5分でわかる治験コーディネーター!仕事内容や年収、転職の実情を解説

更新:2021.12.5

アルバイトの求人サイトを使ったことのある人なら、治験という臨床試験を知っている人は多いかと思います。しかし、治験コーディネーターという仕事は、医療業界や医薬品業界で勤務していないと知ることは少ないですよね。 今なお新しく出現する未知の病気やウイルス、治療困難な病を治療するために、新薬開発の一端を担っているのが「治験コーディネーター(CRC)」です。被験者さんの体調管理や治験のスケジュール管理をおこなう重要なお仕事です。被験者さんの状況を把握するために信頼関係の構築も必要です。 今回はそんな治験業界の実行者である「治験コーディネーター」についてご紹介します。

ブックカルテ リンク

治験コーディネーターとは?年収はどれくらい?

治験コーディネーターとは

治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinatorの略)は、新薬開発のために、その被験者として協力していただける患者さんとの橋渡しをするのが主な仕事です。

実際に、治験コーディネーターという資格はありませんが、新薬開発に携わる大変なお仕事なので、医療系国家資格を保有していることが、治験コーディネーターとして働ける基本的な条件となります。

治験コーディネーターの仕事内容

治験コーディネーターの業務は「GCP(治験を実施する際に順守する基準)を守って適切に治験がおこなわれるように各部署を調節(コーディネート)する」ことです。

治験コーディネーターは医療機関において、治験に関わる事務的作業や業務をおこないます。医師の指示のもと治験業務全般を広くおこなっていますが、医療施設や治験の内容によってその時の業務内容は多少違いがでてきます。

  • 治験開始前の準備・調整など
  • 被験者への対応
  • 治験担当医師対応
  • 治験関連部門との連絡・調整
  • 依頼者対応

まずは、自身の担当する治験の内容について勉強会がおこなわれますので、ここでしっかりと自身が担当する治験の内容を確認し把握する必要があります。治験コーディネーターがここでの勉強を怠ると、病院関係各者への説明や有事の際の対応がおろそかになるので、信頼関係を築くためにも、確実に頭にたたきこむことが大切です。

その後、各関係者に治験の内容を説明し、スムーズな進行を図れるよう下準備をすることとなります。わかりやすく内容を伝えるために資料を使用したりしながら調整をおこないます。

病院などの関係各者に説明をするのとほぼ同時進行で、被験者のスクリーニングもおこないます。自分自身で探したり、医師に被験者を紹介してもらったり、被験者を募集したりもします。実はこの段階がかなり大変で、目標とする被験者数を集めるのに奔走することになります。

被験者が決まったら、その被験者へ、治験内容の説明と同意を得て、その後のフォローをしていきます。治験をおこなう上で心配なことはないか、体調などの不調はないかなど、有害事象の有無を確認していきます。有害事象があった場合には速やかに報告し書類作成などもおこなわなくてはなりません。

被験者には、健診のフォローやスケジュール管理、服薬があるのであれば、服薬を確実におこなえるようなサポートをする必要もあります。そのうえで日々の業務日誌を作成することが主な業務内容となります。

参照:日本SMO協会

CRCの年収について

治験コーディネーターは、さまざまな医療系資格の保有者が転職先の1つとして選ぶ人気の職業です。その理由の1つとして常日勤でありながら高年収であることがいえます。平均して450~500万円台の年収を得ることができるといわれています。

保有資格や勤める年齢により、さらに年収が高くなる傾向があります。企業によってはインセンティブがつくこともあるようです。逆にいうと地方都市や病院内の治験センターでは若干年収が低めの傾向ですが、その分業務の忙しさは都市部のSMO(治験施設支援機関)と比較すると、ゆとりのある業務内容となっていることがメリットです。

また、年代により昇給率が高く、年収の伸びがいいことでも有名です。リーダー格やマネージャー格になり役職者手当てがつくと年収800万以上になることも珍しくありません。

