5分でわかる臨床検査技師!他職種への転職に有利?仕事内容や資格難易度など解説

更新:2021.12.4

医療現場の「縁の下の力持ち」である臨床検査技師。病院や施設にて患者さんから採取された検体検査や、生理検査をおこなっている職業です。検査を滞りなく、かつ正確に進めるために、必要な重要業務を担っているのが臨床検査技師なのです。 臨床検査技師になるには国家試験に合格しなければなりません。他の資格の受験資格に臨床検査技師の資格保有が条件になっていることもあり、転職に強い資格でもあります。 今回は臨床検査技師仕事内容から働く場所、年収についてまとめましたので、参考にしてみてください。

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臨床検査技師とは。実際の仕事内容や年収について

臨床検査技師とは

「臨床検査技師」という言葉は、普段日常生活を送っているなかでは聞きなれない言葉だとおもいます。しかし、現代医療においては、「疾患の有無」に検査は必須要素。それをおこなうのが、臨床検査技師なのです。

臨床検査技師はMT(Medical Technologist)と略され、とくに病院内では重要な働きを担っています。臨床検査技師のおもな仕事は、患者さんの検体を取り扱ったり、患者さんの生理機能を検査することです。

感染症のPCR検査(※病原体のDNAを増幅させる手法を用いて鑑別する方法。目的の病原体のDNAが増殖していれば陽性、増殖が見られなければ陰性となる。顕微鏡で病原体を確認できない場合に用いられる検査)をおこなっているのも臨床検査技師です。

臨床検査技師の仕事内容は?

臨床検査技師の具体的な仕事内容は以下となります。

  • 検体検査(血液検査、尿検査、便検査、細胞診)
  • 生理検査(心電図検査、呼吸機能検査、超音波検査、脳波検査、神経系検査)

これらの仕事内容をみると、やはり需要が多くあるのは病院ですが、それ以外に市の保健センターや健診センター、学校や病院の研究室、製薬会社やメーカーなど、就職できる場所は多岐にわたります。

臨床検査技師の年収は?

臨床検査技師の平均年収は男性が500万円前後、女性が420万円前後と言われています。平均して450~500万円程度とされていますが、これは働く施設によってかなり年収に差があり、また役職の有無などによって、違いが大きく表れていることが関係していると思われます。

また女性の臨床検査技師の場合、妊娠出産などで一時休職を余儀なくされることもあります。これは臨床検査技師が、検査をする過程で使用する試薬などが、妊娠経過に影響をおよぼす可能性があるものを使用する場合もあるからです。

臨床検査技師になるには?国家試験のおすすめの勉強法と合格率

臨床検査技師になるには国家試験を受験する

臨床検査技師は、厚生労働省に定められた臨床検査技師国家試験を受験し、合格することで初めて資格を得ることができます。

また、国家試験の受験資格も指定の3年制の専門学校や、カリキュラムのある大学にて必要な単位を取得することで、はじめて得ることができます。各学校には臨床実習も設けられており、病院や健診センターにて、実際の現場で必要な実習をこなすことも必要です。

臨床検査技師の国家試験の内容

臨床検査技師の国家試験は毎年2月におこなわれており、試験は北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県および沖縄県の全9都道府県で実施されます。

試験科目は、下記の10科目。

 

  • 医用工学概論(情報科学概論及び検査機器総論を含む)
  • 公衆衛生学(関係法規を含む)
  • 臨床検査医学総論(臨床医学総論及び医学概論を含む)
  • 臨床検査総論(検査管理総論及び医動物学を含む)
  • 病理組織細胞学
  • 臨床生理学
  • 臨床化学(放射性同位元素検査技術学を含む)
  • 臨床血液学
  • 臨床微生物学
  • 臨床免疫学

専門科目となりますので、大学や専門学校で一つひとつの知識をしっかり身につけなければなりません。

 

臨床検査技師国家試験の合格率は?

合格率はおおよそ75~80%と言われています。しかしこれは既卒合格者、新卒合格者の合計の合格率です。

しかし既卒者と新卒者の合格率を別で見ると、大きな差があります。既卒者の合格率は30%前後ともいわれており、臨床検査技師の資格を得るには、一発合格を目指すことがもっとも近道といえそうです。

臨床検査技師として働くうえで求められるスキルとは

臨床検査技師には正確性と迅速さが求められる

臨床検査技師に求められる大事な技量のひとつは、検査の正確性と迅速さです。

臨床検査技師は、ただ黙々と検体検査や生理検査をこなしていればよいというわけではありません。働いている施設には患者さんはもちろん、医師や看護師、薬剤師など他の医療従事者もたくさんいいます。

とくに各種検査は診療の補助を担う上で、なくてはならない事項です。そのため、外来診療においては検査結果が出るのを、患者さんに待機してもらって診察がすすみます。

検査がとどこおると、当然患者さんの待ち時間も長くなりますから、そのぶん待ち時間についてのクレームが発生してしまうこともあるでしょう。診療している医師も回診や手術時間の予定もありますので、時間がつまってくると怒り出す医師もたくさんいます。

