『有閑倶楽部』は、作者・一条ゆかりが描く少女漫画。1981年に「りぼん」で連載が始まり、長期連載作品として根強いファンが多くいます。単行本は全19巻、文庫版で全10巻プラス1巻、DX版は全9巻で刊行。1986年に、第10回「講談社漫画賞少女部門」を受賞し、ドラマ化・アニメ化もされている大人気作です。今回は、ふと読み返したくなる『有閑倶楽部』の魅力をネタバレしながら紹介していきます。 本作は、スマホの漫画アプリでも無料で読むことができるので、気になった方はそちらからもどうぞ!
セレブ御用達の名門校・聖プレジデント学園。なかでも高等部の生徒会の6人は、「顔面偏差値」高めの問題児集団かつ、生徒たちの人気者です。
周囲から有閑倶楽部(ゆうかんくらぶ)と呼ばれる彼らは、暇にかこつけてさまざまな事件に首を突っ込むこともしばしば。巻き込まれる事件は、いつもスケールが半端ありません。
誘拐・殺人・恋愛・オカルト……など、バラエティに富んだ危機に見舞われますが、権力や財力、コネクション、また各自の得意分野を駆使して問題解決に挑みます。
どんな難局にも立ち向かう、無敵の高校生たちの痛快なストーリー展開は読みごたえ抜群です!
- 著者
- 一条 ゆかり
- 出版日
- 2014-12-11
お金持ち集団のはずなのに、なぜかお下品で悪辣(あくらつ)、ちょっぴり下世話な6人。読めば読むほどクセになるでしょう。
セレブでイケメン・美少女ぞろいの彼らは、濃いキャラクターのなかにそれぞれ違った魅力があるため、楽しみ方は多種多様です。また話の振り幅が広く、脇役のキャラクターも個性派ぞろいなので、幅広い年代の方が楽しめる作品です。
たとえば、ちょっと切ないラブロマンス、ミステリー要素のある殺人事件に、コメディタッチの誘拐事件。本気で怖いオカルトや、意外なキャラが活躍するスポーツまであります。
元気をもらいたいときは、底抜けに明るい有閑倶楽部のパワフルさにエネルギーをチャージしてもらえるかも!?長く愛され続ける理由を、ぜひ一読して体感してください。
ここから先は、本作の登場人物の紹介や、見所&名言の一部を紹介します!ネタバレを含みますので、苦手な方はご注意ください。
すでに『有閑倶楽部』が気になった方は、まずはスマホの漫画アプリで読むことをおすすめしています。下のボタンから簡単にインストールできるので、ぜひ利用してみてください。
- 著者
- 一条 ゆかり
- 出版日
- 2012-07-18
作者・一条ゆかりは、漫画雑誌の「りぼん」「コーラス」で長く連載を続けてきた少女漫画家です。高校1年生で『雨の子ノンちゃん』でデビュー。
その後、『雪のセレナーデ』は第1回りぼん新人漫画賞で準入賞し、再デビューとなりました。以来50年間、多くの一条ファンに愛されながら活躍を続けています。代表作は『プライド』『砂の城』など。
長く愛される魅力は、繊細で華やかな絵柄、そしてリアリティある多彩な舞台設定と、少女漫画らしい非現実さのバランスでしょう。
シリアスからコメディ、恋愛模様から痛快アクションと幅広い作風を持ち、読み返しても色あせない、いつ読んでも新しい発見がある……そんな懐の深さが読者を惹きつける魅力のひとつです。
一条ゆかりのおすすめ作品を紹介した<一条ゆかりのおすすめ名作漫画ランキングベスト5!『有閑倶楽部』の作者>の記事もおすすめです。
本作の見所のひとつである魅力的な主要登場人物を、2007年のドラマ版豪華キャストとあわせて紹介します!
