『ヒマチの嬢王』は歌舞伎町の元No.1キャバ嬢が、故郷の鳥取件・朝日町でキャバクラの店長となり全国一位のキャバクラ店を目指すお話。舞台こそ夜のお店ですが、彼女のアイディアは他の業種のビジネスにも活かせるものばかり。 これから社会に出る新入社員や、仕事の取り組み方を見直したい方にもオススメ。目から鱗の奇策を、作中のエピソードとともに紹介します! スマホアプリ「マンガワン」で無料で読めるので、先読みしたい方はアプリの利用がおすすめです。
全国一のキャバクラを目指すお話ですが、漫画に出てくるアイディアは実際に使えるものも。これから社会人になる方も、すでに社会人として活躍されている方も、ビジネスに携わる方々はぜひ一度、一話だけでも読んでみてください。
中心人物となるのは、歌舞伎町の元No.1キャバ嬢・アヤネ。あることがきっかけで、キャバクラを辞め実家の鳥取県朝日町へ戻ります。もぬけの殻となりだらだら過ごしていたものの、母親に尻を叩かれしぶしぶスナックを手伝うことに。
すると彼女は、1日で通常の3か月分の売上を達成してしまいます。というのも、彼女が店の外からキャッチしてきた客は、お金に余裕のあるパイロットだったのです。
シャツのボタンから夜光の腕時計まで観察し、そのことを見事に見抜いていました。
その様子を見ていた学生時代の同級生であるジュンは、自分の経営するキャバクラ店「クラブ・バードレディ」で彼女にキャストとして働くよう声を掛けます。しかし彼女が選んだのは、キャストではなくバードレディでお客様を席にご案内するエスコート。
その後あっという間に店長の座をジュンから奪い、潰れかけている状況から全国一位の繁盛店を目指すという物語がここから始まります。
本作のストーリーや魅力をもっと知りたい方は、本サイトの記事「『ヒマチの嬢王』で学ぶ、夜の世界の経営。今までのキャバ漫画とは違う!」もあわせてご覧ください。
全国一位を目指す過程で、大胆な経営手腕を振るっていくアヤネ。誰にも思いつかないような秘策を次々と打ち出し、どんなピンチもチャンスに変えていくのです。
この記事では、作品内から実際に仕事に応用できそうなアイディアが詰まっているエピソードを紹介していきます。
自分の仕事への取り組み方を見直したいという方や、経営に携わるようになった方まで、ビジネスパーソンなら知っておいて損はないアイディアの数々が登場します。気になった方は、ぜひ最後までお読みください!
顧客ゲットのチャンスを逃さないためには、時には多少のリスクを背負うことも必要だということを教えてくれるエピソード。
バードレディの常連客・ゲンさんが営む酒屋で、新発売の焼酎ボトルのラベルを担当するはずだったイラストレーターと連絡がつかなくなってしまうというトラブルが起きます。
そのことを聞いたアヤネは、そのラベルにバードレディのキャストの写真を使用することを提案。
焼酎のラベルにキャバ嬢……前代未聞のことに戸惑いを見せるゲンさんですが、「宣伝は目立つことが目的であるため、まだ誰もやっていない斬新なことをしたほうがいい」と説得。キャストの撮影時の時給も店側で負担します。
この施策は、バードレディにとっても有益なものとなります。
購入した焼酎を持参すれば来店時に1セットのサービスが無料で受けられる、かつ、ラベル嬢の指名も無料。焼酎をそのままボトルキープに使えるというキャンペーンを行ったのです。
このキャンペーン、バードレディにはほぼ利益はありません。しかしアヤネはこう教えてくれます。
「来店」にいたるまでのステップを見定め、どこにハードルがあるのかを的確に見定めた上での今回の施策。
莫大なコストを目の前にすると、踏みとどまってしまいますよね。しかし、コストをかけてでも認知と来店の間口を広げることを最重要視するのが、アヤネのやり方なのです。
店舗を持つ業態に関わらず、応用できるできる考え方でしょう。
売上の拡大のためには、新しいお客様の獲得は欠かせません。サービスや商品に自信があるならば、まずは目先の損益よりも、使ってもらうことを優先することも大切です。「新規の顧客拡大を考えているけどコストを前になかなか踏み出せない」という人は、ぜひ16話から17話を読んでみてください。アヤネの喝が入ります。
また彼女の解説は分かりやすく、説明が苦手な人にとって、とても勉強になります。
町のお祭りに来ている通行人を、来店につなげるエピソード。このエピソードで披露されるテクニックは、明日からすぐに実践できますよ。
キャストたちは、アヤネの指導の基、お祭りに来ている客に声をかけます。突然話しかけたにも関わらず、道端の客と盛り上がっているキャストたち。それは一体、なぜでしょうか?