常日勤で比較的ワークライフバランスがとりやすいのもメリットですが、プロジェクトが忙しい時には残業も発生します。この年収には、固定残業代が付加されている場合が多いので、残業が発生する状況が多々あるということは認識しておいた方がよさそうです。

また、年収も一概に固定給とはいえないところがあります。入職時の給料査定も学歴や経験年数、臨床経験や管理職経験、英語能力、役職者業務の経験値の有無などによって査定は大きく異なりますので、個々人で有意差があることも十分に考えられます。

入社後の勤務内容によっての査定制度を設けているところもあるので、自分自身の頑張りによって年収は変わってくる職業といえるでしょう。

CRCになるまでの道のりや必須資格。他職種からの転職状況とは

治験コーディネーターになるには?

治験コーディネーターとして働きたい人は、その専門性を高めるためいくつかの団体でおこなわれているCRCの認定資格を取得することが多いようです。

◾️JASMO公認CRC試験

日本SMO協会が実施している「JASMO公認CRC試験」は、2019年時点で4254名の資格保有者がいます。受験料は1万2000円ほどで、公認証は発行から5年で更新の手続きを取る必要があるようです。

合格率は例年70%台をキープしており、やや難しい試験といえるでしょう。

◾️認定CRC試験

日本臨床薬理学会では「日本臨床薬理学会認定CRC制度」が制定されています。日本SMO協会の公認試験より受験資格が厳しく定められているため、受験可能者は限られているのが特徴です。受験料は2万円で、試験合格後の手続きには3万円の登録料が必要となります。

日本臨床薬理学会認定CRC制度の合格率は、例年7〜8割程度。すでに治験コーディネーターとしての実務経験がある人が受験していることを考えると、難易度の高い試験といえるでしょう。

他職種からの転職はある?

治験コーディネーターとして働いてる人たちのおもな保有資格は、下記のようなものがあげられます。

  • 看護師
  • 薬剤師
  • 臨床検査技師
  • 管理栄養士
  • 臨床工学技士
  • 理学療法士

他にも、製薬会社でMRとしての経歴を保有している場合も可とされることがあります。

◾️看護師は転職しやすい

このなかでも比較的、治験コーディネーターとしての職歴がなくても転職が成功しやすいのが看護師です。理由としては、看護師はカルテが読めて、医療現場においてのコミュニケーション能力が突出して優れていることがあげられます。

治験患者さんの全身状態や、疾患の状況など、病院内にあるカルテをもとに情報収集し、現状を把握します。治験をスムーズに進行させるための情報収集を的確に行えると判断されるためです。

また基本的な疾患の知識を幅広く保有しているため、どのようなプロジェクトの治験であっても比較的困ることなく対応することができるとされています。

◾️臨床検査技師は厳しいけれど転職が多い

一般的に臨床検査技師から治験コーディネーターへの転職は比較的ハードルが高いといわれていますが、転職する人は多くみられます。継続雇用によりしっかりとした昇給が見込めることから、大幅な収入アップが望めるルートなので、人気の転職先の1つなのです。

ハードルが高い理由としては、カルテを解読する機会が少ないため、情報収集に苦戦することや、働いている場が検体検査や生理検査なので、コミュニケーションを必要とする場が乏しく、コミュニケーションスキルが乏しいと判断されるためです。

臨床検査技師から治験コーディネーターへの転職は、最低でも2年の臨床経験を求められる場合がおおく、試験に適性試験を含まれることもあります。臨床検査技師から転職を試みる場合は、しっかりとした下準備と面接などの対策が必須事項となるでしょう。

5分でわかる臨床検査技師!仕事内容や年収、活躍できる場所について解説
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/9068

◾️薬剤師から治験コーディネーターになる人も

薬剤師から治験コーディネーターへの転職も多く見られる転職先の1つです。薬剤師は6年生の大学に通学し、薬学に対してのプロフェッショナルでもあるので、唯一、新卒でも治験コーディネーターとして働ける国家資格となっています。

もちろん、社会人経験を積んだ方が、就職しやすいことは確かですが、若い時から治験業界に携わることで、治験に関する上級職にキャリアアップすることもできます。さらなる年収アップを期待できるルートであるといえるでしょう。

5分でわかる薬剤師!資格の取得方法や収入、働き方などを詳しく解説!
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/9105

 


 

治験コーディネーターは離職率が低い?

