『ステップ』重松清が描く「残された人」の物語。泣ける小説が映画化【ネタバレ注意】

更新:2019.12.20

本作は30歳で妻を亡くした主人公の健一が、幼い娘の美紀の成長を通して、周りの人々と交流していく感動的な小説です。片親ならではの苦悩、母親を知らない娘のつらさ、それを支える周囲の温かさなどが、フィクションでありながら多くの共感を呼びました。『流星ワゴン』などで有名な重松清が作者です。 この記事では、2020年に映画化も決定している本作の魅力を結末までご紹介します。ネタバレを含みますのでご注意ください。

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『ステップ』、映画版での見所を考察!

 

重松清の小説『ステップ』は、2020年4月3日に映画化されます。原作の紹介の前に、少し映画についてご紹介しましょう。

映画では、山田孝之國村隼余貴美子広末涼子など豪華なキャストが出演します。

原作小説では親子愛や、登場人物の人間的成長がテーマになっていますが、映画化にあたっては上映時間の都合から、いくつかの要素がカット、または統合されるはずです。

キャストのコメントから、おそらく美紀が育っていく経過に合わせた登場人物たちの人間的成長に焦点が絞られるのではないでしょうか。3人の子役による美紀と健一のヒューマンドラマ父と娘の人間的成長などが映画版の見所となるでしょう。

さらに詳細が気になる方は公式サイトや動画などをご覧ください。

映画「ステップ」公式サイト|4月3日(金)全国ロードショー

 

 

映画化によって『ステップ』を知る方も多いでしょうが、ぜひあわせて原作を読んでみてくださいね。傷を乗り越えて進んでいく温かな強さが、より感じられることでしょう。このあとは、そんな原作小説の見所を結末までご紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。


山田孝之が出演した作品を見たい方は、こちらの記事もおすすめです。

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『ステップ』が泣ける!重松清の名作小説が映画化【あらすじ】

まずは原作小説のあらすじをご紹介しましょう。ご存知の方は飛ばしても問題ありません。

結婚3年目の武田健一は、愛する妻の朋子と1歳半になった娘の美紀と3人で暮らしていました。ところがある日、髄膜炎を発症させた朋子があっさりと亡くなってしまい、父1人子1人となってしまいます。

健一はまだ30歳になったばかりで、人生はこれから。周囲の人々や義父母にまだまだだ、と励まされます。確かにやり直しはいくらでもききます。再婚だっていくらでも……。

しかしそれを聞いた健一は、逆にまだまだ可能性のある年で亡くなった朋子のことを思わずにはいられません。そして2人の宝物であった娘を何よりも大切にしようと決意するのでした。

その決意からすぐに行動した健一。仕事も時間の融通の利くものにし、愛娘との大切な時間を一歩一歩、踏みしめるように過ごしていきます。幼稚園、小学校、そして中学校……。健一は何もできなかった赤ん坊が、少しずつ成長していく様を、妻の分まで目に焼き付けていきます。

本作は主人公の目を通して、娘が中学生になるターニング・ポイントまでの時間を切り出した、短編連作のような形式の小説です。幼い娘とともに、シングルファーザーの父親もともに変わっていくヒューマンドラマとなっています。

本作は2020年4月に山田孝之主演で映画化が予定されています。このあとはこの注目の映画作品についてご紹介しましょう。

作品の見所:残された者たちの気持ち

 

本作はいいようのない寂しさが漂っています。それは母親の不在ゆえのもの。死別というどうしようもない理由による喪失感が、亡くなった朋子と親しい人物に、埋められない穴をつくってしまったのです。
 

しかし、だからこそ健一と美紀、彼女を見守る親戚や大人達のやりとりの温かさが強調され、心に沁みるのです。そして健一はもちろん、美紀の祖父母に当たる村松夫妻の心は、そんな周囲の優しさや時間の経過によって徐々に癒されていきます。

しかしそれは、美紀を除いてのものです。

美紀は1歳半で母親を亡くしたため、ほぼ記憶がありません。母親がいないという事実に対して、思い出を持たない分、作中の誰よりも孤独を感じてしまうのです。しかし彼女を救うのもまた、孤独を感じさせる存在でもある同じ傷を持つ者でした。

美紀、あるいは健一達がどのように悲しみと折り合いをつけて、成長していくのかが、本作の見所の1つになっています。

 

著者
重松 清
出版日
2012-03-23

作品の見所:時間の経過による変化。名言も多い!

