医療や福祉職の世界に身を置いていなければあまり馴染みがあまりない職業であるケアマネジャー。資格を持っていると活躍の場も広がるため、医療や福祉職のスキルアップやキャリアアップにと取得する方も多い資格であるともいえます。2020年9月現在は民間資格ですが、今後、国家資格化も検討されています。 この記事では、ケアマネの資格のみで得られる年収や、ケアマネの資格取得の方法、合格率などをご紹介します。この記事を読んでケアマネジャーについてもっと知りたいという方は紹介する書籍もぜひ目を通してみてくださいね。
ケアマネジャーは、正式名称を介護支援専門員といいます。ケアマネジャーを略してケアマネと呼ぶ方も多く、特に医療職の方はケアマネと呼んでいる方をよく見受けます。
ケアマネジャーとは、「介護保険法」に位置づけられた職種であり以下のように定義されています。
要介護者または要支援者(以下「要介護者等」という。)からの相談に応じ、要介護者等がその心身の状況等に応じ適切な居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービス、介護予防サービス若しくは地域密着型介護予防サービスまたは特定介護予防・日常生活支援総合事業を利用できるよう、市区町村、居宅サービス事業を行う者、地域密着型サービス事業を行う者、介護保険施設、介護予防サービス事業を行う者、地域密着型介護予防サービス事業を行う者、特定介護予防・日常生活支援総合事業を行う者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識および技術を有するものとして第六十九条の七第一項の介護支援専門員証の交付を受けたもの
つまり、要支援者や要介護者が生活していくうえでどのサービスを利用すればよいのか、その人の生活背景や個別性に合わせてプランを立てることを仕事とします。
介護認定の区分によって受けられるケアに限度があります。その限度の中から本当に利用者が必要なケアを見きわめてプランを組み、適切に介護が提供されているかを評価するケアマネジメントをおこなう職業がケアマネジャーといえます。他にも関係機関と連絡調整をおこなうこともあります。
ケアマネジャーが働ける職場は、介護施設や医療施設が多いです。他にも地域包括支援センターなどの事業所で働くことができます。
地域包括支援センターなどの事業所の場合はケアマネジャーという職種だけで働くことが可能です。しかし、医療施設や介護施設では、もともと持っている資格+ケアマネジャーの資格を生かした仕事、いわゆるケアマネ兼務で働くことが多く、ケアマネジャーの資格のみで働くということは難しい場合が多いです。
実際の求人情報に目を通して見ても、ケアマネジャーの募集要件にケアマネ兼務と記載している施設が多いのが現状です。
収入は、雇用形態などによって大きく差が出てきます。兼務をされている方は、ケアマネジャー以外の職業で雇用をされている場合がほとんどですので、その職業の給料にケアマネジャーの資格手当が付与される程度となります。ですので看護師や医師など元々給料が高い職種でケアマネジャーを取得している場合には、高い給料が得られるという仕組みです。
ちなみに、厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、ケアマネジャーの資格のみで雇用された場合の平均基本給は21万7690円となります。平成29年度の調査結果の平均21万5730円と比べ、1960円と微増ではありますが、需要にともない増加傾向にあることが分かります。
しかし基本給のほか賞与平均が5万8540円、手当金の平均が7万4100円と加算されており、給与平均は35万320円となります。これは看護職の次に高い給与水準となっています。
ケアマネジャーをあまり多く雇えない中小の企業や施設ですとケアマネの需要が増すため、給料が高くなる傾向にあるんですね。
ケアマネジャーの資格試験は都道府県が実施しており国家資格ではありません。そのため、資格を取得しても手当てが少し付与される程度で給料に大きな影響がないことが多いです。
ですが、できる業務の幅が広がるため医療や介護の資格を取っている方はスキルアップやキャリアアップのために取得を考える人も多く、日本介護支援専門員協会では今後、ケアマネジャー資格を国家資格化させることも検討しているようです。
前述した通り、ケアマネジャーの資格を取得するには、2つの受験資格のどちらかを満たしていなければなりません。
◾️未経験からの転職は厳しい
上記のように試験を受けるには2つの条件のうちどちらかを満たさなければなりません。未経験であればどちらのルートも選べるとはいえ、費用も時間もかかります。
特に医療系国家資格の取得を目指すのであれば、大学4年間+5年の実務経験で計9年の時間がかかります。それならばケアマネとしての就職ではなく、国家資格を活かせる職に就き、月給アップやスキルアップのための取得と考えた方がよいのではないでしょうか。
◾️医療系の資格を保有している場合
医療系の資格をすでに保有しており、通算5年以上従事している方は、後はケアマネジャーの資格を取得すれば転職することができます。
すでに医療系の知識を習得していることに加え、実務経験も積んでいるので、医療関係の勉強はさほど難しくはないでしょう。しかし養成校がないため、通信講座を利用するなどして独学での勉強が必要となります。
◾️生活相談員として5年以上従事している場合
介護施設や児童福祉施設で生活相談員として通算5年以上している方は、医療系資格を保有している方と比べて、さらに勉強が大変になるといってもよいでしょう。
◾️前職に戻る
ケアマネジャーからの転職で最も多いのが、保有する国家資格を活かせる職に戻る場合です。
ケアマネジャーの資格は看護師、介護福祉士、社会福祉士、理学療法士、作業療法士の順で取得者が多いです。ですのでこれらの資格を保有する方が、ケアマネジャーから看護師に戻ったり、介護福祉士に戻ったりしています。
◾️特定事業所加算が付いている事業所への転職
介護事業所は、いくつかの条件を満たすことで特定事業所加算を受けられることになっています。そうなると介護報酬も増えるため、特定事業所加算がない事業所に比べて給与が高くなる傾向があるのです。
◾️ケアマネジャーの資格が活かせる職場へ転職
