漫画原作者のぼくが、ライバル漫画の関係者に面白さの秘密を尋問してきた件②

更新:2021.3.29

ひょんなきっかけで、ぼくが出会ったのは、『アラタプライマル』という漫画。このサバイバル漫画、ヤバいんです。何がヤバいって……面白い! 同じくサバイバル漫画を連載しているぼくは、その面白さの秘訣を原作者、作画担当者、編集者の3人から奪いに……、もとい、伺いに行きました……。 今回はその後編です!

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インタビュー前編はこちら
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/7798

作品の無料連載はこちら
https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156644386281

タ「そういえば、読者コメントに「サーベルタイガーの話を読んで、うちの猫が風呂に入りたがらない理由がわかったわ」みたいなコメントがあって。

フィクションの部分から受け取る側がリアルの何かを受け取ってくれるのって、ぼくの漫画にも結構あってうれしいなって思うんですけど、『アラタプライマル』ではどうですか? 」

 

村「実際、そういう「なるほど、ネコを飼うときは気を付けなきゃいけないんだな」ってコメントは貰ってよかったなと思っています」

 

及「そういうネタは、いろいろ見たりしてストックしてあります。基本的には自分の知識の中から使えるものを使って、実際にストーリーを作る段になったらそこから改めてめちゃくちゃ調べて……って感じですね」

村「彼は本でも資料でも、ずーっと見ていたい人なので。仕事場でも」

タ「なるほど、そのずーっと見てきた、調べてきたことが『アラタプライマル』に活かされているんですね」

及「実はぼく、前に『トリコ』のアシスタントに入っていたんですよ、『カラダ探し』のアシスタントに入る前に。

 

著者
島袋 光年
出版日
2008-11-04

及「島袋(光年)さんも僕と似たような感じで、仕事中にディスカバリーチャンネルとかを流したり、それに関する絵も描いたりして。そのうち自然に知識はついていったというのもあるんです。

そしてその後、村瀬さんと組むようになった時に、村瀬さんの作風であるリアルに落とし込めたら面白いかなって考えて」

タ「『マンモス描きたくないすか?』の一言の背景にそんなことが(笑) 」

村「ちょっと端折って説明しすぎましたかね(笑)今回の作品は、それぞれの持ち味がうまく活きるんじゃないかなと思って始まったという側面もあるんです。

僕はファンタジーの中でも「リアルを感じる部分」を面白いと思うタイプ。でも自分でファンタジーを描こうとすると、リアルを意識しすぎて地味になっちゃう……。

そこで及川さんの原作です。彼の現実から一歩跳ねた知識と発想を、俺がリアリティーをもって落とし込むっていう形でやったら、バランス良いんじゃないかな……っていうのがあって。それで組んでみたんです」

タ「それがおもしろさの秘訣かぁ……真似できないな、再現性がない(笑)

ぼくの漫画ではどちらかといえばリアルが得意なぼくと、ギャグ畑の作画担当さんのコンビなので、リアルな情報をどうギャグで崩すかという形のバランスの良さを追求しています。

そういう意味では『アラタプライマル』とは逆ベクトルなんですね。共存していけそうですね、よかった……」

村「そもそも潰しあおうと思ってませんし(笑)」

村「タケモトさんの漫画は面白い食材を食べるっていう、そもそもネタ自体が「普通」から一歩跳ねたものかと思うんですが、『アラタプライマル』は変な話、「火をつけるだけでもどれだけ面白くできるか」みたいな作品なんです。


結局、主人公の新って、最初のうちは火をつけてるだけ(笑)でもあの大木に火がついて、虫がどんどん飛び込んでくると、派手に見えるかなっていう演出とかがあって成り立つ部分もあるというか」

出典:『アラタプライマル』1巻

及「やはり「原始」なので、やってることは初歩的でリアルというか。……いや、リアルよりちょっとすごいかもですけど、それも演出が必要なんですよね」

タ「及川先生は、大ゴマのシーンは『これは大ゴマになるだろう』とか、事前に想定しているんですか?

