でちょっとちょっとあなた、こちらへ来てもらえる、カバン開けて中身を見せて、と制服の男たちに囲まれ、ぱんっぱんのカバンのファスナー開けたら、そこには個包装のせーり用品がぎっしり詰まっていて(現地で購入使用。貧乏性なので余った分を持ち帰ってきた)ははは、なんか紛らわしくてすみません、でもなんでよりによってこれ、ねぇ、的な薄笑いをお互い浮かべ、はい結構ですと解放されました。

いや、荷造りするのは、大好きなんですよ。というか、荷造りの準備が好き。

旅行自体より、何持ってくかのリスト作ってるときのほうが楽しいんじゃないかとさえ。

旅行中の自分を思い浮かべて、そのときその場にありたいものを考えます。

1種の旅プレイです。

それはたいてい、出発日の2カ月くらい前から始まります。

・日々、目にする物全て、それを旅に持って行くか行かないか、を基準にし始める。

・旅をぐっと快適にする未知の旅アイテムが、この世のどこかにあると信じ、日夜探索する。主にネットで。

このパンツ(下着じゃないやつ)はシワにならんし、動きやすいし、しかも乾きやすい。まさに旅のためにあるようなパンツではないか!とか。

このパンツ(下着のやつ)は軽いし、線も出ないし、コンパクトにたためるし、しかも乾きやすい。まさに旅のために以下略とか。

パッキングのブツに合わせいろんな大きさの袋がセットになってる「トラベルポーチ7点セット」なんて調べだした日にゃもう。気がつきゃもう日が傾きかけている。あらあら保育園のお迎え行かなきゃ、ああ、また無為のまま1日が~などと。

ヒマ、か。

で、時間をかけてなんやかんや調べるわりに、具体的なブツは何ひとつ決まっていかないところが、旅プレイの醍醐味です。

あ、これかわいい~、お、これすごい便利そう~、おいくら~、ECサイトで値段比べて~、くらいのところで、いつまでも、いつまでも、ほわっほわしている。

そして、部屋の隅にスーツケースを開いておき、思いつきでなんとなく買った、旅の周辺用品ばかりが、随時そこに放り込まれていくのです。

いい匂いのするアロマオイル、とか。ちょっといい塩、とか。木製の洗濯ばさみ、とか。そういう、あってもなくてもいいやつ。ね、周辺、でしょ。

荷物の最重要物件たる、服とか、スキンケア用品とか、そういう、マジでブツと量を考えねばならんものは、とりあえず棚上げです。

そういうのはもっとほら、直前になってからじゃないとさ。

服決めるつっても、気温とかまだよくわかんないし、天気の長期予報出てからさ。

普段使ってる基礎化粧品やなんか、出かける直前まで入れらんないしさ。

1番のお楽しみ(パッキング)は、あとに残しとく主義なんで~。的な。

そして、放置。

放置。

放置。

そのうち、旅を、忘れます。

おそらく、ちまちまブツについて考えることに飽きたんでしょう。

他にやらねばならんことが出てきたりもして。ああ忙しい忙しい。

気がつきゃ、出発は明日です。

ぎゃー、荷造り、ぜんぜん終わってへんやんけー!

あかんあかん、何やッ、何がいるんやッ、もうええわとりあえずその辺のモン入るだけ入れとけ、あれやろッ、最悪、ケータイと財布さえあったら、何とかなるんやろッ!と何かに対して逆ギレ、結果、中に何が入ってるのかよくわからん重いスーツケースを引きずり、苦々しい思いで家を出ることになります。

何これ。毎回、必ず、こうなる。SF? 呪い? やだー不思議ー。

ホテル着いてスーツケース開けるとそこにはいつも

『働き続けた目にじ~んわり 蒸気でホットアイマスク』

が大量に入っています。そして、靴下の数が圧倒的に足りない。いっつも!

思うに、旅プレイで想定する『旅先のワタシ』は、『ステキな非日常のワタシ』。よってそれは、塩味のついてないロカボなナッツを食べたり、ホテルのお部屋にアロマエッセンスを香らせたり、寝る前に暖かいカモミールティーを飲んだりするであろう、架空の生き物。

しかし実際の旅の場にいるワタシはといえば、それは日常と地続きの、リアルなワタシです。よって、それが旅先であろうがなかろうが、寝る前にカモミールティなぞ飲みはしないのだった。

眠くなるまでやれビールだ、ハイボールだ。塩気のねえナッツなんぞ、つまみになるかい。塩はどこ入っとんや!

