イヤミス小説おすすめ7選!なぜだかハマる、嫌な気持ちになるミステリー

更新:2016.12.2 作成:2016.12.2

ハッピーエンドは素敵ですが、たまにはちょっと後味の悪い思いをしてみませんか?今回は読後になんだか嫌な気分になるミステリー、イヤミス作品をご紹介します。文庫化された作品ばかりですので、ちょっとした待ち時間にぜひ読んでみてくださいね。

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イヤミスとは

 

ミステリーのなかに「イヤミス」というジャンルがあるのをご存知でしょうか。読んだ後に「嫌な気持ちになる」作品のことをいいます。

複雑難解な事件が起こり、それでも最後にはすべて解決してスッキリ!……とはいかないのがこのジャンルの特徴。人間が持っているドロドロとした黒いものや、事件は解決してもどうにも割り切れないものが残ってしまうのです。

嫌な気持ちになりながら、それでもつい結末が気になって先を読みたくなってしまう……そんなイヤミスのおすすめ小説をご紹介していきます。

複雑な人間関係と、狂気『ふたり狂い』

本作は、短編連作集。女性誌に連載中の小説。同姓同名の主人公が自分だと思い込んだ川上孝一が、作者を刺してしまうところから、物語は始まります。この事件を発端に、デパ地下総菜での異物混入事件、企業中小事件、連続殺人など様々な事件が起こり始めるのです。別々に思えるこれらの事件の背後にいる謎の女マイコとは……。

著者
真梨 幸子
出版日
2016-10-07


ふたり狂いとは、感応精神病のことです。一人の人間の妄想が、近くにいる別の人物にも感染し、複数人で妄想を共有することがある精神障害を指します。短編タイトルは、精神病や心理学に関する用語になっているので、それらの意味を少し知ってから読むのもいいかもしれません。

相関図が必要と言われるほど複雑な人間関係の中で、果たして妄想に取りつかれているのは誰なのか、隣り合わせの狂気を感じる作品です。

イヤミスといえば、これ!湊かなえの代表作『告白』

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」娘を亡くした女教師の衝撃的な告白から始まる本作。復讐劇を「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々に視点を変えながら、事件の全体像を浮き彫りにする、湊かなえの代表作です。

著者
湊 かなえ
出版日
2010-04-08

イヤミスの代表作とまでいわれる本作は、読んでいて楽しい!面白い!といった明るい気持ちになることはありませんが、読む手を止めることができない魅力があります。ちょっと怖いからこそ、知りたいという感じでしょうか。母と子の歪んだ関係が生み出した事件は、後味の悪さも一級。物語の人物たちに対して、やるせない気分になることでしょう。どうしてそうなってしまったのか、という思いが胸を突く作品です。

恋とミステリー、そして絶望『ユリゴコロ』

タイトルになっている「ユリゴコロ」は、物語の初めで見つかる4冊のノートのタイトルです。ノートの内容は、とある人間の告白文で、そこには殺人に取りつかれたといしか言いようのない文章が綴られているのでした。ノートを見つけた主人公は、動揺しながらも殺人者のノートを読んでいきます。

著者
沼田 まほかる
出版日
2014-01-09


これだけでは恐ろしい話ですが、この話のもう一つのテーマは愛です。アンバランスな二つのテーマがどうなるか、ということにも注目できる作品でしょう。読んでいる間はどうしても重い気分になってしまいますが、読後はイヤミス作品の中では、思ったより悪くありません。猟奇的な殺人者というファンタジーを限界まで書いた作品です。どうしても人を殺したい人間の思いと、その人間が出会った愛とは?恐怖や憎しみの中に芽生える優しさを味わえると思います。

なんだかモヤっとするイヤミス「杉村三郎」シリーズ

『誰か Somebody』という作品から始まる、宮部みゆきの推理小説シリーズです。主人公は、元児童書専門出版社の編集者で、巨大グループ企業・今多コンツェルンの婿養子に入った杉村三郎。本作では、彼が遭遇する事件が描かれます。

著者
宮部 みゆき
出版日
2007-12-06


『誰か Somebody』では、今多コンツェルンの会長の個人運転手だった梶田信夫が、自転車にひき逃げされ、命を落とす事件が発端となる物語です。話の流れは王道で、事件の犯人も被害者の謎も綺麗にわかり、特別な悪意を持つ人間はどこにもいない。