剣菱悠理(けんびしゆうり)
剣菱財閥の令嬢・悠理は、ケンカは強いが頭は弱く、異常なまでの食いしん坊です。超人的な体力と運動神経の持ち主で、運動部の部長をしながらロック同好会にも所属しています。かなりの霊媒体質で、オカルト系トラブルに巻き込まれがちです。
悪知恵は働きますが、単純・素直な性格で根は正義漢。女子にモテる「イケメン女子」です。ただし、オカルトな事態には尻込みしてしまうことも……。ドラマ版ではファッションモデル・女優の美波が演じています。
白鹿野梨子(はくしかのりこ)
茶道家元の母と、日本画の大家を父にもつ野梨子は、和装が似合う童顔の美少女です。文化部の部長をしながら、囲碁倶楽部にも所属しています。優等生気質ですが、意外と気が強く毒舌家。
また頭脳明晰ですが、運動オンチというギャップもあります。しかし、危機的状況に立たされたときの度胸は並大抵ではありません。ドラマ版では女優の香椎由宇が演じました。
黄桜可憐(きざくらかれん)
プロポーション抜群の美女・可憐は、宝石商のひとり娘。色気と美貌が自慢で、目標は玉の輿なので自分磨きに余念がありません。生徒会の書記をしながら、社交倶楽部にも所属しています。
打算的な発言も多いですが、ロマンチストで純愛に憧れがあり、情に厚いという意外な一面も。ドラマ版では、ファッションモデル・投資家の鈴木えみが演じました。
菊正宗清四郎(きくまさむねせいしろう)
大病院の御曹司・清四郎は、有閑倶楽部の頭脳担当の知的なイケメンです。文武両道でオールマイティなタイプ。生徒会の会長をしながら、囲碁倶楽部など複数の部にも所属しています。多趣味で広範な学術家であり、家が隣同士の野梨子とは幼馴染みです。
なんでもできるため、他者を下に見がちな一面があり、仲間から情緒に欠けると指摘されることも。頼れるリーダーですが、騙し合いを楽しんだり、人の弱味を握るのが得意だったりと、性格的に難ありなのもハマる要素でしょう。ドラマ版では、関ジャニ∞の横山裕が演じました。
松竹梅魅録(しょうちくばいみろく)
警視総監の息子・魅録は、不良グループからヤクザまで幅広く顔が利く、ワイルド系イケメンです。生徒会の副会長をしながら、ロック同好会にも所属しています。
メカ好きでバイクや車の運転はお手のもの。無線や盗聴、簡易爆弾の製作なども器用にこなします。ドラマ版では、彼が主役として活躍しており、元KATーTUNの赤西仁が演じて話題になりました。
美童グランマニエ(びどうぐらんまにえ)
駐日スウェーデン大使の息子・美童は、クォーターの超美形プレイボーイです。女性関係のトラブルに巻き込まれやすく、自称「世界の恋人」。生徒会の経理をしながら、社交倶楽部にも所属しています。
女性にはかなりマメで、女性ウケしそうなスポーツはひと通りこなしますが、車の運転は恐ろしく下手です。ヘタレ気味な性格からメンバーの足を引っ張ることも多いですが、どこか憎めない可愛いらしさが魅力のひとつ。ドラマ版では、元KATーTUNメンバーの田口淳之助が演じました。
以上、有閑倶楽部のメンバー紹介でした。
本作には、お酒の名前がよく登場します。これは作者・一条ゆかりのお酒好きの影響と囁かれています。主人公たちの名前を「普通っぽいけど、素敵で読み方がすぐわかるもの」と考えていたときに、「日本の名酒事典」が目に入り決定した、というエピソードがあるそうです。
魅録の愛犬・男山(おとこやま)も、じつは清酒から命名されています。また、作者が当時飼っていたコリー犬・蘭丸がモデルとなったとも言われています。
ちなみに剣菱、白鹿、黄桜、松竹梅、菊正宗は「清酒」、グランマニエは「リキュール」です。どんなお酒が登場しているのか、チェックしてみるのも面白いかもしれません。
本作の主人公たちは、お金持ちエピソードに事欠きません。そんな彼らをお金持ち度で順位付けするとどうなるのでしょうか……?各キャラクターのエピソードから考察してランキングにしてみました!
