2021年3月8日の公開の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。世界的人気アニメ「エヴァンゲリオン」を再構成するこの新劇場版シリーズは、従来の物語と未知の展開が混在する極上のエンターテインメントとなりました。 前作「Q」の公開から約8年が経過していることもあるため、これまでの新劇場版を振り返りつつ、完結編を見る前に押さえておくべき重要な設定について考察していきたいと思います。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』(以下、「新劇場版」)は1995年に放映され、社会現象にまでなった『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、「アニメ版」)のリメイク(正確にはリビルド)を目的として作られ始めた映画シリーズです。
当初から1作目「序」、2作目「破」、3作目「急」(後に「Q」に変化)、4作目「?」の全4部作となることが予告されていましたが、2012年の「Q」以後は完結編がいつになるか不明な状態でした。
およそ8年間も音沙汰がありませんでしたが、2019年ついに完結編のタイトル『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(以下、完結編)が明かされました。そして2020年6月27に公開予定であることがアナウンスされたのです。
※その後事情により延期が決まり、2021年3月8日に公開することになりました。
この記事では来る「新劇場版」完結編に向けて、主に3作目「Q」までのおさらいや、劇中で示唆された数々の謎の解説と考察を行っていきたいと思います。
ほぼ「アニメ版」をなぞった『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、「漫画版」)もありますので、漫画好きの方はそちらもご覧いただくとより世界観を深く理解できるかもしれません!
- 著者
- 貞本 義行 カラー・GAINAX
- 出版日
- 1995-08-29
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世界的人気を誇るアニメ作品「エヴァンゲリオン」。聖書に由来する謎めいたストーリーや、巨大兵器と謎の怪物による迫力のバトル、胸に刺さる登場人物の関係性が魅力的です。 本シリーズは、映画、アニメ、漫画とありますが、主に2021年に最終作の公開が迫る映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』と、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』がそれぞれ異なる特徴をもった軸となっています。この記事では、この2作品を比較しつつ、違いや今後の展開などを考察していきます。
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第3次アニメブームを引き起こし、社会現象にまでなった『新世紀エヴァンゲリオン』。それを再構成した「新劇場版」シリーズは2007年から断続的に公開されてきましたが、2021年3月8日ついに完結編が公開します。 しかし名前だけは聞いたことがあっても、難しそうなイメージがある方も多いのではないでしょうか。この記事ではそんな方のために、理解が難しい本作を10分程度でほぼ分かるように解説します! あらすじから映画やアニメの違い、新作映画に向けてのおさらいをしておけば、「エヴァンゲリオン」がどういう作品で、どうやって「新劇場版」映画で終わろうとしているのかが見えてきますよ。
まず1作目「序」の公開後にファンの間で話題となったのが、新劇場版の世界が「アニメ版」からループしているのではないか、という説です。
再構築を標榜する「新劇場版」は、2作目までは基本的に「アニメ版」を踏襲する内容となっています。それにも関わらず、地球上の海の色が青色ではなく赤色という違いがありました(「新劇場版」でコア化と呼ばれる現象)。
この赤い海は「セカンドインパクト」の影響とされており、「アニメ版」では南極などのごく限られた地域だけでした。
ところが「アニメ版」の実質的完結編である映画『Air/まごころを、君に』(以下、「旧劇場版」)のラストでは、「サードインパクト」の発生で世界の海が赤く染まる出来事がありました。
厳密にはサードインパクトの赤い海とコア化は異なる現象ですが、類似した描写から「新劇場版」はアニメ版の世界から歴史がループしているのでないか、といわれていました。
また、そのループ説を補強するかのように、登場人物の1人である渚カヲルが意味深な発言を何度もしています。まだ出会っていない時点で、シンジのことを「変わっていない」と言ったり、「今度こそ君だけは幸せにする」言ったりするのです。
ループ説はあくまでも劇中で明言されていない仮説に過ぎませんが、ループ体験によってあらかじめ出来事を知っていたとすればこれらのセリフにも辻褄が合います。
このループ説が正しいかどうか、完結編で明かされることに期待しましょう。
