ハードボイルドなバイオレンスアクションもので有名な漫画家、平松伸二の描く作品の魅力であり、その人気の要とも言える男気溢れる主人公たち。様々な職業の男たちが彩る世界を楽しめる、おすすめの5作品をご紹介します。
平松伸二は1955年生まれ、岡山県出身の漫画家です。中学生のころから漫画を描き始め、高校1年生の時に描いた『勝負』で週刊少年ジャンプにてデビューを果たしました。高校在学中は、読み切り作品を5~6本掲載され、高校卒業後に集英社の編集にスカウトされて上京。当時週刊少年ジャンプで大ヒットしていた『アストロ球団』の作者、中島徳博のアシスタントとして働き、1974年に『ドーベルマン刑事』で連載デビューを果たします。
外道や悪を許さず、徹底的に追い詰め叩きのめすような主人公を描いたハードボイルドなバイオレンスアクション漫画が多いのですが、格闘技漫画でもヒット作品を出しています。どの作品も一貫する特徴としては、セクシーな描写が多いこと。
ダイナミックで力強い緊張感や迫力のある絵で、作品連載当時の世相や時事問題を題材として取り入れることも多い平松伸二。抗議を受けて単行本に未収録となってしまった話があるほどリアルな問題を取り上げ、社会にはびこる悪に対する怒りを主人公たちが叩き潰してゆくようなスタイルで表現しています。
そんな平松伸二の熱く男気溢れる主人公が登場するおすすめ5作品を紹介します。
警視庁特別犯罪科、危険な凶悪犯罪を専門に扱う通称「特犯科」に唯一所属する刑事である加納錠治。彼が次々と起こる凶悪な事件に立ち向かい、解決してゆく様を描いた作品です。
- 著者
- ["武論尊", "平松 伸二"]
- 出版日
『ドーベルマン刑事』は、平松伸二の連載デビュー作です。悪事をはたらく犯罪者を絶対に許さない正義の主人公、加納錠治が愛銃スタームルガー・ニュースーパーブラックホークを武器に、44マグナム弾をぶっ放して次々と悪を退治してゆく物語です。続編の新シリーズも出版されています。
特犯科が扱う事件は、警視庁に設置されている他の科が嫌煙する危険なものばかりですが、若干22歳の加納錠治は恐れることなく命をかけて解決してゆきます。その勇気と度胸で正義をつらぬく姿からは、溢れんばかりの男気を感じさせます。
凶悪な犯罪者と対峙した加納錠治は、迷うことなく相手を射殺することで世間から叩かれるのですが、本人は「外道に人権などない」と断言し全く気にしません。これだけ聞くと冷酷で非常なようにも感じさせますが、子どもや老人の面倒を見、更生しようと努力する軽犯罪者、時に過去に大罪を犯した者も事情によっては立ち直るために手助けをすることもある、実は心根は優しい人物。そこがまた、主人公のかっこよさを引き立てている要因でしょう。
スリルもインパクトも満点。平松伸二の作品を読むなら、まずは『ドーベルマン刑事』がおすすめです。
『ドーベルマン刑事』については<『ドーベルマン刑事』5つの事実!おすすめエピソード、結末もネタバレ紹介!>で紹介しています。気になった方はぜひご覧ください。
20歳にして木場流忍術の継承者である主人公木場優児が、内閣総理大臣である父、板垣重政から下される「日本国民にとって危険な悪を排除する」指令を遂行するため、裏の顔、牙として日夜暗躍するという物語です。
- 著者
- 平松 伸二
- 出版日
主人公の木場優児は、日本で唯一殺人許可証、マーダーライセンスを持っています。悪用すれば非常に恐ろしい代物ですが、正義感が強く男気の溢れる牙は絶対に悪を許さない青年です。その上容姿端麗でもあり、インストラクターとして勤めているスポーツジムでも女性から人気。文句なしにかっこいい主人公といった人物です。
忍術を使える牙ですが、そのほかにも筋肉をコントロールし、女性の姿になることもできる特殊な能力を持っています。普段はスポーツジムに勤める木場優児という青年、暗殺の仕事をこなすための裏の顔である牙、首相主治医の優子、3つの顔を持っているのです。この斬新な設定も、平松伸二らしさを感じさせます。
国民を家族のように大切にする、まさに清廉潔白な理想の内閣総理大臣である板垣重政が息子の牙と共に、立場や権力をふりかざして悪事を働く汚い人間たちを根絶すべく戦いつづけるというストーリーは、連載当時の世相や政治を大きく反映したものとなっており、あまりにリアルな問題をとりあげたために抗議を受け単行本未収録となった話が存在するほど。
現実ではなかなか届くことのない国民の気持ち、怒りを感じる事件や問題を、読者に代わって代弁して叩きのめしてくれる板垣重政と牙の活躍はスカッとする爽快感を感じさせてくれます。