原作者としては、言葉で説明しちゃうと『火をつける』だけじゃないですか」

村「『アラタプライマル』に関してはシナリオまでを(作画もできる)及川くんが書いているので、ある程度マンガをイメージして書いてるよね。たまに言葉でも「ここはちょっと大ゴマで見せたいです」とか書いてくれたりもして。

それを踏まえたうえで今度は俺が、ココを大ゴマにした方が面白いだろうなって感じで考えて、2人の考えをあわせて描いてる感じですよね」

タ「ネームを意識した原作が書けると」

及「そうですね、やっぱそこは他の方とは違うと思います」

タ「ぼくはセリフがずらーって並んだものを出しているので、大ゴマにするかもどうかも含めて全部漫画家さんと編集さんに投げてますね。そういう意味では意見をガッツリ入れてくれるところも含めて編集さんに参加していただいています。

ジャンプ+(『アラタプライマル』の掲載サイト)ではどうなんですか?

籾「『アラタプライマル』の場合だと、原作の時点での打合せが多くて、僕が修正とか意見を言うことが多いですね。ネームになるところからはそこまででもないです。画になった時に良くなってることが多いので、最初の骨組みに関して修正することが多いですね」

タ「多いというのは、何回くらい?」

村「まず、プロットに入る前に週1で打合せを2時間くらいやります。大筋はこんなのでとか、こんな展開になったら面白いんじゃないかとか、こういうのネタになりそうだねとか。その素案を及川くんに投げて、揉んでもらってから、それを僕がいただきます。そこが大体1、2回くらい

及「今週は3回くらいでしたね」

村「仕事場行くと、及川くんの顔が真っ白になってるときありますね。いや、寝ろよーって……(笑)」

籾「話も絵も描けないのに文句ばっか言って申し訳ないです」

タ「最初の読者さんですもんね、編集さんって。ここでズバッと言ってくれないと、ストーリーが歪んだまま行っちゃう方が原作者として怖いですよね。

ぼくもネタが弱かったら、ダメだしをいただきます」

及「それは一緒ですね、ぼくも」

村「使われてないネタもいっぱいありますよね」

及「画的には面白いけどキャラがノっていないというか、こちらが突っ走っちゃって、そのキャラがしそうにないことをしちゃうとストップがかかる、みたいな……」

タ「でも原作者は突っ走ったくらいが良いんじゃないですか?

及「僕の作品の場合はリアリティーがやっぱり必要なので、バランスが大事かなと。最近やっとつかんできた気がします」

タ「でも、及川先生がファンタジーに突っ走る→村瀬先生がリアルに引き戻す、でバランスをとってきている訳じゃないですか。村瀬先生的にはそこは遠慮してほしくない、みたいなのはないんですか?」

村「そうですね……一時期、原作が硬くなりすぎてしまっていた時期があって、その時は一回言った気がします。気にせず一回好きなことを全部出しちゃってよ、そのうえでアリかナシかのバランスをとるのはこっちでやるから。まず、楽しんで原作作ってよ、みたいなことを言ったことがありますね。彼の顔が白いときに」

及「たぶん、5月1〜2週にジャンプ+に掲載される回の時ですね(笑)」

タ「毎週の連載って本当に大変そうですね……。隔週のぼくでも大変なのに、すごくよく分かります……!

同じ漫画をつくる者として最後にお伺いしたいんですけど、皆さんこの連載でしてみたいチャレンジって何かありますか?」

村「絵で言えば、前作『カラダ探し』ではできなかった構図とかの面白さを描きたいですね」

 


『カラダ探し』については<漫画『カラダ探し』の赤い人などの怖さをネタバレ解明!怖くて面白い!>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

著者
村瀬 克俊
出版日
2015-02-04

村「前までは校舎とか、生徒とか『リアルな世界』での話だったのである種の限界があったんです。でも『アラタプライマル』の場合は規格外、高い所から落ちたり、凄いスピードで追いかけられたり、今までにはやったことがなかった迫力あるシーンに挑戦できそうだなあって思っています。そこを楽しんでもらえたらうれしいな」


