教育や福祉・医療分野において、高度な専門知識・スキルを持ち重要な役割を担っている「公認心理師」という仕事。心の健康問題が注目されている近年、今後さらにニーズが高まってくる心理職で唯一の国家資格です。2017年に公認心理師法が成立し、2018年に1回目の試験が実施された比較的新しい資格のため、詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。 この記事では、仕事内容や試験の難易度、公認心理師に興味を持った方に役立つ、漫画やテキストなどの本3冊をわかりやすく紹介していきます。
公認心理師とは、心に悩みを抱えている人やその家族など心理的ケアを必要とする人に対し、相談や助言・指導などのカウンセリングや専門的なサポートをおこなうプロフェッショナルです。「公認心理士法」では、下記のように定義されています。
「公認心理師」とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう
メンタルヘルスの問題が増えつつある近年では、対象者のサポートに留まらず、教育や情報提供を通じた心の健康に関する知識の普及も担っています。
公認心理師は、2017年に施行された「公認心理師法」に基づき定められた心理職で唯一の国家資格であり、心理学に関する専門的知識やスキルを有していることを証明しています。
従来からある「臨床心理士」と業務内容が似ていますが、臨床心理士は民間資格であり5年ごとに更新が必要である一方で、公認心理師は国家資格であり更新制度もない点が異なっています。
また、公認心理師は名称独占資格であり、受験資格の難易度も高い上位資格になるため、今後は公認心理師の重要度が上がると予想されます。
公認心理士は、心理的支援を必要としている人に心理学に関する専門的知識やスキルを用いて支援をおこないます。
業務をおこなうには、精神科や病院などの保健医療、児童相談所や福祉事務所などの福祉、学校などの教育、矯正施設などの司法、会社などの分野で、各分野のチームの一員として周囲の関係者と密に連携をとることが必要不可欠です。
活躍できる場所は、医療・教育・司法・行政機関や福祉施設、産業分野など多岐に渡ります。
虐待やパワハラ、いじめなどさまざまな理由で心の問題を抱えた人のサポートやその解決ができる、やりがいの大きい仕事だといえます。具体的には下記のような場所があげられます。
新たな心理職の資格が生まれたことにより、さらなる社会的ニーズや活動の場も増えていくことでしょう。
資格として認定されてから日が浅いので、公認心理士の年収のデータは発表されていません。なので、業務内容がほとんど同じである臨床心理士の年収をベースに考えてみるのが一番よいかもしれません。
臨床心理士になるには?5分で分かる、仕事内容や年収、資格・試験について
→https://honciergejp/articles/shelf_story/5931
こちらの記事では、臨床心理士の平均年収は300万~500万円程度とされています。国家資格だからとはいえ、いきなり給与水準があがることは考えにくいので、公認心理士の年収も同程度と考えてよさそうです。
しかし、国家資格が新設されたことで、今後は働き方の安定や給与水準の向上も見込まれています。
公認心理師試験は、2018年度に始まったばかりの新しい資格試験のため、日程や合格率にばらつきがあるのが現状です。公開されている今後の試験のスケジュールは下記の通りになっています。
2018年:9月
2019年:8月
2020年:6月
2021年:5月
2022年:4月
2023年:3月
2024年:2月
参照:厚生労働省
第1回目から約1カ月ずつ前倒しをしているのには理由があります。2024年にはその年度の卒業者が4月から勤務できるように調整するためです。これは他の医療・福祉系の国家試験と同様のスケジュールです。
◾️受験資格
受験資格は、下記3つのいずれかに限定されており、大学と大学院の両方で心理学を専攻し修了または、大学で心理学を専攻した後に特定の施設で2年以上の実務経験を要するため、受験ハードルの高い資格といえるでしょう。
発足したばかりの資格のため、特別措置として2022年までは実務経験5年と講習の受講で受験資格を得ることも可能です。
◾️試験内容
試験は、150~200問程度が出題される全問マークシート形式の筆記試験であり、午前と午後の2時間ずつに分けておこなわれる計4時間の試験です。
試験内容は、公認心理士として業務をおこなう上で必要な知識や技能を確認します。あらゆる場面での心理学の知識やそれに関わる医学知識、公認心理師としての基本的姿勢や関わり方に関する知識などの問題加え、より実践的なケーススタディも出題されます。
◾️試験対策はどうしたらいい?