どんなところがイヤミスなのかというと、ひき逃げ事件後に梶田の本を出版したいと願った娘二人の姉妹関係の悪さです。事件自体は救いがない話ではないのに、姉妹のやり取りや関係性がどうにも……という読後感の悪さが癖になります。

本シリーズは、真相を知るために人の暗部が引きずり出されます。悪意がないからこそ質が悪く、だからこそ人が鮮明に描かれます。すっきりもしませんが、面白いタイプのイヤミスです。

残酷で狂気的なイヤミス『殺戮にいたる病』

東京の街で猟奇的な殺人を繰り返す男・蒲生稔。殺害した女性たちの話を中心に、そこに至る経緯が3人の人物とともに描かれた作品です。

著者
我孫子 武丸
出版日
1996-11-14


3人のうち1人は犯人である蒲生稔、2人目は息子が殺人をしているのではないかと疑う母、3人目は知り合いが殺人事件に巻き込まれてしまった元警部です。叙述トリックの作品でもあり、見事な伏線です。ラストシーンの衝撃を楽しめる名作ミステリーです。

本作については、エログロ描写が苦手な方には、あまりおすすめができません。ですので、自分が良かったからといって、むやみに人に勧めてはいけません……。殺人シーンは残虐ですが、犯人に対して同情はしません。やるせなさというタイプの後味の悪さはありません。

真実はどこに?『鬼畜の家』

 

「おとうさんはおかあさんが殺しました。おねえさんもおかあさんが殺しました。おにいさんはおかあさんと死にました。わたしはおかあさんに殺されるところでした……」 (『鬼畜の家』より引用) 

次々と家族が殺されるなか、生き残ってしまったひとりの娘。元警察官だった探偵が事件の調査をするなかで、関係者から話を聞き、やがて衝撃の事実が浮かびあがってきます……。

著者
深木 章子
出版日
2014-04-15

 

作者は元弁護士だという深木章子。本作は「榊原聡」シリーズの1作目となります。

生き残った由紀名という少女は、幼いころから引きこもり。小学校すらまともに卒業していません。幼い時に父を亡くし、その後姉、母と兄が事故で死亡。気づけばひとりぼっちになっていました。

施設に預けられ、保険金を受け取る手続きがとどこおったため、職員が探偵に交渉を依頼しました。これがきっかけで、家族の死に隠された真実が明らかになっていきます……。

読者は語り手が本当に真実を語っているのか、疑いながら読み進めることになるでしょう。いつの間にか伏線が張られていて、最後のどんでん返しに驚くものの、それで救われるわけではありません。誰も救われない物語です。

救いのない悲しいイヤミス『殺人鬼フジコの衝動』

 

かつて、一か惨殺事件でひとりだけ生き残った少女がいました。事件は迷宮入りしたものの、少女は心の傷を乗り越えて懸命に生きていこうとします。

しかしやがて彼女は、十数人を殺害した罪で死刑になる「殺人鬼フジコ」になってしまうのです……。

著者
真梨幸子
出版日
2011-05-07

 

累計発行部数50万部を超えるベストセラーです。フジコを知る人物が残した「記録小説」という形で物語は進んでいきます。

いじめ、虐待、殺人……つらい描写が終始続き、かなり嫌な気持ちになりますが、それでもつい読み進めてしまうのは作者の筆力によるものでしょう。

フジコは決して快楽を求めて殺人をしているわけではありません。稚拙な言葉でいえば「命の重みがわからない」のでしょう。それは彼女が生きてきた境遇がそうさせているのであって、なんともやるせない気持ちになります。

事件には宗教団体も絡み、だんだん規模が大きくなっていきます。救いのない、悲しい話。あとがきまで注目してください。

いかがでしたでしょうか。イヤミスとなると、読後の気持ちの沈みが心配になりますよね。狂気や、やるせなさを感じた後は、あたたかい飲み物でも飲んで緊張をほぐしましょう。そしたらきっとまた別の作品を読みたくなるはずです。こんな読書の日々も悪くないですよ。