本作は美紀の成長をメインに構成された小説です。約10年に渡る時間が経過するので、登場人物の変化を感じられるセリフや、身に染みる名言も多いです。ここでは、特に感動的なものを2つご紹介します。

「ウチのママ、(中略)ずっとウチにいるんだもん、
あんたたちのママってしんだらいなくなっちゃうの?
そんなのだめだよ……」
(『ステップ』より引用)

こちらはセリフではなく地の文。小学1年生になって母親と死別したことを、美紀は彼女なりに飲み込みます。写真でしか知らない母親をずっと覚えていることを「家にいる」と表現し、亡くなったけど、気持ちとしては一緒にいると認識しているのです。

死んだ人間との折り合いの付け方について、ハッとさせられるものがある名言です。

続いてはこちらです。

「あとから後悔しても思い出は増やせないんだ」
(『ステップ』より引用)

仕事人間だった美紀の祖父が、亡くなった娘の朋子との思い出があまりにも限られていたことを、健一に嘆くシーンでの言葉。思い出は増やせないという言葉から、大切な人と一緒に過ごす時間をつくることの大切さに気づかされます。

『ステップ』の結末とは?家族、時間、今を大切にしたくなるラスト【ネタバレ注意】

 

美紀の小学校生活も残りわずか……。彼女の心境や人間関係にも変化が訪れますが、もっとも大きな異変は亡き妻を想い続けた健一に起きました。

5歳年下の部下、齋藤奈々恵(さいとうななえ)の存在です。彼女には1歳の息子を不注意から亡くした過去がありました。健一と奈々恵はお互いに、大切な存在を失った経験を知り、あらためて人生=生と死について見つめ直す機会を得ます。

同じころ、美紀は中学進学を機に、横浜の祖父母宅への引っ越しを考え始めていました。父への遠慮と、あることから母・朋子に義理立てしたいと思っていたのです。

作品の見所で残された者の気持ちと、彼らの精神的な成長について少し触れました。物語の後半ではそれがより顕著となります。

健一と奈々恵の出会い、そして祖父の体に起きる異変……。人生についてまわる重要な出会いと別れの様子が、美紀の目線をとおして描かれます。誰もが共感できるところがあるであろう、「子ども」として避けては通れない体験が情感たっぷりに語られます。

上の世代から下の世代に受け継がれる、言葉を越えたメッセージ。最後まで読み終えた時にはきっと、あなたの心にもそれが届いていることでしょう。

 

著者
重松 清
出版日
2012-03-23

このあとは、本作を書いた作者、重松清についてご紹介します。

 

 

 

 

『ステップ』が気になったら他の作品もおすすめ!作者・重松清とは

『ステップ』が気になったら作者・重松清(しげまつきよし)の他作品も読んでみてはいかがでしょうか 

重松清は1963年3月6日生まれ、岡山県出身の小説家です。

早稲田大学教育学部国語国文学科を卒業後、一度は出版社に勤務するもフリーライターとして独立。田村章、岡田幸四郎などのペンネームで映画やドラマの脚本を手がけました。ビートたけしの行動を面白おかしく記した『たけしー・ドライバー―秋山見学者のトホホ青春記』のゴーストライターもやっています。

小説家としては1991年に『ビフォア・ラン』でデビューしました。代表作は等身大の中学生が通り魔事件を体験するという内容の『エイジ』などです。

 

著者
重松 清
出版日
2004-06-27

重松清はエンターテインメント性の高い作品を書く作家です。その真骨頂は、読者の心理を刺激する巧みな表現。作品の端々で読み手の共感を呼び、そこから感情移入させて喜怒哀楽に訴えかけてくるのです。

『ステップ』でも重松清の手腕は健在。身近に小さな子どもがいる、あるいは子どもを育てた人なら思わず涙してしまう感動作になっています。

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いかがでしたか? 本作を読んでいると、他人の人生を垣間見ているような錯覚に囚われます。読み終わったあとにも登場人物の人生が続いていると感じられる素晴らしい作品です。ぜひ一度読んでみてください。

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