日本心理研修センターでは、その年の試験の「出題基準」と「ブループリント(試験設計表)」を毎年公表しており、それを参考に試験対策を立てる必要があります。
出題範囲の各項目のなかで出題テーマや語彙をとても詳細に記しており、勉強の指針になるはずです。社会変化をともなう記念年の世相に基づき、頻度や緊急性の高い分野は優先的に出題される傾向があります。
参照:日本心理研修センター
公認心理士試験の合格ラインは、総得点の60%以上が基準となっています。合格率についてはまだ2回しか実施していないので、なんともいえないのが現状です。
今までの受験者数の合計は、延べ5万3052人にのぼり、合格者数は3万6438人となっています。全体の合格率は68%に達しているため、そこまで難易度の高い試験ではないといえるのではないでしょうか。
今回は公認心理士という仕事に興味がある人、公認心理士を目指す人におすすめの書籍をご紹介します。
- 著者
- ["福島 哲夫", "松尾 陽子", "神崎 真理子"]
- 出版日
公認心理師を目指す人なら読んでおきたい必読入門書がこちらです。著者は『第1回公認心理師試験問題解説』などの著書も手がけており、心理学に精通しています。
内容は、漫画と解説パートの2部構成になっており、イラストを用いて可能な限り分かりやすく説明しています。
漫画パートは公認心理師を目指す上で大事なマインドや合格後のキャリアを知ることができるストーリーとなっており、解説パートは公認心理師試験で問われる全項目を7分野に集約し要点を解説。
試験対策だけではなく臨床実践をおこなう際の必須知識を学ぶことができます。
- 著者
- ["子安 増生", "丹野 義彦"]
- 出版日
『公認心理師エッセンシャルズ』は、入門から大学・大学院での授業、試験勉強、その後の研修まで長期的に幅広く使用できることに加え、持ち運びしやすい便利な仕様になっています。
学部25科目と大学院で学ぶ重要項目をおのおの見開き2ページでコンパクトに集約し、公認心理師養成カリキュラムの全体像やキーワードを理解できる設計になっています。
また、「公認心理師の職責」と「関係行政論」については、13回分の授業内容を独立したパートで丁寧に解説しておりテキストとしても活用できます。
まだ有効な試験対策に関する情報や、そもそもの受験資格などについて複雑な部分も多いため、こちらの本を読むことで多少カバーができるかもしれません。
- 著者
- ["細谷 紀江", "杉山 崇", "江花 昭一", "今関 仁智"]
- 出版日
公認心理師試験の広い出題範囲を効率よく学習できるよう、試験合格に必要な各分野や頻出項目・重要単語・制度を簡潔にわかりやすくまとめた1冊です。
合理的に試験の対策が立てられるよう、「1日45分×60日」の勉強で合格できるように設計されており、短期集中で学ぶことができます。
過去問題に関連した項目もあるため、頻出問題の対策もしやすいでしょう。現役の受験者というよりかは、特別措置の受験資格対象者におすすめの1冊です。
公認心理師士は、社会的意義が高く、やりがいの大きい仕事です。専門性の高い国家資格のため、取得後は社会的信頼が高く、活躍の場は多岐にわたります。心理職はいまだ給与水準が低いという課題が残されていますが、公認心理士の国家資格の制定を受け、今後は安定性や給料の向上が見込まれています。今後の現代社会において、さらに欠かせない存在となっていくでしょう。
比較的、新しい資格のため、今後さらにニーズが高まっていくと期待されます。公認心理師への理解を深めるためにもぜひ本を読んでみてください。