5分でわかる言語聴覚士!社会人からの転職が多い?資格取得方法や年収などを解説!

更新:2021.12.5

リハビリ職のなかでも従事者の少ない職業である言語聴覚士。話す、聞く、食べるのスペシャリストとして、超高齢化社会において需要の高まる仕事のひとつです。 意外にも社会人になってから資格取得を目指す方が多く、国家資格のため安定した年収と、自分に合った働き方ができます。就職や転職に強い資格ということもあり、近年注目度が高まっています。 ここでは言語聴覚士の仕事への理解を深めてもらうため、国家試験の内容や年収、そして言語聴覚士が活躍する書籍を紹介します。これを読めば言語聴覚士の仕事がより身近に感じられるでしょう。

ブックカルテ リンク

言語聴覚士の仕事内容とは

言語聴覚士の仕事内容

言語聴覚士とは言語聴覚士法により以下のように定義されています。

厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者

つまり言語や聴覚、経口摂取など口や耳、声や嚥下機能に関する分野のリハビリをおこなうことを仕事としており、聞く、話す、食べるのプロフェッショナルが言語聴覚士なのです。

言語聴覚士はなぜ広く知られていないのか

言語聴覚士はリハビリ職のなかでも従事者が少なく、病院に従事する方においては、同じリハビリ職で見ても理学療法士の約4分の1程度、作業療法士の約3分の1程度しかいません。また、福祉や介護などの施設においては理学療法士の約7分の1、作業療法士の約4分の1程度となり、この割合の少なさが言語聴覚士の仕事が広く知られていない理由だと考えられます。

参考:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士需給調査

言語聴覚士の年収は?

言語聴覚士の年収は?

言語聴覚士の職場や病院、看護施設や福祉施設など勤務先が多岐にわたり、さらにそれぞれ規模に違いがあるため全体の平均年収については一概にはいえません。

月給に関しては約18万円〜30万円までの幅があり、一般的な年収は300万円〜400万円のあいだにおさまると考えられます。(施設の規模や雇用条件により上下する)基本給に加え資格手当が約1万円ほど支給されるので、言語聴覚士と相性のよい資格を取得することが収入アップに繋がるでしょう。

言語聴覚士の給料は改善されつつある

理学療法士、作業療法士に比べ言語聴覚士は30年ほど遅れて国家資格に認定されたため最初こそ給料の差はあったものの、大きく改善され、給与水準に違いがない場合がほとんどです。

言語聴覚士になるには?国家資格

言語聴覚士になるには国家資格を取得する

言語聴覚士の資格は国家資格なので、「言語聴覚士国家試験」を受けなければ資格を取得できません。

◾️受験資格について

2020年9月現在、下記のような条件に該当する方には受験資格があるとされています。

 

  • 高校卒業後、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した言語聴覚士養成所において、3年以上言語聴覚士として必要な知識及び技能を修得した者
  • 一般の4年制大学卒業後、文部科学大臣指定の大学・大学院あるいは都道府県知事指定の養成所に2年以上通い、必要な知識や技術を修得して卒業した者
  • 大学で厚生労働大臣指定の科目を履修して卒業した者
  • 国外で言語聴覚士の知識や技術を習得し、厚生労働大臣に認定を受けた者

言語聴覚士の国家試験を受けるための条件は、言語聴覚士の養成校に入り、必要な単位を修めることが必要です。養成校には大学だけでなく3年制の専門学校や、働きながらでも通える夜間学校があるところもあります。

すでにある程度の単位を他の学校で納めているという方には1年制のコースもあり、自分のライフスタイルに合わせて無理なく単位を取得することができます。

言語聴覚士の国家試験内容は?

言語聴覚士の国家試験は毎年2月の中旬ごろにおこなわれ、試験会場は決められた6都道府県となっています。

北海道、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県

◾️試験科目

試験科目は以下の11科目です。

 

  • 基礎医学
  • 臨床医学
  • 臨床歯科医学
  • 音声・言語・聴覚医学
  • 心理学
  • 音声・言語学
  • 社会福祉・教育
  • 言語聴覚障害学総論
  • 失語・高次脳機能障害学
  • 言語発達障害学
  • 発声発語・嚥えん下障害学及び聴覚障害学

5択から回答を選択するマークシート形式の問題が出題されます。午前と午後に各100問ずつの計200問に回答し、例年の合格基準は120点以上。7割に近い正答率が必要なので、どの科目もまんべんなく学習する必要があるといえます。

参照:厚生労働省

言語聴覚士国家試験の合格率は?

