『ブラックエンジェルズ』の展開がすごすぎ!登場人物、名言、最終回から解説

更新:2021.11.30

1985年に連載を終えた後、26年の時を経て実写化されるほど、根強い人気を誇っているのが、『ブラックエンジェルズ』。少年漫画ではあるものの、当時の読者にトラウマを抱かせるほど劇的な描写や深いテーマを描いた内容です。 本作は、いったいどういう物語なのでしょうか。登場人物の名言やテーマについての考察、結末の見所などからその魅力をご紹介します。スマホアプリで読むこともできるので、気になった方はそちらもご覧ください。

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『ブラックエンジェルズ』が面白い!最終回までの見どころをネタバレ!【あらすじ】

『ブラックエンジェルズ』は主人公の雪藤洋士が法では裁けない悪を滅ぼすために戦う物語です。たとえば、暴力団と癒着して甘い蜜を吸い続ける団体の幹部であったり、地元の名士の息子という権威をかさに着て犯罪を重ね続ける男など。

雪藤の武器は自転車のスポークで、それを吹き矢代わりに使いながら暗殺を完遂していきます。

これだけを聞くと単なる勧善懲悪の物語と思われるかもしれませんが、本作は月並みな物語にとどまりません。犯人は殺されるものの、犠牲者となった人間が救われないことも多々あるのです。

著者
平松 伸二
出版日

たとえば、あるエピソードでは夫に先立たれたおばあちゃんが不良に目を付けられ、金をせびられ続けます。そして、結局彼女は悲惨な状況に耐えかねて自殺してしまうのです。

雪藤は不良たちを殺し、せめてもの手向けとしますが、いいようのない無力感にとらわれるエピソードです。

そのほか、ストーリー展開が意外な方向に変化するのも見所。物語の途中では地震によって関東が壊滅状態に追い込まれ、雪藤たちが絶大なるパワーを秘めた8枚の金貨を集める旅に出ることになります。

ストーリー展開もエピソードも一筋縄ではいかないのが『ブラックエンジェルズ』なのです。

また、この記事では引用も含まれますが、初版のコミックス版のものでご説明しております。

作者・平松伸二とは。『ドーベルマン刑事』などで有名!

著者
["武論尊", "平松 伸二"]
出版日

平松伸二は19歳のときに『ドーベルマン刑事』という漫画でデビューしました。高校を出たばかりの漫画家らしからぬ画力が話題となり一躍人気を博しましたが、一方で同作は武論尊の原作ストーリーありきで描かれたものでした。

編集者から原作を自分で書けないと漫画家としては認めない、といわれた平松伸二は一念発起して自分で原作も作るように。その結果生まれた作品が『ブラックエンジェルズ』だったのです。

基本的に平松伸二の描く漫画は悪党を倒すダークヒーローが主人公となりやすいのですが、ここには彼自身の経歴も反映されています。編集者から悪口を言われた反骨心が、平松伸二にとっての創作の原点となったともいえるのです。

 

ドーベルマン刑事についてはこちらの記事で紹介しています。

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『ブラックエンジェルズ』の魅力:登場人物が濃い!誰が一番強い?

まずは主人公の雪藤洋士を紹介します。天涯孤独の身で、自転車で旅を続けながらあちこちを渡り歩いている男です。普段は野暮ったい人物として描かれていますが、悪を見つけるとその目つきは一転して険しくなり、殺気を帯びたものとなります。

スポークを自由自在に使って敵を倒していく姿は、まさに主役という風情。憧れを抱く読者も多かったようです。

著者
平松 伸二
出版日
2000-07-18

次に紹介しなくてはならないのが松田鏡二です。父の仇をとるために警察官になった男ですが、粗暴な性格も影響し退職に追い込まれてしまいました。以降は雪藤とともに暗殺に手を染める人間となりました。

空手で鍛えた腕力を武器に敵と戦う松田は、ときバズーカを素手で受け止めるほどのケダモノのような力を発揮します。単純な腕力だけなら最強の登場人物といえるでしょう。

本作はキャラの強さが気になる声が多いバトル漫画の要素もあります。上記2人のほか、松田のかつての同僚飛鳥も最強候補の一人です。飛鳥はトランプなどを使ってトリッキーな戦い方をする人物。さらに頭脳戦なら彼の右に出る者はいません。

また、ここまで男の登場人物を紹介してきましたが、『ブラックエンジェルズ』では女性も戦います。

ジュディという女は槍つきムチを使って戦いますし、麗羅はナイフを投げつけ相手を殺そうとしてくるなど、とてもパワフル。女性も華麗に戦うところが本作の魅力のひとつです。