治験コーディネーターの離職率は10~15%といわれています。

離職率ととらえると単純に治験コーディネーターをやめるととらえがちですが、実態はより有利な条件の企業に治験コーディネーターとして再就職することを目的とした退職が多くあります。

実際に治験コーディネーターの求人枠には「経験者優遇」や「治験コーディネーター経験1年以上、2年以上」といったような条件付き採用枠が多く見られます。

そして、そのぶん提示されている収入も未経験時より多く提示されているので、「とりあえず就職のしやすい企業に経験として入職し、経歴を得てから、より条件のいい治験施設支援機関に再就職する」といった治験コーディネーターは多いようです。

その他には、治験コーディネーターも女性が多い職場環境ですので、結婚や出産、または臨床に戻りたいといった理由での退職もあります。

治験コーディネーターとしてのやりがい、キャリア

実際に、現在治験コーディネーターとして働いている人にやりがいや楽しさを聞いてみることにしました。

治験コーディネーターとしてのやりがいは?

一番やりがいを感じるときは、なんといっても被験者に新薬の効果の実感が出ている時だそうです。

特にオンコロジー(癌)領域だと、患者さんの人生や余命にも関わる部分なので、患者さん自身の喜びも間近に感じられます。この時が一番「この仕事をしていてよかった」と思えるそうです。

生活習慣病(たとえば高血圧、糖尿病)に対する新薬治験もあるようですが、このような薬の場合は効果の出かたもゆっくりで、また患者さんの自覚症状などもわかりにくいようです。

そのぶん、勉強する内容や有害事象の確認など、業務内容は大変ですが、それも面白さの1つとなっているようです。

治験コーディネーターとしてのキャリアとは

CRCは比較的被験者との距離が近く、現場で業務をすることも多いですが、その先の上級職「臨床開発モニター(CRA)」になると、治験全体の進捗を管理する業務に変わります。

近年は外資系企業の国内治験業界への参入も多く見られ、グローバルな働きかたも視野に入れてみたいという治験コーディネーターもいます。条件だけではなく、多くのことを学べる機会を求めて、企業を移り変わるという治験コーディネーターは多いのです。

筆者の治験コーディネーターへの転職活動の体験談

筆者も以前治験コーディネーターとしての転職を目指し、転職活動をおこなったことがあります。

結果としてすべて不合格だったので、参考にはならないかもしれませんが、悪い例としては参考になる箇所もあるかもしれないので、一応ご紹介します。

転職の際に有利となり得る点

決定打としての要素ではないかもしれませんが、知っておいて損のない情報ではあるとおもいます。

 

  • 応募用の必要書類は上から「添え状」「履歴書」「職務経歴書」「志望動機書」をA4クリアファイルに入れて郵送する。後日の「お礼状」があるとなおよし。
  • 英語の日常会話レベルの能力があるとよし
  • 転職回数の多さは不利となり、1箇所で長く勤めている方が有利になる
  • できるだけ若いほうが有利(長く務めることができるため)
  • 医師とコミュニケーションを取ることが得意などのアピールは大変有利

 

最初の関門は書類作成

筆者が治験コーディネーターを目指したのは30代前半の頃でした、治験コーディネーターとしての求人状況を考えるとギリギリの年齢といったところでしょうか。

筆者は看護師の転職サイトで、転職エージェントさんにサポートを受けながら書類作成に臨みましたが、CRCを目指すならば、「履歴書」「職務経歴書」「志望動機書」の作成は必須事項です。その希望する会社が、どのような新薬開発に携わっており、自分自身が、同じような分野でどのような経験を積んできたかをアピールすることが重要となってきます。

