第3次アニメブームを引き起こし、社会現象にまでなった『新世紀エヴァンゲリオン』。それを再構成した「新劇場版」シリーズは2007年から断続的に公開されてきましたが、2021年3月8日ついに完結編が公開。大団円を迎えました。 しかし名前だけは聞いたことがあっても、難しそうなイメージがある方も多いのではないでしょうか。この記事ではそんな方のために、理解が難しい本作を10分程度でほぼ分かるように解説します。 あらすじから映画やアニメの違い、シンエヴァに向けてのおさらいをしておけば、「エヴァンゲリオン」がどういう作品で、どうやって「新劇場版」映画で終わろうとしているのかが見えてきますよ。
まずストーリーが始まる以前から、作品世界で起こった出来事を時系列でみてみましょう。
遥か昔にジャイアントインパクト(ファーストインパクト)という隕石の激突が起こりました。この隕石が謎の巨大な敵「使徒」を生み出したようですが、詳細は不明とされています。
そして2000年に、セカンドインパクトが発生しました。世界人口が半減した大災害です。
これと前後する時期に秘密結社SEELE(ゼーレ)が人類補完委員会を設立し、GEHIRN(ゲヒルン)という組織を立ち上げました。ゲヒルンは2010年に特務機関NERV(ネルフ)へと再編。この間、使徒対策のため、人型巨大兵器エヴァンゲリオン(エヴァ)を3機建造していました。
そして2015年、ここから「エヴァンゲリオン」のストーリーが始まります。
主人公の碇シンジは、父ゲンドウに呼ばれて第3新東京市を訪れます。使徒襲来に備えた要塞都市で、ネルフが管理しています。
ゲンドウはネルフの総司令官で、シンジをエヴァに乗せて使徒と戦わせるために呼び出しました。エヴァ初号機に適合するのが、彼だったのです。
シンジは急な展開に困惑しますが、重傷を負ったまま戦わされそうになる少女・綾波レイを目の当たりにし、自分が戦うことを決意。こうして人類存亡を賭けた使徒との戦いに身を投じていきます。
これがおおまかなあらすじです。
シン・エヴァンゲリオンについてはこちらの記事で解説しています!きになる方はこちらからどうぞ。
『シン・エヴァンゲリオン』とは結局どのような映画だったのか?
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』から約14年。2021年3月8日、ついに完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されました。当初の予定より大幅に遅れたものの、ファンを唸らせる完全決着が国内外で話題になりました。 本作は感動&興奮必至の内容ですが、謎めいた設定や用語が頻出。熟知したエヴァファンでなければ面食らうほどです。そこでこの記事では『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のあらすじをご紹介するとともに、見所や魅力、難解な設定をネタバレありで解説・考察していきます。(2021/07月追記 舞台挨拶の内容を追加しました)
つづいて「エヴァンゲリオン」シリーズの全体像を把握しておきましょう。本作には、映画、アニメ、漫画があります。
ほぼ時期を同じくして1995年に漫画『新世紀エヴァンゲリオン』と、シリーズ全体の大元となるアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、「アニメ版」)がリリース。
そして1997年に「アニメ版」の新しい結末としてつくられた映画が作成され、「旧劇場版」と呼ばれています。
そして2007年から始まったのが、「新劇場版」シリーズ。2021年に完結する作品で、「アニメ版」を模しながらも、徐々に別物となってきています。
それぞれの内容の違いについては、このあとの「エヴァンゲリオンのここが難しい①」の段落で説明していきます。
「エヴァンゲリオン」は、アニメと新劇場版でどう違う?完結編の見所も考察!
世界的人気を誇るアニメ作品「エヴァンゲリオン」。聖書に由来する謎めいたストーリーや、巨大兵器と謎の怪物による迫力のバトル、胸に刺さる登場人物の関係性が魅力的です。 本シリーズは、映画、アニメ、漫画とありますが、主に2021年に最終作の公開が迫る映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』と、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』がそれぞれ異なる特徴をもった軸となっています。この記事では、この2作品を比較しつつ、違いや今後の展開などを考察していきます。
「シンエヴァンゲリオン」劇場版を見る前に!重要なポイントをまとめて考察!