言語聴覚士の国家試験の合格率は60%後半から70%後半で推移しています。過去3年間の数字を見てみましょう。

2020年:65.4%
2019年:68.9%
2018年:79.3%
2017年:75.9%
2016年:67.6%

こちらは既卒者を含めた合格率です。この数字だけ見ると難しい、合格しづらい資格と思われるかもしれませんが、養成校卒業時に国家試験を受けられている方の合格率は約80%です。

そのため、試験がとても難しいというわけではなく、しっかりと勉強していれば合格できる資格であると言えます。

需要が高まる言語聴覚士。就職状況は?

言語聴覚士の需要が高まっている

言語聴覚士は主に3つの障害に対応します。

 

  • 読み書きや対話
  • 話の理解が難しい言語障害や、病気によって声帯を失い、声が出ない音声障害
  • 物が飲み込みづらく、うまく噛むことができない嚥下障害など

症状はそれぞれ異なります。これらの問題に対してリハビリを通してアプローチをおこない、症状改善へとサポートすることが言語聴覚士の仕事内容になります。

音声障害や嚥下障害は、脳卒中の後遺症としてよく見られる症状です。近年、脳卒中の患者は増加傾向にあり、言語聴覚士の需要はますます高まっています。

また、業務内容から分かるように他のリハビリの仕事と比べて力仕事が非常に少なく、座ってできる仕事が多いです。そのため、女性でも仕事がしやすく、妊娠や出産、子育てなどライフスタイルが変わっても無理なく続けやすい職業でもあります。

言語聴覚士が活躍する場所は約7割が医療施設です。他にも介護施設や福祉施設、保健所や特別支援学校など働ける施設が複数あることが特徴です。資格取得者は年々増加しているので、養成校の教師などの需要もあり、現場で働いた後に教員の道へ進まれる方もいます。

また、従事者の7割強が女性であるということも特徴です。平成28年度の調査では20歳代、30歳代と比較的若い世代の従事者数が多く、若い方でも働きやすい環境であるといえるのかもしれません。

増える言語聴覚士、就職はちゃんとできる?

1997年に国家資格となってから言語聴覚士の数は増加傾向にあり、2019年3月末には有資格者は3万2863人にもなっています。

ですが実は、言語聴覚士はほかのリハビリ職に比べても資格取得後の従事者数が少ないのが現状です。しかし、これは職場が少ないから就職できていないというわけではありません。

近年は特に高齢化や、脳血管障害の割合の増加に伴い需要は増しており、今後も就職は安定していることが考えられています。ですので、資格を取ったのに就職先に困るということはないためご安心ください。

言語聴覚士の転職事情。社会人からなるには?

言語聴覚士の転職は年齢に左右されない

超高齢化社会において需要高まる言語聴覚士ですが、前述したように、まだまだ資格保有者が少ないのが現状です。しかし言語聴覚士の資格保有者の求人は数多く掲載されており、転職において年齢に左右されないことが特徴です。

言語聴覚士の仕事は実務での経験が何よりも大切となってきます。ですので、転職で重視されるのは言語聴覚士として従事している年数だと考えてもよいでしょう。

また言語聴覚士は日本全国どこでも働くことができます。実際に求人サイトを見てみても、北海道から沖縄まであらゆる場所での求人が掲載されていることが分かります。国家資格ということもあり、定年まで安定して働けるのも魅力でしょう。

社会人から言語聴覚士への転職は?

意外に多いのが社会人から言語聴覚士への転職です。専門学校によっては学生の半数が社会人を占めているケースもあり、社会経験を通じて、より人のためになることがしたいと再入学する方が多いと考えられます。

実際、「大阪医療技術学園専門学校」の入学時の年齢の割合は下記のようになっています。

22〜25歳:38%
26〜30歳:38%
31歳〜:24%

参照:大阪医療技術学園専門学校

◾️働きながら専門学校に通う場合

働きながら専門学校に通う場合、夜間課程のある専門学校に入学するのがよいかもしれません。実際に夜間課程のある「東京医薬専門学校」を例に見てみましょう。

言語聴覚士は医療の分野に該当するため、2年制とはいえ学費はかさみがちになります。学費を稼ぎながら学校で学びたいと考える方向けに、東京医薬専門学校では「ワーク&スタディ」という働きながら学べるシステムを導入しています。

日中は学校が学科に応じて紹介する勤務先で正社員や契約社員、アルバイトとして働きながら、夜間・土曜は授業を受けることができます。

社会人経験を持ちながら言語聴覚士の資格取得を目指す場合、このようなシステムを利用するのもひとつの選択肢として検討するのもよいでしょう。

参照:東京医薬専門学校

◾️昼夜2年制のある学校で学ぶ

また完全夜間ではなく、昼夜2年制のある専門学校を選ぶのもよいでしょう。

日本言語聴覚士協会が掲載している養成校には、昼夜部のある4校が掲載されています。

 

