クリエイティブで華々しいイメージがあり、学生から根強い人気を誇る広告業界。広告業界での仕事は年収もよいため、転職先としても人気があります。 近年はインターネット広告の成長から、大手広告代理店「電通・博報堂・ADK」以外にも、さまざまな会社が力をつけているようです。それでは広告業界の現状と今後はどうなっていくのでしょうか? この記事では、そんな広告代理店をとりまく業界の最新の動向について解説します。広告業界への就職や転職を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
広告とは、商品やサービスなどを多くの人に伝え、知ってもらうためのものです。テレビCMや電車の中吊り広告などが分かりやすい例でしょうか。広告代理店は、こうした「広告」と呼ばれるもの全てを扱っています。
日本の広告費は、主に3つで構成されています。
広告代理店最大手の株式会社電通が発表した「2019年 日本の広告費」によれば、日本の総広告費は6兆9381億円で、8年連続のプラス成長となりました。しかし、これまで主力であったマスコミ4媒体の広告費は、テレビ離れや雑誌の売り上げ不振の影響で大きく落ち込んでいます。なのになぜ市場の拡大は続いているのでしょうか?
これは、インターネット広告の急速な成長によるものです。インターネットやスマートフォンの普及により、急速な伸びを見せているこの領域。
<2017年>
テレビメディア広告費:1兆9478億円
インターネット広告費:1兆5094億円
<2018年>
テレビメディア広告費:1兆9123億円
インターネット広告費:1兆7589億円
<2019年>
テレビメディア広告費:1兆8612億円
インターネット広告費:2兆1048億円
媒体別にみると、2019年は、初めてインターネット広告費がテレビメディア広告費を上回る結果となりました。また、最新の広告代理店売上高ランキングでは、インターネット広告代理店のサイバーエージェントが3位にランクインしています。これらのことからも分かる通り、インターネット広告領域の成長が、総広告費全体を押し上げていると考えられるでしょう。
企業は、経営不振に陥ると広告費の削減をおこなうことがあります。こうなると、企業からの発注を受けて初めて成立する広告の仕事は、減少することになりますよね。つまり、広告業界は経済状況の変化の影響を直接受ける業界とも考えられます。
そのため昨年は、消費税の引き上げによる個人消費の減退など、広告業界にとっては厳しい年でした。それでも総広告費が上昇しているというところにも、インターネット広告領域が持つ存在感の大きさが表れていますね。
広告業界の主力領域として、めざましい発展を遂げるインターネット広告。その具体的な強みについて見ていきましょう。
ひとつには、オンデマンド型の動画共有サービスや配信サービスの利用者が増えたことがあげられます。
◾️動画コンテンツ内広告
YouTubeやInstagramなどで、動画コンテンツを閲覧する機会はかなり多いのではないでしょうか。こうした動画アプリでは、動画の視聴前後、またはその途中に「動画広告」が流れることが多いはずです。この動画広告の需要の拡大が、ネット広告領域の成長を促しています。
◾️アドテックの革新
また、アドテック機能の発達も大きな要因です。従来のマスコミ4媒体の広告では、不特定多数の人に対し広告をおこない、彼らのレスポンスを待っていました。この方法では、高額のお金を払い、多くの人が見たり読んだりする媒体に広告を出すことで、効果が高まると考えられます。しかし、その広告効果を厳密に測定する事は難しく、高額の広告費に対する効果の大きさはとても曖昧だったのです。
しかし、ネット広告では、ユーザー一人ひとりの関心や行動に沿った広告を提供することができます。また、広告の表示・クリック回数、さらには閲覧者のサイト誘導後の行動まで追跡することができるので、効果測定も容易です。ネット広告は、この圧倒的な利便性を武器に、既存の広告を凌駕していったと考えられます。
「総合広告代理店といえば、電通・博報堂・ADK(アサツーディ・ケイ)の大手3社だ!」と考えている人も多いのではないでしょうか。2020年の広告代理店売り上げランキングを見てみましょう。
電通グループが2位の博報堂と圧倒的な差をつけて1位。そして気になるのが3位以降ですね。3位には「AbemaTV」などで知られるサイバーエージェントがADKを抜く形となりました。
ここでは、まずは総合広告代理店のTOP3の歴史・社風・年収の3軸で、各社を比較していきます。