2021年3月8日の公開の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。世界的人気アニメ「エヴァンゲリオン」を再構成するこの新劇場版シリーズは、従来の物語と未知の展開が混在する極上のエンターテインメントとなりました。 前作「Q」の公開から約8年が経過していることもあるため、これまでの新劇場版を振り返りつつ、完結編を見る前に押さえておくべき重要な設定について考察していきたいと思います。
まず本作の映画、アニメ、漫画の違いをご紹介しましょう、シリーズ作品が多岐にわたり、それぞれ異なる、というのも情報が錯綜し、複雑に見えるポイントです。
内容を踏まえ、「アニメ版」、「旧劇場版」、「漫画版」、「新劇場版」の順に説明します。大きな違いは、最後の第17使徒を倒したあとの展開にあります。
第17使徒を倒したあと、シンジが精神世界で自問自答するという観念的な内容で終わります。他の作品と比べ、最も理解しにくい展開でしょう。
ざっくりと内容を説明すると、他人と関わるようになってから、人類にあらゆる可能性が内包されていると気づいたシンジは、そのひとりである自分も肯定できるようになった、というものです。
そしてこの「アニメ版」とは別の結末が、「旧劇場版」と「漫画版」です。
第17使徒タブリスを倒したあと、シンジの自問自答の代わりに、ゼーレが人類補完計画が発動。ネルフに攻撃してサードインパクトを発生させます。
ゼーレによって制圧されたネルフ本部で、量産型エヴァをたった1人で迎え撃とうとした惣流アスカ・ラングレーが無惨に蹂躙されます。
惨状を目の当たりにしたシンジも、サードインパクトの生贄とされてしまいました。
しかし最後には原初の海で綾波レイ、渚カヲルらと再会し、「アニメ版」とは違った形で人類のあり方を肯定して終わります。
「アニメ版」、「旧劇場版」とほぼ同じですが、細部やラストが微妙に異なります。
たとえばシンジは「アニメ版」ほど内罰的性格ではなく、惣流アスカ・ラングレーと淡い関係になることもありません。最終回まで基本的に「旧劇場版」に準ずるものの、よりポジティブで希望的な未来に向かう結末に変更されています。
さらに単行本で「新劇場版」のキャラクター真希波マリが登場するというのもポイント。「新劇場版」との繋がりを示唆するものか、ただのファンサービスかは不明ですが、考察しがいのある内容なので、ぜひ読んでみてください。
- 著者
- 貞本 義行
- 出版日
- 2014-11-26
「新劇場版」は「序」「破」「Q」「:||」の全4作で、「序」「破」までは、シンジが使徒と戦って勝利を収めていくという「アニメ版」と近い内容です。
しかし「破」後半でサードインパクトが発生(正確には未遂)。ここまでは「旧劇場版」と同じですが、物語は続き、「Q」以降は2029年が舞台です。(「Q」のあらすじはこちらで解説)
また、サードインパクト周辺で異なる部分があり、早すぎるアスカの退場や、渚カヲル、新キャラクター・マリの登場など、徐々に未知の展開を見せていきます。
また、キャラ以外にも意味深な変更点があります。世界中の海が赤色、最初に登場する第4使徒サキエル以外の形状がまったく異なる、使徒の数や順番が入れ替わっている……。これらに意味があるのか気になるところです。
今までアニメの内容だと思っていたものが映画だった、など、混ぜて考えていた方もいるのではないでしょうか。2021年に完結したのは「新劇場版」ですので、お間違えなく!