「アニメ版」およびアニメの完結編(旧劇場版)では、「人類補完計画」が重要なプロジェクトとして登場しました。これは「エヴァンゲリオン」世界における最大の謎で、特務機関ネルフと使徒との戦いを隠れ蓑にして密かに推し進められていました。
人類補完計画を立案したのは、ネルフの実質的上部組織であるゼーレです。正確には人類補完委員会ですが、委員会は全員ゼーレのメンバーなので変わりはありません。ゼーレは預言書「裏死海文書」によって使徒の出現を予見し、それを利用した人類補完計画を進めるべく、ネルフを組織しました。
「アニメ版」のゼーレの最終目的である人類補完計画とは、サードインパクトを利用して人類全体を単一生物にすることで、完全な生命を目指すというものでした。
「新劇場版」においても、激しいバトルや人間ドラマのかたわらで、人類補完計画は徐々に進行していますが、ゼーレの設定が変更されています。そのことから計画自体、「アニメ版」とは違うものになっている可能性があるかもしれないのです。
「新劇場版」ではゼーレの正体は人類ではなく、人類に文明を授けた超常的存在であることになっています(「アニメ版」では機械で延命しているものの、あくまでも人間でした)。しかし「Q」で碇ゲンドウが手を回してゼーレを物語から退場させてしまったため、彼らが本当は何を望んでいたのかはわからなくなってしまいました。
とはいえ人類補完計画が終わったというわけではなく、ゲンドウが引き継いだよう。現時点で不明点が多すぎるため考察することは困難ですが、「新劇場版」完結編のキーポイントになるでしょう。計画の全貌やゼーレの正体もそこで判明するかもしれませんね。
- 著者
- 株式会社カラー/庵野秀明
- 出版日
- 2019-06-07
月が誕生した仮説として、「ジャイアントインパクト」説があります。巨大隕石が地球に衝突し、そこで巻き上げられた岩塊が集まって、月が出来たという説です。
「エヴァンゲリオン」の「アニメ版」と「新劇場版」ではこのジャイアントインパクトを最初の大災害としており、2000年に南極で発生した同じ規模の地球的大破壊を「セカンドインパクト」と呼んでいます。
表向きどちらも隕石の衝突となっていますが、実はどちらも使徒が関係している、というのが物語のポイントです。ジャイアントインパクトは使徒を生み出した大本である「白き月」と「黒き月」の地球落下が原因で、セカンドインパクトは使徒と人類が接触したせいで起きた、というのが事実なのです。
エヴァとネルフは使徒を迎撃することで、3度目の大災害「サードインパクト」を防ぐことが目的でした。
しかし、「新劇場版」2作目「破」の終盤では、初号機が第10使徒との戦いで覚醒し、「ニア・サードインパクト」が起こってしまいます。完全なサードインパクトではありませんでしたが、多くの人命の損失と地球規模の破壊の引き金となりました。
さらに「新劇場版」3作目「Q」ではシンジとカヲルが乗ったエヴァ13号機が、第12使徒の影響で「疑似シン化第3+形態」に変化したことから、「フォースインパクト」まで発生させてしまいます。初期段階で食い止められたことから、ニア・サードインパクトより被害は少ないはずですが、実際にどんな影響が出ているかは未知数です。
「アニメ版」から繋がる「旧劇場版」では完全なサードインパクトが発生した時点(つまり劇中で起こったジャイアントインパクトは3回)で完結したため、「新劇場版」のストーリーは旧来のそれからは完全に別物となってしまいました。「新劇場版」完結編「:||」ではフォースインパクトの影響や、この未曾有の大災害を狙っていたらしきゲンドウの意図が明かされることでしょう。
「アニメ版」と「新劇場版」2作目「破」までは、人類を守るためにエヴァとネルフが使徒の侵攻を食い止めることが、物語の大きなポイントでした。
ところが「新劇場版」3作目「Q」からこの構図が破られます。ニア・サードインパクトの後、「Q」冒頭に至る14年間の時間的空白の中でネルフで内乱が起こったのです。
ゲンドウの率いるネルフと、ネルフを離反してエヴァ破壊を目論む反ネルフ組織「ヴィレ」の戦いです。
ヴィレは葛城ミサトや赤城リツコが主導する組織。実行戦力として空中戦艦「AAAヴンダー」を保有し、2機のエヴァとそのパイロットである式波アスカ・ラングレー、真希波マリ・イラストリアスらが参加しています。
ヴィレがネルフを目の敵にしているのは、おそらく今後もジャイアントインパクト級の大災害を起こしかねないネルフを打倒し、未然に防ぐことが目的なのでしょう。ひょっとするとゲンドウの人類補完計画を察知し、そちらを阻止という目的もあるかもしれません。
いずれにしても使徒対ヒトだった物語が、ネルフ対ヴィレ……すなわちヒト対ヒトに変わったことは象徴的な展開です。「新劇場版」完結編「:||」ではこのネルフ対ヴィレの対立構造がさらに掘り下げられることになると思われます。
- 著者
- 株式会社カラー/庵野秀明
- 出版日
- 2019-07-26
真希波マリ・イラストリアスは「新劇場版」で、4人目のエヴァパイロットとして登場しました。「アニメ版」には出てこないキャラクターです。彼女には新劇場版の物語、その根幹に関わる重要人物である可能性があります。
