日本を旅行で訪れた外国人に、外国語を使って案内をする通訳のスペシャリストが「全国通訳案内士」です。訪日外国人旅行者数が増えている近年、インバウンド需要の一翼を担っているといえるでしょう。この記事では、仕事内容や働き方、試験の制度や具体的な内容、難易度などをわかりやすく解説していきます。試験対策におすすめのテキストや問題集も紹介するので、チェックしてみてください。
全国通訳案内士とは、国土交通省が認定する国家資格。外国人に付き添い、外国語を用いて旅行に関する案内をする、通訳のスペシャリストです。旅行スケジュールの管理やホテルの予約など、ツアーコンダクターのような業務を担当することもあります。
独立行政法人「国際観光振興機構」のHPには、次のように記されています。
全国通訳案内士は、幅広い知識、教養を持って日本を紹介するという重要な役割を負っています。外国人旅行者に日本の良い印象を持って帰ってもらうことは、正しい日本理解の第一歩となり、全国通訳案内士(通訳ガイド)の仕事は、“民間外交官”とも言える国際親善の一翼を担うやりがいのある仕事です。
年々、日本を訪れる外国人旅行者数は増えていて、リピーターも多いのが現状です。いまやインバウンド施策は日本にとっても欠かせないもので、需要の高い仕事だといえるでしょう。
年収は、旅行会社などに就職した場合350万円前後、派遣通訳ガイドなどは日給2万円前後といわれています。
全国通訳案内士としての働き方はさまざま。フリーランスもいれば、通訳案内派遣会社に登録をしている人もいます。企業へ就職する場合は、旅行業界をはじめ、イベント運営やホテル斡旋業などが代表的です。
2008年、通訳案内士法が改正され、業務独占規制がなくなり資格がなくても通訳案内業務が可能になりました。一方で全国通訳案内士の資格は、国家試験に合格した、高度な外国語能力や日本全国の歴史・地理・文化などの観光に関する高い知識を有する人として信頼が高まっています。
単純に言葉を通訳するだけでなく、文化や歴史を適切な表現で伝えることに重きを置いているといえるでしょう。就職をする際や派遣の仕事にエントリーする際も、有利に働くと考えられます。
なお法改正以前は、観光庁研修という講義形式の効果測定がおこなわれていました。現在は通訳案内士団体による任意の研修がおこなれているほか、今後は定期的な研修受講を義務化する予定だそうです。
全国通訳案内士の試験は、観光庁主管の国家試験で、独立行政法人「国際観光振興機構」が試験事務を代行しています。特別な受験資格はありません。
1次試験は筆記、2次試験は口述です。では詳しい試験内容を見ていきましょう。
1次試験
外国語、日本地理、日本歴史のボーダーは70点、一般常識と通訳案内実務のボーダーは30点とされています。
2次試験
1次試験で選択した外国語による口述試験です。
時間は10~15分ほど。評価は外国語力だけでなく、発音、発声、ホスピタリティなど総合的な視点で判断されます。
また実用英語技能検定1級、TOEIC900点以上、歴史能力検定日本史2級以上、国内旅行業務取扱管理者などさまざまな免除制度もあるので、受験の前にチェックをするとよいでしょう。
外国語の勉強は、独学者が多いのが特徴。また科目ごとに免除制度があるので、事前に該当の資格を取得している人は、科目を絞って効率的に勉強できるでしょう。
一方で、全国通訳案内士の試験は毎年出題傾向が変わるため、観光業界の最新の傾向などの情報を個人で収集するのは難しい場合も。効率的に学習を進めたい人は、スクールなどに通うことを検討してもよいでしょう。
では全国通訳案内士試験の合格率を見ていきます。
最終的な合格率は10%ほど。受験者は外国語を日常的に使える人が多いので、ハイレベルだといえるでしょう。
- 著者
- ["ユーキャン全国通訳案内士試験研究会", "ユーキャン全国通訳案内士試験研究会"]
- 出版日
全国通訳案内士試験の、地理・歴史・一般常識・実務のテキストと問題集がひとつになった作品。観光庁が発表しているテキストにもとづき、出題が予想されるポイントに重点を置いています。
地図や写真が多数掲載されているので、現地をイメージしながら学ぶことができるでしょう。難点や特に理解が必要な部分は「要点マスター」としてまとめてあるので、重要度が一目瞭然です。
基礎的なことからわかりやすく解説してくれているので、初学者にもおすすめの一冊になっています。
- 著者
- ["江口 裕之", "佐治 博"]
- 出版日
2次試験の口述対策に特化した問題集。プレゼン問題が50問と、通訳問題が30問収録されています。面接内容を予想したCDの音源を聞きながら、リアリティのある練習ができるでしょう。口述試験は場慣れも大きく影響するので、本番さながらの問題演習が役に立つはずです。
すでに試験に合格した人も、実務につく前の復習に使えるほど実用的な内容になっています。