本作を難解にしている理由のひとつが、「使徒」の存在です。「エヴァンゲリオン」最大の謎であり、不明点が多いです。
まず、分かっていることを整理しましょう。
使徒は第1使徒アダムから第17使徒タブリスまでの合計17体が登場します。それぞれの名称は旧約聖書のひとつ「エノク書」に由来しています。(「漫画版」と「新劇場版」は第13使徒まで)
使徒はそれぞれ違う姿と能力をもっています。共通しているのは赤い球体状のコアが弱点であること、S2機関という無限のエネルギー源があること、不可侵の防御壁「ATフィールド」を展開可能だということです。
しかし出自や存在の目的はほとんどが不明。ストーリー上のヒントから推測することになります。
まず、出自ですが、使徒は遺伝子配列が人類とほぼ同じです。そのため人類発祥に密接に関係していることが示唆されています。
続いて目的ですが、第3新東京市の地下に封印されているアダム(実は第2使徒リリス)との融合・同化です。ネルフはその同化で引き起こされるサードインパクトを防ごうとしています(ゲンドウおよびゼーレは使徒の一部を操ることができ、使徒を利用した別の計画を極秘で進めていますが)。
しかし、先ほどもお伝えしたように、この使徒の目的はあくまで推測。実際に使徒がどんな目的でアダム(リリス)を目指しているのか、はっきりと分からないままなのです。最も重要な物語の核が不明点だらけ、というのが本作を難しくしている要因のひとつでしょう。
シリーズの名前ともなっている人型巨大兵器エヴァンゲリオン(以下、エヴァ)も少々、理解が難しいもの。エヴァの難しさについてもひとつずつひも解いていきましょう。
そもそもエヴァは、アダム(またはリリス)をコピーし、使徒殲滅を目的に建造されたもので、使徒と同じくATフィールドが使えます。そしてこれが、やや難解なものなのです。
ATフィールドとは、使徒とエヴァだけが展開、中和、貫通させられるバリアです。(一部の武器も中和、貫通が可能)知的生命体が生来備えた「心の壁」でできており、他者を拒絶する防衛本能が具現化しています。
なので、エヴァ操縦に不可欠な「チルドレン」と呼ばれるパイロットの精神状態が戦いを大きく左右します。神経接続され、エヴァと文字どおり一心同体になるので、思春期特有の悩みがシンクロ率に影響し、うまく動かせないこともあるのです。
また、ATフィールドにまつわり、リビドーとデストルドーという心理学用語が出てきます。これも難しそうな印象を与えますよね。リビドーは生存への衝動でATフィールドを生み出す力、逆にデストルドーは死と破壊への衝動でATフィールドを無力化するようです。
さらにエヴァを難しくしている要因のもうひとつが、綾波レイと渚カヲルの存在。
綾波レイの生まれにはいくつか説があり、シンジの実母である碇ユイが事故で初号機に取り込まれた際、救出の過程で彼女の特徴を受け継いで偶発的に生まれたとするものや、碇ゲンドウがユイの存在を復活させるために作りだしたとするものがあります。経緯は異なりますが、渚カヲルもレイと似た出自です。
彼らの誕生にエヴァが関わっているということが、よりエヴァの存在をつかみづらくさせているのです。
ゼーレとネルフ司令官ゲンドウは、使徒と戦いながら密かに「人類補完計画」を進めています。ネルフ首脳を除くネルフ職員の大半はゼーレの存在も人類補完計画についても知らず、作戦部長の葛城ミサトも含め使徒殲滅とサードインパクト防止が使命だと思っています。
この計画のもととなっているのが、裏死海文書(「新劇場版」では裏死海文書外典)。方法までは不明ですが、ゼーレはこれをもとに使徒の行動にまで介入しています。
しかし人類補完計画も裏死海文書も詳細は不明で、「エヴァンゲリオン」最大の謎でありながら、まったく明かされておらず、このポイントも読者を混乱させます。
ちなみに「旧劇場版」の人類補完計画は、シンジとエヴァ初号機を中心に全人類の魂を1つに融合させるというもの。観念的で分かりにくいですよね……。
さらにゼーレとゲンドウで計画の目的に微妙な差異があることも物語を複雑にしています。ゼーレは人類全体の強制進化が目的ですが、ゲンドウは亡き妻・碇ユイ復活という個人的な目的なのです。ちなみに「新劇場版」でのゲンドウの目的は明かされていません。
ここまでが、「エヴァンゲリオン」を難しくしているポイントの大まかなポイントです。何となく全容がつかめたでしょうか。これ以降は、「新劇場版」でどういうところをポイントとして読めばいいのかを解説します!