マリが出てきたのは「新劇場版」2作目「破」の冒頭ですが、本格的に姿を見せたのは中盤以降です。アスカが第9使徒戦が原因で退場してから、2号機パイロットとなるという目的で登場します。ネルフユーロ支部の密命を帯びているようで、日本には密入国してやって来ました。
この後、マリは2号機の正規パイロットでないにも関わらず、2号機に隠された「獣化第2形態」という機能を使いこなします。エヴァのスペックは最重要機密のはずなので、一介の補充パイロットが隠しモードを知っているのはおかしなことです。
このことから、マリはエヴァの開発に携わっていたのではないか、ということが考えられます。しかし、どう見ても若い彼女が、開発に関わるというのは年代的に不可能で、この考察は成り立たないようにも思えるでしょう。
しかし「新劇場版」3作目「Q」でアスカやマリの外見が変化しないという描写があったため、この考察が現実味を帯びてきたのです。
詳しくはまだ不明ですが、「新劇場版」のアスカの発言によればエヴァパイロットは「エヴァの呪縛」というものにかかるらしく、外見年齢が変化しなくなるようなのです。この設定は、14年間の経過でアスカとマリが成長していないことの説明で語られました。
エヴァパイロットの外見年齢が変化しないのであれば、「新劇場版」2作目「破」登場時点でマリの実年齢が10代半ばかどうかわからなくなります。もっと年齢が上であれば、マリがエヴァ開発の関係者であってもおかしくないということになります。
さらにマリがエヴァ開発の関係者だという可能性は、「アニメ版」のコミカライズである「漫画版」最終巻の描き下ろし「夏色のエデン」に伏線らしきものがあるということからも補強されます。
- 著者
- 貞本 義行
- 出版日
- 2014-11-20
「夏色のエデン」はシンジの父母、ゲンドウとユイの大学時代のエピソード。その中に真希波マリという名の16歳の少女が、飛び級の天才として登場するのです。
ゲンドウもユイも、後のネルフに深く関わる人物です。この2人と知り合いであるマリが、「夏色のエデン」からそう遠くない時点でエヴァそのもの、もしくは基礎研究の副作用で「エヴァの呪縛」に囚われたとするなら、すべての辻褄が合います。
また、これ以外にもマリの年齢が外見どおりではないことを示すのではないか、という伏線があります。
たとえば、ネルフでもっとも偉い総司令官ゲンドウを「ゲンドウ君」と呼んでいたり、若い割に妙に懐メロ好きだったりする点です。彼女は気まぐれなキャラクターなので、「ゲンドウ君」予備も懐メロも、突拍子もない性格の補強かもしれません。
しかしマリの実年齢がもっと高く、大学時代のゲンドウの知り合いということになれば、これらの言動にも納得がいくのです。
マリの素性と目的については、きっと完結編で明かされるはずです。
2021年2月の時点で、「新劇場版」完結編の内容でわかっていることは多くありません。手がかりになるのは、2019年7月の予告編と、世界同時公開のイベント「0706作戦」で上映された冒頭10分の内容です。
2019年7月の内容は少々変わっている可能性が高いのでいったんおいておき、「0706作戦」の映像を解説してみいましょう。
この映像では、ヴィレのAAAヴンダーから派遣されたリツコ達が、無人のパリのネルフ支部から何かの設備(補修パーツ?)をサルベージしている様子が見られました。重要なのは同時にネルフ支部のなんらかの封印を解いていたことです。
「新劇場版」で海が赤いのは、「コア化」と呼ばれる現象のせいでした。「0706作戦」で登場したパリ市街も赤く染まっていたことから、街がコア化していたことがわかります。
リツコの指揮するチームが封印を解くと、パリのコア化が解除され、美しい街並みが復活しました。この展開から、ニア・サードインパクトで荒廃した世界の救済が図られる可能性が見受けられます。
「新劇場版」完結編のキャッチコピー「続、そして終。非、そして反。」は、「旧劇場版」の『シト新生』特報映像で流れたフレーズ「生は死の始まり。死は現実の続き。そして再生は夢の終わり」と似通った印象を受けます。
「新劇場版」にはループ説があることを前述しました。もしかすると「アニメ版」とかけ離れた展開をたどった「新劇場版」が、最後にはアニメ版に帰結する、という風に解釈可能かもしれません。あるいはループを抜け出し、まったく新しい展開を迎えるのかも……。
その答えは2021年3月8日公開の完結編でわかるはずです。
なお、3月5〜7日の間、Amazon Prime Video上で「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の同時視聴イベントが開催されることに。しかもその場で「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の冒頭の12分あまりが世界最速で公開されることになりました。これは見逃せませんね。
- 著者
- 出版日
- 2017-02-24
いかがでしたか? 新劇場版にはまだまだ語り尽くせない部分が多くあります。完結編公開に備えて、前作までの新劇場版やアニメ版で予習復習してみるのもよいのではないでしょうか。