  • 埼玉福祉保育医療専門学校
  • 東京医薬専門学校
  • 大阪医療技術学園専門学校
  • 専門学校麻生リハビリテーション大学校

昼夜間部だと、平日昼間は他のことに時間を使うことができ、平日の夜と土曜日の1日を使って講義を受けることになります。

2年で必要な知識を網羅する必要があるため勉強は大変ですが、その点を考慮したカリキュラムが組まれており、また国家試験対策などもきちんとおこなってくれます。

そのため合格率はとても高く、80〜90%台となっています。未知の領域の勉強に加え、国家資格を合格するための勉強と考えると不安も多いですが、サポートがしっかりしている養成校は多数あります。

参照:日本言語聴覚士協会

言語聴覚士の仕事について詳しく知りたいという方におすすめの1冊

一般社団法人日本言語聴覚士協会が監修している本で、言語聴覚士を目指す方や言語聴覚士になりたての方などを読者の対象としています。また、他の職種の方に言語聴覚士という仕事を知ってもらうことも目的に作られています。

著者
一般社団法人日本言語聴覚士協会
出版日

この本は、言語聴覚士という資格についてわからない方でも非常に読みやすいことが特徴です。
 

NHKドラマで放送されていた言語聴覚士が主人公となるドラマのシーンを切り取りながら、言語聴覚士の仕事について詳しく解説しています。そのため、ドラマを観たことない人でもとても分かりやすい内容 になっています。ドラマの1シーンを切り取っていることで、実際の仕事のイメージがつかみやすいことも特徴です。

本書の中には言語聴覚士に関するQ&Aや就職先のデータ、国家試験の合格率なども掲載されており、これから、言語聴覚士を目指す方には非常に参考になることがたくさん書いてあります。言語聴覚士という資格に興味を持ち始めてから国家試験を受けるまでの長きにわたって活用できる本といえるでしょう。

言語聴覚士の仕事現場が見られる1冊

言語聴覚士が実際にどうやって患者さんへ治療をおこなうのか、その仕事現場を見てみたいという方にはこちらの1冊がおすすめです。

著者
["マーク・ローグ", "ピーター・コンラディ", "安達 まみ"]
出版日

第83回アカデミー賞で4冠に輝いた映画『英国王のスピーチ』の原作です。映画を観たことがない人も、また映画を観た人も楽しく読める1冊です。

吃音障害に苦しむ英国王に対して植民地出身の腕のいい言語聴覚士がリハビリをおこない、国民の前でスピーチができるようになるまでを描いたドキュメンタリー です。

実際に医療の現場でも採用されている治療法を用いており、その内容が本書の随所に出てきます。言語聴覚士がどのように治療をおこなっていくか、治療をおこなうことで患者さんにどのような影響を与えるかがこの本書を読むことで分かります。

また、単に治療をおこなうだけでなく言語の障害に悩まされている方とのコミュニケーションの取り方や、どうやって信頼関係を築いていくかなど、言語聴覚士の仕事の現場での悩みについても丁寧に描かれています。

言語聴覚士の仕事によって患者さんが変わっていくということを実感できる1冊です。

言語聴覚士になるにはどうしたらよいか悩んでいる方におすすめの1冊

言語聴覚士になると決めたけれど、言語聴覚士の資格取得のためにどんなことをすればいいか分からないという方にはこちらをおすすめします。

著者
中島 匡子
出版日
2017-05-31

一般社団法人日本言語聴覚士協会が制作協力をしているため、言語聴覚士という仕事、言語聴覚士になる方法が分かる1冊となっています。

言語聴覚士として働く先輩の生の声が入っており、自分が働きだしてからの具体的なイメージがつかみやすいですし、就職活動の際にどのような施設で働きた以下の参考にもなります。

言語聴覚士の道を目指すと決めた方にはもちろん読んでほしいですが、本書には国試から就活のことまで書いてあるため、言語聴覚士の養成校に入った後の学生時代も活用できます。

長きにわたって愛用できる1冊となるでしょう。

認知度の低い言語聴覚士という仕事ですが、食べる、話すという人間の大事な部分をケアするとても重要な仕事であるといえます。ここでご紹介した本を読めばさらに言語聴覚士という仕事を知ってもらえると思います。また、これを機に言語聴覚士という資格取得に挑戦したいという気持ちにつながっていただけると嬉しいです。

 

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