主人公の雪藤洋士が所属するブラックエンジェルズが、被害者からは一切報酬を受け取ることなく、法で裁けぬ悪を叩きつぶしてゆくという勧善懲悪ストーリー。
- 著者
- 平松 伸二
- 出版日
主人公の雪藤洋士は、両親を事故で亡くし、姉と共に育ててくれた叔父夫婦を強盗に殺された挙句、濡れ衣で逮捕された姉が警察の過酷な取り調べによって自殺に追い詰められたという悲惨な過去を持っています。そのため、普段は一見気弱そうな青年にしか見えない彼は、悪事を働く外道を前にすると一変。冷徹な暗殺者へと変わるのです。
改造を施し武器を仕込んでいる自転車に乗り、戦いの際に使用。スポークが主な武器となっています。序盤は現代版仕事人といった雰囲気を醸し出していますが、物語の後半では秩序が崩壊し荒廃した世界で超人的能力を持つ敵と対峙してゆく展開となり、雪藤洋士自身も初期には見られなかった能力を身に着けさらに強くなってゆくのです。
「地獄へ落ちろ!!」というブラックエンジェルズを象徴する有名なセリフも存在します。社会にはびこる法で裁けぬ悪を根絶やしにせんと戦いつづける雪藤洋士を、いつの間にか全力で応援してしまっている自分に気づくことになるでしょう。
平松伸二らしさがこれでもか、というほど詰まった作品、ぜひ一度手に取ってみてください。
『ブラック・エンジェルズ』については<『ブラックエンジェルズ』の展開がすごすぎ!登場人物、名言、最終回から解説>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
角界のジゴロ、男芸者などの異名を持つ美形の力士、椿藤十郎。四股名は恋吹雪。彼とともに一夜を共にした女性はみな艶を取り戻し、運に恵まれるという恋吹雪は、相撲の土俵も夜の土俵も手は抜きません。
- 著者
- 平松 伸二
- 出版日
喧嘩が強く、素行が悪かった椿藤十郎は、更生を兼ねて角界へ入れられます。力士としては細身の体格でありながら、鍛え上げられた肉体と優れた技を持ち味とした相撲をとることで有名。ただ、主人公の恋吹雪は力士として登場しますが、普通のスポ根ものとは全く違った物語です。普通の相撲の物語と思って手に取った方は大いにびっくりするでしょう。
基本的に1話完結でテンポよく進むため読みやすい作品ですが、主人公の恋吹雪、夜の土俵では毎回違う美しい女性と共にするという、ある意味過激でインパクトのあるストーリー。描写も割と過激です。お子様にはおすすめできませんので、ご家庭での管理にはご注意を。
恋吹雪と寝た女性はみな女としての艶を取り戻し運気も上昇すると噂になり、ご祝儀を払ってまで頼みに来る女性もいるほど。そして実際、それで救われてゆく女性たち。驚きを隠せない展開ですが、それでも当たり前のように進んでゆくのが平松伸二ワールド。恋吹雪は今日も今日とて、世の女性たちと夜の土俵に踏み込みます。
アクションバイオレンス系の作品とは違いますが、陰では人一倍の努力をする恋吹雪の信念を貫きとおす姿からは男気を感じずにはいられません。他の勧善懲悪ストーリーと違い、気軽に楽しめる作品としておすすめです。
相場師のシマこと志麻蒼一は、かつて仕掛けた仕手戦で3人の男に裏切られ、仲間は死に追いやられ、自身は刑務所送りとなってしまいます。刑期を終えて出所したシマの心に宿る復讐の2文字。果たしてその結末は……?
- 著者
- 平松伸二
- 出版日
- 1999-01-01
仲間だと思っていた3人の男に裏切られて捕まってしまったシマは、出所してナニワの満吉こと金子満吉という若い借金取りと出会います。初めはシマを侮ってなめていた満吉ですが、実はシマはかつて蒼き狼の異名をとった大物。彼の凄みを見せつけられた満吉は、弟子として、そして相棒としてシマと共に共闘してゆくことになるのです。
一見冴えない中年に見えたシマの凄みと大人の渋さがとにかくかっこよく目に焼き付きます。若い満吉という存在が対比させるようにそれをさらに強めているからでしょう。
外道を叩きのめす勧善懲悪ストーリーではなく、株を題材にした作品。難しい世界で、知識がないとなかなか手が出せない気がしてしまいますが、作中で解説を入れてくれるのでどんな人でも楽しめます。欲で醜く肥え太ったやつらの喉笛にくらいつく男の物語、楽しんでみてください。
平松伸二の描く男気溢れる主人公たち、いかがでしたでしょうか?男も惚れてしまいそうなかっこいい男たちの活躍、ぜひ手にとって楽しんでみてください。