「大人の旅じたく」

著者
柳沢 小実
出版日
2016-04-19

そうそう、なんかこういう、こ洒落た荷づくりを見たかったんすよー。

エッセイスト、整理収納アドバイザーの著者による、旅の準備の本。

計画の立て方や、パッキングの仕方、旅の持ち物、情報ファイルの作り方など、旅に出かけるに当たっての基本が、写真とイラストとで、見やすく書かれています。

How toとしてはあくまで基本的なことで、ものすごく目新しいことが書いてあるわけではないんですけど、小物の使い方がいちいちセンスよくってな。

そして、荷物の全体量が少なく、きゅっとまとまっている。

実は、2泊3日の旅でも、2週間の旅でも、そこまで荷物の量は変わりません。せいぜい洋服の数が少し増えるくらいでしょうか。友達や仕事関係の方にもしばしば「えっ、荷物それだけなの?」と驚かれています。

間違いなくワタシは、驚く側の人間。

あるいは「えっ、そのでかいカバン、何入ってんの?」と驚かれるやつ。

ほんと、何入ってんですかね。靴下、足りなくて、毎晩ホテルで洗ってんですけどね。

柳沢さんによれば、2週間の旅でも持って行くボトムスの数は2~3枚、とのこと。潔い。

着回しで、少しの洋服でもバリエーションを出すとか。

ここで悲報。普段その着回しができないひとは、旅先でもやっぱりできないんすよ。がくー。

逆か、手持ちの少ない旅先こそ、着回しの技を磨いていく機会なのか。

逆境こそ、チャンス。

少々変な組み合わせになったとしても

「でへへ~すんませ~ん、旅先なんで~」

で、切り抜けられるか、も。

そしていつか、着回しの達人に。女性誌の「定番服で1カ月着回しコーデ!」もお手の物。さらには、不要なものを切り捨て切り捨て、持ち物はほんっとうに必要なこれだけ!ワタシも立派なミニマリスト。このままいつでも禅寺いけます。

ハッ、夢……?

それにしても、ファイルの仕方とか、ああさすが、ひとに整理収納をアドバイスできるだけのことはありますよ。きっと、部屋もきれいに整理収納されてるんだろなあ、畳んだ服の山が部屋の隅で崩れかけてたりしないんだろなあ……(今実際にワタシの目の前に広がっている光景)。

すっきり、こざっぱり、必要十分な持ち物を、見やすく収納。

旅行カバンの中、いや普段持ち歩くカバンの中も、ぜひこうありたいものです。なーむー。

旅で使える、機能性あふるるグッズと言えば、山グッズ。

そこに、おなごのココロを震わす「かわゆさ」をピンポイントでぶっこんでくるのが、シャレオツな山女子のみなさんであり、となれば、以前もご紹介したこの本はやはり外せません。

「私の山道具」

著者
出版日
2011-09-19

コチラ参照のこと。

「山登りを楽しみたい。でもこたつからは出たくない」

大事なことなので、2度言いました。

やー、それにしても山グッズって、ともすれば命に関わってくることなので、機能性・命! 軽さ・命! なんですけど、そのぶんただのトラベル用品と比べるとぐっとお値段もよろしくて。

さらに、デザインもすてきで、発色のよい、持ってて気分の上がるブツ、ともなると、だいぶ、あれしてきますな。予備の服やら入れとく半透明の袋がさんぜんえんって、なんやのそれ。

シャカシャカ音の気になる山小屋ならいざ知らず、旅行カバンに詰めとくだけなら、いっそコンビニ袋でも充分ちゃうの。半透明やし。破れても替えあるし。それか、ジップロックな。あれ透明やで。大きさもいろいろあるし。ああ、そらええわ。そうしとき!

なんか、脳内オカンがわあわあ言ってきやがります。いや実際、ジップロックは最強ですが。コンテナのやつと袋のやつ、必ず持参しますが。それでも。

オサレ、VS、生活感、の戦い。

なくてもしなないけど、あると気分が上がるモノ。そこの匙加減と、ふところ加減。

でも憧れちゃうのよ~、グラナイトギア~。パッと明るいお色で、頑丈かつ超軽量、しかも完全防水とか、この完璧具合どうですか。スタッフバッグ界の、アレックス・オローリンやぁぁ~(わかりづらい)。

こういう本みてると、無性に旅じたくしたくなりますね。旅プレイ熱が、むずむずと。

ああ、旅グッズ、買いたい。小分けになってる、調味料とか買いたい。

どうもこの、小分け、に弱いみたいで。すごいちっさいヴァセリンとか、使わないのにすっごいほしい。

荷づくりは、箱庭づくりに通じているのではないだろうか。

目下、来月行くことになった10日間の旅に向け、旅プレイ真っ最中です。今が1番楽しい時期です。

旅、というか、撮影なので、あれな、出張な。

行き先は、気温が40℃近い、ジャングルだそうです。

なんや。なにが、要るんや。

件のスーツケースにはまだ、ビーチサンダルしか入っていません。

とりあえず、いつもの常連

『働き続けた目にじ~んわり 蒸気でホットアイマスク』

は、今回ついに脱落するやも。靴下は、いらないかも。

ではまた次回。