第6位 黄桜家
可憐の母が経営するジュエリー・AKIは、政治家や在日大使婦人といったセレブ層から愛顧されており、宝石商としての格は十分に高いと思われます。
ただし、一般的なサラリーマンよりは高収入な要素がありそうですが、シングルマザーで個人経営、倶楽部のメンバーたちに比べると少し弱いかもしれません。そういった点から、第6位は黄桜家とします。
第5位 菊正宗家
大病院・菊正宗病院を経営する菊正宗家には、医大生の姉がいます。母は清四郎のアドバイスを受けて株式を運用して稼いでいるようです。
一般の病院長職で、おおよその年収は3,000万前後とすると……父・修平は賄賂を受けつけない方針という描写、病院は1件のみという点を考えて、第5位は菊正宗家とします。
第4位 グランマニエ家
美童の父・ヴィヨンは、実業家兼スウェーデン大使です。母・真理子はスウェーデン王家の系譜ですが、職業の言及は見られません。しかし、病院経営よりも実業家のほうが儲かりそう……というイメージがありますね。
そして母方の祖母の財力(住居はお城、家具は国宝級がゴロゴロしている模様)はかなりのもの……という点を加味して、グランマニエ家を第4位とします。
第3位 松竹梅家
魅録の父・時宗は、警視総監です。警視総監の平均年収はおよそ1,250万ほど、作中で時宗の家は庶民との言及もあり、メンバーのなかではそれほどでも……と思いきや、母・千秋の存在を忘れてはいけません。
旧華族和貴泉家の令嬢・千秋は、「和貴泉倶楽部」を世界各地でリゾート開発し、仕事にかこつけて世界中を遊び歩いています。
剣菱家の妻・百合子と同レベルでお付き合いができる千秋の財力!白鹿家とどちらが上かは甲乙つけがたいですが……ここは時宗クオリティが影響を及ぼしての第3位とします。
第2位 白鹿家
両親ともに資産家と推察される白鹿家。実家は広大な日本家屋の描写があります。茶道の家元は弟子数が多ければ多いほど年収がアップし、数億円を越える場合もあるようです。
国宝級の掛け軸・雪月花をはじめとして、日本画の大家の作品ともなれば億越えの値がつく場合も少なくないと思われます。 そんなわけで、安定性と希少性の白鹿家を2位とします。
第1位 剣菱家
堂々の1位はやはり悠理、剣菱家でしょう。信号待ちが嫌で地下に車道を特設、警視庁舎を爆破するも新庁舎を寄付、東京湾に一大テーマパークを建設……。
そして誘拐時の身代金は最大20億円(用意にかかった時間はなんと10分!)と、メンバーのなかでも破格のお金持ちエピソードが続々と出てきます。
大財閥・剣菱グループが手掛ける事業は、酒造・造船・電気・銀行と幅広く、世界各国の資産家や王族に友人や知人がおり、コネクションもワールドワイドな剣菱家。第1位は間違いないでしょう。
2~5位は個人の独断と偏見によるイメージなので、人によってはまったく違うランク付けになるかもしれません。有閑倶楽部のお金持ちランキングは、みなさんならどんな順位になりますか?
本作は「読むと必ず勉強になることを、ひとつかふたつ入れるようにしている」という作者のこだわりが随所に反映されています。
実在のお菓子や高級品が数多く登場しますが、できるだけウソはつかずリアリティがでるように作り込まれているのも、本作の面白さのひとつでしょう。読むとちょっぴりタメになるポイントを紹介します。
その1:80年代に苺のミルフィーユ……オシャレ先取り感満載!
まずは「マキシム・ド・パリ」のナポレオンパイ(苺のミルフィーユ)。登場は1コマのみですが、コミックの柱部分で作者が紹介コーナーを設けており、興味を持った方も多かったのではないでしょうか。
現在はケーキ屋でも見かけるミルフィーユですが、80年代ではレアなお菓子……子供心にオシャレ・美味しそうで心惹かれた覚えがあります。
その2:アンティーク家具を巡って誘拐・殺人!?チッペンデールの家具とは?