創業は1901年。光永星郎氏によって、前身の日本広告が設立されたのが始まりでした。言わずと知れた日本広告界のトップ企業で、体育会系の言葉で語られるとおり、その社風はひときわ厳しいことが有名です。
平均年収は約1200万円ほどで、30代で年収1千万プレーヤーになることも可能と言われています。もちろん、その裏には過酷な残業や熾烈な仕事などもあるでしょうが、さすがは最大手企業。ロマンを感じる金額ですね。
参照:電通
創業は1895年と、3社の中では最も古い歴史を持っています、創業者の瀬木博尚が、「博く、華客に奉仕報酬する」という経営理念から、博報堂の名をつけました。
「粒ぞろいより粒違いの人材」という理念を掲げており、社員それぞれの個を重視したスタイリッシュな社風と評されることが多いようです。平均年収は約1100万円。年俸制を採用しているため、電通より額は低くなってしまいますが、それでも十分高額といえます。
参照:博報堂
1956年に稲垣正夫によって創設された、比較的新しい会社です。設立当時の社名は株式会社旭通信社であり、アサツー・ディー・ケイの「アサツー」は、旭通信社の略称「あさつう」からとられています。
電通とは真逆で、全体的に穏やかな社風であると言われており、上下関係なども比較的緩やかとのこと。平均年収は700万~800万円ほどで、一般企業より高い水準ではあるものの、前述の2社には大きく差をつけられています。
参照:ADKホールディングス
3社ともに長所、短所は存在します。年収などは気になるところではありますが、各社がどんなクライアントをもっているのか、どんな人が働いているのかまでしっかり見極めましょう。華やかな仕事に見えますが、裏での仕事は全てが華々しいとはいえません。
「どんな人となら働き続けられるか」も重要なチェックポイントです。
大手3社以外にも、成長領域のネット広告に注力することで、力を伸ばしている広告代理店も存在します。今回は、インターネット広告代理店のなかでも、特に今後が期待できる2社について紹介していきましょう。
1998年に設立された、日本最大のインターネット広告代理店。20年以上にわたってインターネット広告関連のサービスを手掛けています。最新の売上ランキングではADKをおさえてトップ3入りを果たすなど、その存在感は増す一方です。
長年のノウハウと最新のテクノロジーを駆使し、あらゆるネット広告に対応可能。まさに「攻めのインターネット広告代理店」といったところでしょうか。次世代の広告業界を担っていく存在となるかもしれませんね。
参照:サイバーエージェント
1994年設立。ビッグデータの活用や独自の効果測定ツールの提供などで、近年は中堅企業〜大企業のクライアントを多数抱えるようになりました。テレビCMとweb広告との連携など、媒体の枠を超えた幅広いプロモーションも特徴のひとつです。
サイバーエージェントに次ぐ大手インターネット広告代理店として、今後の更なる飛躍が期待できそうです。
参照:オプトホールディング
クリエイティブな仕事がしたい、社会を動かすような仕事がしたい、仕事のやりがいも収入も向上させたいと考える方は、広告業界への就職・転職を考えたことがあるでしょう。
広告業界は人気の業界です。そのため新卒入社も転職も狭き門であると考えてよいでしょう。また大手に限らず激務であることは珍しくないため、体力や精神力も必要とされます。では就職や転職をするためにどんなことをしておく必要があるでしょうか。
生活するなかで目にする広告に憧れて広告業界を志望する方は少なくありません。華やかにも思える業界ですが、広告を公開するまでに多くの打ち合わせや各所との調整など、ひとつの広告の制作には多くの人が関わり、時間もかかっています。
さらに広告業界のお金の仕組みも知っておく必要があるでしょう。テレビや駅広告などの広告費はいくらぐらいかかるのか。広告を出す場所によってどれくらいの効果が狙えるのか。また過去にはどんな広告が掲載されていたのかなど、徹底して調べておくことで広告業界での働き方がイメージしやすくなります。
また具体的に「こんな広告を出したらどうか」という提案は、すでに広告業界の第一線で働いている方にとって新鮮な意見にうつる可能性もあります。
広告業界で働くといってもさまざまな仕事があります。大きくわけると営業、企画、クリエイティブなどの仕事があります。他社に広告の提案をしにいく営業なのか、企業の代わりに企画や戦略を立てる仕事がしたいのかなど大きな違いがあるでしょう。