そこには「偶然を装ってプライベート感のある出会いを演出する」というアヤネの巧妙なテクニックが隠されていました。
キャバクラに来る客は元々お店の接客スタイルでのトークを楽しむ目的を持っていますが、お祭りに来た人はそうではありません。接客の顔をすると警戒されてしまうため、警戒心を抱かせないコツが必要なのです。
お祭りに出店したアヤネらは、通行人にビラ配りをしながら宣伝活動をおこないます。ただし手当たり次第配るのではなく、歩いている男性を観察して狙いを定めていきます。
ターゲットにしたのは、休日にも関わらず仕事着をまとった、浮かない顔をしている男性。声をかけるキャストを指名すると、「ビラ配り大変だなあ」「仕事嫌だなあ」というネガティブなテンションで接するよう指示して送り込みます。その後、男性は見事来店したのです。
アヤネからの指示には、心理的なメカニズムが背景にありました。それにより相手の警戒心を解くことができるのです。
「人はね、感情が一致する相手に対して『共感してくれた』と感じるものなのよ。」
(『ヒマチの嬢王』3巻より引用)
逆にいうと、話す内容をいくら合わせていても感情が合っていなければ無駄、ということも教えてくれます。
この心理テクニックは、元々サービスに興味のない人へのアプローチに使えます。
もし明日、営業に行くことがあれば、まずは相手のことをよく見てどんな心理状態にあるのかを観察してみてください。相手とテンションを合わせて会話することで、相手に心を開いてもらえるかもしれません。
大好評のイベントがあっても、時としてそれを「やめる」という決断を迫られることもあります。しかしそれは、当初に見定めた軸からブレないようにするために必要な決断でもあります。ブランディングに今後携わっていきたい方には、とくに読んで損のないエピソードだといえるでしょう。
ある日期間限定で、バードレディのキャストがアイドルに扮して歌って踊るイベントが開催されました。これが大好評となり、期間を延長するほどに。
それから定期的に開催していましたが、人気絶頂のなかアヤネは突然の終了を決断します。
それは「キャバクラという場の主旨から外れてきたから」という理由でした。
実は、そのイベントにはどっぷり熱中する客もいましたが、なかにはしっくりきていない客もいたのです。
ただし「アイドルとしてキャストが頑張る姿を応援したい」という客の需要も確かにあり、見過ごせないと判断したアヤネ。その需要をとりこぼさないため、アイドルカフェとして業態を切り離し、系列店をオープンさせます。
このエピソードで彼女は、キャバクラはあくまでキャバクラとして、コンセプトをブレさせずに運営することが大切だと教えてくれます。
「本来のコンセプトを守り通す」ということは、会社の経営だけでなく、企画・事業の遂行の過程においても通ずるものがあります。捨てがたいからといって、要素を詰め込みすぎてしまうと、当初からきていたお客様が去ってしまうこともあります。
そんなことを防ぐため、ときには当初のコンセプトを見つめ直すことが大切です。
またこのエピソードとは少し異なりますが、社会人になったばかりのころは、企画を提出するたびに「企画がごちゃごちゃしている」と上司に怒られていました。
しかし伝えたいことやコンセプトを1つに絞ることで、みるみる指摘が減っていったのです。コンセプトを絞ることで何をやりたいのかもはっきりし、自分でもブレない企画が作れるようになりました。
「シンプルイズベスト」この言葉があるように、企画を作る上でしっかりと頭に入れておきたいエピソードです。
以上のように『ヒマチの嬢王』には、経営や事業の運営に役立つアイディアが詰まっています。
その他にも、「ライバル店から風評被害を受けた時の対応」や「偏見を持った市役所職員により営業停止に追い込まれた時の切り抜け方」のように、ピンチをチャンスに変える鮮やかな秘策が豊富です。
また、アヤネは雇用するスタッフとのコミュニケーションにおいても長けており、「各スタッフのモチベーション維持」や「やる気のない新人へのアドバイス」を学べるエピソードも。
頭では理屈を理解しているという方も、「最近これを実践できてなかった……」と目からウロコが落ちるエピソードに出会えるかもしれません。
記事の主旨からブレてしまうため(!)この記事では言及することができなかった、随所に散りばめられたギャグセンスも必見です。
大胆不敵なアヤネのキャラクターから飛び出す言動もまったく予想ができないものばかりなので、次にどんなことを仕掛けるのか続きが気になって仕方ありません。
クスクス笑いながら、経営において大事なことを学ぶことができ、そして初心に立ち帰れる本作。仕事に行き詰まったときなどは、ぜひアヤネに喝をいれてもらいましょう!
- 著者
- 茅原 クレセ
- 出版日
- 2018-11-19
ひらめきを生む本
書店員をはじめ、さまざまな本好きのコンシェルジュに、「ひらめき」というお題で本を紹介していただきます。