美童の祖母が所有する国宝級の「チッペンデールの家具」。この作品で、はじめてアンティーク家具の存在を知ったというりぼん読者も多いのではないでしょうか。チッペンデールは、ヘップルホワイトと並ぶ18世紀のイギリスの家具デザイナーです。
チッペンデールといえば、メトロポリタン美術館に収蔵されている椅子が有名ですが、ディズニーキャラクターのチップ&デールの命名の由来にもなっているのだとか。
このほかにも、ストーリーのなかに自然と多くの知識が組み込まれています。このように面白いだけでなく、タメになる「読み込み要素」も数多くちりばめられているのです。
- 著者
- 一条 ゆかり
- 出版日
- 2000-11-17
本作の魅力のひとつに挙げられるのは、定期的にやってくるホラー回でしょう。怖さを感じるエピソードが盛り込まれています。
怪談ストーリーでは大活躍!?の霊媒体質・悠理。彼女が巻き込まれるホラー展開は、ゾッとする要素が盛りだくさんです。老婆の霊がさまよい求めるエメラルドの帯留め、蛇様の島、母子のミイラに鬼女……迫真の絵柄も相まって、感じる怖さは相当なもの。
一風変わった怖さでは、中国・台湾で剣菱家のお抱えコック・九江(チウチャン)が、魅録のペット・男山を食材として料理しようとする場面を思い出します。
犬って食べられるの!?と衝撃を受けた読者も多かったのではないでしょうか。別の意味でショッキングな怖さを感じた一幕です。
- 著者
- 一条 ゆかり
- 出版日
- 2000-05-18
本作には様々な名言が登場します。その中でも、とくに印象深い3つを紹介していきます。
有閑倶楽部の結成秘話で登場するのがこのセリフ。生真面目な性格が災いし、中等部のクラスで孤立していた野梨子。そんな彼女が出会った、上品でどこかお茶目なご婦人で、学園の理事長でもあるミセス・エールは、自分と違う価値観を受け入れられずにいた野梨子に、この言葉をかけるのでした。
友だちをつくらないのは
宝石をすてるようなものですよ
(『有閑倶楽部』2巻より引用)
性格や価値観の違い、個性や特性……自分と違う誰かとの繋がりは、自身にとってかけがえのない宝物にもなりうると、ふとしたときに思い出す魔法のような言葉です。
2つ目は、魅録の一言。大財閥を自身の才覚で動かす魅力に抗えず、一時的に悠理の婚約者となった清四郎。そんな彼に魅録がかけたひと言です。
自分に自信がある奴は
可能性に目がくらむんだぜ
(『有閑倶楽部』6巻より引用)
可能性に目がくらんだ結果、失態を見せる清四郎の姿に、なにを感じるかはそれぞれだと思いますが……「皮肉が利いていてカッコイイ!」と感じる読者も多いのではないでしょうか。
最後に、本作きっての名言といえるものをご紹介します。
有閑倶楽部の楽園である聖プレジデント学園が買い上げられ、あわや学園は取り潰しに……!?危機的状況からの一発逆転を狙うメンバーたちが、土地売買の黒幕にひと泡ふかせることを決意してのセリフ。発言したのは野梨子ですが、6人全員そろっての意思表示でした。
不可能を可能にするのが有閑倶楽部ですわ
(『有閑倶楽部』8巻より引用)
ドラマ版の決めゼリフにもなっています。有閑倶楽部の頼もしさが感じられて、これからなにが起こるのか思わずワクワクしてしまい、展開に惹き込まれてしまうでしょう。
本作には、ふとしたときに思い出す、グッとくる名言がほかにもたくさん登場します。どんな名言を発見するかは、読み方しだいです。そんな楽しみ方もアリかもしれませんね。
- 著者
- 一条 ゆかり
- 出版日
- 2011-06-17
本作の隠れた見所は、豪華ゲストの執筆シーンが多数収録されていること。 たとえば『純情クレイジーフルーツ』などで知られる松苗あけみは、元アシスタントであり、トリビュート作品も第11巻に収録されています。
ほかにも『イマジン』『おいしい関係』の槇村さとる、『パーティーがはじまる』の小椋冬美……など、豪華なゲスト漫画家が登場しています。 誰がどこを担当しているのか、じっくり読みこんで探してみるのも面白いでしょう。
幅広く、長く楽しめる作品でおすすめです。