若くしてMicrosoft社を立ち上げたビル・ゲイツ。ビジネスマンとして世界を牽引し、また個人資産家として慈善活動にも尽力しています。読書家としても知られていて、自身のブログでたびたびおすすめ本を紹介。この記事では、これまでに彼が推薦してきた本のなかから、日本語に翻訳されているものを厳選して紹介していきます。
1955年生まれ、シアトル出身のビル・ゲイツ。本名はウィリアム・ヘンリー・ビル・ゲイツ3世です。実業家、慈善活動家、技術者、作家などさまざまな肩書きをもっています。
中学生の頃からコンピューターに興味を抱き、プログラミングを開始。この頃、後にMicrosoft社をともに起ち上げることになるポール・アレンと出会います。
ハーバード大学に進学し、当時発売されていた最初期のパーソナルコンピューター向けの言語BASICを、アレンとともに開発。1975年にメキシコにてMicrosoft社を設立しました。IBMからパーソナルコンピューター用OSの開発を請け負い、後に世界的に有名になる「Windows」をリリースするのです。以降Microsoft社は、20世紀にもっとも成功した企業だといわれるほど、大きく成長しました。
ビル・ゲイツは1994年から2006年まで、世界の長者番付で1位を記録。妻とともに、慈善基金団体「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」を設立して、貧困問題や教育活動に支援をしています。
またビル・ゲイツは、読者家としても有名です。多忙ななかでも年間50冊以上は本を読み、感想をブログなどで発表。ジャンルは歴史ものからフィクションまで多岐にわたり、多くの人に影響を与えているのです。
ここからは、そんなビル・ゲイツがこれまでに推薦してきた本のなかから、日本語に翻訳されているものを紹介していきます。
内戦、弾圧、DVに虐待……日々の報道で、暴力に触れない日はありません。
本書では、人間は生まれながらにして「暴力性」を備えていると説明し、暴力を中心にその歴史を振り返っていきます。心理学や脳科学、はたまた大昔の化石など、さまざまなデータを分析して明らかになったこととは。
- 著者
- スティーブン・ピンカー
- 出版日
- 2015-01-28
アメリカの実験心理学者、スティーブン・アーサー・ピンカーの作品です。2011年に刊行され、日本では2015年に翻訳されています。
前半では、先史時代から現代にいたるまでの歴史を振り返っています。20世紀には第二次世界大戦が起き、中東などでは内戦が続く現状。しかし有史以来、どこの100年、1000年を切り取っても暴力の数は減っているそう。しかも戦争や虐待などどの種類をみても減っているというのだから驚きです。作者は、「私たちは人類が地上に出現して以来、最も平和な時代に暮らしているかもしれない」と述べています。
後半では、暴力が減った理由を、心理学などを用いて考察。上・下巻あわせて約1400ページとかなりのボリュームですが、読む価値は十分にあるでしょう。ビル・ゲイツも本作を「自身にとって永遠の一冊」と紹介しています。
地球に生命が誕生してから40億年。最初の命が生まれてから、どのような進化を遂げてきたのでしょうか。
生命の起源や進化の過程はこれまでも多くの学者が研究してきた題材ですが、本書は「エネルギー」を軸に、新たな視点を持ち込み、読者に投げかけています。
- 著者
- ニック・レーン
- 出版日
- 2016-09-24
生化学者ニック・レーンの作品です。本書は「生命誕生の謎」に新たな視点から切り込んだことで話題を呼び、ビル・ゲイツも「はやく読むべき」と絶賛しています。
そもそも生命が誕生するには「エネルギー」が必要。一体そのエネルギーはどこから来たものなのでしょうか。また生物の進化については、核のない細菌から核のある真核生物が誕生した時が、歴史上最大の進化だと言及しています。どんな環境によってその進化がもたらされたのかを、仮説をたてながら検証する過程は刺激的です。
生物学の知識が必要で、読破するのはやや難しいかもしれませんが、読みごたえは抜群。研究者たちが日ごろどのようなことを考えているのか、その思考の経路を追体験できる一冊だといえるでしょう。
タイトルの『SHOE DOG』とは、「靴の商売に身を捧げ、靴のことしか考えていない人」という意味。本書の作者は、シュードッグのひとりであるナイキの創業者です。
