本好きの方にとって、本そのものはもちろん、書店や古本屋が好きという方も多いはずです。自分の本屋をいつか持ちたいと考えている本好きの方もいらっしゃるでしょう。実際、古本屋を開業しようとした時にはどのような手続きが必要で、どう運営していけばよいのか疑問が湧いてきますね。そこで今回は、古本屋の開業の仕方や仕事内容、古本屋への転職事情などを詳しくご紹介します。記事の最後には古本屋を知るために役立つ本もご紹介するので、ぜひ参考にしてみたくださいね。
街で見かける古書店などの古本屋を自分自身で開業するためには、手続きや開業に向けての準備が必要です。思い立ったらすぐに始めるというのは難しいので、開業にともなう手続きや準備をしっかりと進めていきましょう。具体的な手続き方法や準備について詳しく見ていきましょう。
古本屋を開業するためには、まず古物商許可申請を取得する必要があります。古物商許可申請は、店舗を管轄する警察署でおこなう手続きです。手続きには大きく分けて、申請者の情報、事業の情報、管理者の情報、店舗などの営業所の情報といった情報が求められます。
それぞれの詳しい内容は以下の通りです。
あわせて、別途提出が必要な書類もあります。管轄の警察署によって、書類が異なる場合もあるので、あらかじめ確認しておきましょう。
手続きにともなって、管轄の警察署に対して申請手数料1万9000円がかかります。関係書類と手数料を用意して、古物商許可申請を取得しましょう。
参考:警視庁 古物営業
古物商許可申請を取得したら、古本屋を営業することができます。ただ、営業をするためには、書店として内装を整えたり、陳列に使う設備をそろえたりするなど、たくさんの準備が必要です。必要な準備をチェックしていきましょう。
契約した物件を古本屋として営業するためには、内装工事をしなくてはいけません。本を陳列するための書棚はもちろん、レジや電話、空調設備などを取り付ける工事が必要です。こだわって工事をするほど費用が多くかかるので、予算に合わせて内装を整えましょう。
古本屋によっては、最低限の内装工事におさえ、大部分をDIYで作っている店舗もあります。費用をおさえたい方やこだわりの店舗にしたい方は、DIYで内装を整えるのもおすすめです。
効果的な陳列をしたり、さまざまなアイテムを見せたりするには、什器が必要です。棚だけでも陳列は可能ですが、什器を効果的に使うことで、より魅力的な古本屋づくりができます。
また、販売をするためには、事務用品や袋、ブックカバーなどの備品も欠かせません。袋やブックカバーなど細部までこだわると、自分の店にしかない魅力になるでしょう。
内装工事や備品の確保を終えても、肝心の本がないと古本屋とはいえませんよね。販売する本を仕入れする方法はさまざまです。他の古本屋で購入する、知り合いから譲ってもらう、地域の古本市で仕入れるなどの方法で本を集めましょう。
古物商許可申請を取得すると加入できる古書組合では、本の交換会を開催しています。古本屋同士で本を売買する市場なので、効率よく仕入れられるでしょう。
在庫は多ければ多いほどよいというわけではありません。1000冊、2000冊ほどの在庫でも、本をしっかりと見せ、魅力を伝えることが大切です。
実店舗のほかに、ネットショップを活用するのも1つの方法です。ホームページを作成し、販売や買取を受け付けることで、オンラインで販売も仕入れもおこなうことができます。
また、ホームページは集客にも効果を発揮します。コンテンツの配信やサービスの紹介などによって、ネットショップの利用はもちろん、実店舗への集客も期待できますよ。
古本屋を開業すると、大好きな本に囲まれて仕事をすることができるでしょう。仕事内容は多岐に渡り、陳列や販売、仕入れなどたくさんの仕事があります。運営する上で、古本屋としての収入ややりがいなども気になるところです。仕事内容や収入、やりがいなど、古本屋の仕事を詳しく理解していきましょう。
古本屋の仕事内容は、仕入れから陳列、販売など多岐に渡ります。たくさんの本に囲まれながら、こだわりの古本屋をつくるために仕入れや陳列に集中したいところですが、レジ業務や問い合わせ対応、売上・在庫管理など、必要な仕事がたくさんです。
ネットショップを運営するとなると、ネット注文・買取への対応やコンテンツ作成などにも時間と労力がかかります。
人気のある古本屋では、イベントを開催していることも多くあります。作家展やテーマフェアなどを考えた仕入れ・陳列をすることも、ファンを増やしたり、新しい顧客を呼び込んだりするために、大切な古本屋の仕事です。