徹底的なリサーチをしておくことで、実際に働き始めた時のギャップを小さくすることができます。
前述したように、広告にはマスコミ4媒体で打つ広告と、屋外広告や交通などのプロモーションメディア広告、そしてインターネット広告の3種類があります。
すべての広告制作に携わるなら総合広告会社に就職した方がよいですし、インターネット広告だけならインターネット広告に強い会社に就職するのがよいでしょう。
広告の種類によって広告への考え方も社風も異なります。広告の種類を絞って就職・転職活動をするのもひとつの手です。
外からは華やかな世界に見えますが、実際のところは地道な作業も多いのが広告業界です。そんな広告業界への就職・転職を考え始めたら、まずは習慣づけておきたいことがあります。
◾️日々の視野を広げる
広告の仕事では「普段は意識していなかったけれど言われてみればそうだ」とハッとするようなアイデアが求められます。クライアントは自社の製品やサービスを多くの人に認知してもらい、利用してもらうために広告を打ちます。広告業界にいる人間は、そうしたクライアントの課題を解決できるようなアイデアをたくさん考える必要があるのです。
広告業界の情報を収集すると同時に、日々を過ごすなかであらゆるものに対する視野を広げておいた方がよいでしょう。普段目にしていたものを広告にするならどんな案があるか? クリエイティブはどうするか? など、具体的にイメージすることで、即戦力として働くことができるかもしれません。
◾️行動力・行動スピードをあげる
広告業界は激務であることに加え、いつでも時代の最新の情報を追わなければなりません。ひとりが抱えるクライアントの数もひとつではなく、数社を並行しておこなう必要もあるでしょう。
そうした時に大事なのが行動力と行動のスピードです。能動的に、自分が考えたことを実行できる力は就職前から身に付けておきたい習慣のひとつです。
- 著者
- 波田 浩之
- 出版日
この記事を読み、「なんとなく広告業界に興味が出てきた!」「もっと広告業界について広く知りたい」なんて思ってる方に、ぜひご一読いただきたいのがこの本。
2007年出版の同名書を全面改訂した、まさに広告の教科書のような本です。マスコミ4媒体からネット広告まで最新の動向をバランスよく紹介しており、広告業界について概観するにはうってつけ。
動向だけでなく、今後の課題や広告のあるべき姿についてなども触れられており、読みごたえ抜群の1冊となっています。
- 著者
- 佐藤 和明
- 出版日
最近話題のインターネット広告について、もっと深く知りたいあなたにはこちらの1冊がおすすめです。
ネット広告の全体像を解説した入門書となっており、本記事でも紹介した「アドテック機能」などについて、より詳しく説明がなされています。
豊富な図解とともに説明が展開されるので、まだネット広告について知識がない方でも、ゼロから学ぶことができます。これを読めば、一歩踏み込んだ業界研究として、周りに差をつけられるかもしれませんね。
- 著者
- nifuni
- 出版日
- 2017-12-04
広告業の具体的なイメージを心打つ物語とともに楽しめるのが、広告業界を題材とした少年漫画『左ききのエレン』です。
「天才になれなかった全ての人へ」
(『左ききのエレン』1巻)
この衝撃的なコピーから始まる本作品。2019年末には実写ドラマ化されたことでも話題になりました。
広告代理店勤務の「立ち上がった凡人」朝倉光一と、類稀な才能を持ったアーティストで「突き抜けた天才」山岸エレン。この2人を中心に、「才能」という誰しもが葛藤を抱くテーマで、物語は展開していきます。
各界を彩る「天才」と、その才を前に打ちひしがれる「凡人」。この対比が、華々しさと泥臭さが共存する広告業界を舞台にリアルに描かれています。
これから広告業界を目指す人、一度自分の才能を諦めてしまった人、そのどちらにも刺さる内容となっているはずです。少年漫画の域を超えた大人向け少年漫画、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
『左利きのエレン』のもっと詳しいあらすじはこちらから。
『左ききのエレン』が面白い!原作版を全巻ネタバレ紹介!
スタイリッシュなイメージで人気の広告業界ですが、さまざまな変化の波が来ていることが分かっていただけたかと思います。特に、インターネット広告を専門とした会社の成長は今後も楽しみですね。広告業界を目指す方は、ぜひ大手広告代理店以外にも選択肢を広げて、いろいろな面から比較してみてください。