主人公は、根暗で一風変わった特技を持つ、竹内薫(たけうちかおる)。相方は、生粋の裏世界のエリート・藤原智美(ふじわらともみ)。一見すると正反対の2人ですが、じつは学生時代から「お互いのよさを認め合う関係」でした。彼らが大きな犯罪に巻き込まれていくことで、友情とサスペンスが織り交ざったストーリーが展開されます。 竹内は金銭的な事情から、藤原に誘われた犯罪に手を貸すことになります。それをきっかけに自分探しを始めますが、特技のせいで「自分とは何か?」がわからないまま……。今回は、ドラマ化もされた本作の見所を、ネタバレしながら紹介します!
主人公・竹内薫の特技は、人の文章を書き写すことで「それを書いた人間の思考をコピーできる」というもの。小説家志望の彼は、数々の有名小説家の本を読み、まるでその人物たちが執筆したような小説を書き続けます。
小説は面白くはなるものの、単純なコピー作品。彼の持ち味は出ておらず、まったく評価されませんでした。また認知症を患う母親と暮らしているので、経済的にも厳しい状況……。夢も生活も行き詰まり、彼は追い詰められていきます。
そこに現れたのが、元同級生のエリートヤクザ・藤原智美。以前、妹が失踪した事件を解決したことをきっかけに、竹内の特技を高く評価しています。
藤原が次にやらなければいけない仕事に「竹内の特技」が必要なため、2人はともに犯罪に手を染めることに……。
本作は、2020年1月からドラマ化が決定しています。主人公・竹内は中島裕翔、藤原は間宮祥太朗が演じる予定です。
ドラマ作品は、映画『凶悪』で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した、髙橋泉が脚本を手掛けており、キャスト陣の演技と演出に注目が集まっています。
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本作の作者・市川マサは、2009年に『A-BOUT!』でデビューしました。
漫画家になったきっかけは、喋るときに「どもってしまう」こと。とくに体調が悪いとその傾向が強くなってしまい、バイトをしていてもうまくいかず、人と話すことが少ないこの仕事を選んだそうです。
- 著者
- 市川 マサ
- 出版日
- 2010-03-17
『僕はどこから』は、『A-BOUT!』のときよりも、画力が格段にアップしています。また、雰囲気も柔らかくなっており、「迫力ある部分」と「優しく心を描く部分」がうまく組み合わさっています。
そんな作者は、漫画家のテクニックについてはほとんど学んでおらず、すべて自己流で描いていたそうです。型に縛られず、自分の好きな描き方で、自由に描いているのが魅力のひとつ。
とくに、キャラクターの表情がコマいっぱいに描かれている場面などは、特徴的で迫力を感じるでしょう。
竹内の特殊能力は、読書好きだった彼が「本を書き写しながら」読んでいるときに、いつの間にか身に付いたものでした。文章には、書いている人の意図が「指紋のように残っていること」に気づき、それを書き写すことで、文字の上でその人になりきれてしまうのです。
これは、テストや試験問題の文章にも使える能力。問題文を一心不乱に書き写すことで、出題者の意図を完璧に読みとり、解答を導き出すこともできます。
- 著者
- 市川 マサ
- 出版日
- 2018-06-06
また、思考コピー能力は文字だけでなく、回路図のようなものにも使えます。しかしこの能力は、便利なだけではありません。時に翻弄されることもあり、それによって物語は予測不可能の展開に……。
ちなみに、中学時代に藤原と仲良くなったのも、この能力のおかげ。藤原の妹が、書き置きを残して失踪したときに、能力で手助けしました。
書き置きから思考を先読みし、自殺しようとしていた藤原の妹を助けたのです。このことをきっかけに、藤原は竹内のことを尊敬しています。
トラブルが始まった原因、それは「替え玉受験」でした。
藤原が持ってきたのは、ある家の息子・玲を一流大学に入れるための偽装受験の手伝いです。2人に、それぞれ2000万ずつ報酬を支払うというのです。生活に困っていた竹内は引き受けますが、依頼者の母親の名誉のためであって、玲の想いはまったく別ものだと気づきます。
複雑な思いを抱えながらも依頼を成功させた竹内でしたが、試験中に玲が母親を殺してしまいます。替え玉受験のはずが、殺人事件に。アリバイはあるものの、一つの真実を話せばもう一つもバレてしまう、バレてしまうと報酬どころか、警察沙汰になってしまう状況……。
警察は竹内を調べていくうちに、藤原の存在にも気づき、彼にも事情聴取をします。逮捕状を取りながらも、そのことを竹内たちには伝えずに、サインをさせる警察。2人はこの危機を、どうやって乗り越えるのでしょうか。
情報屋の山田は、玲の父親が経済産業省の高級官僚で、替え玉受験の裏には、IR計画(カジノ計画)との関係性があると知ります。そこで、替え玉受験の本人である玲と共謀して、その利権をもらうことを企みます。
不穏な空気のまま、竹内に近づいてくる山田。彼は自分の手を汚さずに、竹内を犯人に仕立て上げる方法を考え出していました。
一方、竹内は「山田の文字を書き写して」彼の思考を読みとります。そして、どうにかその手に乗らないようにと考え、心理戦をくり広げるのです。しかし、すでに山田のシナリオは動き始めていて…⁉
敵の罠に翻弄される、竹内と藤原。2人の運命は一体どうなってしまうのでしょうか?
最終回は、替え玉受験から始まったさまざまな苦難を乗り越えた、10年後が描かれます。竹内はライターとして独立。仕事で喜びを感じることはありますが、まだ「自分とは何か?」の答えを見つけられていません。
小説を書くことを勧められても、何を書いたらいいのかもわからないのです。そんな状況なか、再び出会う竹内と藤原、そして玲。しかも、出会ったのは玲の母親の墓前でした。
- 著者
- 市川 マサ
- 出版日
- 2019-03-06
会えずにいた間の竹内の想いは、久々に対面した際の表情から、痛いほど伝わってきます。会えなかった10年間、彼らは一体どうやって過ごしていたのでしょうか?
最後に藤原が竹内に言った言葉、そしてそれを受けた竹内の姿が、最大の見所です。これが物語の終わりではあるものの、主人公にとっては始まりなのかもしれません。
「自分とは何か?」という大きなテーマを、犯罪とともに描いた本作。若さゆえの苦悩や、竹内と藤原の友情、そして青っぽさ。読後には、「大人になったからこそ、考えさせられるものがある」と感じられるでしょう。