古本屋の収入は、実際に運営している店主の声を聞くと、決してよいとはいえないのが正直なところでしょう。出版不況と言われていたり、電子書籍が普及しつつあったりする現代では、リアル書店にとって厳しい状況が続いています。
そのようななかで、古本屋の店主に共通しているのが、本好きであることや本を広めたいという想いです。収入面では厳しくても、「自分の好きな本を広めたい」「本に触れる文化を伝える役目を果たしたい」「自分で考えて運営するのが楽しい」といったことにやりがいを感じ、日々、古本屋を運営しています。
自分の古本屋を持つことは、自分にしかできない店づくりができることと言い換えることができます。広く知られている古本屋は、店主のこだわりや個性が表現されていることが多いです。自分の専門性や好きなものを生かした店づくりをし、たくさんの人に本の魅力を伝えられるのは、やりがいとなるでしょう。
「本の良さを広めたい」「たくさんの人に来てもらいたい」という想いを叶えるのは、店主の仕掛け次第です。イベントを開催したり、陳列を工夫したりして、売上や集客につながれば喜びもひとしおです。
本好きの方のなかには古本屋への転職を考えたことのある方は多いはず。しかし古本屋に正社員として就職することはとても困難です。多くの古本屋は個人経営であり、大人数を雇うことが難しいことや、社員の入れ替えが緩やかであることが理由としてあげられます。
そのため転職をするとしたらアルバイトとしての雇用が主となります。きちんと生計を立てていきたいと考えるなら、既存の古本屋で正社員を目指すのではなく、アルバイトとして経験や知識を積み、独立を目指すことがよいでしょう。
たとえば吉祥寺に店舗を構える「古本みよた屋」では、5年以上勤務した社員の独立開業の支援もおこなっています。将来独立して古書店を開きたい方はこのようなアルバイト先を探すことをおすすめします。
参考:古本みよた屋
- 著者
- ["田中佳祐", "竹田信弥"]
- 出版日
古本屋を開業する前に、「まずは他の古本屋について知りたい」「古本屋の実情を知って開業の参考にしたい」という方におすすめの1冊です。「SUNNY BOY BOOKS」「双子のライオン堂」などをはじめとした11の書店が紹介されているので、書店それぞれの特徴や実態を知ることができます。
11の書店の紹介のほかにも、コラムや本屋の始め方についてのQ&Aも収録されています。楽しんでコラムを読めることはもちろん、古本屋を始めるために役立つヒントが見つかるはずです。
- 著者
- 森岡 督行
- 出版日
- 2014-03-06
東京の茅場町にある「森岡書店」の店主が赤裸々なエピソードで開業の経緯や店舗運営の実態などを語る1冊になっています。写真・美術の古書を専門に扱い、併設ギャラリーを備えるといった他にはない魅力は、どんな古本屋を作ろうかイメージを膨らませたり、ヒントになったりするはずです。
店主だからこそ語ることができる裏話や実態は、古本屋のやりがいだけでなく、厳しさも伝えてくれます。「1つの古本屋についてじっくり読みたい」「よりリアルな実態を知りたい」という方におすすめの1冊です。
- 著者
- 喜多村 拓
- 出版日
古本屋の店主が実体験をもとに、古本屋の開業ノウハウを詳しく解説しています。本の集め方や仕入れ、ホームページの作り方など、店舗運営だけでなく、ネットショップ運営にも言及しています。通信販売をメインに切り替えたエピソードもあり、現在に活かせる内容も豊富です。
古本屋の役目を「古本屋の使命は、 人類の知的財産をゴミにしないためにある」と表現するなど、店主が語るやりがいにも触れられます。古本屋の厳しさも伝わってくるので、開業の検討に役立つおすすめの本です。
古本屋を開業するためには、管轄の警察署での古物営業許可の申請手続きのほか、物件探しや内装工事など開業に向けた準備も必要です。仕事内容も多岐に渡り、本の仕入れから陳列、販売だけでなく、ネットショップを運営する場合梱包・発送なども業務に含まれます。
収入的には厳しいという店主の声が多くありますが、自分でイベントを仕掛けたり、自分色の店にしたりできるなどやりがいのある仕事です。本好きだからこそやりがいを実感でき、本の文化を残したり、本好きのよりどころになったりするなど、大切な役目を果たせるでしょう。
ご紹介したおすすめの本も参考にして、古本屋の開業を検討してみてくださいね。