『ブラックエンジェルズ』の魅力:悪役の突き抜けっぷりがすごい!特に悪女が…

本作は竜牙会をはじめとした敵対勢力も見所です。トラウマ漫画と言われることもある本作は、悪役がどこまでも鬼畜。読んでいて心が重くなるような人物ばかりなのですが、さらに後味が悪いのが、心を入れ替えるということもないこと。

よく漫画であるのが、最終的には改心し、仲間になったり、仲間とはならずとも、お互いの生き方を認めあうという展開ではないでしょうか。本作ではまったくそういう面がなく、どこまでも悪役は悪役のままなのです。

著者
平松 伸二
出版日
2000-09-14

たとえば童夢という男はジュディという女性の体を弄んだうえ、ブラックホールを操りながら戦うという破天荒な能力で人間の霊魂を閉じ込めるという何とも気味の悪いキャラ。

そのほか女性の悪役である魔導沙は気持ちなんてないのではないかという人物。かつて雪藤の仲間だった男たちの魂を呼び出して自分に協力させて戦うという何ともむごいことをするのです。

さらに物語の後半で登場する風剣という男と魔導沙は、かつて恋人同士だったのですが、彼に対しても容赦はしません。風剣が過去を思い出すことがあるのに対し、彼女はまったく気にしません。あまりの心変わりに読者まで悲しい気持ちになります。

とはいえ、最強の敵ともいえるのはやはり勇気です。

もともとは雪藤たちの味方として登場しましたが、洗脳されたことをきっかけに悪の部分が目覚め、敵となってしまうのです。サイコキネシスを使った戦闘力は作中随一で、終始雪藤たちを苦しめることとなります。

彼が悪役になった経緯はあまり詳しく描かれておらず、単純に説明不足としてしまうことも可能ですが、善意を持つことに理由が描かれないように、悪意もまた然りなのだろうと思わされるのが本作らしさでもあります。

『ブラックエンジェルズ』の魅力:グロいシーンがやば過ぎ!トラウマもの?

『ブラックエンジェルズ』が連載されたのは80年代だったため、いくらか描写が過激になっている部分も少なくありません。それが少年漫画誌に連載されていたこともあって、多くの子供たちにトラウマを与えた面も否めないです。

著者
平松 伸二
出版日
2000-09-14

特に当時の読者の間で語り草になっているのが、殺人犯として生きざるを得なくなった女のエピソードです。ある日暴力団に捕まってしまった女は、シャブと呼ばれる覚せい剤を打たれながら強姦されて以降、依存症に陥ってしまいます。

シャブを手に入れるためには金が必要であり、女は強盗殺人に手を染めざるを得なくなりました。

結果、雪藤によって暴力団員と女は合わせて殺されたのですが、今なおこのエピソードが忘れられないという読者は少なくありません。

確かに結果的に悪に堕ちてしまった人物ではあるのですが、病気ともいえる薬物依存にさせられたことが大きな原因です。こちらも何とも後味の悪い内容といえるでしょう。

『ブラックエンジェルズ』の魅力:キリスト教要素を取り入れている?

『新世紀エヴァンゲリオン』がキリスト教要素を盛り込んだアニメとして有名ですが、勇気本作はそれよりも早く、要素を取り入れていました。

もともと雪藤は親を殺された結果、教会に身を寄せていた人物。そこで殺人鬼である羽死夢(はしむ)たちと出会うのですが、彼らの手から逃れたものの胸に十字の傷を負ってしまうのです。

著者
平松 伸二
出版日
2000-10-18

これはキリスト教が定義している、人間は必ず十字架を背負いながら生きなければいけない、という運命を思わせる描写といえるでしょう。悪意のある人物を殺すことをしている彼ですが、決してそれをいいことだとは思っていません。

たとえ相手が悪者であろうと、殺人は、殺人。その気持ちを背負っていることがこの身体表現に現れているようにも思えます。

そのほか、水鵬(すいほう)という男が当初自分に課せられた暗殺の任務を遂行しきれず、竜牙会から抜けることを決心した展開があります。ここで自らに課せられた使命を裏切った者がどう生きていくか、というテーマがキリスト教と通い合うところがあるのです。

このような共通点を探してみるのも面白いかもしれません。

『ブラックエンジェルズ』の魅力:男女の性別の考えが革新的!