他職種との連携をスムーズに取れる

業務をこなしながら、他職種との連携も密にとることが求められるのが臨床検査技師です。

また、他職種との連携も重要です。とくに現場での検体の採取は看護師が担う機会が多いため、コミュニケーションを密にとり、より正確な検査結果を出せるように採取法や保存方法、検体提出などの優先順位について指導をおこなう必要があります。

医師によっては、生理検査について検査結果のコメントを求めてくる場合もあります。この場合はより正確で鮮明なデータを提出するとともに、診療の補助になるような見解を示す必要があります。

保健所などでは特定疾患の検査をおこなう例もありますので、他施設の他職種を相手にするため、求められるコミュニケーションスキルはさらに上がります。

臨床検査技師の資格を生かし、年収1000万プレイヤーを目指す

CRA(臨床開発モニター)で年収を1000万円に?

臨床検査技師の資格を保有していることで、先に述べた通り上級資格を取得したり、役職を得ることで年収をアップさせることはできますが、それでもなかなか年収を1000万以上にするのは難しいと思います。

臨床検査技師の資格を保有して1000万以上をめざすのであれば、CRA(臨床開発モニター)を目指すのが一番近道かもしれません。CRAとは、治験の進捗に滞りがないかを確認しスムーズな治験の進行を管理する責任者です。

5分でわかる治験コーディネーター!仕事内容や年収、転職の実情を解説→https://honcierge.jp/articles/shelf_story/9279

実際の臨床検査技師の仕事からは少し離れてしまいますが、新薬の開発に携わることは、疾患で苦しんでいる多くの患者さんを救うことにつながるので、こちらも別の意味でやりがいのある仕事だと言えます。

CRAになるには?

CRAという職種は、臨床検査技師とは少し離れてしまいますが、CRAの採用募集要項、必須資格に臨床検査技師があるのもまた事実です。

また他職種からCRAに転職する人も多くいます。資格の例としては、薬剤師、看護師、保健師などがあります。特に薬剤師からCRAへの転職は多く、王道と呼ばれていることも。

ほかの臨床検査技師の上級資格で年収アップをめざす

臨床検査技師の上級資格は?

臨床検査技師にも、いわゆる上級資格があります。臨床検査技師の上級資格はとても複数にあり、自分自身の好きなジャンルや、働いている組織の中で求められるスキルによって目標とする資格は違ってくるとおもいます。

◾️細胞検査士
 

癌の診療を数多くおこなっている病院では「細胞検査士」のスキルが求められることもあるでしょう。

細胞検査士の資格を得るには臨床検査技師の試験に合格した後、ふたつのルートがあります。ひとつは病院、診療所などで実務経験を1年以上積むことです。もうひとつは細胞診技術者養成機関に入った後、細胞検査士の試験を受験します。

試験は一次試験、二次試験があるのですが、どちらの合格率も50%程度となっています。二次試験は一次試験の合格者のみが受験可能ですので、最終的な合格率は25〜30%となるでしょう。

臨床検査技師として実務経験のある方、細胞検査士養成課程のある大学を修了した方が受験していることを考えると、かなり難易度の高い資格といえます。

◾️胚培養士

胚培養士」は、不妊治療をおこなっている病院で必要とされるスキルです。胚を扱う専門職であり、主に不妊治療に携わっています。

認定資格であるために、受験可能な胚培養士の資格試験は3つの団体で受けることができます。

 

  • 日本臨床エンブリオロジスト学会
  • 一般社団法人日本卵子学会
  • 一般社団法人日本生殖医学会

設けられている受験資格が異なりますので、それぞれの公式ホームページを確認してみてくださいね。

◾️超音波検査士

超音波診療を重要視する施設では「超音波検査士」のニーズもあります。比較的どの施設でも需要があり、人気の上級資格です。

超音波検査士は、体表臓器・循環器・消化器・泌尿器・産婦人科・健診・血管の臨床領域別に試験をおこないます。

検査を受けられるのは、下記3つの条件をすべて満たす方とされています。

 

  1. 看護師、准看護師、臨床検査技師、診療放射線技師いずれかの免許を有している
  2. 日本超音波医学会の会員として3年以上継続し、正会員であること
  3. 本会認定超音波専門医または指導検査士(受験領域は消化器・泌尿器・産婦人科領域に限る)の1名による推薦が得られること