彼は日本の靴メーカー「オニツカ」と出会い、オニツカの商品をアメリカで売りたいと考えました。神戸にあるオフィスを訪れて交渉をし、権利を獲得します。そしてその後、独自のブランドを立ち上げるまでになるのです。
- 著者
- フィル・ナイト
- 出版日
- 2017-10-27
世界に名をはせるスポーツ用品メーカー「ナイキ」の創業者、フィル・ナイトの自伝です。ビル・ゲイツは「驚愕の物語」と紹介しました。
これまでの著者の人生を年代ごとに記し、体験した出来事や当時の考えを赤裸々に綴っています。何度も訪れる資金調達の危機、オニツカとの軋轢、仲間との友情……起業を志す人はもちろんですが、ひとりの男の人生の物語として、まるで小説のようにも読むことができるでしょう。
作者のトレバー・ノアは、アメリカの政治風刺番組で司会を務めて人気を集めるコメディアン。「色の浅い黒人」として生きていましたが、彼の母親は黒人、父親は白人です。
ノアの故郷である南アフリカでは、当時アパルトヘイト政策が実施され、異なる人種間の結婚が法律上認められていませんでした。つまり彼は犯罪行為のもとで生まれた混血児だったのです。
貧困やいじめなど、苦しい子ども時代を乗り越えた人生が綴られた一冊です。
- 著者
- トレバー・ノア
- 出版日
- 2018-05-09
南アフリカ出身のコメディアン、トレバー・ノアの作品です。日本では2018年に刊行されました。
毛虫を食べるほどの貧しい生活、政府の目をかいくぐるために自らを偽る日々。時には生きるために、闇商売にも手を染めます。しかし差別と権力が跋扈する逆境の世界で、彼は確かな知性と、ユーモアを手に入れてきました。
本書を読むと、ノアの母親が彼に注いだ愛の大きさも感じることができます。誰しもがノアのように生きられるわけではないかもしれませんが、彼の強さは読者に勇気をくれるでしょう。笑いあり、涙ありの一冊です。
昨今の研究分野において、最重要事項ともいえる「遺伝子研究」。19世紀にダーウィンが唱えた「進化論」や、メンデルの「遺伝の法則」などをもとに発展してきました。
本書では、遺伝子を「もっとも強力かつ危険な概念」として、その誕生、進化、未来の在り方を語っていきます。
- 著者
- ["シッダールタ ムカジー", "Siddhartha Mukherjee"]
- 出版日
- 2018-02-06
インド出身の医師であり、がん研究者でもあるシッダールタ・ムカジーの作品です。作家としてデビューしてからは、その巧みな文章も評価されています。ビル・ゲイツは彼のことを「ゲノム科学の過去、現在、未来の案内役として最適」と絶賛しました。
すべての生物と切り離すことのできない「遺伝子」。これまでの研究の功績を紹介しながら、わかりやすく仕組みを解説しています。どうして親子が似ているのかなど、とっつきやすい話題から始まるので、初心者でも読みやすいでしょう。文章も簡潔で翻訳もわかりやすく、ぐいぐいページをめくることができます。
タイトルにもなっている「ファクトフルネス」とは、データなど正しい事実にもとづいて世の中を読み解くという意味です。
本書では、私たちが「常識」だと感じていることのほとんどが「思い込み」であると指摘。インターネットでさまざまな情報が得られる現代にこそ読んでおきたい一冊です。
- 著者
- ["ハンス・ロスリング", "オーラ・ロスリング", "アンナ・ロスリング・ロンランド"]
- 出版日
- 2019-01-11
スウェーデン出身の医師、ハンス・ロスリングの作品です。ビル・ゲイツは「世界を正しく見るために欠かせない一冊」と紹介しました。
たとえば「世界中の1歳児の中で、予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?」「いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?」のような質問をすると、社会的な地位がある人ほど正解率が低いそう。
本書では、「思い込み」をやめて世界をもっと正しく見ることができれば、もっと正しい選択ができるはずだと提案しています。「ファクトフルネス」はデータをもとにした考え方ですが、数式などは出てこず、難しい言葉も一切使ってないので安心してください。