まずは「新劇場版」最終編までのあらすじをご紹介しましょう。「序」「破」までのあらすじは先ほどお伝えしたとおりです。
「Q」からは、これまでの使徒と人類(ネルフ)の戦いから一転、ネルフの内乱がメインとなっています。ニアサードインパクトから一挙に14年が経過した世界が舞台です。
ここで気になるのは、全員外見年齢が変わっていないこと。ニアサードインパクトにより、初号機で眠り続けていたシンジ以外は説明がつきません。「エヴァンゲリオンの呪縛」ともいわれていますが、詳細はいまのところ不明です。
その時代では、使徒はほぼ鎮圧されている代わりに、ネルフが内部分裂を起こしています。ゲンドウが統括するネルフと葛城ミサトが率いるWILLE(ヴィレ)に分かれているのです。
この時点で使徒との戦いという大きなテーマから外れているので気になる方もいるかもしれませんが、ストーリーは有無を言わさず進んでいきます。
ヴィレはネルフ壊滅を目指して、切り札となる初号機とシンジの奪取に動きました。
ヴィレの空中戦艦AAAヴンダーで目覚めたシンジは、14年という時間的隔絶と、ミサトやアスカら旧知の人々からの敵意に晒されて混乱します。どうやら彼がニアサードインパクトで世界を滅ぼしかけた原因のようなのです。
そんな彼の前に、生死不明だった綾波レイが乗る(実はレイのクローン)エヴァMark.09が現れます。ヴィレに嫌気が差していた彼は、そのまま彼女とネルフへ向かうのでした。
そこで知ったのは、自分がニアサードインパクトが起こしてしまったこと、助けようとしたレイが初号機の中にいること。
そしてネルフ本部地下のロンギヌスの槍とカシウスの槍を回収できれば、すべてが丸く収まると説得され、カヲルとともに2人乗りのエヴァ13号機に搭乗するのでした。
ここまでが3作目のあらすじです。最後に完結編前におさえておきたい注目ポイントをご紹介しましょう。
完結編を見る前のポイントですが、もしかしたらガッカリされるかもしれません。なぜなら、上記であげた謎が、「Q」ではすべてどうでもよくなるような、とんでもない展開なのです。
どういうことかというと、使徒はほぼ出てこず、ゼーレの暗躍も途絶えてしまいます。依然としてアダムやリリスの設定は重要ではあるものの、単純な舞台装置に等しくなっています。
さらにラストでは、シンジの暴走で4度目の大災害「フォースインパクト」が勃発。赤く染まった大地にシンジとアスカ、レイの3人が生身で投げ出されてエンディングを迎えます。
こうなってくると生死の方が重要で、謎どころではありません。物語はどこへ向かうのか、まったく予測不能です。
ちなみに完結編のタイトル「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の末尾にある「:||」は、楽譜の反復記号で、「やり直し、繰り返し」を意味するのではないかと考察されています。これとキャッチコピーの「続、そして終。非、そして反。」を考え合わせると、単純に終わりそうにありませんが……?はたしてどうなるのでしょうか。
2021年4月追記
シン・エヴァンゲリオンの解説記事を追加しました。物語の結末と、謎を詳しく解説しています。ぜひ読んでください。
『シン・エヴァンゲリオン』とは結局どのような映画だったのか?
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』から約14年。2021年3月8日、ついに完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されました。当初の予定より大幅に遅れたものの、ファンを唸らせる完全決着が国内外で話題になりました。 本作は感動&興奮必至の内容ですが、謎めいた設定や用語が頻出。熟知したエヴァファンでなければ面食らうほどです。そこでこの記事では『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のあらすじをご紹介するとともに、見所や魅力、難解な設定をネタバレありで解説・考察していきます。(2021/07月追記 舞台挨拶の内容を追加しました)
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