1985年の第1回から受験者数は年々増加しており、今までの総平均合格率は70.5%となっています。

資格取得で年収アップ

組織で必要とされている資格を取得すると、施設によっては「資格手当」が付加されます。それにより、年収もアップさせることができるでしょう。

臨床検査技師を続けていくことで、当然年毎の基本給アップも望めますが、上級資格を取得することが年収アップへの近道であることはいうまでもありません。

臨床検査技師国家試験の対策本

著者
臨床検査技師国家試験問題注解編集委員会
出版日

臨床検査技師の普段の業務を知るためにおすすめの本が『臨床検査技師の1日』です。

この本は、実際に臨床検査技師として働いている人に対しておこなった調査を参考にしています。病院や健診センターなど働く施設によっての違いも掲載されていますので、臨床検査技師の資格を取得した後のビジョンをイメージするにはとても参考になると思います。

臨床検査技師国家試験の対策として、おすすめの1冊が『臨床検査技師国家試験問題注解』です。この本には過去5年分の過去問題が凝縮され、実際の国家試験を想定した内容が掲載されています。5年以上前の設問に関しても、重要要素については網羅されています。

特におすすめなのが、誤答に関しても解説がなされているところです。そのため、問題の出題パターンが変わっていても、対応できるようになっています。参考書のように使用ができる点も魅力です。
 

臨床検査技師の国家試験は、比較的過去問から問題を採用されるパターンが多いです。ですから、過去問をしっかりと解くことで、「自分自身が何を覚えていて何を覚えていないのか」「どこが得意で何が苦手なのか」を洗い出すことが攻略の第一歩だといえます。

臨床検査技師の国家試験は5択なので、あてずっぽうに回答しても正答率は20%です。過去問を使用し、できるだけ何度も問題を解くことで出題の傾向を読み取り、誤答も含めて正解が何であるかをしっかりと確認することが重要です。

臨床検査技師の一日を知る

著者
["WILLこども知育研究所", "WILLこども知育研究所"]
出版日

また、臨床検査技師になるための学校や、授業内容、向き不向きなどについても掲載されていますので参考にしてみてください。
 

これから実習に入る学生さんにも、実際の臨床現場をイメージするための参考資料として、おすすめできます。

私の働いている施設でも臨床検査技師はたくさんいますが、本当に忙しそうに日々業務に従事しています。働く施設の規模にもよりますが、地域の中核を担うような比較的大きな施設なので毎日何百人、時には何千人に及ぶこともあるとおもいます。

検査の種類により、日々担当者を変え、外来、病棟、手術室などから次々とオーダーされる検体に対して、まさに正確無比に結果を出していきます。また、そのなかでも検査の緊急度を考えながら優先順位をつけてこなしていく姿には感服せざるをえません。

臨床検査技師の上級資格「超音波検査士」を目指す方へ

著者
東京超音波研究会 如月会
出版日

超音波診断は患者さんへの侵襲が少なく、瞬時に画像として検出できるので、臨床の現場ではなにかとオーダーされることの多い検査です。
 

しかしながら、超音波検査における画像の鮮明度や検出の精度は、検査をおこなう人の技術によってかなりの差が出てくるのも事実です。

超音波検査は医師がおこなうことも多い検査のひとつですが、「本当にテクニックが要されるな」と実感する検査でもあります。たとえ医師でもテクニックが未熟であれば、目的とする目標物がきちんと認識できなかったり、大きさや形が不明瞭な場合があります。

そんな中で、専門の超音波検査士がいれば医師からも頼りにされること間違いなしです。

臨床検査技師であるならば持っておいて損はない、上級資格の1つであるといえるでしょう。

この参考書は実際の画像を用いながら、細かく解説まで掲載されています。これから超音波検査士を目指す人にとっておすすめの1冊です。実際に講習を受けた人たちのアンケート調査によって改編がなされ、よりブラッシュアップされた内容になっています。

自分自身の知識の確認をしながら、未熟な部分や苦手な部分をフォローアップするのに有効活用できるとおもいます。

臨床検査技師の資格保有者なら「CRA」を目指すのも

著者
小嶋 純
出版日

興味があれば『CRAの教科書』という参考書を見てみてください。CRAの概論と仕事内容の詳細について載っています。

CRAにかかわらず、有名企業や製薬会社で臨床検査技師として働くことで、いずれは年収を1000万以上にすることが可能な場合もありますが、就職までの道のりは大変厳しいもの。有名企業では、学歴は当然のように求められます。
 

しかしCRAであれば、CRC(治験コーディネーター)としての実績があれば、就職することもできる企業があります。

臨床検査技師の資格を保有して1000万プレイヤーを目指すのであれば、CRAを目指すのが比較的近道といえそうです。

臨床検査技師は、患者さんの体調や不具合を証明するために必要な検査を担うのが仕事です。疾患の確定診断をするために、業務を遂行するのはもちろんですが、逆に好調である、経過が良好であるのを証明できるのも臨床検査技師です。患者さんの人生に深く関与することになるので、とても責任重大ではありますが、そのぶんやりがいのある仕事でもあります。臨床検査技師に興味があるようならば、ぜひ一度おすすめした書籍を手に取ってみてください。

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