新書と聞くと堅苦しいイメージをもっている人も多いかもしれませんが、ベストセラーになったものはどれもわかりやすく、読み物としても楽しめるものがほとんど。科学や歴史などさまざまな分野の情報を、適度な分量で手軽に読むことができます。この記事では、これまでベストセラーを記録したおすすめの新書を紹介していきます。
同じものを見たはずなのに、ある人は「新しいことを学んだ」と言い、ある人は「こんなのずっと前に学んだことじゃないか」と言う……そんな経験はありませんか?後者の人が新しい何かを発見できなかったのは、脳にある「バカの壁」が原因かもしれません。
普通に過ごしているつもりでも、私たちの周りには多くの壁が存在しています。それは自分の脳が情報を受け付けなくなる「バカの壁」であったり、「個性の壁」であったりとさまざま。そのような「壁」をどうやって取り払うことができるのか、考えるヒントをもらえる一冊です。
バカの壁 (新潮新書)
2003年04月10日
2003年に刊行された養老孟司の作品。衝撃的なタイトルで有名になり、「新語・流行語大賞」も受賞した大ベストセラー新書です。養老孟司は東京大学の医学部を卒業した医学博士。その知識を活用し、社会や心の問題をテーマにした書籍を発表しています。
自分の理解に制限をかけてしまう「バカの壁」をはじめ、組織で活動するうえで協調性と個性を同時に求められることや、情報との付き合い方など、人生でぶつかる壁は多種多様。しかも自分では、その存在にすら気付いていないこともあるのです。
日々を生きるうえで何かうまくいかないことがある時は、「壁」のせいかもしれません。本書を読めば、凝り固まっていた頭が柔らかくなるはずです。
「会計」と聞くとなんとなくイメージは湧くけれど、その本質を理解している人はどれくらいいるでしょうか。本書は、会計を学ぶのではなく、会計の「考え方」を知ることができる一冊です。
たとえば飲み会における割り勘や、お店が抱える在庫、スーパーの売り切れ表示など、身近なところから会計を考えます。
さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)
2005年02月16日
2005年に刊行された山田真哉の作品です。
本書の最大の特徴は、読み物として会計を知ることができること。専門用語も少なく、数字が羅列されていることもないので、苦手意識をもっている方も大丈夫です。キャッチーなタイトルに目が惹かれますが、これこそが本書がベストセラーとなった理由でしょう。
普段目にするものから会計学へ、あるいは街中にある身近な謎から会計学へ話を広げていくように書かれていて、世の中のカラクリに気付ける一冊です。
人間は言葉でコミュニケーションをとっていると思いがちですが、実は言葉以外の多くの要素が相手に情報を与えています。
外見、表情、服装、匂い、距離……このような「非言語コミュニケーション」が、自分が意図していない印象を相手に与えているのです。
- 著者
- 竹内 一郎
- 出版日
- 2005-10-01
2005年に刊行された竹内一郎の作品。竹内は、さいふうめいという名前で漫画原作者としても活動しているほか、ギャンブル評論家や劇作家としても活躍している人物です。
タイトルにもなっている「見た目」とは、容姿のことではありません。表情や仕草など、見ることで得られる情報のことです。
たとえば人の話を聞く際に、うなずくことがありますよね。リアクションとることは大切ですが、やりすぎると相手に悪影響を与えかねません。そのほか、お喋りが上手なのにいまひとつ信用できない人は何が原因なのか、女性の嘘が見破られにくいといわれるのはなぜなのか、関心を掻き立てられるテーマから、言葉以外の情報がもつ意味について考えていきます。
本書を読めば、自分の印象を9割変えることができるかも?
「生命」とは、一体何を指すのでしょうか。「生きている」とは、どういう状態のことなのでしょうか。
黄熱病や梅毒の研究に力を尽くした野口英世や、DNDと遺伝子の関係を発見したエイブリー、ワトソン、クリックなど、生命科学の分野で活躍した人物の功績を紹介しながら、生命の定義に迫っていきます。
- 著者
- 福岡 伸一
- 出版日
- 2007-05-18
2007年に刊行された福岡伸一の作品。「新書大賞」や「サントリー学芸賞」を受賞しているベストセラー新書です。
「生命」という言葉は非常に単純なものに聞こえますが、科学で定義をすることは非常に難しいことがわかります。まず本書のプロローグ内では、生命とは「自己複製を行うシステム」、つまりDNAを次世代に残せるものだと記されています。
ではウィルスはどうでしょうか。ウィルスは細胞に寄生して自己複製をするので上記の定義にあてはまりますが、呼吸も栄養の摂取も排泄も一切しません。私たち生物と、ウィルスの決定的な違いとは何なのでしょうか。
歴史を追いながらこのような思考をくり返し、謎を解明していくさまは、まるで推理小説のよう。科学が歩んできた道、これから進むべき道を物語調でドラマチックに知れる一冊です。
本書の作者は、リポーターやキャスターとしてさまざまなメディアで活躍している阿川佐和子。さっぱりした口調と、ゲストの話をぐいぐい掘り下げていく姿が印象的ではないでしょうか。
週刊誌上では20年弱も対談の連載を続け、世代や職業を超えた多種多様な人にインタビューをし、彼らの心の内を引き出してきました。
本書は、そんな彼女が聞き手として大切にしてきたことや、失敗談と成功談をまとめた一冊です。
- 著者
- 阿川 佐和子
- 出版日
2012年に刊行された阿川佐和子の作品。同年の「年間ベストセラー」で1位を記録したほか、翌2013年にも3位となったロングヒット作品でもあります。
主な内容は、インタビュー前の準備にはじまり、インタビュー中の相槌の打ち方、質問の仕方など、彼女の経験から得たコツの紹介するもの。テクニックだけでなく、心構えやスタンスを教えてくれています。
柔らかい口調で面白おかしくエピソードが語られているので、まるでエッセイのように読むことができるでしょう。
室町時代に起きた「応仁の乱」。きっかけは幕府の後継者問題でしたが、その後細川勝元と山名宗全の対立に発展し、さまざまな要素を絡めながら戦いは全国に広まっていきました。
なんと11年間も続き、もはや誰と誰が戦っているのか、目的は何だったのか……。本書は、複雑化していった「応仁の乱」の経過と実態をわかりやすく記してくれている作品です。
- 著者
- 呉座 勇一
- 出版日
- 2016-10-19
2016年に刊行された呉座勇一の作品。呉座は日本中世史を専門とする歴史学者で、 国際日本文化研究センターで助教授も務めています。本書は、歴史の解説書、とりわけ室町時代を扱ったもののなかでは異例の大ヒットをしてベストセラーとなりました。
同時代に奈良の興福寺で僧侶をしていた経覚と尋尊の日記をもとに、彼らの視点から当時の出来事を綴っている構成。戦いにいたるまでの様子などは臨場感たっぷりで、読み物として楽しむことができます。
「応仁の乱」という名前はあまりにも有名ですが、戦い自体があやふやなまま進んだこともあり、その全体像を把握できている人は少ないのではないでしょうか。大量の登場人物と複雑化した対立構造も、理解を妨げる要因のひとつでしょう。本書を読んで、ぜひその実態に触れてみてください。