そのうえで、添え状を添付し、クリアファイルに入れてしっかりとした状態で郵送することが必要です。「社会人として最低限の常識を備えているのか」は重要な判別ポイントとなっているようです。

英語でコミュニケーションが取れると有利

海外企業と共同開発をおこなう機会も多いため、英語でのコミュニケーションが取れるとよいそうです。社内で無料の英会話スクールがある企業もたくさんありました。

また実際に書類選考を通過しても、面接で落とされることもあります。試験の場で、簡単な筆記試験がある場合もありました。

この部分に関しては、実際に何が悪かったのかわかりませんが、筆者の場合、不合格となった理由に「年齢に対しての転職回数が多い」と判断されたようです。(30代前半で2回ほどでした)

看護師資格を保有していても、簡易的な履歴書や、日本語、英語でのコミュニケーション力に問題があれば確実に書類選考で落とされます。転職活動をする際はかなり力を入れておこなう必要があるといえそうです。

これから治験コーディネーターを目指す人へ

著者
["重行, 中野", "茂, 景山", "英雄, 楠岡", "真一, 小林", "日本臨床薬理学会"]
出版日

『CRCテキストブック 第3版』は、これからCRCを目指す人や、治験業界に興味のある方にはぜひ一度手に取っていただきたい書籍となってます。

内容としては治験についての総論や、医薬品の開発やそれにともなう臨床試験などについて詳しくまとめられています。わかりやすい実践的な内容となっていて、現役でCRCとして働いている人が復習するためのマニュアルという使い方もできるでしょう。

治験についての概論や、そこに求められる治験コーディネーターの役割や業務についても触れられています。薬理学についての概論や、小児や高齢者に実施する注意点など、おおよその治験コーディネーターとして必要な知識が網羅されています。

認定CRCの試験対策テキストとして活用もできる便利な1冊となっています。

治験コーディネーターのリアルな実態を知る

著者
丸山 由起子
出版日

こちらの書籍は、実際にCRCとして勤めていた作者の体験をもとに書かれている書籍となっています。

CRCの酸いも甘いもを知り尽くした作者が、CRCのよいところや悪いところを包み隠さず執筆し、治験コーディネーターのリアルな実態を知ることができる書籍の1つです。

CRCの影の部分についても正直に触れられているので、ネガティブな印象を受けるかもしれません。

しかしそれはCRCとして働く上で直面することのある内容かもしれないので、あらかじめ正直なCRCの実情を知っておきたいという方は読んでみるとよい参考書籍となるでしょう。

CRCは被験者の方と十分な時間を取ってコミュニケーションをとっていく業務でもあります。実際の実情を知り、向き不向きを知るために参考となる1冊といえそうです。

治験コーディネーターの上級職を目指すなら

著者
小嶋 純
出版日

『CRAの教科書』は、CRCの上級職として人気の臨床開発モニターについての書籍です。「CRAとは」について簡単にまとめられており、治験全体をモニターしていく業務や手段について書かれています。

CRCであるならば、いずれ上級職をすことで、さらなる年収アップにつなげることができます。経験と向上心、チームとしての管理能力など、求められる能力も一段と多くなりますが、そのぶんやりがいも十分感じることができるでしょう。

CRAになれば、その勤めている企業にもよりますが年収1000万円台になるのも夢ではありません。外資系企業であれば、1200万など提示しているところもありますよ。

信頼されるCRA、できるCRAを目指すならば、必読の1冊です。

 


日々、生まれる未知の病気やウイルス、治療困難な症例に対して、あたらしい治療法確立のために奔走する治験コーディネーター。仕事内容は多岐にわたるため大変で責任感も必要。知識のアップデートのための勉強も欠かせない仕事ですが、その分やりがいも感じられる職業であるといえるでしょう。今後もさらなる需要があり、人が存在する限りなくなることは考えにくい職業であるともいえます。そんな治験コーディネーターという職業に興味がありましたら、ぜひ一度紹介した書籍も手に取ってみてくださいね。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る