 

及「僕の場合は、基本はホントに、面白ければなんでもいい。面白いって思ってもらいたい。

怖いって思ったり、楽しいって思ったり、読者の感情が動けばなんでもいいです。そういうものを作っていきたいですね。

そこを伝える要素として、2巻掲載の内容以降にメインになってくるであろうドラマも描いていきたい。新太の成長というか……。

あとは実践的なサバイバル要素も……」


 

村「欲張っていきたいですよね。

パニックの中で出てくる人間ドラマも、サバイバル要素も、謎を解いていくミステリ要素も、全部ぶち込んで面白く描けたら。

バランスを崩してしまうことなく、全部を面白く描けたら、すごい楽しんでもらえるんじゃないかなって思っています。ひとつの要素だけ楽しむのでも、すべて楽しんでくれるのでもいい、見どころいっぱいありますよって言いたいですね」


 

タ「いろんな人に面白いと思ってもらえるような作品になりそうですね」


 

村「そうですね。サバイバル、とか、ミステリー、とか分かりやすいくくりだけでなく、見えない層みたいなのがあると思うので、そういうところにも届いてほしいなって思って描いてます。

そうするとやっぱり「自分たちが面白いって感じるポイント」を自分たちで出していくしかない。もちろん狙ってる層というか、届いて欲しい所はあるんですけど、どこかにこだわるというよりは、面白いものを作れば、必然的に誰かの手に取ってもらえるんじゃないかって考えています。

それが結果として挑戦になっていますね


 

タ「作画での迫力、原作でのリアルさなど、それぞれメインでのこだわりはあれど、『面白いものをつくる』という熱量の高さはお2人とも共通していますね。

そう思ってもらえるようにどんどん欲張って挑戦していく姿勢……!めちゃめちゃかっこいいです!1巻が出たばかりですが、2巻も楽しみですね!」

著者
村瀬 克俊
出版日
2019-05-02

及「2巻は、やっとこの作品の本筋がでてきます。新太が周囲にちょっと受け入れられたシーンがあるので、そういう新太の成長と、原始でのサバイバルというか」


 

村「新太が世界を救う、じゃないけど、原始の世界で目的を持って動き始める。

原始時代にミステリ、そしてサバイバル、あらゆる要素を目白押しにしていますが、2巻ではたぶんそれが少しずつまとまっていきます」


 

タ「サービス精神が旺盛すぎてネタバレしそうになっています!(笑)読者のみなさん、あとはご期待ください!」

<2ページ目 編集後記につづく>

インタビューを終えて。同じ漫画の原作者としては……

ライバル心を剥き出しにしながらのインタビューだったにもかかわらず、包み隠さず和やかに答えてくれて、最終的には、同じ仕事のフィールドで仕事をする者として尊敬させていただきました……!

結果としてこちらの狭量さがあらわになった形に……。

今回感じたのが、原作と作画のそれぞれの担当がいる漫画では、担当編集と合わせて3人の意見をどのようにぶつけ合わせ、まとめていくかが完成度を左右しますが、どう合わせていくかは多種多様ということ。

『アラタプライマル』の場合は、及川先生の豊富な知識に裏付けられたファンタジーベースのストーリーに、村瀬先生のリアルかつ迫力のある作画と構成力で肉付けすることでもたらされる圧倒的な迫力が、最大の魅力であるといえるでしょう。

世界はどうなっていくのか、原始時代を生き抜くためにはどんなサバイバル技術が必要となるのか、そして新太はコミュ障をどう克服し、どう成長していくのか……今後の展開が本当に楽しみです。

ぼくも今後はいちファンとして応援させていただきます。でもやっぱり、あんまり面白くなりすぎるのは困るかもなぁ……。

著者
村瀬 克俊
出版日
2019-05-02

 

インタビュー前編はこちら
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/7798

作品の無料連載はこちら
https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156644386281