基本的にケアマネジャーから異業種への転職は少なく、ケアマネジャーの資格を活かせる職場への転職が多くみられます。たとえば下記のような職場です。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
介護老人保健施設
介護医療院
地域包括支援センターなど
しかしケアマネジャーの求人はあまり多くはないため、転職機会を伺うのが大切です。
逆に求人があるのは主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)の資格保有者の求人です。主任ケアマネはケアマネジャーの上級資格ですので、ケアマネジャーとして従事している方は取得してから転職ということも考えてみてよいでしょう。
複数人の主任ケアマネが働く事業所は特定事業所加算が付いている可能性が高いので、よりよい条件や環境で働くことができるかもしれません。
ケアマネジャーは資格を取りたいと思ってからすぐに取れる資格ではありません。
ケアマネジャー資格試験が受験できるのは、2018年以降から医療系国家資格の所有者もしくは介護施設や児童福祉施設で生活相談員に従事されていた方のみに変更されました。受験資格に該当する22の国家資格はこちらです。
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、管理栄養士、精神保健福祉師
そのうえ、通算して5年以上、かつ、当該業務に従事した日数が900日以上ある方が資格試験を受けることができます。
思い立ったらすぐに取れる資格ではないという観点から資格を取れる人は限られるといえます。
参照:東京都福祉保険財団
ケアマネジャーの資格試験は毎年10月中旬おこなわれます。問題は介護支援分野25問、保健医療福祉サービス分野35問の計60問で出題されます。試験時間は2分野あわせて120分と短いため、さくさく解く問題と、じっくり解く問題を分けておくのがよいでしょう。
<介護支援分野>
介護保険制度の基礎知識
要介護認定等の基礎知識
居宅・施設サービス計画の基礎知識など
<保健医療福祉サービス分野>
保健医療サービスの知識など
福祉サービスの知識など
参照:令和2年度東京都介護支援専門員 実務研修受講試験受験要項
試験の合格率は実は毎年かなり低く、令和元年度におこなわれた試験では19.5%という結果でした。また、通年で見てみても、20%前後で推移しており、かなり低いことが分かります。
令和元年度:19.5%
平成30年度:10.1%
平成29年度:21.5%
平成28年度:13.1%
平成27年度:15.6%
参照:第22回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について
このことから、医療福祉系の国家試験のなかでも難関資格といわれています。
実は、ケアマネジャーには他の資格のように大学や専門学校といった養成校がありません。 通信教育などはありますが、みなさん働きながら独学で勉強をされています。他の医療や福祉職であれば養成校に通って1年以上養成校で手厚くサポートを受けてからの試験となりますので、この点が合格率に影響をしているのかもしれません。
このことから、この記事を読まれている方の中にはケアマネジャーを目指したかったけれどすぐに取得することができないという方もいらっしゃるかもしれません。ですが、受験資格を得るまでの期間はケアマネジャーという仕事について学ぶチャンスともいえます。今回は、ケアマネジャーの資格について学べる本をご紹介します。
- 著者
- ["敬子, 稲葉", "優子, 伊藤"]
- 出版日
ケアマネジャーという仕事を知りたい方やケアマネジャーになるためにはどうすればよいかが知りたい方におすすめしたい1冊です。これらの疑問がすべて解決できるような内容構成となっています。
本書はさまざまな職業にスポットを当ててシリーズ化しているため、職業1つ1つにスポットライトを当ててわかりやすく紹介をしています。
介護保険のことなど難しい部分もいくつか書かれてはいますが、ケアマネジャーになるにはどうすればよいかという道しるべになるでしょう。
ケアマネジャーに実際になった方でもケアマネジャーとは何かという本質が分からなくなった時に手に取る方が多い1冊です。ケアマネジャーについて詳しく知りたい方はぜひ読んでいただきたいです。
- 著者
- 武久 洋三
- 出版日
ケアマネジャーだけでなく、ケアマネジャーを選ぶ立場の家族も読む機会のある1冊 です。
これからの医療や介護の視点を書きつつも選ばれるケアマネジャーとはどういう人かを考えていくという構成になっています。
間接的にではありますが、どういった人がケアマネジャーの素質があるのかが見えてくる1冊でもあります。医療や介護の職で現在働いており、今後スキルアップのための資格取得としてケアマネジャーの道を考えている方に一読してほしい内容の本です。
- 著者
- 中島 久美子
- 出版日
先にいいますと、ケアマネジャーという職業の人物はこの本には出てきません。 突然、介護が必要になった主人公とその周りを取り巻く家族の物語です。
ケアマネジャーは出てこないがなぜこの本がおすすめかというと、ケアマネジャーが対象とする方がこの小説の世界にあるからです。
ケアマネジャーはこの本の主人公や家族のように突然介護が必要になり途方に暮れてしまっている本人あるいは家族に手を差し伸べる職業といえます。どういった方とやり取りをする職業なのかが分かり、自分ならどうするかを考えることのできる1冊です。
介護の世界に身を置いたことのない方でケアマネジャー資格取得を考えている方にまず読んでほしいです。
ケアマネジャーという資格は、国家資格を取得していたりある程度の就業年数が必要だったりと取得できる人が限られています。また、資格取得までは独学あるいは通信教育を利用するなどの勉強スタイルを仕事と両立しなければならず、仕事と勉学を両立できず途中であきらめてしまう方もいらっしゃいます。
ケアマネジャーを対象にしている本はかなり少ないです。ですので、介護分野の本を読み、ケアマネジャーとしてかかわる対象のイメージを持つことがおすすめです。ご紹介した本を読んでイメージを持ちつつモチベーションを維持してケアマネジャーの道を目指してほしいと思います。