『ブラックエンジェルズ』がほかの漫画と一線を画しているのは女性に対する扱い方です。もちろん、ジュディやレイラのような戦う女性は目新しいものではありません。しかし、彼女は女性だからといって特別扱いを受けることがないのが本作は当時にしては珍しかった点なのです。

通常、女性を相手にすると男としてはどうしてもためらいが生まれてしまうものではないでしょうか。しかし本作では弱ければ容赦なく殺されてしまいますし、登場人物から同情されることもありません。

著者
平松 伸二
出版日
2000-10-18

たとえば竜牙会を率いる切人(きりひと)という男には、卑弥呼という娘がいます。親なら娘を大事にしたい気持ちがあるはずですが、彼にそんな情けは一切通用しません。卑弥呼が望めば遠慮なく戦線に繰り出させるのです。

そのほか、雪藤を預かった神父もそうした考えを共有している人といえます。神父は雪藤とともに亜里沙という女性も預かっていましたが、彼女もまた戦闘員として訓育します。

『ブラックエンジェルズ』においては、男女という性差はなく、ただひとりの人間としてそれぞれの人生が描かれるのです。

『ブラックエンジェルズ』の魅力:名言、名シーン多数!

『ブラックエンジェルズ』の名言といえば、まずはなんといってもこちらでしょう。

「地獄へ落ちろ!」
(『ブラックエンジェルズ』1巻より引用)

無実の罪を着せて功績を作ろうとする悪徳刑事を暗殺する場面で、雪藤が初めてこのセリフを口にしたのです。シンプルながら決め台詞として分かりやすく、当時の読者の心に残っているようです。

著者
平松 伸二
出版日
2000-11-17

次に挙げたいのは、松田のセリフ。

「夢を見続けちゃ悪いっていうのかよ!」 
(『ブラックエンジェルズ』2巻より引用)

警察を辞めた後の松田は雪藤とともに工事現場で働くこととなりますが、そこで元ボクサーだった男と出会います。彼はトレーナーの催眠術に操られ、自分ではボクシングのリングに立ち続けていると勘違いして、人を殺し続けていたのです。

結局松田の手によって殺されたのですが、松田は警察を辞めて正義を実現できなかった自分の立場と重ね合わせながら、上記のように叫びます。彼の無念がにじみ出ている名言といえるでしょう。

つづいてはこちら。

「いんだよ、細けえことは。クヨクヨすんじゃねえ」 
(『ブラック・エンジェルズ』1巻より引用)

一時、松田は敵に殺されて亡くなったものと見られていた展開がありました。それがある日突然、再び雪藤のもとに姿を現したのです。死んだはずでは、と驚く雪藤に松田は先ほどの名言を口にしたのです。バズーカであろうと受け止める松田らしい豪快なセリフ。

やはり疑問が残る部分もあるものの、有無を言わさない勢いがあり、感動させられる読者も多かった名言です。

最後はやはり、こちらでしょう。

「我が心すでに空なり 
空なるが故に無……! 
無をもってすれば 
火もまた涼なり」 
(『ブラック・エンジェルズ』12巻より引用)

ストーリーのなかで卑弥呼という適役が操る、悪魔憎涅巣(アマゾネス)という女性5人の小隊が現れました。そのうち黄泉という人物は雪藤を失明させるほどの実力だったのですが、逆のそれによって雪藤の力がさらに呼び覚まされます。

心の力で体の限界を突破した主人公は、無意識に攻撃できる、熱湯を浴びても無傷などのチート的な強さを手に入れ、上記の名言を語るのです。

こちらも本作の有無を言わさないノリに圧倒される展開です。

『ブラックエンジェルズ』の魅力:最終回がすごい! 勇気、ビッグママとの結末は…

本作は初版のコミックス版では20巻、愛蔵版、文庫版では12巻で完結しています。

その最終章は勇気率いる新政府軍と雪藤の戦闘がメインとなります。勇気の命で雪藤を倒しにかかるのは、通称ビッグママと呼ばれる幽姫と、彼女の3人の息子、幽鬼・幽岩・幽魔です。

記憶喪失に陥った雪藤は危うい展開が続きましたが、間一髪で回避。それどころか戦いのなかで再び記憶を取り戻すことに成功します。

著者
平松 伸二
出版日
2001-01-18

最終的に、勇気と雪藤の最終決戦が行われます。勇気が率いる軍勢の総攻撃に苦戦していた雪藤たちでしたが、どうにか乗り越えようやく勇気をギリギリのところまで追い詰めました。

自らのスポークによって勇気にトドメを刺そうとする雪藤は、果たして決着をつけることができるのでしょうか?

この最終回は、分かりやすいハッピーエンドにはなりません。雪藤が人を殺し続けた業を背負っていたこと、もとは仲間だった勇気がちょっとしたきっかけでここまでの戦いを仕向けてくるほどの悪党になってしまったこと……。さまざまなことに思いが馳せられます。

しかし物語の結末としてひとついえることは、雪藤は確実に目的を果たしたこと。勇気たち率いる悪党たちを成敗することは達成したのです。

具体的なラストの内容はぜひご自身でご覧ください。ところどころ疑問に思う部分もあるかもしれませんが、それを考慮に入れても独特のパワーが溢れるおすすめの名作です。

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